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980217付けテキスト


栗本薫「覇王の道」グイン・サーガ59/ハヤカワ文庫JA/1998/01/31

うーん・・・いやー、動き出したねぇ。
「一冊一冊が激動とヤマ場」との作者の言にも有る様に、
もうその激動ぶりたるや落ちる滝の如き勢いである。

静かなマルガ、人気のないガルム峠の山道、
だがヤーンの御手は場所を選ばず
今がその最大の見せ場とばかりに糸を紡ぐ。

イシュトもいよいよ”覚醒モード”というか
覇王モードに突入した様だし(覚悟完了、という奴だ。
アリストートス卿の命運も尽きたか。南無。)
ナリス&ヴァレリウスは当たり前の「仕事」の様に
クーデターの計略を立てて行くし
(しかしまさかアルミナ姫・・ああッ。何かもうレムス可哀想すぎる。)、
グラチウスはホイホイ出てくるし
然もその口からはキタイの竜王の企みがいきなり明るみに出てくるし
その企みの触手がまた予想以上に深く広く
魔道の王国パロに伸びていたりして

ぐああああ。凄すぎ。

イシュトに手を組もうと語るグラチウスの口からは、
見えないところで動いていたキタイの魔手が今次々と明らかになってくる。
(そしてそれをこっそり聞いている存在感のないヴァレリウス。)
気が付くとパロ王さえが(!!)キタイの手下にあるかという。
やはりカル=モルの亡霊は消えては居なかったのだ!
・・・これはもうとんでも無い長計にはめられていたと見るべきだろう。
つまり以前ナリスが語った様に、パロの双つの真珠が「誤って」
ノスフェラスに飛ばされたことも、
キタイに無関係では無いのかも知れぬ、という事だ。

かの魔手はまた、この地上であの星船の有様を知る数少ない人間、
我らが黒太子スカール(白血病モード)にすら伸びているらしい。
それらと同時に対グイン、対グラチウス戦すら進行させている訳で。
ああ何という巨大な「敵」!!!
一体竜王ヤンダル・ゾッグとは如何なる者なのか・・・

この「敵」の前にはあの<闇の司祭>グラチー
(ってヴァレさん呼んでるぞ。良いのか)ですら
その版図を削られつつあるという。

イシュトに語って聞かせた言葉が全て真実とは限るまいが、
このまま行くと、いずれグインとグラチウスが
「共通の敵の前に手を組む」可能性も出てくるのでは・・・
・・・・・ううう・・・

場面場面は閑かなのだが、そこで明かされていく「現状」は
恐ろしくドラスティックだ。
ああもう面白い!面白すぎる!
ああああ今直ぐ次の巻を出してくれッ!
一月に2冊書き下ろす勢いがあるならその半分をグインに注いで
せめて月刊グインをッ!

・・・いやもう奥さん、今を逃すとこのサーガの一番美味しいところを
リアルタイム(!)で楽しめなくなっちゃいますぜ。
”今直ぐこの長大なサーガに参加しよう!”だ。
そんで、みんなで新刊が出る度に「読んだか!?」「読んだ!!」ってやろう。

あー次はまだか〜
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高橋葉介「学校怪談 8」/秋田書店/1998/02/10 銜え煙草の帽子男。 本屋で8巻の表紙及裏表紙を見たときの感動。 もう”奴”の登場はその時から予感していたが、 まさか九段先生のご先祖だったとは・・・! いやァ、やっぱ夢幻クン(とカタカナで振らせてくれ)は良いぜ。 「素敵なお兄さまと呼べ」 くはー。良い。イイなァ。 ギャグな夢幻も好きだったけど、 矢っ張り青年探偵夢幻魔実也だよ。 あの悪魔とも天使ともつかない表情、 P61のあのシルエット・・・!! ホントに巧い・・・。あの目の表情がもう・・・ ・・・オマケに立石は髪をおろすわ九段先生はヌードになるわ (ていうか露天風呂シーンが惜しげもなく!!) 挙げ句にアスカな転校生(何でもエヴァ変換するのは止めたい所だが、 主人公山岸からがどう見ても高橋葉介が描く碇シンジだしさ) 神宮寺八千華も大登場(これがまた長い!転校初日だけで5話も有ると言う。 然も連続じゃなく一話完結×5)するわ・・ 毎回毎回一話完結で延々と続くこのシリーズだが あのテンションと完成度を良くも保てるものだと感心する。 この巻で既に140話を超えているというのに、 その「高橋葉介的面白さ」は薄まるどころか この独特の世界を得て益々濃く成っていく様である。 元気な転校生も増えたし、何となく立石と山岸の間にも アレな雰囲気が流れ出したりで(今巻p166最後のコマで こっそり覗き込んでいる立石に一票)「恐怖」漫画としてだけでなく、 キャラ主体の漫画としても可成り楽しめるシリーズとなってしまった。 ええ。割とおすすめです。 ・・しかしそうか、九段先生は夢幻の子孫(誰との??大体夢幻って人間なのか?) だったのか・・・道理で・・・。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@


田中芳樹「創竜伝 11<銀月王伝奇>」/講談社/1997/12/05 あんまり話題にはならなかったみたいだけれど、ひっそりと (と言うには少しばかり盛大か)”あの” ドラゴンブラザーズの新刊は刊行されていた。 タイトルからも解る様に、今巻はいつにもまして伝奇調。 それもその筈、後書きである所の”竜堂兄弟座談会反省篇”によれば、 かの伝奇の傑作「夏の魔術」同様、夢からのインスピレーションを元に 一気に書き上げたものであるらしい。つまり、これは、「外伝」なので−。 元より本伝の方が小早川センセイの登場以後 無茶苦茶且つ複雑怪奇の度を増してきており、 正直私などは始兄や続兄の口から出る(あるいは作者の筆から出る) 「解りやすい政治批判」とかそう云う部分に 楽しみを求めているのであって・・・・・ (これが耐えられなくて読むのを止めてしまった人を何人か知っているが) その辺はまぁそこそこという毒の量で。 ・・・もう少し毒が有っても良いのだけどな。 でも矢っ張りP68で久々に次男坊の口からきつい台詞が流れ出した辺りで 「来た!」的喜びに震える私−という図式。 吉本新喜劇の定番ギャグにツボを押される様なものか。 詰まるところP208の小早川先生の格好良さ(格好悪さというか・・・つまり 「お約束」シーン)に思わず拍手が出てしまうという所にこの作品の神髄が有ると。 いやこのシーンとかスゲェ好きで。 小早川先生の出ない創竜伝など創竜伝ではないわ。 をーっほっほほほほほほほほほ! ・・・展開は如何にも「伝奇」という体で、 最後は巨大な怪物(バルンガ体と思われる)対ドラゴンブラザーズで締め、 というもの。この辺も何処と無く「夏の魔術」を彷彿とさせる。 軽妙な会話、毒のある視点、軽快なアクション・・・ キャラモノとしての良さで読めば80点はカタいのだが・・・ たださ・・・いや言うまい。これだけ楽しめたんだし。 銀英伝がもう一度読めるなんて幻想は・・・でもせめてアル・・いや・・・ 良い。いいのよもう・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@



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