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穂月想多



穂月想多「弱虫 3」/秋田書店/2001/06/10

キャラ立ち良すぎ。「あーこいつ、こういうコトしそう!」とか
「こういうコト言いそう!」とかそういう。各々の仕草や台詞回しが実にイイ。
強虫の「うむ うまさパワーアップだった」(p60)とかサイコー。
このパン屋の話はオチも巧くまとまっていて好きだ。強虫の野望がまた一つ。

弱虫の、雑学好奇心に絶対逆らえない所とか、ブルーに入り出すと止まらない
所とか、そのくせ好奇心で簡単に復活するとことか、あー、兎に角好きだ。
何か笑ってしまう。弱虫の「身も心も弱い」って特徴がちゃんと生かされた
プロットなんだよな。巧い。あーそれにしてもテレパシーのテストで思い
浮かべるのが「おとうふ」ってのがまた「らしい」んだよなーもーあーもー。
然し弱虫誘拐の回で事あるごとに弱っていく弱虫を見ていると、生半可なこと
ではあの生き物は飼えないなーとつくづく思うのだった。花丸スゲー。


ってスイマセン読んでない人にはサッパリですね。良いんです。説明する気
無いですから。ていうか説明できない。以下まとめる気もさらさらない
酷い文章になってます。ご容赦の程を。


然しこの作者の頭の中はどうなってんだろーなー。一人一人のキャラが
ここまでちゃんと「らしさ」を纏っている、ってのが何だか不思議。キャラの
性格付けとかどうやってるんだろう。最初にいろいろ決めたりしてるんだろうか
・・・或いはモデルが居るのか。

結局何が良いって、この作品の「空気」なん。p85、店鳥さんがスケボーで
去っていくコマとか、そう云う所に絶妙な(というか妙な)空気感があって。
或いは各話のシメのコマの味わい深さよ。あの妙な空気感、あの妙な感触。
あー何と言ったらいいんだろう・・・兎に角イイんだッ(ボキャブラリー貧困)。
駄目だ。「作風」が好き過て、言葉で何処がどうとか説明が出来ないヨ。
何せ神父さんの部屋の置物(王将とかだるまとか)だけでもう既にツボを
押されてしまって立ち上がれない程なのに。

この神父さんの部屋でのシーン、全体的に引いた視点で構成されてて、
弱虫とかがちっさく描かれているんだけど、それが実に愛しい。こういう
ちまちま感が何かもーたまらん。p139、3コマ目の弱虫の後ろ姿!こんな単純な
線なのになー。あとこの回だとp147の「ぶっ」の「間」がこれまた「らしい」
描写で実にイイ。あーイイ所を挙げ出すとキリがない・・・

なんか全体的に自覚的なんだと思う。自分が何を描いているのか、を自分の
中で客観化出来ているというか。ネームを切ることに自覚的なんだろう。
「降りてきた」言霊にのせて自動筆記みたいにネームを切りがちな誰かは
この感覚を見習うと良いと思った。

ファーブリーさんの(一種お約束であるが故に)意外な正体とか、その従姉妹の
ジャスミンちゃんとかイロイロ書きたいんだけど、ああ、そうだ今巻は何と
いっても花丸との今後が気になる(結構アグレッシブな所があるよ)李花ちゃん
と魔虫の登場が大きかったよな。あの冒頭2話は、後から読み返してみると良く
練られていて面白い。素直な伏線の張り方がスゲー気持ちイイんだ。あーやって
なんかじわじわと花丸ファミリー(というか花丸周辺の妙な人脈)が増えていく
感じが好きさ・・・。

しかしリカちゃん、曲がり角で主人公にぶつかるという王道パターンで登場
して、花を背負ってまで描かれたアップに、鼻血だもんな。ここで王道パターン
は破調するんだけど、でも鼻血なのに全然ギャグっぽくはならないで、逆に
独特の風合いになる。ぶつかり出会いですら「弱虫」世界ではこんなノリに
なるのだ。素晴らしい。これがこの作者の「作風」だ・・・


人面君、完結してるんだったら出してくれー。読みた過ぎる。


・・・案の定まとまらなかったな・・・すんまそん。


久々にサーチエンジンで検索したらモノスゴイ数ヒットする様になってて嬉しい
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(01/05/15)

穂月想多「弱虫 2」/秋田書店/1999/11/15 「大変だけどその分楽しいからいいや・・・」(p138) この「良さ」をどう伝えたものだろう。善良、というか。いや、もう 伝えるまでもなく知られてるか。イイでしょ。イイですよね・・・ いや、うちの近所の本屋に穂月想多作品が平積みになっていたりして、何だか 流行ってるらしいん。成る程世の中捨てたもんじゃない。やっぱイイモノは 自然と流行るんだ。 さて2巻。 弱虫の性格がごんごん走り出していてオカシイ。気弱が過ぎてムカツク一歩手前 まで行くんだけど、根が善良なんで気にならなかったり。身体の弱まりっぷりは 相変わらずで、おむかえ天使ムカエルを追い返す花丸の姿は何度見ても味わい深い。 「新手か?」とか。前は仏系だったんだよな。 今巻冒頭、花丸は連休を利用して里帰りをするのだけど、花丸のお母さん 「山田フローラ」さんの造形にクラクラしてしまった。落ち着いてて、でも朗らかで 何ともいい人。花丸の性格は屹度この人譲りだろう。でも目つきは父ゆずり。 ジャッキーみたいな頭が印象深い。しかし一体何やってる人なんだろう>花丸父。 ・・・この人はちょっと落ち着き無いな。 花樹叔父さん(現在花丸がお世話になっている大家さんでもある)の性格も 大人、って感じで実にイイ(父さんと大違い、とか云われてる)。良い一族だ。 p62で、花丸が叔父さんのニコニコにつられていく様に、ワタシもこの空気に つられてしまう。ああ、これでこそ「叔父さん」なんだ。ワタシには残念ながら こういう「叔父さん」は居なかったけど、こういう人間になりたいなぁと 思ったりもする。猫やお茶がさり気なくこの叔父さんの為人を示していて 印象深いシーンなのだ。 えみるちゃんも(鬼犬に苦労させられてる割には)いい子。ひねてないし。 このままひねくれずに育って欲しいモノだ。 ・・・いい人、っていうか、落ち着いた、人畜無害なおおらか人間の集団。 無駄にエネルギーを発散してない。省エネタイプとでも云うか。まあそう言う 環境で生きてきたからこそ、リオノさんの「ビシビシ」に弱かったりも するんだろうけど>花丸。 で、そのビシビシ彫刻家リオノ・カーニバルは、作者お得意の変キャラ大登場 と言う感じでこれはこれでまたイイのだ。性格付けのちょっとしたズレ具合 (TV見てアイデア得てるシーンとか、謎のスペシャル衝撃波とか、彫刻 してる時の「気配」とか)が何ともこの作者らしい。キャラの作りが独特なんだ。 うーん。何か巧く言えないんだけど、この作者と作品世界の距離感が、妙に好き。 描き文字の変さとかえみるちゃん家の犬への自己ツッコミとか、ああいうスタンス こそ、この作品(作家)の魅力だと思う。作者であると同時に読者の視点でも 描き込みを行う事で、読者の「作品の読み方」さえも「いい人」調に持っていく というか・・・・うーん、違うかな。兎も角そんな感じ。結局「作風」に 惚れちゃったのよ。 ともあれ、この作品の持つ時間感覚、この味わい深さ。実にイイ。 これからも末永く創り続けて欲しい作家なのだ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/01/13)
穂月想多「人面君 1」/秋田書店/1995/11/15 「虫よけ」(p10)の字面にこの作者の本体を見た気がする。 基本的に薄味京風味の作風なんだけど、流石にデビュー当初は(それなりに) 濃かったのね。その濃さがまた良い。 で、お話は− 友達イナイ歴小学校からずっと、の内気少女日向鈴子(高校生)は、最近隣の席の 深町君が気になっている。毎日挨拶されるんだけど、どうしても挨拶が返せないのだ。 悩む鈴子に、兄鳴人(怪しい魔術が趣味)は「内気な人のためのおまじない」を かけてくれる。これが召還魔法で、斯くして鈴子の左手には陽気な人面疽、 人面君が・・・!で、まあいろいろあって(・・・)何とか深町君とお友達になれた 鈴子なのであった。 更に人面君の奥さんとか南国のシャーマンとかいろいろ出てきて盛り沢山。 ああ、この不思議空間よ永遠なれ。 ・・・何というか、この作者の感性の味わい深さというのは、ホントに 「えもいわれぬ」ものがあって。こういう世界観に憧れる。妙に明るくて。 やっぱ、この背景の薄さかな。最低限までしか描かれてない背景が、逆に 読者を引き込んでいく感じ。 キャラも各々味わい深くて良い。鈴子のあの点目がデフォルトみたいな性格とか かなり好きだ。ぴよぴよ言う泣き声(・・・)とかも。反応を見て楽しんでしまう 深町君の気持ち解りすぎる。このスリルがたまらん・・・ 男の子と一緒に帰ったりしてても、あくまでも「友達」意識だったり、彼への 誕生日プレゼントに託した願いが「平和で末長く」だったり、ってのは なんだかホントにほのぼのしてて救われるのだよ。うーん。やっぱ平和が一番。 (いや深町君はどういう積もりか知らないが) 個人的に、この作品の眼目は日向兄の謎のコレクションなのではとも思う。 「弱虫」に通じる、「変な造形」のオンパレードで、リオさんならずとも 造形心をくすぐられる人は多いのでは。心理描写として降ってくる謎のメテオ だるま等々の造形が酷く心を揺さぶる。 これも続刊ありそうなんで、楽しみに待つことにしよう。「平和で末長く」な 関係から踏み出す展開なんかも・・・無いか。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/01/13)
穂月想多「弱虫」/秋田書店/1998/09/20 巻数書いてないところを見ると、多分これでオシマイなんじゃないかと思うんだけど。 本屋で見かけて、何か一目惚れ。「弱虫」(虫、っつーかおばけみたい。)の あのフォルムに惚れた。 熱狂的に「好き!」って感じの作品世界じゃないけど、好き。買ってからもう 一年近くずーーーーーっと手元に置いてあって、何気なく開いては「ふふ・・」 とか笑ってる。なんかそう言う漫画。 あんましメジャーな漫画じゃないのか、Webで検索してもヒットしない・・ んで、粗筋とか。 独り暮らしを初めて一ヶ月の山田花丸君(18)は、さみしいので ペットを飼うことにした。「めずらしくて誰も飼わないようなやつ」を求めた ところ「本来なら1千万円はする」ところを999万9千802円まけて もらって198円で「身も心も弱い」弱虫という生き物を買った・・・んだけど コイツがもう本当に弱い。何かというとすぐ死にそうになる。もちこたえるけど。 その友達として、身も心も強い「強虫」も一緒に飼われることになって 花丸ファミリーの幸せな日々が始まる・・・ この花丸ってヤツが妙にやさしいイイヤツで、18歳という年齢のわりには 真面目であっさりな爽やか青年。少年? 虫達に対するさり気ない愛の深さがもう実にイイのだ。 特に大事件が起きる訳でもない(弱虫は毎回死にかけてるけど)し、何だか ちょっと「地方」入った風景なんかもホッとして心地良い。 心地よくて、ちょっと郷愁を誘う。 かなりあっさり目の背景なんだけど、描き込まれていない分だけ 読者の心を染み込ませることが出来るタイプの作品世界だと思う。 熱烈にオススメをするわけじゃないんですけど、この作品を好きな人とは 友達になれそうな気がします〜(弱虫風に) 強虫の「俺の頭もなでるがいい」(P139)を見るとへにょーんとなってしまう @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/08/27)

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