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980322付けテキスト


田中芳樹「晴れた空から突然に・・・」/朝日ソノラマ/1994/06/30

初出は1989年「獅子王」
1990年9月にソノラマノベルズとして刊行・1994年文庫化。

今更という感じだが、読了。表紙の神村幸子が今一つで(神村氏の絵柄自体は
好きなのだが)なんとなーく敬遠していたのだ。
話の作りとしては、特に化け物妖怪の類は出てこな−いや、出てくるか、
ゾンビが出てくるけど、まぁそのへんは「SF的常識」の範疇内なので良しとする。
近年の田中芳樹の作品の多くに見られる幻想的−と言うか悪夢的な世界ではなく、
あくまでも現実、なのだ。・・・今となっては寧ろ違和感が有るが。

主人公は30代の考古学者、梧桐俊介、ヒロインはその姪日記(11歳)
この言わばオジサンと少女、のモチーフは、父親と娘、大学生と小学生という形で
何度も彼の作品に現れるお馴染みのもの。ロリコンと云われる所以であろう。
いやまぁ「夏の魔術」に比べればこの作品はそれほどでもないけど(何がだ)。

飛行船という巨大な(500m)舞台を用意しながら今一つその描写に力が無く、
その辺の面白さには欠けた。背景設定が生きていない、というこの手の
田中ものでは珍しい作品。ていうか他の伝奇物が背景に頼り過ぎなのか。
日記のキャラもその描写が今一つ。これが来夢(「夏の魔術」)になると
そのケの有る人達には覿面に効く「少女描写」が走り出すわけだが−
金にうるさく脂ぎった実業家、有本の描写は流石。汚い者はとことん汚く、
格好良い者はとことん格好良い(でも軽い)と言う田中節は此処にも生きている。
で、一番好みだったキャラはテロ請負業のリーダー、冠木で、これはもう
「ポリスノーツ」のレッド。あの冷徹さが。声は塩沢兼人で決定だ。

何だかまた文句ばっかり云っているようで恐縮だけど、
それでも結構読ませたのは事実。普通の考古学者(って一寸普通じゃないか)が
プロの戦争屋相手に勝っちゃうあたり、まんがだよなぁ、とは思うけど、
でもちゃんと(一応の)説得力がある。この作者は矢張り巧い。
読者を引きつけて放さない強力且つ軽妙な語り口はこの作者の素晴らしい資質と
言えよう。後はもすこしシリーズ物に対する愛が有ればな・・・・ホントに。
どれだけの人間がアルスラーンを待ち望んでいると思っているのか。
実際みんなもう忘れてるかと思ってたけど、
先日飲み屋でそういう話をしていたら、割とみんなまだ(五年以上も!)
リアルタイム感覚で待ち続けているのだった。

あー。取り敢えずまた夏の魔術シリーズでもいいし
(但し来夢の成長は最小限に止めることが条件だが)。
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(98/03/16)

シナリオ:日下秀憲 まんが:真斗「ポケットモンスターSPECIAL2」/小学館/1998/01/29 あー。 ブルー。ブルーに尽きる。 もう駄目です。ツボ押されまくり。 このまんがの最大の魅力は、何と言ってもこの「絵」にあるですよ。 手練れの「プロ」の線で描かれた、完成された可愛いキャラ達(ポケモン含む)。 安心して楽しめる出来。 実際この作品に出てくる少女たち(カスミ、ブルー、エリカ様etc..)の 可愛さと来たらもう。俺に死ねというのか!的。 いやもーカスミと云いブルーと云いあの脇の下が (脇の下研究所よりお送りしています)もう。あああああ。 あのくるくる変わる表情がぁぁぁぁ ああー。プリンにつかまってフワフワしてるブルーが死ぬ程に激ラブリー。 小指立ってるし(芸細)。勿論本来の主人公であるポケモンたちの絵も 割とオフィシャルタッチで文句なしでせう。 ピカチュウなんかはかなり「動物」でイカス。 おてんば人魚なカスミも良い(カスミは1巻がメインで2巻はおまけ程度だけど)。 エリカ様も良い。あのヘアバンドがもう。あの表情がぁぁ(あ、もう良いですか?) ・・・然しこういう完成度の高い、然も可愛い絵を描く人が居たんですねぇ、 という。不勉強にしてこの「真斗」氏の作品は、このシリーズで 初めて拝見したのですが、かなり年季の入った線だと感じます。 いや決して古臭いと云うのでは無くて。アシスタント歴が長いとか? 不明。他の作品も(有れば)読んでみたいものです。 今現在ポケモンまんがってのは結構数が有るみたいですが、 私はこの「SPECIAL」しか押さえてないんで、その辺 「ポケモンまんが界におけるこの作品の位置」とかは何とも言えないです。 でも他にも良いのが有るという話は聞きますね。 ニャースの後ろ足の皮の弛み具合が絶妙なのが○○先生、とかそういうの。うーん。 あ、ショタ的観点からは(まだそっち方面の修行が足りないので)語れませんが、 その道ではかなり再生産の母胎となっている様で。ていうか大声で グリーン×レッドでどっちが受け、とかそういう会話はやめれ>某南ブツの女子客。 ・・・そう言う訳でブルーはもてあそばれてみたいタイプランキング1位決定 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/03/18)
須藤真澄「AQUARIUM[アクアリウム]」/新声社/1994/06/30(初版) /1998/02/10(第二版) (注.内容には殆ど触れてません。叫んでるだけ。) ううううう。 感想書く為に思わず再読してたらまたハマっちゃったよ。切ねー。 いやもう近来稀に見る切なさだいね。 切ない。セツナイって何でしょね。こう胸が締め付けられる様な・・・ 「せつな・い(形)自分の置かれた苦しい立場、境遇を打開する道が全く無く、  やりきれない気持ちだ。」(新明解) ・・・ふむ。この切なさは何ちゅーか・・・いや 斯う言う事を人前で云うのは何とも憚られるものがあるのだけど− 「恋」っすよ。恋。 漫画のキャラに心臓わし掴みにされたンですよ(野田調)。ええ。 (・・・・勿論読んでる間だけですが。) あああああ。俺ァ鎮香にも杢子にも恋してしまっただよ。 でも相手は漫画の中のキャラクターだし、時間はどんどん経って行くし。 あああああやりきれねぇ。切ねー・・・・という流れ。 ・・・・・・やー、久々スよこの感触。 早川あおいランクの胸キュン(死語化後1000年)モード。 年齢と共に薄れ行く感情移入能力が、こう久々に復活したというか。 切なさの原因は、作中に確固として存在する「時間」の故でしょう。 「時間」に弱いのは前から気づいていたけど(ヨコハマとかカジシンとか) ホント弱いな拙者。ACT.1から10までの間に、20年程度の「時間」が 封じ込められている。−で、これがもう切ない。 杢子の(或いは鎮香の)成長を、作者はどんな気分で描いていたのか・・・ 生半可な気持ちで描けるようなもので無いのは確かだが。 表情とか仕草とか行動とか口調とか背格好とか・・・に、 明確にどのへんが、と言えない全体的な「成長」が読みとれて、 その意味するところにもう泣けてしまう。最近涙腺弱い私です。 ていうか、もう一番切なかったのはp135〜の「丁稚の星」一連の中の4コマ 「おっしょさんとでっちどん」な訳で。二人の間に流れる空気がもー。ああッ! こういう二人を横目で見ていろと云うのか!(杢子に恋している)俺に!という。 ・・・いや、まんがだってば。然し4コマであろうと、その微妙な「空気」は きちんと伝わって来る。凄い。巧い。 ・・で、ラスト「知床旅情」での大団円で、俺ぁもうボロボロ泣けた訳よ。 もう心底。 実に効果的な時間操作。・・・うう、また再読してて泣けてきた。泣き笑い半生記。 感動の基礎基本ってのが「泣き」であるというのは(少なくとも日本人においては) 古来同じな訳で、皆心の何処かでは「泣かんとて見」ている様な部分があって えーと、つまり・・・もう久々に「泣けた」ていうか感動した一本だった訳です。 見事にやられてしまった・・・ いや、この「泣き」の心地良さがたまらない訳ですが。日本人(のオヤジ)的に 初版の時大学前の小山助学館で立ち読みしてて、確か最後まで 読み切った記憶があるのだけど− こんなに感情が爆発する様な事は全然なかったです。当時。 なんかこうアングラな印象が強かったですよ。小劇場系の。 つまり「いまいち・・・」という感じだった筈。 それが証拠に単行本買ってないし。 四年有れば感性も変わると云うことかしらね・・・。 あー。 ・・・この作品見てると、こうして誰が読むのかも解らない 「感想」書くのが虚しくなってしまうですよ。 無駄口たたく前に「生きてみろ」てな感じ。 ・・・・詰まり、生きるっていうのは、斯う言うことな訳で。 うーーーーん。 ・・・ま、こういう漫画が有るから、漫画読みは止められないのであるなぁ。 と。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/03/20)
能田達規「おまかせ!ピース電器店 6」/秋田書店/1998/04/05 ・・・・モモ子萌え〜 今まで桃子ってなんつーか「都合のいい女」過ぎて今一つ萌えなかったのだけど 今巻は結構ツボを押さえた出番(47話)(49話)(54話)が有って、 ケンタローとの雰囲気も良い感じだった。ていうか お下げモードは是非常時解除されたい。 アイちゃんも良い(51話)。ラストの泣き顔(p106)がもう・・・ やっぱこう、スパイ系の女の子がピンチ!→間一髪でまん太、じゃねえ ケンタローが助けに!というパターンは読んでて気持良いスね。あー。 まん太まだ全巻揃ってないし・・・この機会に(何の機会だか)揃えようかなぁ。 古本屋で(売ってないって)。 然し毎回毎回(毎週毎週)良くこれだけのクォリティの一話完結物が描けるなぁと 感心してしまう。物語もそうだが、ピース電器店の新製品の数々は、どれも実に 「らしい」出来で、巧いなぁ・・・と思うのだ。ドラえもんみたいな無茶な発明 (今巻だとマネマネ君とか)も有るけど、基本的には今の「技術」の進化上− というかパワーアップと過激化の果て−にあるのが如何にも町の電気屋さんの 発明、という感じがするではないですか(そうか?)。 あと適当に。 52話:個人的に、香山先生(27)にはもっと活躍して欲しい。この人出てくると、     話が自然とヤバくなっていくのが良い。今回は大人しかったが・・・ 53話:佐々木ゴン太(夜野ゴン太)と安田セイタロ(安井誠太郎)が出てくる回、     何かスゲーアスキー臭いが大丈夫なのか。あと安井誠太郎氏は     バイト中ぎっくり腰になってしまったそうだが、ちゃんと来月のビームに     描き下ろし新作は載るのだろうか? ・・・あ、今巻のノリちゃんのツボはP1734コマ目。これぞ則子。良いなぁこの顔。 この手の表情だとP652コマ目の桃子もイイ感じだ。 オヤジ的にはp74「めっちゃブルー!!」と「経験値10UP!!」(p19)がイカス。 あー、とりとめもなく。ではまたッ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/03/20)
安永航一郎「超感覚ANALマン 壱」/メディアワークス/1997/12/15 漸く見つけたときには既に発売後2ヶ月以上が過ぎていた。 だって本屋で取り寄せ注文できないんだよう。「アナルマンください」て。 それでも、「巨乳」の時は本屋のカウンターに持っていくのさえが 辛かったものだが(わしにもそうゆう時代は有った)今度はまだマシだった。 ただしコシマキ(「バケモン、ゲットだぜ!」)が無かったら 少々やばかったかもですが。 で。 ・・・やっぱ後方不敗でしょうなぁこの漫画は。 「さらに下半身で回線問屋(プロバイダー)を開業し  おもわず股間がインターネット!!」 「薔薇族の花嫁!!」 誰か止める奴ぁ居なかったのか。 うーん。 原子力(Atomic Energy) 中性子(Newton) そして(And) 磁力線(Liner) を統合する夢の粒子、その名もANAL粒子。 これを開発した主人公、菊川肛司(27才科学者)は、 その粒子を体内に吸収することで全身に粘膜細胞をまとい、 超感覚・アナルマンとなるのだ! 悪の組織ビッグアヌスと戦い続ける彼(の直腸)に平穏の日々は無い・・・ ・・・・・・語る言葉を多くは持たない。 読む人はもう読んぢゃってるだろうし・・・ 面白い面白くない以前に「ヤバイ!」という感覚が有って・・・ まぁそれが楽しみで買ってるんですが。 ・・・そう言えば、某沖縄体液軍人会の県立のアレ、買ってないんですが 誰か読ませて下さいませ。グリコーゲンX2000とか正月仮面とか 噂だけ伝わってきて・・・こないだ某Kブックスで見たときは2k円だったので 泣く泣く諦めました・・・ううう・・・ ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/03/20)
こやま基夫「なりゆきダンジョン 2」/学研/1998/03/06 うーん。 割と惰性入ってるのは否定しない。 うむ・・・ 結構むづかしいぞ。 「このローレシア大陸には独立した異質な文明が数多く存在するが・・・  それとて数は限られている  それぞれの文明を導くのは大変だろうけど  この神様ゲームにも意味があり  結果が大切なんだということを  忘れてほしくないね」 「神様ゲーム」ってのはつまり某羊喰うゲームみたいなものか。 意味があり、結果が大切、と。 結果? どういう結果が求められているのか?そのへんが見えない。 ただ生き残れば良いというのでも無いらしいが・・・ 然し設定の作りは巧い。 初回はファンタジー、今度は西部劇〜という展開を無理矢理繋げる上で 「独立した異質な文明の生き残りゲーム」という舞台がそこそこはまっている。 まぁ設定に緻密さがないのはいつものことで。いや悪い意味じゃなく・・ 悪い意味にしか取れない?いや、好きなんですけどね。でもSF者で設定フェチ としてはどーしても安易に見えてしまって・・・・ うむむ。感想が出てこない。このシリーズはいつもそうだけど・・・ アクションシーンばっかりだからなぁ基本的に。アクションシーンの連続が延々 何年も続くという。同じ雑誌で連載されてた「マップス」もそうだったけど。 魔導ガン”スカラベ”を武器に街をわたらうガンマン・コルトバの位置づけの 微妙さが面白い。敵か!?味方か!?的。敵味方入り乱れての乱戦の中で、 次々と展開されていく物語・・・という感じ。 ・・・まぁそういう漫画なんでしょうね。 ドパッチ族の娘、リトル・グースの造形に愛を感じる(特にそばかす) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/03/22)
山口貴由「悟空道 1」/秋田書店/1998/03/10 「仏契」 と書いて「ぶっちぎり」と読む。 今にも狂い死にしそうな強烈さで迫る山口貴由の新シリーズ 待望の1巻である。 兎に角「覚悟」で培われた「変さ」が狂い咲き状態。 覚悟(初期)の頃はまだしもフキダシの中で喋られていた台詞が、 この悟空道では、もうフキダシを必要としていない。 かつてここぞと言うときにのみ現れた 「覚悟完了」とかの画面の四隅の極太ゴシックだが、 今や日常茶飯事に使われているのだった。 最早全てが「名ゼリフ級」という事になるか。 さて物語の舞台は・・・えーと。何だっけ。 詳しくはこれまでのあらすじを・・・って これ1巻なのに「これまでのあらすじ」が!!ていうか 「四十六億年前、星くずが集まって地球が生まれた・・・」 ってこれはもしかしてギャグですか? でも本気と書いてマジなんでしょう。これが山口貴由テイストなのだ。 兎も角、山口貴由版西遊記といえば。 ・・・・正直言って、もう無茶苦茶なんですが。 でも、良いの。 この無茶苦茶さが良いんだ。巻頭の作者自身の言葉にもあるように、 我々読者はそのストーリーよりも、その絵のインパクト及び名ゼリフに 痺れているわけで、例えば冒頭、悟浄のセリフ 「ズバリ言ってクソ暑いんです」からしてがもうイカス。 心理描写もその暴走ぶりに更に拍車がかかってて、例えば三蔵法師玄奘(女性)が 自戒の規に縛られているのを表すのに、ホントに縄で縛られてる描写、とか。 大体三蔵法師が女性ってのがもう夏目雅子ライクな訳で、こういう「お約束」を 最初から共通認識として使ってしまう辺りにこの作者の特性が見える。 因みに最初の的は「自由」「平等」「博愛」と言う名の化け物。 この辺、覚悟の初期っぽくて凄く良い。 「自由なんんてクソくらえだ!」 「くたばれ平等!」 あああ。 博愛のセリフ回しも最高にイカス。 「お別れに宝石(ダイヤモンド、とルビ)の涙をポロリ」 「何故の私」 大体「胸の中のわがまま金魚」って・・・・ああああああ また、禁固されている理由を聞かれて悟空が答える 「暴れたのさ」 これがもう。凄すぎ。 あー、見ていただくしかないけど、兎に角凄い。 描き文字じゃない、フォントの持つ勢いってのをここまで使いこなしているのは この人くらいだろう。昔村上龍とかがやってた記憶もあるが。 兎に角一読されたい。読んでこの「文字」の迫力を感じていただきたい。 矢張り山口貴由はタダモノではないのだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/03/22)

昔飼っていた猫。
死んでからもう何年にもなるが、今でも掌がその感触を思い出す。


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