こんなんかいてます


岡崎京子「TAKE IT EASY」/スコラ/1989/11/16

学生(もしくはダッフルコートの浪人生)がドラマの主人公であった頃。
ああ古き良き80年代。あの頃ボクは若かった。・・・等と言うとまたかいと
言われそうですな。
私の頭のなかではヲカザキ作品そのものが80年代とリンクしていまして、
「岡崎作品意外は信じない」ってアレ程じゃ無いにしても、当時は「真実」だと
信じて疑わなかった作家の一人です。

そういう意味でこの表題作
「TAKE IT EASY」は1986/11-1987/3という連載期間から言っても
「完璧」といえる一冊。

あの頃TVで見てた「セイシュン」ってのは「こう」だった。
その最も純粋に憧れられるカタチ。
後は桜沢エリカ氏のとか。

バンドブームとか無いモミアゲとかコンパとか喫茶店とか渋谷とかと平行して
既存の価値の再発見みたいなのも有り。実に「あの頃」の(美しい)記念碑的作品。
何より各キャラの行動の「かっこいいんだけどでも大した事無い。いいかげんだし
流されてる。でも情けないところ、ナイーブな所も含めて凄くカッコイイ!!」的な
「軽さ」は色々有って弱りきっていたワタシの心に染みるのだった。
物語の構成もそつ無く「ドラマ的」であり、流れ行く展開の「気持ち良さ」は、
他社の追随を許すものではない。

「宝島」とかむさぼり読んでた青少年達の残り香みたいなものが・・・


今更そんなトシ出もないクセに
読み終わると「よしッ俺も頑張ろう」とか誓ってしまう。

こういう漫画に(連載終了してから10年後に)出会える時もある。
本を買う金は惜しむべからず、だなあ。と。
あと読み始める気力もね。

ヲカザキ氏には一日も早い回復を祈ります。
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坂田靖子「パエトーン」/早川書房/1996/10/15

しかしこのまんが文庫ブームでこんなに坂田靖子が復刊されるとは
思っても見なかったす。何故か特に充実著しい坂田靖子漫画文庫ですが、その理由は
一体何なんでしょうかねぇ。人気は高いのかしら・・・?

巻末に1984年5月、新書館より単行本として刊行、とある。
まだ有ったか未確認単行本。探さねば。

当然未読作多し。「孔雀の庭」だけは「坂田靖子の本」の2巻で
既にお目にかかっていましたが・・・

内容は、その当時作者の得意のパターンであったのであろうと思われる
美術世界とジュネと英国。である。

「パエトーン」「プロメテウス」の2作品は連作で、ここに描かれるのは
「才能とは一体どういうものなのか」と言う事である。
インスピレーションが形として現れたら?

人を愛し、裏切りを感じ、自分を失い・・・その繊細な展開は今ではあまり
見る事の無い様な、見事な深みを作り出す。人間の心は単純ではないのだ、
と言う事が思い出される。日常生活に於いては、他人の情動など、その表面しか
見ないものだが、こういうのを読むとまた・・・

80ページに及ぶ作品「孔雀の庭」は、しばらくぶりに読むがやはり傑作で、
英国ミステリものを描かせるとこの人はすこぶる巧いのである。
ストーリー(モノガタリ)自体は一本だが、その解釈というか、そこから読みとれる
「教訓」なり「作者の意図」とも言うべきものが、多数有って絞れない。
いろんな読み方が出来る。作品は作品として有るが・・・


・・・まあ、そこそこオススメかしら。

ではまた。
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彩花みん「赤ずきんチャチャ 8巻」/集英社/1997/1/19

うわ。買ってからもう数カ月も感想書かないまま来てしまった。
今月より始まりの某新番組で我らが赤土`さんがまたもご出演との事。
狂喜乱舞しつつついでに書くのだ。

8巻は何と言っても妹&弟Sの登場とそのインパクトに尽きましたね。
特にやん太。我々やっこちゃん同盟員は心のなかで叫んだね。「うらやましい・・・」
一時は「あんなお姉さんが居たらいいなあ」とかもう只の妄想集団暴徒と化した
時期もありました。それでも今巻は(も)登場がちょっとで哀しいのだった。
可愛いところはほぼナミにもってかれてるしさ。いいけど。

畳み掛けるギャグは健在で、「アクセスのラブラブ大作戦」は何かもう
その勢いだけでまだ笑える。セラヴィー先生がキれる話もかなりキてて好き。

慣れもあって最初の3巻辺りに比べるとダレを感じないではないですが、ここに
至って一気にキャラを増やす等、かなり思い切った展開を苦もなく(無いように
見える・・)やれてしまう辺り、まだまだ息は続きそうな予感はあるのです。

でも、読者のワタシは既に惰性入ってますけどね・・・いつものこといつもの・・
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栗本薫「紅玉宮の惨劇」グイン・サーガ54/ハヤカワ文庫JA/1996/12/15

グイン・サーガ54巻。

うわあ。語れねえ。とてもじゃ無いが何を言ってもネタばれにいい・・
とか言ってたらはや数カ月。
なんだもう55巻でてるの?え?とっくに?いや最近忙しくて。

じゃあいいか。

ついに、ついにと言うべきクムの三公子とユラニアの三公女の婚礼の儀式が
かのアルセイス紅玉宮で行われた。ユラニアの人民のみならず、読者の好奇の
眼差しを一手に引き受ける大イヴェントである。

モンゴールの・・というかアリストートス卿の肝入りで展開されたこの儀式は
当然血を持って華々しく伝説化されるのであった。
モンゴールの騎士団が固める中、ネリー&タルーのカップルを残し、公子公女は惨殺
(内一名不明)、ユラニアの主だった重臣も肉塊と化した。大公も、宰相も・・・・

果たしてユラニアは名実共にネリイの(そして夫たるタルーの)ものと
成るのだが・・


どうも最近ネリー&タルーのカップルが好きで・・・・。
いやー、いいわ。筋肉馬鹿っぽくて。・・危害がこっちに来ない内はね。
(同類:天使の夏っちゃんこと小早川嬢)
いや、天野氏描くネリー見てると、今にも「をーほっほほほほほほ」とか
聞こえてきそうで。

前半、カメさんの組んだイシュト救出システムが、果たして
これからどう動いてくるか・・・楽しみは尽きません。
まあまだ買ってないけど55巻はまたクム対ユラニアで血深泥なんだろうなあ・・
ゴーラの大地も血によって少しは若返るか。

・・・で、「黄昏の国の・・・」は、まだなわけね。

明日にでも55巻買いに行かねば
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森岡浩之「星界の戦旗 I−絆のかたち−」/早川書房/1996/12/15

兎に角今や日本SF唯一の(と言える。「らせん」や「パラサイト」は自らを
SFとは言わないからな・・・)ベストセラーである所の「星界の紋章」の
「本伝」の開幕である。とは言え「外伝」の方を未読だと結構読み解けない部分も
あるので(特に専門用語やアーヴの背景など・・・)、先に読んでることが前提。
いや、未読の方はまず「紋章」からであろ。是非ともあの軽妙な会話と熱い冒険を
楽しんで頂きたい。設定だけでも燃える!
近来稀にみる、100人が100人とも「まあまあ」以上の点を付けるSFでした。

で、この「本伝」は、まだ始まったばかり。
とはいえ各キャラクターの魅力、台詞回しの(相変わらずの)見事さ気持ち良さ、
世界観の完成度は流石のものである。
アーヴの「らしさ」が、例えばネフェー/ネレースの会話やなんかに良く表れる。
何と言っても「らしい」と言えばスポールさんで、もうあの性格たるや。ああ。
SFM2月号の外伝読んでさらにファンになりつつ有る・・・

我らがラフィール&ジントは出番が(主人公格だった前作に比べれば)少ないものの、
今回も実にオイシイ描かれ方をしている。ラフィールがジントを助けるシーンなんてな
もう・・・
・・・実年齢的に見ればジントのカマトトぶりが多少鼻に付かないでもないが、まあ
良し。ラフィールと「ラブコメ★」をやるには、これくらいじゃないとねえ。
しかしラフィールのバツのわるいシーンにばっかり声をかけるジントは結構
イヤラシイ奴だと思うがどうか。

「飲物でもどう?」

言っていいのかどうか・・・でも言ってしまうと、この本の面白さは有る意味
「銀英伝」の同盟側の台詞劇をずっと読んでられる様なものだ、と思うんだけど・・・

違うか・・・

まだ「敵国」である人類統合体の姿が見えにくいのは少々不満だが(それはそれで
面白いシーンが見られそうで)取りあえず一巻は「こんなもん」でしょ。と。
まだ一巻ということで100%オススメとは言いきれ無いけど、ホントは、
100%オススメ。読むがよい。他に読むべきものが無ければ。
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諸星大二郎「天崩れ落つる日」/集英社/1997/2/9

あの「ゼピッタ」シリーズと「怒々山博士」シリーズに加えて諸星いや諸☆氏の
ナンセンス漫画を再編したもの。・・・なんか全部どっかで・・・

それはそれとしてやはり「ど次元世界物語」は傑作だ。
中学生の頃に読んで何とも言えない魅力を感じた。
何と言っても「カーラスムギガホーサクダヨー」である。インゲンマメモ・・・
私の精神形成に大きな影響を与えたもの・・・・。

まだナンセンス漫画集成とは成りきっていないが、かなりのものは
これで読む事が出来よう。OUT掲載の軽いタッチの「白い」諸星世界も
素晴らしく良い。他にも何作か・・・コミコミのは未読だったので収穫。

しかしどの作品も一言では説明できない魅力というか空間を持っていて、
特にゼピッタのシリーズはその背景世界の設定の妙が突出している。
ちょっと普通には描けない設定である。諸星大二郎の力技有ってこそ。
どれも80年代初期までの作品だが、是非ともまた描いて欲しいシリーズ。
読んでいて、カジシンの「エマノン」シリーズを思い出すのだが、そういえば
エマノンは書き続けられているのかもそれないな・・・



「ど次元世界物語」未読の方は是非どうぞ。


・・しかし集英社が出している「JUMP SUPER ACE」シリーズの
諸星大二郎の作品集は大概買ってしまう・・何か揃いとして・・・
ハメられてるような・・・乱丁本多いし・・・
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諸星大二郎「ぼくとフリオと校庭で」/双葉社/1991/8/19

表題作の空気は、生活が全てに於いて幻想世界に半分浸かっていた少年時代を
見事に再現してみせる。だれしも「そんなことあるもんか」と思いつつも、
覗き見てしまった不思議を一つや二つは抱えているものだ。
私にもフリオの様な友達が居て、彼が見せてくれた闇方面の世界は
今思えばどうという事はないのかも知れないが、当時は途轍もなく広いものだった。


他のどの作品も一作で語るに足る迫力を持つが、何と言っても巻末の「蒼い群れ」は
その絵と内容のの持つ迫力という点で突出している。浮浪者たちの専門用語の使い方、
青年の「本当の」不安、「大きな力でもぎ取られる」事で不安が解消されるとは
どういう事か・・・「痛みも苦しみもない」と言ったのは「生物都市」だった・・・

「城」は諸星大二郎一流の巨大コンプレックス(構造体)の中で苦しむ一人間という
テーマもの。たった一つの書類の決裁を貰うのに一生を費やす世界・・・
「恐ろしく煩サで複雑」な・・・
かつて駅の地下から地上に出ようとして果たせなかった男が居たのを思い出す。
思わず何度も読んでしまうのは、それが原初的な恐怖感覚だからか。

「流砂」も傑作。社会全体が「新しい展開」を望まない中で、それを決行する若者。
数々の妨害の前に仲間は去って行き・・・ラストの「おいていかないでくれ!」と
いう叫びは、まだどう解釈していいのか迷う。「若者」はその澱が無いだけに
「ユニーク」であり、それが「小さい街」に閉じ込もる事を拒否する。
「都市と星」だ。基本的な展開であり、それに対する頑迷な社会・・・等と、
方法は安易な現代社会風刺であっても、その持つ迫力は本物である。
ドラマの展開もきちんとしており、学ぶべき部分は多い。

今更ながら読んでみましたが、出た当時にたち読みした時は「全然面白くない」と
感じた事を思い出します。自分の嗜好も随分と変わったもの。
今読むとどの作品も傑作で・・・
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