971111付けテキスト
那須雪絵「イリュージョン・フード・マスター」/白泉社/1997/5/25

あっ
確かこれ新刊平積みの時に買ったから、ああ、買ってからもう半年が・・・
なんか長いこと未読ラックに置いてあった様な記憶も・・・

我々の住む現代(と思われる。「ホンマカイナソーカイナ」とか寝言で云ってる)
から、中世風の剣と魔法の世界に召喚され、元の世界の記憶も失ってしまった
主人公、ユー・ユーハイム(仮名)は、それでも那須作品特有の少々
クサったド根性で、たくましく生き抜いて行くのだった・・・
菓子職人として。菓子職人なんだけどドラゴンを召喚したりするぞ。

相変わらずの軽いノリが巧い。いつまでもこの作風で居てほしいものだ。
この人も一時は「ゲームで駄目になった少女漫画家」の一人
だった様な気がするが、こうして読む限り全然平気。

何よりユー(多分20才は超えてる)のキャラ造形が秀逸。
あの刹那主義射的性格がたまらん。
中世(もどき)の風俗も好んで描いているみたいで、良い感じなのだ。
イギリスはどうだったろう・・・


このシリーズの他に「世界が終わるまでは」(やりたい放題。
ギャグが走ってて良し。オチは古典的)と、
「踏まれた天使のように」を収録。

この「踏まれた−」が傑作。
時間テーマのSFには冬の夜の切なさが良く似合う。
こういう作品も巧いよな・・・設定の巧さが光る。4年前から
タイムスリップしてきた、当時の同級生石田森。
スリップアウトする数年前から彼の姿は亡霊の様に見えていて、
主人公はそれをまさに亡霊だと信じていた。
自分の所為で成仏できないのでは−と。所が−

4年間という時間の流れの、短い様で長いブランク、その残酷さ。
明確に言葉に出来ないが・・・切ない作品だった。誰も悪くない。
ただ、失われたものへの切なさだけが残る・・・

この世界の夜のどこかで、こんな事が起きているんじゃないか、と
思わせる様な自然さ、現実味。キャラクターの情動に嘘がないからこそ。
素直に読んで、何となく残る作品。

おすすめです。
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(97/11/11)

貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン 4」/角川書店/1997/10/22 考えてみると不思議な漫画。展開は似ている様でいて、作品としては (今のところ)全くの別物と云って良い。「あの」ラストに至るまでに あとどれくらいの歳月が必要なのか見当もつかないが、全く違った 「ラスト」が用意されているのではないか・・・と思えてしまう。 その意味では、全く「エヴァ」は一人庵野秀明のものではなく、 「原作:GAINAX」なのだなぁと。 少なくともこの巻の後半では、シンジとアスカの間に「察しと思いやり」が 流れ、「会話」が成立している様に見える。この時点で既にアニメ版 (と敢えて云おう)とのズレは決定的だ。 果たしてこの作品は、このマンガは、我々があのTV版25.26話を 見終わったときに「本当はこうあるべきだが、諸般の事情でこうせざるを 得なかったに違いない」と信じようとした(そして結局信じ切れなかった) 「本当の展開」を見せてくれるのだろうか? p155のシンジは、確かに「我々が望んだ」主人公の少年像である。 回を追う毎に成長し、男に、理想像としての(タフで優しい)大人になっていく 成長する(ありがちな)少年の姿、だ。 努力することで乗り越えていく−スポコンというか 友情努力勝利の理念が見える。 −結局、虚構である以上「真実のエヴァンゲリオン」は無いわけで。 これもあり得たかもしれない世界の一つ。最近確率論大流行だからなぁ。 我々の存在もまた確率に過ぎない訳で・・・正体はやっぱり黄色い水かも。 然し同じタイトルを持つものとして、かたや全く成長しない主人公 (これは意図的にそうされたもの)、かたや弱いながらも「男の子」として 「少年」として成長していく(様に見える)少年シンジ、では もう全く別物だ。・・作者が意図してそう描いているのならば。 ・・正直「あんまし考えないで描いているのでは?」という感じも しないではない。それはそれでいいのだ。 「絵」的には、−というか線は相変わらず独特の、垢抜けないというか垢抜け 過ぎているというか、なもの。アニメとの差別化をという意味では大切かも。 でもこの作者の巧さってのは、コママンガじゃない様な。 コマページと各話の扉ページとではもう全然印象が違う。この人の「巧さ」は 各話の扉に集約されている様に思う。まぁそれも作家性か・・・ STAGE24の扉とか、類型的だけど好きだ・・23のミサトさんも無茶苦茶イイ。 この作者は矢っ張り、根がイラストの人なんだと思う・・・ 兎も角次巻を待つしかない・・・この作品世界に関して、 僕はあまりにも(下らない事ばかり)語りすぎた。 今またマンガ版を前にすると、もう何の言葉も出てこないのだった・・・ ふむ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/11/11)
永野のりこ「GOD SAVE THE すげこまくん! 10」/講談社/1997/8/6 あーもー8月だって。ずいぶん寝かしてしまったねぇ。 内容はいつものアレ。それ以上に何を語れと言うのか。 個人的にはp24あたりからの暴走ぶりが、昔のナガノしててすげぇ好きなのだった。 こういう無茶苦茶なノリが好きだったんだよう・・・デイジーの海底ネタん時とか。 やっぱ山川Xの存在は大きいよな・・・「すげこま」世界には あの自虐パンクスが居ないから・・・欲しい・・ あとは矢っ張り藤江田でしょうか。 「フジエダの怒りエネルギーが120テラバイトに達したとき  ゲヴァルト・ブレスに閃光が走り、女学生ジュンコは  「ゲヴァルト・ジュンコ」に変身するのであった!!」 ・・・藤江田には幸せになって欲しい・・・マジで・・・ 所で私、遂にTVのデイジーを一回も見ないままでした。 いつか見ることが有るんだろうか・・・・ まぁ、いいんですけどねぇ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/11/11)

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