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980518付けテキスト


CLAMP「カードキャプターさくら 5」/講談社/1998/04/04

面白い。ここ数巻では一番面白いかも。
キャラが立ってきた−と言うか、展開に余裕が出てきた感がある。
物語先導でなく、キャラの魅力で話を引っ張れているというか。
p56の「楽しみですわー」なんか、明らかにキャラ漫画だよな・・・

最初は「お、インターミッションか?」とか思ったのだけど
この巻全体にわたってそうなのを見ると
これ以降もこんな感じなのだろうか。
或いは読者としての「慣れ」か?TV見てるし。

李君・さくら・知世姫の間で「会話」がようよう成り立ってきているのを感じる。
で、やっぱり少女漫画の基本はラブコメでしょう、と。
「・・・・さくらちゃんはふんわりなさってますから大変ですわよ。」(p175)
李君の「かああああ」の相手がさくらになった瞬間のその「間」の巧さが流石だ。

問題は知世が李君を応援しているげに見えるが、その実・・・という。
p164-5の知代姫の表情は実に微妙だ。追い詰め方からすると、結構ムカっと
来ているのかも。あの母にしてこの娘有りというか。
こりゃ一波乱有ってもおかしくはない。
とーや兄貴も結構ムカっ腹を立ててて、おおシスコン、というか。
何にしてもさくらの王子様と李君のお姫様のキスシーンは犯罪的に良いのだった。
ていうかあの時「闇」が来なかったらキスしてるぞ屹度。さくらのことだから。
山崎も脇キャラなのにどんどんキャラが立ってきてて凄いぞなんか。


また、今巻は「新たに出現する謎また謎」みたいな展開で、その辺も結構巧い。
雪兎さんの謎、とか。何故声が碇シンジなのか、とか。

所でケロちゃんの「その服は知代やな!?」は、
案外当たっているのかも知れない・・・

小中高と通して演劇なんてただの一度もやったことのない
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(980420)

惑星ピスタチオ「大切なバカンス」於新神戸オリエンタル劇場/1998/04/25 観てきました。 噂に聞いてはいましたが、パンフレットには「いちいりえ」の名前無し。 辞められたのだろうか? 作品を包むのは「フランスのバカンス映画もの」の雰囲気。 私の見た所、前作「WORLD」からの流れで「映画の形態模写」を やっている様に見受けられた。 例によっての冒頭のシャウト 「緑、緑、太陽、緑、緑、緑、太陽!、太陽!!」 では、その音響、また光の演出によって すっかりその世界に引きずり込まれてしまうのだった。 都会の少年が体験する、初めての父親の故郷でのバカンス・・・ チラシの予告文(仏文)を邦訳したものがパンフに載っていたので転載。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− それはひとりの少年の、ある夏休みの思い出の物語です。 少年は生まれて初めて両親と離れて、田舎で夏休みを過ごすことになりました。 お父さんから何度も聞かされたとおり、その田舎は美しい自然に恵まれ、 気が遠くなるほどに穏やかに時間が流れています。 少年は毎日、野山を駆けめぐり、川で水遊びをし、夜には満天の星空を眺めます。 そんなある日、少年はひとりのおばあさんと出会います。 湖のそばで一人静かに暮らすおばあさんには、何か切ない思い出があるようです。 大切なおばあさんが、昔、あきらめた願いを、何とかかなえて上げたい− そう思う少年の頭にひとつのアイデアが浮かびます。 誰にも内緒の素敵な計画に少年は夢中になっていきます。 そしていよいよ、計画を実行する日がやってきました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平和堂ミラノによる脚本の作品を観るのはこれが初めてだが、 言うほど嘆美な匂いもなく、また他の作品でミラノ氏が演じるところの エキセントリックな「女」の匂いも無い。 髪の毛を切ったミラノさんは、その役柄通り、14歳くらいの少女に見えた。 正直、この手の「都会の少年が田舎で出会う物語」には、幻想的な つまり現実とも夢ともつかない展開が挿入されるのが常だと思っていた (長野まゆみ、或いはブラッドベリの影響下にある)私は、あくまでも 現実世界一枚板で進行する独特の雰囲気にのまれてしまった。 伏線も、暗喩も、教訓も無い。 本当の意味での「バカンス」ていうのは、思い出の向こうで美化された ぼんやりしたものじゃなく、今まさに目の前で行われている「現実」なのだった。 観客たる私は、理想化され文学的に幻想化された思い出の「バカンス」を 楽しんでいるのではなく、リアルに進行する、そして(2時間後には) 終わりを告げるバカンスの切なさを感じるのだった。 バカンスのさなかにあっても、僕等は切ない。 今連休の中にあって、いずれ来る連休明けのことを思うと、もう切ない。 「嫌なことでも終わるのは辛いのよ。ただ、「終わることが辛い」のよ。」 少年と少女が、(様々な感情を押し込んだまま)ボートの上で 花火を見上げるシーンを、僕は忘れない。全ての「終わり」を象徴するあの切なさ。 今回は前作にもましてパワーマイムと称される独特の芝居が減っているように感じる。 例の「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」とか「一号機チューン!」とかが無い。 (あ、でも個人的には「ハイジis一人っ子!」と言ったトニングリッシュ  (トニー谷英語)みたいなのが良かったです。可成りイカス感じでした。  「・・ペーター!」「ペーター is her friend!」  「・・ヨーゼフ!」「ヨーゼフis an animal!」とか。) ・・その代わり、中盤から堰を切ったように役者の役回りが変化し出す。 これは、多分、新しい。 今までも少ない役者で何十人もの登場人物を演じ分けてきた彼等だが 今回の登場人物はそれ程多くはない。彼等は主人公をまで含めて、 刻々とその演じるキャラクターを交換していく。 果たしてコレに「意味」があるのかというと−まだ疑問だ。 ただ、「今までにない」ピスタチオであることは確か。 パンフレットの写真、各メインキャラを団員それぞれが演じている写真の意味が 初めて解った・・・ 今までが劇団員のキャラに頼った(平和堂は謎のヒロイン、いちいは元気印、 保村はエキセントリック、佐々木は格闘系ダークヒーロー、団長は・・・謎、 遠坂百合子は・・・これも謎か、宇田は味のあるサブキャラ・・・とか。) 役回りが多かっただけにこういう「一人のキャラを全員が代わる代わる演じる」と いうのは、かなり変則的なのではなかろうか。 役割を交換していくことによって、然し彼等の演じている「キャラクター」が 変化するわけではない。これは面白かった。つまり少年を演じているのが ミラノ氏だろうが腹筋氏だろうが、私の観ている少年は、そのまま 連続的に少年なのである。面白い。私の目と脳は、其れほどに柔軟だったのか・・・ かといって徒に実験的と言うわけではなくて、舞台でピスタチオを観るときに感じる、 北島マヤを前にした人々の如き感動は、ちゃんと味わえた。 前作「WORLD」での、あのバーの存在感、地平線まで続く一本の道、 絵も写真も置かれていない、ただ言葉と演技が生み出すリアリティ。 椅子が何処にあり、カウンターが何処にあるか、全てが見えた。 ドラマシティの舞台の上に、何処までも続く道が見えた。 今作は、フランスバカンス映画(前作はロードムービーなので背景の役割は大きい) と言うことで、背景にピントが合ってない部分も有る。だが、今回のピントは キャラクターの上に注がれているから−水面の反射(!!)などに注目されたい。 いや、良いモノをみせていだだきました的。 ただ席が前列4列目、は良かったのだけど、一番右で・・・ 首が痛くなってしまった・・・これからは後ろでも良いから中央席を取ろう・・・ ちなみに、見終わった後、しばらくぶらぶらしてからOPAの裏側、新神戸駅側の 広場みたいな所を通りかかったら、ピスタチオのメンバーがミーティングみたいな 事をしてた。何度か「通り過ぎるフリ」をしてたら、ミラノさんに睨まれたので 退散したのだった。こういう時って何も言えない・・・ああ、 「キャー保村さん〜ファンです〜」とか言ってサインとかねだれる勇気が有れば。 一番驚いたのは「野菜ナベダイエットに成功」した西田シャトナーだった @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980430)
ゆうきまさみ「じゃじゃ馬グルーミンUP! 14」/小学館/1998/05/15 バランス感覚良いなぁ・・いや、良すぎる・・・ と云った感じの14巻。 前巻で人間関係方面のドロドロが過度になってた感が有ったが、 その分今巻では乾いた馬関連の描写が増えきている気がする。 あくまで気がするだけですが。 何かこう、「計算」を感じるほどの・・・ 以前にも、たづなちゃんのキャラ描写ベクトルを変化させておいて 今のひびき&駿平の雰囲気につなげる前フリをしていたりしたけど 本当のところ、どの辺まで計算してやってることなのか・・ 兎に角駿平(=読者)の心を浮き沈みさせる事に 死力を尽くしている様な感もあり。p47のひびきさんの、あの眉!! 落ち込むよなーあのシチュエーション。 これも「気がする」レベルの話ですが、今巻に至って特に絵のデフォルメ、 「ギャグ」的な漫画記号が可成り入ってきている様に感じる。 コメディ、じゃなく、ギャグ漫画家としての描画形式。恐らくは例の 「土曜ワイド」の影響下があるのではないか(時期的にはずれるけど)。 p53〜54のたづなの表情なんかは、可成り「漫符」化している。 或いはp124、4コマ目のお茶をひっくり返すあぶみさん、これなんかは 流石に「実際にひっくり返した」と思うよりは、そう言う「心理描写」 と読みとるのが自然だろう。さり気ない所で、こうした「絵」を 持ってきているのが、今までのそれとは何かしら違う感じを与える。 他にもP145の梅ちゃん地球を救うの段や、p148「ハミはいいねえ・・」etc. 然したづなちゃん。 たづなちゃん心理の一種醜さは、少女特有の −と云ってしまって良いのかどうか− 「恋に恋するおしつけがましさ」的なアレ。 「永遠の野原」の潔癖性少女がそうだった様に、いずれは・・・ あー、でもこの四姉妹も(あぶみさんはちょっと違うかな)漸く歯車の噛み合った 面白い台詞回しを展開してきてくれていて、嬉しい。 姉妹でありながらも「おんなのたたかい」を内包した会話がイカス。 やっぱ面白いわ、ゆうきまさみの台詞劇。 あとひびきさんの「なしてあたしなんだ?」(p56)を見てて、ああ、 この人も主人公だったのだ・・・とか思い出したという。何かここんところ 「駿平から見た(心理の読めない)女の子」でしか無かったから・・・ この人も又、悩める青少年なのだったな。 テーマが一つじゃない(馬のみでも、ラブコメのみでもない)だけに、 何となく精読を要求される部分はあるが、 その分能動的に読まざるを得ないので実は結構はまってるのだった。 でも、ああ、たづなちゃんはいい娘だよ〜。 なんかもうかいぐりかいぐりしたくなる。 取り敢えずキル駿平同盟を結成中の @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980507)
長野まゆみ「天然理科少年」/角川書店/1996/12/25 割と傑作。 「元少年だった、そして今も少年の続きをやっている親父」である 梓というキャラは、私が読んできた限りに置いて、長野作品における 成人男性の造形では非常に珍しいと思うがどうか。非常に魅力的である。 父親梓と、主人公岬少年との会話の、何とも曰く言い難い軽妙・・・違うな、 鮮やかさ・・・と言うのがなかなか。センスは良いが、あくまで地に足のついた 「昭和」を生きる日本人としての父と子の会話。 (然しモノカキでしょっちゅう引っ越している父親と、それに付き従う少年 然も名前が「岬」、なんていうと、古い世代としては「岬太郎」が思い出されて ならないのだった。閑話休題) 世界は例によって半ば幻想の中なのだが、ラストで全ての幻想風景から 「物語」として現実の地平へ引き戻されるのが珍しい。 謎の解明と共に物語は結末を迎える、と云った「お終い」具合は 他の長野作品の虚実入り乱れるうやむやラスト群に比べると、 非常に解りやすくて「物語として良く出来ていた」という感じを受けた。 長野作品ではしょっちゅう「病でふせって居る友を見舞う」 描写が出てくるが、此の作品では「友の変わり果てた姿を認めたがらない少年達」 といった、こうなんつーか、バスケットボールダイアリーズのよーな ハードな「少年もの」の描写があって、その辺も他の長野作品に於ける 線の細いジュネ入った世界観とはちょっと違う様な。長野世界の必要以上なまでの 幻想性に/少年愛好癖に嫌気がさしてきている様な方にも、お薦め。 所で、鬼胡桃の印鑑って本当に実印登録出来る/出来たのだろーか。 面白いけど、腐らないか?大体オニグルミって見たこと無い拙者。 普通の所謂「胡桃」とは違うのだろうか?違うんだろうな、やっぱ・・・ 山の中の役所の空気や、学校の雰囲気なんかは流石の長野節で、 でも全体のノリは他の長野作品とは違う感じ。 それだけに長野ファン以外にもオススメなのでした。 ビギナーには良いかも。 ・・・こういう思わせぶりな展開の作品は、然しラヂオドラマ向けだと思う。 あと、章毎に入る詩文めいたコラムも良い感じだった。凝ってる感じが良。 あの学校の弁当が食いたい @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980507)
能田達規「おまかせ!ピース電器店 7」/秋田書店/1998/06/01 クリスマス、スキー、バレンタイン、持久走、と冬季ネタオンパレード。 先生のお見合いネタなんかもあって、何だかこう実にチャンピオンの 少年漫画っぽい巻である。何やら懐かしい。 しかし、良いね、ピース一家。家族の絆が熱い。 特に則子と健太郎の兄妹コンビが個人的に好き過ぎる。 性格似てるしな。割と。「毒じゃないの!?」(p134)とか。 則子とスタックしてるミャー(p1344コマ目等)状態の スタイルがもー激好き。あの抱え方が良い。 アイちゃんも面白いキャラになった。ケンタローへの「まんざらでもない」 態度は実にこの手のキャラの王道と言える。でも桃子のキャラを立たせるためには、 さらに強烈なケンタローLOVEキャラが必要かもな。作者のパターンとして。 p142からのチェイスなんかは実に「ピース」っぽくて良かった。ノリが良い。 敢えて同じレベルで戦おうというその意気込みが良い。 63話のノリも面白かった。良い感じ。若松君のキャラ造形はかなりデリケートで 特定のモデルの存在を感じさせるが・・・或いは作者の投影か? ちょっとない雰囲気を持つキャラ。もっと出てくれても良いかも。 そう言うわけで64話はサイコーだった。則子いっぱいでてたから。 そう言えば例の欠番の回も則子が主人公だったらしいのだけど。まだ未読。 則子がそのソフト開発才能を認められて喜ぶ、という話らしい。 ああますます読みたくなってきた。読みてー。 あと裏表紙の占いくんの重量は重すぎ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980515)
とり・みき「とり・みきの大雑貨事典」//1997/11/05(文庫版)初版は1993/02 いやー、もう、漸く読めた!という安堵感の方が大きくて。 買い逃してから5年・・・ 驚くほど「アイドル水着100人」(近代映画社)的である。 つまり前の項と後ろの項に、その事項名以外の連携が何も無いという。 有るのは、「とりの目」と言うフィルターだけなのだ。 恐ろしく無機質にあいうえお順に並べられた「モノ」達。 この本を前に、読者はそこで語られているモノそのもの(あーもう)を 知識として知るのではなく、(だとしたらあまりに無作為選出が過ぎる) そのフィルター、モノを並べて見せた作者を見つめることになる。 だから、巻末解説のまついなつきの文は、正しい。 一つ一つのコラムが完全に独立した世界観を持ち、圧倒的な行間をもって迫る。 これに更に5年以上の「歳月」が加味されており、今やなかなかの逸品なのである。 これ以後、とり・みきはそのあくなきビデオ編集の病に有る程度終止符を打ち、 SFマガジン30年分を売り払い、NTの連載を終了し、 今では伝奇物を描き始めたと伝え聞く。みなひとしなみに時は流れた。 嘗て、「さかあがり」で自分の「世の中を見る目」が10ステージ程昇った私。 今この本で、「さかあがり」に出逢った中学当時の事を 懐かしく思い出すのであった。 あの頃の私の目には、この「とりの眼」フィルターが 幾重にもかかっていたものである。 今も結構かかっているのだけど、他の眼も含めターレット式でフィルタ交換可能 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980515)
唐沢商会「ガラダマ天国」/ぴあ/1997/12/15 いやー、買ったのはもう何ヶ月も前なんですが。 感想書こうかな〜・・・とページをめくると思わず読み込んでしまって また内容が濃いもんだからどんどん時間が経ってしまって、結局書かないで 寝てしまうという。 ・・・・・・はっ、また読み込んでしまった。危ない危ない。 ’92〜’97の5年間、TVぴあ誌で連載されていたもの。 深夜のローソンでこれとオーケンのエッセイは欠かさず読んでいたものだ。 然し見事にTVと関係ないエッセイでイイ感じだ。関係ない、というか もう「いつものやつ」で通るか。 兎に角世の森羅万象を唐沢商会(主に俊一)のフィルターに通して 怪情報を抽出した、という感じの非常に密度の高い一冊。 本屋でショッキングピンクに金帯の怪しい装丁を見かけたら 是非手に取っていただきたい。 その抽出濃度だが、巻頭の商会対談では「浅すぎず深すぎず」と有る。 確かに「深く」はないが、唐沢俊一というフィルターが途轍もなくアレなので、 結果可成り濃い薫り(俊一臭とでも言うか)を発していると思う。 これ駄目な人結構居るんじゃないか。最近駄目なんですよね、私・・・・ 商会として活動するときは勢いアニの波動が強くなるが、この連載もそう。 全体的にちょっとくどい気がする。勿論TV雑誌の中の1頁ともなれば アイキャッチの要素も含めてそうならざるを得ない部分もあるのだろうけど。 正直アニのネタはなんつーかモノカキ系の「あざとさ」がきつくて 最近敬遠気味。一時アニの本は欠かさず買っていたが、どうも「違う」と。 そう言うわけで実は最近あんまり買ってません。 決定的に「違う」と思ったのは「蒸気王」ですかね。あれ嫌いなんですよ私。 あの辺で俊一氏と決別をはかったというか。 その分なをさんメイン(と思われる)のネタは「乾いた」感じがして好き。 だから何、的な語り口が味わい深い。これは矢っ張り絵から発想が 始まっているからなのか・・・・。 アニからのネタは元が字なので画面も勢い文字だらけになるし、どうやっても 絵描き本人の感性ではないから、ぎこちない。 まぁそのぎこちなさも含めて「商会」なのだけど。 俊一氏の文章はそれが単体で商品になり得るだけに、濃いネタの時などは なをきの存在がどんどん希薄になっていって、ホントに突っ込み役に徹してしまう。 それが「商会」のスタイルだよと言われれば全くその通りで、「脳天気」の頃は その「唐沢なをきの描く唐沢俊一」の格好良さにしびれたものだったが。 ・・・何か全然本の内容の感想になってませんね・・・ えーと、好きなネタは・・・・・・ ・・・はっ、また読み込んでしまった。えーと、そうですね・・・・ ・・・・・ああっ、駄目だ駄目だッ思わず読み込んでしまうッ この辺が唐沢俊一の恐ろしいところで、興味本位の読書には最高の 作家なのではないか。まして文章なら兎も角、漫画形式なのでついつい 読んでしまう・・・・・・・・げに唐沢商会作品は恐ろしいのである。 んー。でも結局、私は唐沢なをき派・・・「赤富士」とか。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980517)
伊藤伸平「エンジェル・アタック 1」/白泉社/1998/03/31 ・・・なんかここ数回ヤングアニマル読んでなかったら、もう終わっちゃったの? 目次に載ってない気が。 さて、それはそれとして伊藤伸平の待望の新刊なのであった。 これがもう。いやもう。何ですか。いやその。 内容は天使と刑事と米軍とXファイルとメカと女。 ほぼパターンだけど、巧い。然しアレはやばかったでしょう、あの 「二足歩行ロボット」。 あからさまにホンダロボじゃん。まんま。 それが目からレーザー口からルストハリケーン(嘘)で罪もない一般市民を ばすばす殺して行く様は、ちょっと狂気の世界だった。幼稚園児の目の前で クビをはねとばされる先生とか。アレはやばい。やばいよ・・・ ・・・と感じてしまうのは、矢っ張り僕等があの二足歩行ロボを見たとき 真っ先に思った、「軍事目的での開発が裏で行われているに違いない!」 という半ば確信に満ちた想像が有るからでもある。 ロボットと言えば変形合体で戦う「機動戦士」、という発想はなかなか ぬぐい去れるものではない。事実は兎も角。 で、その話を途中まで読んで、暫く見てなかったらヤングアニマルから タイトルが消えていた?という。続きが読みたいのだけど・・・ まーしかし、本当にヤバイ、というか怖いのは、この作品の主人公たる エンジェルことユリエルの造形でしょうな。アレはホントに怖い。 「可愛い女の子が平気な顔で戦うが、滅茶苦茶強い」ってのはパードル以来の 伝統だとしても、あのキャラ達にはまだ(被造物ではあれ)ココロが有った。 だが、ユリエルは・・・ 後書きによると、この作品のコンセプトは「ココロのこもらない天使が 偽りの愛を振りまきつつ結果に責任を持たずに奇跡を起こす」であり、 事実このユリエルの言動はもう心がこもってないことこの上ない。 こういう造形は作者お得意であろう。パードルの胸でかい方とか。 設定から来る妙に乾いた描写、人間の心理にSFを持ち込んだあたりは 古典的でありながらも、流石の使いこなし様である。 うーん。「パードル」もそうだったけど、謎めいた思わせぶりなキャラ造形 (果たしてユリエルは「何者」なのか!?とか。P93参照)が相変わらず巧い。 巧い、が、もしかしたら作者何も考えてないのでは・・・・という疑問が最近。 この手のネタふりはやっぱし「最終回」までには納得のいく形で明かされて 欲しいものですな等と今更エヴァみたいなこと言ってますが。 エヴァと言えばタイトルからしてエヴァだったりして まぁそれはお約束の範囲内ですけども、その辺巻末作者のお言葉で 「次回作は自分でモノを考えたい」とか仰ってましたが、それはどうか、と。 作者の資質からして、矢っ張り有る程度の制限の下で描いて初めて切れる、 という風があるので(本人はそればっかりじゃ駄目だ・・とか 思ってらっしゃるんでしょうが)、その辺は拘らずに兎に角これからも是非 描き続けて欲しいのであります。 取り敢えず「納得のいく最終回」を描かせて貰える(或いは描ける)環境を 手に入れて欲しい・・・膨大な知識量、細かい演出技術、確かな画力・・・ 一体この作者に「最終回」を描かせない「欠点」は何処にあるのだろう? この作者の最大の売りは、その描く「女性」の存在感だと思うですよ。 綺麗、可愛い、は青年誌漫画絵としてそこそこのレベルだと思うんですが、 その思考形態、行動パターンが、こう読者のココロを揺さぶる (怖い!ってのも含め)。大体ユリエルのココロこもってなさがもう。 あの徹底した描き方は凄い。あのうそ寒い空気! あんなのに同居されたら普通発狂するぞ。早田だからどうにかなってる様なもんで。 いやー、怖い。可愛いけど怖い。所で早田ってやっぱハヤタなんですかね。 で、矢っ張りその辺の「安心」場所が友郷アナだと思うがどうか。 p198とか。えーと、パードルだと・・あ、まんまか。祥子。 常識的キャラを対象に配置して、その状況にリアリティを付け加えていく・・・ 勿論青年誌故のサービスシーンも実にイヤらしくて良い。人妻とか。 もう少し読み込んでいけばまた新たな発見も有りそう(読み落としてる部分は かなりあると自覚する)なんですが、またそれは次巻の時に。 でも、出るのかなぁ、2巻。 所でp198の鳥幹っていう飲み屋は実在すると昔とり・みきの漫画に 描いてあった気がします。あー、飲み屋行きてー、と関係ない 心理が展開されてきたのでこの辺で。ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980517)

紐育の昼下がり。


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