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坂田靖子「珍犬デュカスのミステリー 2」/双葉社/2004/02/17
ミステリーJourSpecial 2001/02-2001/11 および
Jourすてきな主婦たち 2002/05-2003/08 掲載文を収録。
いつもの調子の坂田マンガ。
いつもの調子、なんだけど、今日は睡眠が足りてたからか、こう、マンガの世界に
すっぽりと没入できてしまった。この作品には……何て言うのかな、「専業主婦
の時間」が流れている気がする。専業主婦になったこと無いから、ホントの所は
知らないけどさ。
なんかね、風邪とかひいて平日に有給休暇とって休んだりして、そんでTVとか
見てる時、ああ、所謂”主婦”って人達はこんな番組をみたり、こんな時間を
過ごしたりしているのかなあ、と、その「世界」をちょっとだけ垣間見たり想像
したりするんだけど、あの独特な感じ(うまく表現できないけど、僕が生きてる
のとはちょっと違う日常感覚)がこの作品にはあるなあ、と思う。
この作者の作品には、以前から「そういう」テイストがある。寧ろ「そういう」
のを意識して描き続けてきた様な気もする。その瞬間限りのCMネタ、流行ネタを
何のてらいもなく放り込み、それさえもドライブできる坂田節、という所か。
今回だとペットネタやリフォームネタなんかそう。
前は「そういう」のがちょっと苦手だったんだけど(チューくんとハイちゃんとか
ビギン・ザ・ビギンとか)、なんか、そういうのもいいなあ、と思うのだ。今は、
というか、今日は、ね。
毎回毎回の扉絵が妙に(というかかなり)好きだ。特に物件(風景)とキャラ、
ってのがいい。何かこう、雰囲気というか、「世界」がある。
16話「真夏の空」の扉絵なんか、妙に泣けてしまった。話も結構良くて、手軽な
「お話」の世界を突き抜けて、なんか一つの世界を見てしまった。
や、やっぱ坂田靖子はいいですよ。兎に角何かしら心に響く「絵」がある。
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(03/01/23)
坂田靖子「デル・カント・バジェット」/エニックス/2003/02/27
近年の坂田靖子作品の中ではピカ一(といっていいだろう)の出来。中世の「お城」
を舞台に、軍の経理で成功を収めたアンドレア・デル・カントが、財務長官として
活躍する物語。ネームは多いが、キャラクターや作品世界に何とも言えない魅力が
あって、寝る前とかについつい読んでしまう。
統一された雰囲気、何とも言えず気持ちの良いトーン。コマワリのバランスも
良く計算されていて、スッキリしつつ密度の高い「画面」のお得感は強い。
いや、ホントに「美しい」と思うよ。見開きで眺めて美しい。安定感があって、
清涼感もある。こういうのは、もうこの作者ならでは、としか言いようがない。
何か、健全な生活、みたいなさ。中世の”お城”なんて結局異世界なんだけど、
なんか、現実を舞台にするよりも「現実感」がある。
作者の「バジル氏」ラインの腕を久々に堪能できた作品だった。ステキダ。
……なんていうか、空がいいんだよね。背景の。昼の空も良いけど夜空もイイ。
なんかこう、空気が綺麗そうで。子供の頃に田舎で感じた世界の広さを感じさせて
くれる。モコモコした雲もいい。
後半に収録のお江戸コメディーと平安コメディーも、作者ならではのおおらかさと
楽しさに満ちていてなんとも言えずいい。これも空が広くていいんだよなあ……
結局の所「好きなら買い!」っていう事なんだけど……
うーん。いいんだ。読んでると幸せ。僕が。
狭い所で暮らしてると、こういう開放的な世界観に憧れるんじゃよ。
こういう所に「逃げ出したい」今日この頃なのだった。
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(2003/09/01)
坂田靖子「珍犬デュカスのミステリー 1」/双葉社/200/02/17
ミステリーJourSpecial1999/02-2000/10掲載文を収録。
「最近の坂田靖子」タイプの作品。読者対象が限られていて、僕は多分
その対象読者には含まれていない、のだろう。そう思うことにする。作者も
自身のWebサイトで、そう望まれているからそういうタイプの作品を描いて
いるのだ、という様な事を言っていた……気がするし。
ミステリーというか、その場その場の怖い展開短編。火曜サスペンス。
舞妓さんは名探偵、みたいな。OL探偵、犬探偵。ジャンルそのものに興味が
もてないので、ゴメンナサイ……。
でも主人公(というかツッコミ役)の冴子さんが、ちょっと可愛いんだよね…。
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(01/10/20)
坂田靖子「タイニーポムポム」/小学館/2000/08/20
「アラザン☆スターライツ」
「雪ダルマの危機」
「タイニーポムポム」
「落ち葉のロンド」
「ヘビヘビ再生工場」
「ファースト・クリスマス」
を収録。
坂田靖子の作風のバラェティーが一挙に楽しめる、という感じ。
思い切りぶっ飛んだものから多少ぶっ飛んだものまで、というか。
正直最近の坂田ファンタジーにはついていけない自分が居るわけですが・・・
今巻だと「ヘビヘビ再生工場」なんかはどこに面白味を見つけて良いのか、ちょっと
いやかなり戸惑ってしまう。かといって「ファースト・クリスマス」のあの
とげとげしさは、たとえこれがリアルだとしても辛い。現実を描きつつ、ちょっと
踏み外した所に見え隠れするファンタジー、が良い。このバランスが最近どうも。
「バラェティ・ギフト」の辺りで調整できないモノかのう。まあこれは個人的な
好きずきというものでしょうが。
表題作「タイニーポムポム」は坂田美学の顕現、といった感じで、真夏の世界の
コントラストが目に痛い素敵な作品。絵画的な美しさと内容のとぼけっぷりは
ジャック・タチの映画の様だ。
絵画的な美しさ、と言えば「アラザン☆スターライツ」の夜の街の描き方も
何とも言えず良い。この辺は「D班」の頃からの手法だと思うんだけど、ホントに
この作者の、唯一無二の「センス」だ。
ま、ファンなら買い、といういつもの感じで。強くお薦めはしません。
個人的にはいまも「マーガレットとご主人」がいっとう好き
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(00/10/02)
坂田靖子「バスカビルの魔物」/早川書房/1999/06/30
※副題「坂田靖子 ミステリ・コミック集」
「ミステリ・マガジン」に掲載された短編集。
近作ばかりと言うこともあって多少作りが粗い感じもしますが、それでも
某社から出ているホラー系に比べれば、往年の緻密な作風が色濃く残っていて
個人的には非常にウレシイ単行本。
中世風有り、19C風あり、現代物あり。描き込まれた背景は
ヨーロッパ風味でなつかしくも良い。
物語そのものの作りも私が一番好きだった頃のソレに近いし・・・・
例えば「イブのゴースト」の最終コマの、あの何とも言えない
「坂田靖子らしさ」。ゴーストになったパパのユーモラスだけどもの悲しい
言動とか、基本的に寂しいトーンとか。
或いは「パートナー」のすっとぼけた割にきっちりとした話の出来や
英国風味の背景なんかは「珍道中」を強く思い出させてくれる。
一番気に入ったのは「雛人形」。ミステリとしての出来が
ちゃんとしている、というのもあるけど、何より真矢ちゃん(?)の
あのしっかり者ぶりがもう。バジル氏の婚約者にされそうになった
彼女を思い出す。或いは「叔父様は死の迷惑」のメリィアンとか。
坂田靖子の描くしっかりした女の子って好きです。
全体として「本格ミステリ雑誌」に描くにあたって、それなりに
「格調」を意識したのか、往年のイギリスもの、或いは「珍道中」の頃の
軽やかで品のある作品群に仕上がっていて、ファンとしては
非常にお買い得感のある一冊でした・・・・
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(99/07/12)
坂田靖子「緑が丘3丁目 不思議TOWNストーリー」/双葉社/1998/08/16
「記念写真」「怪奇体験談」に続く双葉社からのミステリー系シリーズ。
・・・なんだかなぁ、というようなノリではある。
まだ「怪奇体験談」なんかは今読み返すと結構面白いんだけど
流石にこれは・・・ちょっと。
絵の崩れ具合も結構凄いことになってるし、正直「あら?」という感じ。
相当崩れてるなー、と思ってた「怪奇・・」が巧く見えるという。
あ、でも10話以降はそうでもないか・・・
あと、各話の扉は良いですね。
特に風景を描き込んだのはどれも詩情溢れる感じで好きです。
3話とか13話とか。
個人的に笑ったというかツボだったのがp1992コマめ、
松茸の匂い嗅いで永谷園のお吸い物を思い浮かべるカット。
斯う言うのが、坂田靖子だなぁ、とか思ってしまうのだった。
坂田靖子需要、ってのが「こっち」方面にしか無いみたいな昨今ですが、
文庫で過去の作品が読みやすくなったことでもあるし、
個人的にはまた英国モノなんかも描いていただきたいのでした。
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(980810)
坂田靖子「よなきうどん」/マガジン・マガジン/1997/9/15
傑作集3にして遂に過去の単行本とのダブりが無くなった。
純粋な新刊と言える。買いだ。
いちおジュネコミックスなんで、ジュネ満載なんだけど・・・
一筋縄では行かないのはいつものこと。
特に「春の道で」はここ数年では最高の傑作では無かろうか。
・・・と思ったら初出は88年。「ララ・ショートストーリーズ」初出の4作品は
どれも得難い傑作。もしかしたら既に単行本の形になっていたのかも知れないが
読んだのはこれが初めてで。
「春の道で」をどう説明したものか・・・・
ただ、少女が学校へ登校するまでの、春の道草情景を描いているだけなのだけど。
この豊かな登校風景を見よ。菜の花畑、れんげ畑、空にヒバリ・・・
日本は、良い国だ・・・(増殖)という感じ。
ヒバリの鳴き声に空を見上げる、それだけに二頁を費やす。このタイミング。
「道草を食う」ってこれだよな。ともすれば語源を忘れ勝ち。
兎に角此処まで来たかという感じの出来である。
或いは「へちま棚」とか。
高等遊民たる「学生」(昭和初期のソレ)の、夏の空気。
ただ縁側で団扇を片手にだらだらと話し続けるだけの作品。その見事さ。
80年代末期の坂田靖子頂点の頃の作品。
無駄のない冴えきったコマ運びを見よ・・
・・・・やっぱ坂田靖子は凄いよ。
だって扉のマンガからして「わたしは光る尾をもつなめくじ」だぜ?
この語感!!
「目が覚めると
ナメクジになっていた・・・
ひんやり・・・」
だぜ?
矢っ張り凄いわ・・・
次の単行本を楽しみにしつつ
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(1997/09/27)
坂田靖子「てかてかアイランド」/宙出版/1997/8/10
いやーんネズ坊ちゃんかわい〜ん☆
的可愛さで迫る新キャラも登場して益々混乱の度合いを強めていく
マウント・シーサイト君の周辺。時事ネタの嵐は、もう後半年もすれば
何だったか解らなくなること請け合いのTVネタもの多し。神々の指紋とか。
相変わらず脳の皮相だけで反応できるようなマンガ。
って人間の思考部位は皮質だけか。
・・いやそうじゃなくて、深く考える必要が全然無いという・・
・・・好きなんだけど・・・好きなんだけど・・・ッ。
坂田靖子の本質というか魅力の本来は(先日早川から文庫上下巻で再販もされました)
「マーガレットとご主人の底抜け珍道中」に有る様な気がして・・・・
或いはバジル氏・・・
最近の氏は「これ系統」しか描いてないんじゃないだろか?ホラー系は?
ああ・・・言いたか無いが「ゲームで駄目になった作家」?
勘違いであることを望む・・・
・・・でもストーン・ヘンジは無茶苦茶ツボなんですけどね・・・
やっぱあのノリは坂田靖子ならではだなぁ。と。
うーん。まあ「ビギン・ザ・ビギン」だもんな。これはこれで。
何だかんだいっても好きなのは好きなんだ・・・
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(97/07/20)
坂田靖子「ダンジョン狂騒曲」/ソフトバンク/1996/11/29
坂田靖子氏によるゲームエッセイ集。現在も「スーパー64」誌で連載中!
だそうだ。
この人のゲーム好きはつとに知られていて、またそれが
作品にモロに反映しているという点でも有名ですが−
特に「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(とゆー作品があるの。)あたりから、その気配が
濃くなってきていて。
でも坂田靖子の世界はそれ以前から「そういう感じもアリ」だったんで、
何となく見逃していたらば、いつのまにか
「そんなの」ばっかりになってしまった。・・・という。
「ゲームで駄目になった漫画家」論、は以前流行った記憶があるですが
実際どうなんでしょうね(と逃げを打つ奴。)。いやでも、この人のバアイ、
その駄目さ加減が又よろしい訳で(ビギン・ザ・ビギンとか−)、それに
ゲームの世界観無くしては決して生まれなかった傑作「黄金の梨」もある。
(「黄金の梨」はまだ再評価には早い、とは思うですが、いつか近いうちに、
その作品価値が再認識されるべきだ、と勝手に思っている私。)
いや、アレ(梨)を読んでいる間ってのは、モロに「RPG」やってる
感じだったのよ。RPGやってるときの、あの独特の没入感が、
見事に再現されていた。よくぞここまで−!と思ったものです。
話がそれました。
さて、このエッセイ自身は、そんな(どんなだ)作者のゲームライフを
オモシロオカシクつづったもの。スーファミからPCまで、
「ゲーム機」の幅は広く、またそれだけゲームの幅も広い。
パソゲーマーならではの洋ゲーの楽しさやら・・・
「ゲームってこんなに面白い!」と力説するわけでもなく
なんて言うか、ゲーム好きがやはりゲーム好き(対象となる読者はそういう
ヒトタチだ)の友人に、「ここが良かったよね〜」と話している様な内容。
それだけに、ゲームをやってきた人間なら「うんうん」なんでしょうが・・・
・・私、本当にゲームに−特にRPGに−疎いもので。
まともに「やった」といえるRPGが「Wizardry」シリーズと「MOTHER」シリーズ
だけという。DQもFFも知らないんだよう。
・・・ああ・・いいなぁ・・・やろうかなぁ・・どうせこれ以上駄目には
なりようもないしサ。
因みにエッセイと言うことで「どーかなー?」とお思いの方は、ご安心あれ。
文面は、坂田キャラそのままの喋りです。凄くいい感じ。
坂田靖子の「創作に対する考え方」みたいなものが垣間見えて面白いですし、
ファンは、買い。
ってもうとっくに買ってますよね・・・
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(1997/06/26)
坂田靖子「水の森綺譚 IV」/偕成社/1997/3
例によって例の如き
サリと「友達」の送る水の森の日常である。
他に語るべき事は無し。
読んで、浸って、ひたって、浸って・・・・
坂田靖子作品の凄さは、そのあからさまにファンタジー系の理想郷な世界観、
あまりに御伽な物語展開にも関わらず「もしかしたら有るかも知れない・・」
と感じさせる一種リアルな空気にあると思う。
それは例えば今巻の「冬の星」に見られる理不尽さ。
理不尽で、ちょっと哀しげで、そういうのが「現実」に近いからなのかも・・・
まあ、相変わらず水の森はニギヤカで、
釣りによし雪だるま作りによしハイキングに良し。
星もカモシカもイースター兎も流しの流しもユキヤマタマムシコガネも
それぞれ自分の道をぐいぐい進んでいます。
それが気持ちいい。
こうやって他人の目を気にしないで気ままに生きられれば・・・
愛して止まぬ作品の一つです。
・・・もし宜しければ一度手にとって読んでみて下さい。
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坂田靖子「花模様の迷路」/早川書房/1996/7/15
何とあの「マクグラン画廊」のマクグラン氏の続編なのである!!
1986年に新書館より単行本として刊行されていた、というのだけど、
全く知らなかった・・・誰か教えてよぅ。
久々に坂田作品の英国モノを読めて、大感動大満足。
坂田作品はこうでなくては。いや「ビギン」なのも「恐怖」なのも好きですが。
善人で、冷徹になりきれないマクグラン氏の、その性格故の魅力・・・・良い・・・。
しかし考えてみれば「英国」で「画廊」で「ミステリ」(全て1ジャンルとして
確立出来る・・・)なんて、一体作者の引き出しの多彩さは・・・いや、全く
魅せられるばかり。
所で、この単行本の巻末に入っている「糸杉」(これも初読)は、今まで読んで来た
この作者の作品には無かったような、物語の作りに独特のモノを感じた。
絵的にはいかにも当時の坂田作品なのだが、物語の展開がまるで萩尾望都の作品の
様だ。緻密な物語設計。最近「ビギン・ザ・ビギン」系のばっかり読んでて、あの
「ノリ」だけで描いてるようなライブ感覚な漫画に慣れてたので、こういうのを
読まされると本当にこの作者には圧倒されてしまう。
・・ラストの何とも言えない空気が・・・
これも又、作者の「引き出し」の一つなのだろうな。
私はしばし、この単行本全体を包む、霧のような静けさに安らぐのであった。
あー、しかし。
初出一覧は欲しかったす。描き下ろし単行本じゃないと思うのだけど。
ではまた。
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坂田靖子「伊平次とわらわ 二」/潮出版社/1996/9/15
こういうのを読むと、やはり坂田靖子の作品は他の誰にも真似できないなぁと感じる。
例えば、伊平次の性格一つとっても、あの思考形態は坂田作品の特有のもの。この
ちょっと内向と言うか、他者との関わりを「自然に」薄くしているような所が、何とも
言えずイイ。昔、将来の進路に「墓守」と書いて(当時エジプトとかにハマってて、
エジプトには「墓守」はちゃんとした職業なのだが)親と教師にスコボコに言われた
事を思い出す。
しかし、一巻では犬の「わらわ」しか友の居なかった伊平次だが、今巻では粋人?の
「曲がり辻の屋敷の主」、妙な感性の貴人が登場。賑やかになった。このへん、古い
作品から読んでいる者は、なんとなーくジュネな香を嗅いでしまうであろ。このへんの
粋な会話も坂田靖子らしい。
巻末では娘まで加わって(いい感じの娘だが、レギュラー化するか?)いよいよ
楽しく(?)なって行きそうである・・いや・・・本当は一巻の頃の独特の妖味が
好きでもあったのだけど。
・・所で、「トム」は読んでないので知らないのだけど、まだ続いているのかしら?
続刊を期待。
冒頭の「ごめんください」な化け物が個人的には気に入り。
これも坂田作品「らしい」言葉遊びが楽しい。ストーン・ヘンジとか・・
ではまた。
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坂田靖子「伊平次とわらわ 1」/潮出版社/1996/5/30
ううううううう。
やっぱり坂田靖子は良いわね。
墓守の伊平次は子供の頃から墓場暮らしで、そのせいか
よく霊の類を観てしまう。
ある日、「中納言の姫」と名乗る犬(!)がやって来る。
父親の骨を探してくれ、というのだ。果たして・・
そして始まる伊平次と「わらわ」の何となくな同居。
この空気!!もう何も云えない。スバラシイ。描こうと思って描けるモノではない。
兎に角会話のセンスが良い。この二人?、善良な正直者(ツッコミ激しい)と傲慢者
・・のパターンは作者の得意とするところだが、しかしこれが一番ハマってるかも・・
この作者ならでは、の空気を満喫できます。
まだ数回しか読んでないのですが・・・
これからスルメのよーに何十回も読むことでさらに
愛着がわいていくのだろうな・・・
「珍道中」はカバーを2回描けなおしたワタシ・・・。
最終話が特に好きで、全ページノートに模写したコトもあった・・・
坂田靖子作品を未読の方は、まず「叔父様は死の迷惑」から
スタートされると良いでしょう。本屋にあれば「マーガレットとご主人の底抜け
珍道中」がスターターキットとしてはオススメですが。
ではでは。是非坂田作品の味わいに触れてみて下さい。
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坂田靖子「黄金の梨 4巻(完結)」秋田書店/1996/8/10
ほのぼの珍道中の最終巻。
しかしいろいろ考えてしまう。
ペンクルーズの魔法使い君、尽くチャンスを逃してしまう彼の不運さは、
しかし彼の精神の在り方に原因が有ることが多い。
前巻でキノコを助けた(積もり)でチャンスを逃してしまった話などはまさにそれ。
自分の道徳性に正直にしようとすると、大抵その道徳性の浅さに後悔するのだ。
さりとてそれを見過ごせるほどに彼は強くない・・・
そもそもが今回の旅の目的、「黄金の梨」は魔法使いにしか取ることが出来ない、
というので、脅迫に近い形で送り出されたのに、結局旅のオワリの目的、
−梨を取る−を果たすのは、赤の他人の魔法使いなのだ。
彼には何も出来ない。
彼は、「旅をした」だけで、最終的には何の役にも立っていない。
オマケに道案内さんを助ける為に、自分の魔法の力(それは彼の存在そのものだ)を
失ってしまう。旅の間、彼に利はヒトツも無かったのだ。
梨を持って帰ってきても、感謝される訳でもない。苦労に対する報酬が無いのだ!
それでも彼は不平を言いこそすれ、ひとつ溜息をついてまた今日を生きる。
そこにこそ坂田靖子作品の美学が存在するように思うのだが・・・。
・・・でもまぁこの作品を読んで、こう何か
教訓めいたものを引きだそうとするのは愚か、
なんだろうな・・・
兎も角、坂田靖子作品では久々の巻数もので、非常に楽しんだシリーズでした。
次は水の森の新刊だな・・・
ではまた。
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「黄金の梨」2巻 秋田書店
・・・あれ?全2巻で完結かと思ってたのに・・・・
ところでP128の迷路造りは某「水の森」の「ジゴクにホトケ」では?
似てる・・・性格も。
あとP66のスノーワームがかわいい。
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坂田靖子「怪奇体験談」双葉社/1995
最近の氏のメインワークの一つ、ホラーもの。
実はそんなに好きじゃないんですが・・・一連の・・・
ただ、エッセイ的というか、雑誌掲載当時氏がハマってたCMや映画なんかが出てて
それが面白い・・・・
坂田氏と言えば、新装版「ふたりと五人」(吾妻ひでお)の五巻だっけかで
氏が描いてるあじまの世界は実にファンの心をくすぐる。
坂田靖子作品のバケモノはあじまの系譜らしい・・・
思わず笑ってしまった・・買おうかなぁ・・ふたりと五人。
一応旧版全巻持ってるんだけど、未収録作が多いし。
話がソレました・・・
坂田作品にハマったきっかけってのが矢張り英国モノとかでしたから、
こういうのはちょっと違うかなぁ・・と。
お好きな方はどうぞ。
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坂田靖子「堤中納言物語」中央公論社・マンガ日本の古典7/1995
坂田靖子ファンは言わないでも買ってるでしょうが。
原作(というのか)はもう全然別な感じ・・・
坂田靖子テイストも割と薄くて、同シリーズの安彦「三河物語」等に比べると
イマイチ・・・・・
例の「虫愛ずる姫君」があくまでも原作のテイストを生かしていて、下手に
ロマンに(ナウシカみたいにね)走ってないのはさすが。
坂田靖子ファンとしてはラストの「解」を読むべき。
やっぱ氏の感性には魅かれるワタシ・・・・
うーん。
でも坂田靖子はやっぱりイギリス!の
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坂田靖子「常夏DEサンバ〜新ビギン・ザ・ビギン〜」宙出版/1996
やーやっと手に入れた。
でもちょっと痛んでるのよね・・まーいいか。外面より内容よ。
タイトルでもわかるように、先に宙から出ていた
「ビギン・ザ・ビギン(1,2巻)」の続編であります。
兎に角、もう、「いい」としか言いようがない・・・
いいんだよぅ。
坂田靖子節炸裂と言うか・・・
某Xファイル本のミステリアスなのも坂田靖子の顔だとは思いますが
このほのぼのした馬鹿らしいまでの脳天気さこそは、この作者独自の持ち味だと・・
オチらしいオチがない(それは例えば同じ作者でも「怪談シリーズ」に比べると・・)
のがまたいいのだ・・・何の教訓も生まない話。素晴らしき「南の島」の生活!
各キャラクターが各々マイペースで生きているのがたまらん。
他人には絶対揺るがされないその生活観。
人口密度の低いこの島ならでは。
一応主人公のマウント・シーサイト君もそれなりに(ジャマされてるけど)
マイペースです。
この巻になって新たに常駐キャラが一人(一個?)増えました。
喋る石なんですが。返事する石。ストーン・ヘンジ。
この語り口がもう完璧に坂田靖子してる!
あ・・なんか馬鹿だと思ってるでしょう。いや馬鹿な文章しか
書けないのはいつものことだけど。
うう・・・兎に角気に入りの一冊です。
所で、「珍道中」のタルカム氏、のタルカムってのは「あせも知らず」のことなのね。
タルク、滑石、の粉に香料を混ぜたもの、だそうな。
坂田靖子の本のタイトルにも「天花粉」というのがあったなぁ・・・
深い。
ではまた。
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坂田靖子「ヒューイ・デューイ物語」白泉社/1981
古本屋にて発見。
これだけは初期作品のうちで、再録されてないんですよね。
まるまる単行本一冊だからか・・
「D班」シリーズの様な軽いノリと、深夜とかにやってるB級アメリカ映画的な
世界観。
金持ちのヒューイ坊ちゃんと掏摸チンピラの類のデューイ君。
ドラマはちゃんとしてるし、世界観は懐かしくも気持ちいいし
あーやっぱし坂田靖子は素晴らしい。
さてこの機会にまたまた坂田靖子リストを。
これ以外にも「こんなのもあるでよ」という方は、是非ご一報ください。
ホントに、坂田作品に飢えているワタシです。
よろしく・・・
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坂田靖子「星食い」ハヤカワ文庫JA/1995
坂田靖子の作品はその数が多い上、傑作選や再編集が出ていて
どーにも困るのですが、これは一作くらいしかダブリがなかった・・・と思う・・
ソノラマ版は存在は知っていたものの、買えずじまい。だってハマッたのが
90年代入ってからでしたからね。アレは83年刊。
でも頑張って白泉9割他、50冊以上そろえましたが・・・
で、この本はそゆことで過去にでた作品集の文庫化なんですよね。
氏の作風は、ファンタジー、19C英国もの、ジュネ、和もの、といろいろありますが
それらがほとんど(!)入っている、なんともバラエティの有る短編集です。
表題作の「星食い」は、潮出の「坂田靖子の本」シリーズの1巻に収録されてまして
割と好きな話です。でも全体的に(ソノラマ刊の氏の作品と言えば「闇夜の本」とか
あーゆーのだし)暗いですね・・・・
僕は「バジル」や「珍道中」が大好きなので・・・
坂田靖子はいいですよ。
なかなかすすめても読んでは貰えないんですがね・・・
「珍道中」は僕にとっては永遠に手放せない(たとえ「あおいちゃんパニック!」を
手放したとしても)単行本です。何処がいい、というのじゃないけど・・・
坂田靖子が好きな人とならワタシは気が合うと思う今日このごろ。
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
坂田靖子「マイルズ卿ものがたり」ハヤカワ文庫JA/1996(新書館/1987)
何と、この作品はシリーズであったのだ。知らなかった・・・
ごそごそ・・・
本棚をひっくり返してみたが、残念ながら、何処で読んだのかは不明。でも
確かに以前「井戸の首」を読んだことが有る。ふむ・・・
ま、兎も角。
1700年代の英国!!
坂田靖子の(当時の)面目躍如と言ったところ。
いやもう、最近長いこと、こういうのが読みたかったのよ。
最近の氏は、かなり日本を含めアジアに傾いている様で、「バジル氏」時代の
的確な時代空間描写能力よりも、作者世界そのものの展開に重きを置いている様で
それはそれでいいのですが、、矢張り何かこう物足りない様な・・・
うむむ。坂田といえば英国。それもヴィクトリア時代に尽きる。
まー、この本は19世紀じゃないんですけど。
あとがきに
「うーんなんてヘンな時代なんだー!
という感動だけで本が一冊出来ちゃうのマンガ描きのいいトコロ
・・・です!!」
とある様に、それだけの作品。
でもそれが凄いのはご存じの通り。
気弱なマイルズ卿の日常!
カツラを無くしたり、犬をほしがったり、小姓を買わされたり・・・
この作者の作品には、時代を越える「真実」が有る。
読んでいて、違和感が丸でない。そのまま脳に流れ込んでいく。
矢張り坂田作品にはとことん弱い私でした。皆さんも一冊どーですか。
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坂田靖子「闇夜の本 3」早川文庫JA/1985/1995
このシリーズって3巻も出てたのね。
知らなかった・・・
ソノラマ版で1、2巻は持ってたんですが。
しかし、半分くらい読んだことが有るぞ・・
傑作集やら全集やら大量に出てるからねぇ。このヒト。
’84〜’85、坂田作品の転換期の作品達。
最近のデュオの「恐怖」シリーズに通ずる軽さというか、
生々しさがあって良いです。
特に13話、「孟蘭盆会」は殆ど現在の作風と同じ・・・
さて。
坂田作品をまだお読みになってない方は、この機会に是非。
出来れば「底抜け珍道中」なんかも読んでいただけると。
ではまた。
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
所で坂田靖子作品リストまた改訂しました。不完全度は高まる一方です。
ていうか、もう所蔵品リスト状態。
1998/05/02版。
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白泉社
花とゆめコミックス
「エルドンの夜」
*「夜のお茶会」
「青絹の風」
*「おばけ地帯」
*「D班レポート」全3巻(1巻は「ぼくらは優等生・D班レポート1」)
*「チャンの騎士たち」
*「ヒューイ・デューイ物語」
*「バジル氏の優雅な生活」全9巻
*「ライラ・ペンション」
*「ライム博士の12か月」
*「ノーベル・マンション」
坂田靖子傑作集(JETS)
*「村野」
*「探偵ゲーム」
*「エレファントマン・ライフ」
*「ピーターとピスターチ」
*「月と博士」
*「闇月王」
*「シマウマ」
*「水の片鱗−マクグラン画廊」
「バジル氏の優雅な生活」(豪華版)全3巻
*「キムチ」
*「パスタ野郎」
初期傑作集
*「エルドンとジムと」
*「きのうとあしたと」
*「おばけとネコと」
小学館PFコミックス
*「マーガレットとご主人の底抜け珍道中」全5巻
潮出版社
*「珍見異聞」1・2(続巻中?)
*「ビーストテイル」
*「天花粉」
*「カヤンとクシ アジア変幻記1」
*「塔にふる雪 アジア変幻記2」
*「坂田靖子の本」全3巻(自選集)
*「伊平次とわらわ」1・2(全2巻?)
偕成社
*「パパゲーノ」
*「水の森綺譚」1・2・3・4(続巻中)
秋田書店プリンセスコミックス
*「黄金の梨」全4巻
*「ゾウの肩かけ」
*「バラエティ☆ギフト」
宙出版
*「ビギン・ザ・ビギン」1・2(続巻中)
*「常夏DEサンバ〜新ビギン・ザ・ビギン〜」
*「てかてかアイランド」
中央公論社
*「マンガ日本の古典 7 堤中納言物語」
講談社
*「ダンジョンズ&ドラゴンズ」全2巻
角川書店
*「叔父様は死の迷惑」:重版以降カバー折り返しの装丁が変化。
双葉社
*「チューくんとハイちゃん」:2タイプ確認
*「記念写真」
*「怪奇体験談」
朝日ソノラマ
*「誇り高き戦場」
*「闇夜の本」全3巻
*「フレドリック・ブラウンは2度死ぬ」(橋本多佳子・波津あき子との共作):2タイプ確認。
「星食い」
新書館(ペーパームーンコミックス)
*「アモンとアスラエール」
「花模様の迷路」
「マイルズ卿ものがたり」
「魔法圏」
早川書房
*「時間を我等に」:大判ハードカバーと文庫有り。
*「マイルズ卿ものがたり」
*「星食い」
*「闇夜の本」1・2・3
*「花模様の迷路」
*「パエトーン」
「マーガレットとご主人の底抜け珍道中」上下
マガジン・マガジン(ジュネコミックス)
「くされ縁」
「半熟少年」
*「よなきうどん」
ソフトバンク
*「ダンジョン狂騒曲 Dungeon Rhapsody」
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・リストの改訂には、水上 久氏の協力を得ました。
最近どんどん文庫(再録もの)が増えてしまって、チェックし切れない状態です。
もっと完全なリストは各所に有るようですので、サーチエンジンなど利用して
探ってみてくださいまし・・・また本棚に余裕が出来たら買い揃えたいものです。
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