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980201付けテキスト


竹宮恵子「遥かなり夢のかなた」/小学館/1982/8/20

うう。懐かしい。
いや、過去に読んでいた、と言うのではなくて、ただ雰囲気が懐かしい、と。
SFに出会った頃、”真面目な”SF読者だった自分は、当然の如く
ブラッドベリやアシモフ、ハインライン、ブラウン、E.E.スミス、
ハミルトン・・・(クラークは難しかったので途中で放棄)と、
SF初期作品から読み始めたのだったよ。
その頃を思い出す、と。
光瀬龍も読んだっけなぁ・・・東キャナル・・・古本屋で
5冊50円で買って、電車の中で息を飲んだ「百億の昼と・・」・・あああ・・・

いやその。個人的な思い出話は置いといて。

SF傑作集と副題された作品集だけに、もう臭いほどSF。
頼り無さげな現実観、科学技術のもたらす未来、超能力、宇宙旅行、
迫害される「新しい人類」・・・

詰め込まれたイメージの、何と「SF」であることか。
とどのつまり我々の感じるところの「SFマインド」ってのは
この頃に固まってしまったのであろうな。いや、「我々」じゃなかった。私。
最近言われるようになった「バック・トゥ・ザ・フューチャー」感覚は
過去のSFの再発見からも始めなくてはならないかも・・・

・・・・併し、まぁ言ってしまえば、今こんな作品描いたら
完全にSFおたくよばわりだよな、という。
「私を月まで」読んでるときも、その「おたく臭さ」に
一種辟易を感じた者だけれど、それがカッコ良かった・・・のかなぁ・・・
「「少年」性を描くための、道具としてのSF]と評価されているようだけれど
むしろSFおたく的でしょう。ええ。

個人的には、矢張り傑作と認めざるを得ない「夢みるマーズポート」と、
「真夏の夜の夢」。特に後者は、虚構を描いて、霞を生産し続けるという
「作家」の苦悩というか、思い上がりというか、もうそういった部分が見事に
練り込まれていて素晴らしい・・・と思うのは深読みし過ぎと言うものか。

ではまた。
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竹宮恵子「ブラボー・ラ・ネッシー」/小学館/1982/11/20 初期短編集。 臭い!臭いぞ!これはもう流石に 唐澤俊一文庫に突入しそうな臭さだ。 なにせ70年代初期である。 ラストが「Fin・・・」で終わるアレである。 「ロベルティーノ」の見開きを見せたいものだ・・・笑える。 だけど上手には上手い。絵が既に完成しきってる。 漫符の表現にこそ未熟なものを感じるが それ以外の表現は極めて高い。 ・・・・まぁ、併し「上手い」だけでは、ある。 時期的にまだ唐澤俊一文庫に並ぶ程のいなたさでは無いし。 寝かせて置けばあるいは・・・といったところ。 この辺、萩尾センセとは違うな・・・ あの人は初期からずっとああいう感じで。 竹宮センセは時代と共にどんどんノリが変化して行くみたい。 ってそんなに読んでる訳じゃ無いんですが・・・・・ あ、でももう萩尾作品は読めません。「残酷な神」はもう読めない。 何が嬉しくてホモ漫画(いやあの)・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
とり・みき「とり・みきのしりとり物語」/角川書店/1996/07/01 何となく買いそびれてて、今頃になって漸く 新刊のとり作品と一緒に購入。 全体的に懐かしい。特に「あかね雲の唄」あたりは可成りキた。 文章自身がノスタルジィモードに入っている上に 内容は6、7年も前と来れば・・・ 然しまぁそれだけの文章ではある。記録文章。 人の意見というのは時とともに変遷するものだから、 こういう風に纏めてしまうと、「何だか思考に一貫性がないなぁ」 と感じてしまうが・・・そう言うものだぜ。 ・・・とり・みきは矢張り漫画家なのだと思う。 多くの人達がこの人の文章を「漫画より面白い」と 持ち上げるのがどうしても納得行かなくて・・・一寸否定的意見。 「愛のさかあがり」的エッセイ漫画が面白いのと、 エッセイそのものが面白いのとは全然違うのだ。 あのコマとコマのタイミング、拍子の外し方、絵の能弁さ・・・ 「愛のさかあがり」を文章で再構築することは不可能だろう。 (まぁ文章を漫画で表現することもまた不可能なのだけど) とり漫画はもっともっと読まれるべきだと思うし、 その「本来の」ギャグ作風を載せる少年誌が出てくることを切に望む。 近刊に、伝奇もの「石神伝説」、シュールな「SF大将」 が有るが、これに「るんカン」的少年漫画ギャグ、そしてエッセイ漫画を加えた ものがとり作品の4本柱だとすると、エッセイが出続ける今、残るは少年誌での 秋田ブラザーズ系不条理ギャグ。是非。 ・勿論、当時NT誌で連載を読んでいなかった人達は一応読んで置くように。  ゆうきまさみの「はてしない」と並んでをたくちゃんの「基本的教養」と言える。  ・・・とか言ってみる。いや僕も毎月読んでた訳じゃないです。  でも、「極めた人」の物の見方は面白いですぜ。 ところで草ナギ氏の「妖シヒ博物誌」は!? @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
とり・みき「SF大将」/早川書房/1997/12/31 タイトルの「SF大将」は当然SF大賞の語呂。 入れ子になっている「大星雲ショー」は星雲賞な訳で・・・ていわずもがな。 装丁というか、本のメタな作りが面白い。 誰か既にやってそうで、まだこれは唐沢なをきもやってないんじゃないか・・・ ・・・多分この入れ子に関しては、アスキーからの唐沢なをき単行本を 意識してはいると思う。 で。 兎に角ラストの「ソングマスター」に尽きる。 今再び読んで、背筋がゾクゾクするのだ。 SFMで読んだ時の感動はものすごくて、当時手当たり次第に 人に読ませたものだ。反応は全く駄目だったが。 SFファンの内心吐露がここには有る。SF者にとって「SF」とは何か、が ここには完全に語り尽くされている。 SFM30年分を売り払った、というのはとり氏自身の実話であるらしい。 だからどう、という事はないのだが、何せSFM30年分である。 それを全て取り去ったときの身の軽さ、それこそがこのラストの感動を 生んだのでは、と想像するのは難しくない。 この漫画の、「若手SFファン」に与える影響は非常に大きいだろう。 居れば、だが・・・というのはSFM'97/10の大森望によるインタヴューに 詳しいのでそちらを読んで貰うこととして、然し実際、不条理日記や メチル・メタフィジークで「必読リスト」を作って読んだものだったよわたしゃ。 果たしてこの単行本がその役割を果たせるかどうか・・・ この「SF大将」は、あのあじま作品程にはストレートではない。 とり漫画だけあって、原典からは全く違った展開になっている。 が、それだけに「このネタ解る奴日本に10人以上居るのか!?」的笑いは、 あじま程では無い。・・と感じているのだけど、単にワタシのSF的修業が 足りないだけなのかも。モトネタが解らなくてもオカシイ、という笑いが メチル・メタフィジークだったりした訳で・・・原典を知らなくても 「これはパロディだ」ってのが解って何となく笑えるんだけど、 このとり作品はそういう「これはパロディですよ」と言った 作りはしていない(然し「くりん」なんかはモトネタが解らなくても笑える的 ネタ作りをしていて、そのへんどうなのか・・・) あ、えーと。 実は原典読んでない奴の方が多かったりして。 すいませんすいません。不勉強なもので。 これテキストにしてまた読むことにします・・・・一応 「20代の若いSFファン」として・・・ 何にせよ、滅び行くSF界(SFMが廃刊したら、その時点で滅びる)の中で 「これがSFだ」という帯を巻いて発売された単行本。SF者ならずとも 一読をお薦めします。特にラストね。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
とり・みき「石神伝説 1」/文藝春秋/1997/12/25 とり・みきの一つの柱、伝奇ものの新シリーズ。 連載が始まったのは95年だが、 (未確認ながら)結構直しは入っている様に思う。 特筆すべきは主人公桂木真理の造形である。 兎に角とりみきのリアル系女性絵が ここまで美しくなってくるとは。 というか以前のソレがイマイチ(濃いんだ)だっただけに この絵の進歩?は好ましい。 物語内容自体も非常に意欲作という感じである。 諸星大二郎の影響から伝奇漫画を描き始め 挫折した過去から幾星霜、 遂に伝奇の長編シリーズを描くまでに至った訳だ。 「人知れず地下にある巨大な石構造物」の迫力は流石。 が、まだ完結していない・・・というか その全体像が見えないときに何を言っても仕方ないので、 ここは兎に角次巻を待つ、という事で。 是非とも「ここに壮大な連鎖が音を立てて」を希望。 諸星大二郎はその辺が無茶苦茶イイからなぁ・・・・ ・CGの多用が見られるけれど、その違和感の無さも注目に値するですよ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
武内直子「コードネームはセーラーV 3」/講談社/1997/11/6 これでセーラー戦士シリーズも 全巻の終わりという事になるのかしら。 久々に読んだら矢っ張り濃いわ。濃すぎる作風。 濃いちゅーか・・・ケバい。 いやそれでこそ武内ナオコ先生なんですがッ。 何処からそんな元気が出てくるの〜 的「元気」のカタマリみたいな漫画で 読んでると正直疲れる・・・・ 単行本一冊読むのに3日かかってたり。 特に「ハチマキ石」の回はのっけからハナイキの勢いで 初恋暴走少女の面目約如。表情も殆ど百面相だし 実にイイ。 あーあー・・・と思いながら読んで、 気がつくとせらむんのビデオ(主にR) を繰り替えし見ているのは何故。 気がつくと深見梨加のCDを聞き込んでいたりするのは何故ッ。 やっぱねぇ。 好きだったんだ・・ 斯うしてみると、ちゃんとキャラ立ってるんだよな。ヴィーナス。 陶酔暴走タイプ。 うーん。然し永遠に続くかと思われていた せらむんの記憶も薄れていくか。 それも良し。 でも今まだ「S」のリピートにハマってるので しばらくは頭の中せらむんモードな @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
梶尾真治「ジェノサイダー 滅びの戦士たち」/朝日ソノラマ/1994/05/31 ソノラマの半額セール時(昨年6月頃)にまとめ買いしたソノラマ文庫の中の一冊。 漸く読む。連載は「グリフォン」1993新年〜1994春。 えーと。 読了後の結論から云うと、イマイチ。 兎に角オチがあんまりB級で・・・ 「ぼくたちはこの星の王様と女王様だよ」 的ラスト。カジシンの他の作品に、この手のハードでダークな作品が 無いわけではないが、例えば「ドグマ=マ=グロ」に見られた様な、 筆先の魔力の様なものがここには感じられなかった。 プロットこそSFだが・・・余りに型通り。 高速増殖炉はメルトダウンするわ巨大隕石は降ってくるわ、 操られた人々はガンガン死ぬわの人類皆滅モノなんだけど、 その全滅せねばならない理由ってのは「トップ」(人類は宇宙にとってガン細胞 であり、「抗体」によって滅ぼされねばならない)だし。 これに遺伝子治療(宇宙怪獣じゃなくて、強化した人類を使って人類殲滅) の概念を投入したのは新しいと云えば新しいが・・・・ それにタチムカウのがこれまた超能力(戦う度に成長する) を死の間際の兄より託された少年で、技は腕からのビームと「加速装置」。 同様に力を与えられたヒロイン(美少女・技はテレポートと心理関連)が パートナーになって、共に人類の敵と戦うが・・・という、 考えてみれば少年誌の王道かも知れない。が、ラストの呆気なさが 全てを「はぁ?」という感じに還元してしまうのであった。 ・・・まぁ、連載モノと言うこともあり、様々なパターンの敵、 段々強くなる主人公、芽生える恋、そして滅び行く人類の未来は! とかいうのでキメ、でOKなのかもなぁ・・とは思うけど・・・ いや、ソノラマらしいと言えばソノラマらしい作品ではあるか。 森岡氏の「メタルダム」と云い、これと云い、 作家の皆さんソノラマ「向け」に書き分けしてるのかも・・・ それでも背筋がゾクゾクするシーンは有る訳で。 強烈なのが、デoズニーキャラ及びアメリカンアニメの 「著名なキャラたち」が現実化して襲ってくるシーン(p245〜)。 ぬいぐるみとかじゃ無く、彼等「そのもの」が立体化して襲ってくるのだが、 この辺の冒涜感(ヤク中で腕に痣のある○ッキー、そいつに胸を揉みしだかれて あえいでいるミ○ー、とか・・)・邪悪な感覚は矢張り尋常ではない。 p245で、通路の向こうから「・・・ナルド・ダッ・・」とか 「・・・ッキー・マウス」とかの名前が「途切れ途切れに」聞こえてくる シーンには笑ったが、その次のページからの演出には、背筋を凍らされた。 でもここだけなんだよな・・・ うーん。 せめてヒロイン・アンジェリナの「美少女ぶり」をもう少し描写して欲しかった。 主人公の造形はかなり細かいところまで作り込まれているのに対し、 どうもアンジェリナの印象がパッとしない。 ラストの「王様と女王様」を祝福する為には、もう少し・・・ 後、彼等は既にアレになってるんだから、もう「人類」じゃないんでは。 ・・・良いけど・・・どうも釈然としない・・・・ ラストの風景で「キー・ラーゴ」を思い出した @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
ガガガのラスト2話、漸く見ました。 「命」 墓参りのシーンの上手さってば。 只の総集編で終わらないのが流石というか。 ゾンダーの記憶がトラウマとして残っている人も多いんだろうな・・・ 死人も結構出たろうし。そういうのを想像させる空間の深さは 矢張り一年という次官が有ってこそか。何だかんだ言いながら 結局一年見続けてきた重みは有る訳で・・・ 「いつか星の海で」 米たに氏入魂の一作。 オープニングは絶対一番で来ると思っていたが・・流石。 やっぱり一番が良いよね。 残る全ての燃料と機材をつぎ込んで・・・ アマテラスの接続部を爆砕で切り放す描写とか、 お約束なんだけど好き。 こういう状況最近無いしなぁ。 線路への着地シーンとか、もういちいちクサい。 「最強勇者ロボ軍団と合体した究極の勇者王、  戦え!負けるな!!勝利を掴め!!!  我らの希望、ガオガイガー!!!!」 俺が「生き抜くために」戦う、これだよな。 こうでなくては。燃える! ガンガン壊され、千切れながらも 一言残していく勇者達がもー あんたらハーフライフかい。 あー泣いた泣いた。 然し心底感動したのは護が旅立つて展開だ。 自分の使命に準じて宇宙へ。 コレには心底参った。降参だ。毎回聴いているエンディングが いきなり泣ける曲に!涙涙。これ以上無いラスト。 夜空の丘、吹きわたる風、見下ろす夜景、天に星。 矢っ張り予想を越える展開をされると弱い。 SOWだ。SFだッ。ああああああッ。 「・・・そして、我々一人一人が  誇り有る勇者であることを  忘れてはならない。」 最後の護の表情の変化がもう熱くて。 で、華ちゃんの救済は? この続きはOVAで! てのは、無いか・・・無い方が望ましいのは当然。 確かにラストは熱かった、それで良いじゃないか、とは思うけれど− ラストの「熱」を感じるためにこの一年が必要だったのか・・・・ 2時間くらいの総集編にしてもう一度見てみたくは有る・・・ とにかく穴だらけなんだよな・・・冷静に読んだら無茶苦茶なんだ。 でも、ああ、もういいや。熱かったから。良いの。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@


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