6月3日付テキスト二つ。

栗本薫「野望の序曲」グイン・サーガ56/ハヤカワ文庫JA/1997/5/31

56巻。内容的には前巻の続きというか、この2冊で一回というか。
兎に角面白い。
「グイン」の大きな魅力の一つに
この堂々たる戦闘シーンがあるのだけど、
全くこの二巻というもの、久々に血が沸き立った。

うきうきと戦争を進めていくイシュトヴァーン。
情報を集め、軍議を開き、作戦を練り・・
そして何より最強の戦士として、先頭で戦う。
その姿の、何と生き生きとして魅力的な事か!
民衆から−平和を望む者からすればイシュトヴァーンの存在は
真に悪鬼そのものであるのだが、それでも惹かれずにはいられない。

p146の、あの「赤い街道の盗賊」の復活!!というシーンでは、
(あまりにあざといにも関わらず)背筋がゾクゾクした。本当に巧い。
実際どのくらいの期間「盗賊」をやっていたのか思い出せないが、しかし
やっと彼の本来あるべき所へ、歩むべき道へ戻った!という感じがする。
イシュトはこうでなくちゃ、とかそう言う感じ。一時期の駄目さ加減が
嘘の様だ。もう満足感腹一杯という感じである。

で、これで今巻は決まりかと思いきや、
陽の落ちた赤い街道を、ずらり並んだと松明が照らし出すシーン(p196)の、
これまたゾクゾクすることと言ったら!
活字ながら、その文字の描き出す、この世とも思えぬ美しさに打たれた。
今巻が最後かもと噂される天野イラストが、さらりと描き出す
そのシーンのイラストが、また素晴らしい。
本当にこの世のものとも思えない、イメージの強さで迫る。
・・いや本当によく練られている。流石だ。

挙げ句にp215で駆けつけるカメロンの、駄目押しの格好良さ。
もう言うこと無しである

カメロンはしかしイシュトの行方を心配する。
イシュトが今の様に「生きて」行くためには、矢張り
「いくさをかいばとして」与え続けなければならないのだろうか。
これから彼の行く道にどれだけの血が流されて行くことか。
死の道の果てに何を見るのか・・・

世界征服をさえ宣言する、今のイシュトは本当に無敵に見える。
たとえアリストートスと雖も、今のイシュトを止めることは不可能だろう。
イシュトはアリを斬って捨てることさえするかも知れない。
先日友人とその様な話をしたのだけど、いやもうアリの役目は
終わったんじゃないか、と。
イシュトを再び戦場へ連れ出す(然も将軍として)というのが
ヤーンが彼に与えた役目だったとしたら、それはもう果たされた。
もうイシュトは一人充分でやって行ける。その自信もついたはずだ。
カメロンもいるしな。まあ行けるとこまで行ってくれい。

然し。果たしてアリはどうするのか。矢張りパロへ赴くのか?
イシュトヴァーン将軍を連れて?

ナリスを見てアリは、或いはアリを見てナリスは、どう感じるだろう?
栗本薫の容赦ない辛辣な筆が、徹底的に描写してくれることを望みつつ。

兎に角、続刊が待たれるのであります。次は7月末か。
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坂田靖子「ダンジョン狂騒曲」/ソフトバンク/1996/11/29 坂田靖子氏によるゲームエッセイ集。現在も「スーパー64」誌で連載中! だそうだ。 この人のゲーム好きはつとに知られていて、またそれが 作品にモロに反映しているという点でも有名ですが− 特に「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(とゆー作品があるの。)あたりから、その気配が 濃くなってきていて。 でも坂田靖子の世界はそれ以前から「そういう感じもアリ」だったんで、 何となく見逃していたらば、いつのまにか 「そんなの」ばっかりになってしまった。・・・という。 「ゲームで駄目になった漫画家」論、は以前流行った記憶があるですが 実際どうなんでしょうね(と逃げを打つ奴。)。いやでも、この人のバアイ、 その駄目さ加減が又よろしい訳で(ビギン・ザ・ビギンとか−)、それに ゲームの世界観無くしては決して生まれなかった傑作「黄金の梨」もある。 ・・・「黄金の梨」はまだ再評価には早いと思うですが、いつか後生に、 その作品価値が再認識されるべきだ、と勝手に思っている私。 いや、アレを読んでいる間ってのは、モロに「RPG」やってる感じだったのよ。 RPGやってるときの、あの独特の没入感が、見事に再現されていた。 よくぞここまで−!と思ったものです。 話がそれた。 さて、このエッセイ自身は、そんな(どんなだ)作者のゲームライフを オモシロオカシクつづったもの。ファミコン−スーファミからPCまで、 「ゲーム機」の幅は広く、またそれだけゲームの幅も広い。 洋ゲーの楽しさ・・・「ゲームってこんなに面白い!」と力説するわけでもなく なんて言うか、ゲーム好きがやはりゲーム好き(対象となる読者はそういう ヒトタチだ)の友人に、「ここが良かったよね〜」と話している様な内容。 それだけに、ゲームをやってきた人間なら「うんうん」なんでしょうが・・・ 私、本当にゲームに−特にRPGに−疎いもので。 まともに「やった」といえるRPGが「Wizardry」シリーズと「MOTHER」シリーズ だけという。DQもFFも知らないんだよう。 ・・・ああ・・いいなぁ・・・やろうかなぁ・・どうせこれ以上駄目には なりようもないしサ。 因みにエッセイと言うことで「どーかなー?」とお思いの方は、ご安心あれ。 文面は、坂田キャラそのままの喋りです。凄くいい感じ。 坂田靖子の「創作に対する考え方」みたいなものが垣間見えて面白いですし、 ファンは、買い。 ってもうとっくに買ってますよね・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@

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