いろいろ970817付

大島弓子「草冠の姫」/朝日ソノラマ/s57/10/30 「草冠の姫」1978 「ハイネよんで」1976 「ヨハネがすき」1976 「いたい棘いたくない棘」1977 を収録。 うう・・・台詞が多い・・ 然し大島作品を読むと、自分がいたく思慮深くなった様な気になるな・・・・。 ああ・・・勘違い・・・ 後の作品にある、内面世界が現実を覆ってしまう様な濃厚さは無いものの、 物語としては実に「大島テイスト」。こんな話を何作も何作も書いてしまう この作者は一体何者なのか・・・ 時代が比較的新しい「草冠の姫」が、矢張り より複雑な構造をしている。と言うよりは、 他の3作品とこの「草冠」とは、明らかな違いがある様だ。 それは「それ以前」と「以後」の違いであり、 草冠には、その後の加速される、「理解し得ない少女の内面」が、 強く表に出てきている様に思う。 これが更に加速すると、世界そのものが少女の目から覗かれ、 語られることになる。一人称では無くても、作品世界はその最初から、 既に少女の内に取り込まれている・・という。 ・・・大島弓子の近作が読んでみたいものですが まあ、ぼんやり待っていればまた何処かで出逢うこともあるか・・ それを待つことにします。 「かおる大将」という言葉の響きだけで時代性が薫る様な気がする @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
こやま基夫「おざなりダンジョン 17」/学研/1997/1/6 長年続いた「おざなりダンジョン」もこの17巻で最終回を迎える。 これも然し実に学研らしい・・・というかNORAらしいシリーズだった・・ ・・とかいう感想を書こう書こうと思っている内に次のシリーズの 単行本が出てしまった。まぁいいや。 でも実際NORA漫画。一旦長期戦に入ったら何年もそれが続いてしまう。 (私にとっては)読み終わって暫くすると、ラストの辺りがどうだったか 思い出せなくなるタイプの漫画だ。ラストの戦いが余りに壮大すぎて訳解らん的。 マップスとか・・・ 今は亡きローレシア大陸へ時を越えて飛び、原初のグレートソウルによる 真龍の絶滅を食い止めようとするロゴスだが、その絶滅の真実は・・・ この漫画のどこが面白くてずっと読んでるんだろ? うーん。 ・・・結局私にとってこの漫画の魅力は、モカの「人格」に尽きるですよ。 この漫画の登場人物の皆がそうで有るように、モカの魅力に惹かれて この物語に参加しているという感じ。 直感で「これが正しい道だ」と思う方向へ力の限り進む、あの「真っ直ぐな」 性格。殆ど動物的とも言える(失礼)直感に対する素直さは、私の知る限り 他に例を見ない。不思議なキャラだ。・・・あっ、悟空か。 「よっしゃ!」というあの勢い。 およそ昨今の主人公らしからぬ、基本的に3コマ以上悩むことのない (巻末では珍しく悩んでるけど)健全なアタマ。 それなりの過去もあるけど、滅多に思い出さないし。 こう、迷いのない絶対の芯棒みたいなのが有って・・・ p45のエスプリのセリフ 「この少女はいつも 今正しいと思う事をしてきた  結果を恐れずになすべき事を」 に語り尽くされているが、正にその一点にモカの魅力はある。 母親的「絶対の正しさ」というか・・・ モカの言動は論理的じゃないかもしれないけど、その場において正しい判断だ、 ってのは本能的にわかる。これ異常ない位に「健全」なのだ。 ・・・・そう言えばもう一人いたな。こういう奴。 アニマ・アニムス。絶対人格。 「揺らがない信念」を持つキャラを書かせたら、この作者は巧い・・・ うう・・p88で涙目のブルマンを見ちゃったら、何も言えないんだ・・ あの3人を見ていると、何か斯う肝っ玉姉ちゃんかとその弟達、 みたいな感じ。良いよねぇ。 誰が見ても「正しい」と思える「正義の主人公」。 少年漫画はこうであって欲しい。なんて。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
こやま基夫「なりゆきダンジョン 1」/学研/1997/9/6 「そやな。虫だけに無視するに限るわ」 3点。 わはは。いいなぁこの力技な展開。ていうかいつも力技か。 おもろいキャラはおもろいし、可愛いキャラは可愛いし、 相変わらずお気楽極楽なりゆき任せな展開。 前半の、船の上での戦いのシーンは「コナン」を彷彿とさせてくれて・・ っていうかまんまそれで可笑しかった。わざとやってるんだろうなぁあの辺は。 こう砲台が出てくる時点で「ああアレね」と予想したとおりにアレをやってくれたり。 ネガトロンの神託がパンチテープなのとか、もう滅びかかった「お約束」を 敢えてやってるようで、それが面白い。 ロゴスの牙の剣もいいなぁ。こないだまでの彼奴の重苦しいノリが有っただけに、 あの姿には笑った。あんなんも「アリ」かい。 然し相手はコドモだからねぇ。ましてや「アベルの知り合い」。 モカは苦労するかも。・・・所でモカって人間だったのか。 獣人って程じゃないけど・・・なんか人と獣人が一緒に(P34)・・とか 言われてて、妙に気になる。ドワーフだっけ。え?違う? ・・でもやっぱ暗いんだよな・・・世界が・・何かこう こやま作品は往々にしてそうだけど。 墨の使い方か? アバタモ☆エクボみたく真からギャグ、的のが読みたいなぁ・・・ いや「ダンジョン」、面白いのは面白いんだ。 方言みたいな会話が「だんだん言ってる意味わかってきたな」(P150)ていう 下りなんかは、ちゃんとギャグになる手順を踏んでて くすぐってくれる。実に巧い。笑かしのセンスがあるよね。 ・・・キャラの魅力とギャグのタイミングの魅力は、どちらも本当に素晴らしい。 でも、なんかその魅力というか技を使う方向が違う様な・・・ 思いこみかなぁ。 取り敢えずトキメキアの声は こおろぎさとみではなくかないみかを希望すると言うことで @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
岡野史佳「君の海へ行こう」/白泉社/1997/8/10 いやまあもう皆さん買われてる事とは思うんですが。 正直期待してなかったですよ。 先の「ラブリー」がちょっと・・だっただけに 「あーまた出てるなぁ・・・しょうがない他に買うモノもないし」的感覚で。 いや、まいりましたねどうも。 p25(ノンブルのない漫画だな・・)でスゲェどきどきしてる俺。 漫画読んでどきどきしたのなんて久しく無かった・・・。 っていうかこりゃもう「基本」の書でしょう。直ぐにそうなると思う。 久々のヒット短編だ。 絵もかなりマシになってきているし・・・まだ斜顔が人間じゃない時があるけど。 ・・・すいません>好きな人。昔の絵柄が好きだったんだよう・・・ モノガタリそのものには奇異な展開は特に見られず。 物語の強烈さよりは寧ろ、絵そのもののインパクトで勝負という感じ。 こういうのを画力って言うんだよな・・・・ 思わず気がつくと10回は読み返しているという。 巻末の「緑のゆびさき」も丁寧な作りで岡野作品らしい一編。 長野まゆみ系SFの薫り高い・・・。短編は相変わらず巧い。 ・・「君の海へ」も「緑」も、物語的には、「外」から男(年上の王子様)が やってきて少女の心をさらっていってしまう、というありがち一辺倒なもの。 でも其れを魅力的に描ききる力というのは・・・ プロットが平凡でも、画力と「感性」が有れば。 漫画は、この世に残された「個人の感性」の最後の砦かも知れない。 とか考えてしまうです。一人(まぁアシスタントはいるにせよ)で 版下まで作成してしまう世界なんて、他には無いでしょう。「芸術」以外には。 いや、さいとうプロみたいなシステムで描かれても漫画は漫画。 でも、漫画の向こうに「作者」という個人を感じることも、 漫画を読む魅力の一つだと思うです。特に少女漫画にはそういう楽しみ方が 似合う様な気がするですよ。「1/4スペース」や「あとがき」の存在が其れを 証明していると思うですが、如何。いや如何って言われても。 「フルーツ果汁」はもう二度と読むまいと思っていたのに 書庫から引っぱり出してきてしまった @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
栗本薫「ヤーンの星の下に」グイン・サーガ57/ハヤカワ文庫JA/1997/8/15 グイン・サーガ57巻。 今巻の主たる舞台はクム。 中原の中の東方と言われるクムの、その特異な風俗、空気、そして食い物!!が 存分に味わえる、今巻はいわばクム肝硬変、ちゃう観光編、という感じである。 ・・・それにしてもバルバル。あの美味さたるや! 「クム名物というべき、白い米の粉で作ったねっとりしたパンに  辛く煮つけた肉と白と緑の野菜をはさみこんだ簡便な食物」、バルバル。 オリーおばさんの肉饅頭、あのガディの歯ごたえとは違う、「ねっちょりした」 口触りがもう!ああ! P160以降しばらく続く全国美味いもん巡りな描写は、 57巻を数えるグイン史上、希に見る美味さ(想像上)だった。 チチアの朝売りの魚の揚げた奴とかもー・・・腹が減って・・ こうして読み返していると、パブロフの犬の如く、涎が・・・ ・・・本編はかなりの大転換点なんだけど、それよりも イシュトが自由に好き放題やってて、其れを見てるだけで嬉しい。 やっぱりイシュトヴァーンてこういうキャラだったんだよな。 一時期の死んだような彼を見て心を痛めていた私としては、喜ばしい限り。 前巻でクムのタリオ大公の首を取ったイシュト(取ったのはカメだけど)は、 その余勢をかって一気にクムの都ルーアンを攻める。 このまま攻め落とすかと言う勢いだったイシュトだが、今や冴えきった頭脳と 其れを超える天性の「カン」が、彼に策略を授けるのだった・・。 タリク王子の生命を取引の武器に、さくさくと計略を立てていくイシュト。 全ての準備を整えた後、ヴァラキアのマルコと供に只二騎、パロへと向かう! このスピード感!!! 中盤、あの淫魔ユリウス(裏には当然グラチウスが!)につかまったりしながらも、 巻末ではもうマルガに着いているというこの速さ。 今の自由なイシュト=イー・チェンに相応しい、身軽な展開だった。 そういう演出なのか、実に爽快。だらだら続くパロ編とは違うぜ、というか・・・ 巻末の「リンダっ娘」という音で、一気に辺境編のあの空気が甦ってくる・・ イシュトとリンダは、果たして再会するのか!?彼等にとっても5年ぶり、 読者にとってはもう何年ぶりだか・・・ 兎も角、待たれよ、次巻! ・・外伝の続きはまだかなぁ・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@


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