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そのうち整理します・・・


古賀亮一「電撃テンジカーズ3」/アスキー・メディアワークス /2011/6/27

八戒とハルカさんの二人に迫られたとき、
キミならどちらを選ぶ!?俺はハルカさんかなー
いやむしろカッパ姫……などと
遠い目をしがちなこの頃皆様いかがお過ごしでしょうか。

2月に発売される予定だったのが、漸く発売の知らせを聞いて
全身から剛毛が生えるほど狂喜乱舞しつつ本屋に突入。
まあ最後の最後まで箸が立つほどの超高密度オモシロぶりで
1コマごとにギャグが3つくらいは入っている有様。
ホントこの作者のサービス精神には脱毛という感じ。
爆笑のあまり寿命が256年は延びるっつーの。

この巻でこのシリーズはオシマイなんだけど、基本この作者の漫画は
何を読んでも楽しいばっかりなので、
「あー早く次の単行本でないかなー」という、もうそれだけ。

願わくは、古賀先生があと100年位
新作を描き続けてくれます様に……
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(2011/07/07)

小花美穂「あるようでない男」/集英社 /2003/12/18 本棚にずっと刺さったままだったのに読んでなかった。 不意に読んでみたくなって読む。 デパートの社長令嬢(高校の頃からのつきあい)と婚約中の若社長工藤雅深、 女運があるようでない男。買収あり内紛あり売り上げの低い店の建て直しありと まぁ割と安っぽいデパート繁盛記なんだけど、絵柄の典型的な記号的少女漫画絵と 描かれる世界の生臭さ(性的な描写も含め)のアンバランスさ(妙なマッチ具合)が、 あー、この作者の漫画ってこんなだったなあ、と思い出させてくれる。 いや、妙に面白かった。 読んだあと、夢を見た。この主人公の立場になって、デパートを建て直そうと、 従業員をあつめてハッパをかけたりする夢。人を集めて号令するなんてこと、 教育実習の時以来、もう十数年やってないので、ブルブルしてしまった。 まあ、夢に見るくらいだから、面白かったのだろう。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2011/06/21)
鈴木志保「ジョニー」/ポプラ社/2008/1/25 庭師の青年が、ゴミ捨て場で拾った「にゃこ」(人の姿をした猫)を 育て、やがて(猫なので寿命も短い)失う物語。 「物語」としての厚さは無いが、母性本能をくすぐる子猫/赤ちゃん描写が 満載で、時々胸が苦しくなるほど。生えかけの歯とかね。やたらと チューしたくなってしまう感じとかね。もうね。 ジョニー、あるいはにゃこ太の内面は一切描かれない。そこがまた切ない。 赤ん坊/動物を相手にしているときの一方的な感情移入。 我が子に自我が芽生えてきた昨今、「あの頃」を思い出すと、何とも言えず 懐かしい気持ちになる。 作者は「あとがきにかえて」で、「見捨てられたものの救済」がテーマの一つ であるとしているけど、救われ、幸せな日々を送っても、その老病死までを 描かなくてはならない、という感じがいかにもこの作者の作品だと思う。 幸せにくらしました、ではなく、幸せに生き、老いて、(たぶん)幸せのうちに 死にました、そういう感じ。ペットの豚を食べてしまう様な。 活字の配置、入れ具合なんかは「舟を建てる」と同時期なこともあり、 見応えがある。「漫画」としては、一級の作品。表紙(売る気なさそうな・・・)で 一瞬躊躇したけど、買って正解だった。やっぱすごいわ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2011/06/21)
小谷あたる「まかないこむすめ 1」/電撃コミックス/2008/09/27 もうなんか。 はー。 キャラ絵の愛らしさも(勿論)あるけど、少女雑誌でこけしの通販(切手) とか、本屋での出会いとか、小料理屋とか、作家とファンの交流会とか、 誕生会とか、肩たたき券とか、そういう。給料がうれしかったり、ケーキが うれしかったり。みんなで食べるご飯とか。居眠りの気持ちよさとか。 あー、なんか忘れてた。忘れてたなー、こういう大事なこと…… 近年油断して忘れていた「やさしい感じ」を、予期せず真っ正面から 浴びせられて、もう暫く立ち直れない感じ。 読み終わって”現実”に帰ってきたとき、真っ先に感じたのは この世界に戻りたい、帰りたい、という気持ち。 この世界の包容力、空気の甘い香り。コシマキにはレトロ☆ファンタジーと あるけど、そこで生きている人たちは、懐かしさの中で生きている訳ではなく、 いまそこで(わりと身も蓋もなく)生きている。彼らが「生きている」からこそ その中で体験した体験が、現実以上の重みで自分を掴んで放さない。 読んでいて、色んな所で胸がドキドキする。 読み終わってこの町の事を思い出すと、切なくなる。 あー、この感じ。まんが世界に心置いてくる感じ、久々に味わったわ…… なんだか久々に「本物」に出会った気分。上手く言えないけど、「本物」と そうでないもの、がやっぱりあって、(今現在の)自分にとっては、これは 「本物」だなあ、という。どの辺でそう感じたかっていうと、うーん、あ、 多分杉崎さんが出てきたあたり。杉崎さん好きです!(告白) あと個人的にはp48-49の、掃除後の寝っぷりから起きっぷりが好き。 あまりに見事で、何度見ても吹き出してしまうのだった。 マンガ読みの方は、是非一読されたい。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2008/10/01)
木村紺「神戸在住 9」/講談社/2006/11/22 4回生の日々。 就職は兎も角卒業を前にして、次の動きを探る美術科の人たち。 桂は演劇と出会う。 この辺でもう(元)演劇部顧問のN川先生の滂沱とした顔が目に浮かぶ訳だけど 桂の才能の行き先を「そこ」に持って行くかー、となかなか納得感心。 僕は関西の劇団というとホントに数えるくらいしか知らないんだけど、でも (これは単なる印象だけど)”美術”を演劇本体とは独立した一つの作品として 扱えるくらい「立てて」いる所が多かった様に思う。 いや、つまり、なるほどなー、と。 今巻は何かしら「読みどころ」が多くて、おなかいっぱい。弓浜さんの話なんかは オーラスに向けて”描いておくべき事”を結構詰め込んできている感じ。この人の ことも書いておきたい、的な。ポートピアランドとかね。 人間関係はどんどん変わっていくけど、でもそこに不意に昔の3人組が現れたり、 なんかこう、ぐっと来るものがある。さすがにね。 前巻、前々巻あたりで感じていた、桂への、何というか青さ、(若さゆえの) 未熟さ、みたいなものは今巻ではハナにつかず、むしろ憧れや頼もしさに、読者 たる僕の気持ちは変わってきている。これは確信ではないけれど、作中でさらりと 言及されている様に、桂の「ハートブレイク」が作中に漂っていたからなのか? とも思えてきた。今巻になってその痛みが漸く癒えて、それが、この作品にまた 明度が戻ったことに繋がるのかも……そこまでコントロールされているのかどうか。 単に僕の感性の振れ幅に由来するのかもしれないけど。何にしても、ただ単純に 「実話の反映」として読んでいる自分。この娘は、この娘達はやっぱりすごい。 大学生ってスゴイ。とかね。思うわけですよ。 自分も確かにいつか昔大学生だった。でもこんなじゃなかった、こんなには 生きていられなかった。こんなに目も覚めていなかったし、こんなに他者を 観察したり大事にしたりもしていなかった(いやそれは今でもだけど)。 他者に興味を持つ、他者を観察する、というのは、その人への好意の表れなのだと しみじみ思う。 あと神戸では8枚切りを売ってないとかいうけど、東京来て8枚切り買うように なるまでは縁がなかったですよ。あれサンドイッチに使う専用かとおもてました。 とりあえずチエさんエロかわいすぎ。あの服と仕草と表情と喋りは犯罪だ! と思いつつ10巻を待つ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/12/03)
田丸浩史「ラブやん5」/講談社/2005/06/23 冒頭からアレ中の蜻蛉にアテレコするカズフサとラブやん。 ここまで救いようのない漫画の始まりってあるんだろうか。 だがそこから数ページのうちには無人島で生活〜幽霊船長に拾われる 〜財宝探し〜みたいな。なんかもー。いや、楽しい。 28歳児カズフサの日常の(見てきたような)ダメさ加減が実に。 この漫画が切り開いたオ○ホール語りの地平は今や確実にその世界を 広めつつあるという…… この中で宝珠を「ピシャアアあん」と掲げる様はまさしくながいけん。 ながいけん系、というとあれだけど、相変わらずセリフ回しの妙に尽きる。 今巻で p97 ジャモジさんの 「全身これ筋肉のうえにうっすら乗った脂の鎧……  神はオレに何を求めているのか!!」 これ筋トレやったあと鏡を見ながら必ず(心の中で)つぶやいてしまう。 p94の1コマ目のこっち見てる乳首がとても好きです。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/06/06)
石黒正数「それでも町は廻っている 1」/少年画報社/2006/03/01 「メイド術!?」 「従順に仕えるふりをしながら男を惑わせ利益を得る  それがメイド術! メイドカフェの基本理念でもあるわ」 いやそんなマンガじゃない。 じゃあどんなマンガかと言われると……どんなんだろう。 所謂「それ町」。 発売直後全国各地で火の手が上がったものの、その後やや沈静化している現在。 炎上中は僕も各所で「この格好は反則だろう!」「この足はあかんよ!」的な 盛り上がりを示した。 で、まあ読み返してみてやっぱり笑うし萌えるわけですよ。萌える、ちゅうか なあ……なんか、こう、もやもやする。部屋着の、というか、ぱんつで玄関に 出てきてしまう歩鳥とか見てると、こう……モヤモヤするのだ。そこがいい。 歩鳥のシンプルな造形、そのシンプルさ故にそこに潜むセクシュアルな部分に ドキドキさせられてしまう。男子永遠のテーマがここに。 いやべつにモヤモヤだけで読んでる訳じゃないよ。やっぱ芯は笑いが。 繰り返し読んでもクスクスが残るのは傑作の証。個人的な笑いのピークは 「わからないのならせめて白紙で出せ!」あたりだけど(次点は「えいかげんに 掃除をしたらだめよ」)、商店街のオヤジ達がからむ絶え間ないくすぐりの 感じは、読んでいて本当に気持ちいい。 作者の笑いに対する感性とかに丁度乗れた、という感じ。木星の宇宙人の 下りとか、ともすると薄く扱いすぎなんじゃ、と思えるけど、でも見てると この笑いの温度が「丁度良い」ことに気づく。 兎に角どこを切っても快適に楽しい良品。 久々に何のためらいもなく「おすすめ!」といえるマンガだと思う。 いや、今更ながら、おすすめです。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/05/21)
木村紺「神戸在住 8」/講談社/2006/02/23 2004年6月号から2005年5月号掲載分を収録。 雑誌の方では連載が終了したそうだ。僕はもうながいこと掲載紙を読んでいない。 結局この作品を語るとき自分語りなしには語れない、と諦めてキーを叩く。 大学生活が終わりに近づいていく頃、自分はどうだったろう。 少なくとも、「こんな」じゃなかったのは、確かだ。卒論は完全に自分の世界に 没入した内容だったので、毎日朝イチから閉館まで図書館に通って関係ありそうな 本(関係なさそうな本も)を一生懸命読んでいた。4回の頃というと、実際その 記憶しかない。就職活動は殆どしてなかった。教員になるつもりだったけど、今 思えばそれはさほど真剣な気持ちではなかった。大学を卒業してしまうのだから、 何か職につかなければ、と、ただそれだけで。それより目の前の本を読むことの 方が大事に思えた。 もっと大学にいれば良かった。大学の人たちと交流していれば。 今の自分だったらどうするだろう。もっと違った生き方をするだろうか。 いやそれは。 結局自分は自分以上にはなれない。こういう後悔は全く役に立たない。 英語文化研究室での和やかなモラトリアムに、今の自分は憧れ得ない。 それは「彼ら」のものであって、僕のそれではない。 残念ではあるけど、価値観はその都度変わっていく。 「自分」というモノが終始一貫して存在してるなんてもう思わない。 マンガの話をしなくては。 どの話もひとつひとつ胸に染みるのだけど、個人的には 第70話「晴君の手によるディナー」 が、その空気感、という点でこの作品のナイーブな、ナイーブであるが故の 魅力を存分に描き出していて、好きだ。「家族の一員」が、日頃見せているの とは違う一面を、正面切って家族に疲労する瞬間の、何とも言えない面映ゆさ。 時が過ぎていくことの切なさ。一抹の寂しさと、「未来」を信じさせてくれる 頼もしさ。繰り返して読む様な話でもないけど、この巻の中では一番印象深い。 あと今巻では前半を彩る帆津さんもなんか魅力的。きっと美人なんだろうなー。 きっと……あー、考えてもしょむないけど、やっぱり気になる。つまり 彼ら彼女らにモデルはあるのか!?あるのではないのか!?という。 作品は作品だけで独立すべき、とは思えど。いったいどういう「引き出し」が あってこういう作品を描けたのか。完結した今だからこそ作者の素顔が 気になって仕方ない。でも一方で(作品世界を大切に思うからこそ)作者の人の 露出は見たくない気もするし…… あー、でも、気になるなあ…… @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/05/21)
北道正幸「プ〜ねこ 2」/講談社/2006/04/21 うわー落ち穂拾い的!とか思いつつも気がつけば繰り返し読み返してしまう 呪術的マンガ。ネタに味わいがありすぎて。 基本的には猫四コマなんだけど、「任侠乙女学園」と「サッカー列伝」が 見逃せない。特に後者は傑作。これ読んでからスーパーで袋詰めするとき必ず ”小田原梅子の袋詰め講座”を思い出します。こういうヨタ話描かせたら 世界一だな北道先生は!いやホンマに。このどんどんスライドしていく 感じが凄く好き。あー、もっとこういうの描いてほしいわー。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/05/20)
犬上すくね「ラバーズ7 1」/小学館/2005/11/20 犬上すくね「ラバーズ7 2」/小学館/2005/11/20 犬上すくね「ラバーズ7 3」/小学館/2005/03/20 犬上すくね「ラバーズ7 4」/小学館/2005/11/20 楽しい。読んでいて楽しい。 「程良く」ドキドキできて、「程良く」クスクスさせてくれる。 いやー、「恋ディス」の時はホントに毎回決死の思いで読んでた。あれは 殺傷力強すぎた。その辺、この「ラバ7」はさじ加減が(僕にとっては)絶妙で。 あと適度に「マンガ」な所もいい。”ゲンジツ”の苛烈さからは一線置いた リアル度に、何かしらホッとするものがある。 放課後バイト、日暮れから眠るまでの、猶予期間的な時間の、その慕わしさ。 えーと、とりあえずなつきのブルマ装着時のフトモモ。そのスキマに目が行って 離れません隊長。危険すぎる。あんなのが大挙して攻めてきたら到底勝ち目は無い。 いや一人でも。 なつきの表情(のコントロール)も素晴らしい。あの目のバランス、眉根の 寄せ方。いつもどこか寂しげ/悲しげ/切なげで、思わずその笑顔を見てみたい、 と思わせる。いつも切なげだからこそ、笑顔は強烈だ。 結局まんがは顔だ、表情だ、煎じ詰めれば目だ、と思う。なつきや岩永さんが 「じー」っとこっち(読者)を見つめる目を見ると、自分の動悸が乱れる様な 気持ちになる。見つめられてドキドキする。相手はマンガなのに、だ。 あと、いち30代エロ親父としてオーナー(の思考パターン)の愛らしさには キュンとなるものが。いいなーこういうの。いや、33歳と16歳なんて、別に あったっていいじゃん、と思うけどなー。3巻p143あたり、思わずブルッときた。 あー、もー、ホント。たまらんぜ。あの状況で思い浮かべるのがブルマ(スキマ) だからなー。いやわかる。わかるぜ。なあ?(なれなれしく肩を叩く感じで) 4巻のp52「じゃあ、そっとする分には平気か?」とか、酔ってる勢いで思い切った 事を!とかドキドキしてしまう(頭なでるだけだけど、このオーナーの感性から すると、すごい思い切った流れなんじゃないかと思うんだ……) 4巻の店長の話も、この作者らしい「地元感」が出てて好きだ。こういうのが 描ける人は強い。何でもない、でも自分ではないだれかの日常。いいなー。 このさじ加減のまま、ゆっくりと幸せに進んでいってくれればと思う。 (主人公?なひろみは、割とどうでもいい) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/05/20)
那須雪絵「魔法使いの娘 1」/新書館/2003/09/25 那須雪絵「魔法使いの娘 2」/新書館/2005/01/10 那須雪絵「魔法使いの娘 3」/新書館/2005/11/10 いや実は面白いんですよこれが。 「実は」という言い方をしちゃうのは、まあこの作者の最近の評判を聞いてたから でもあり。いや、男子には解らないだけで、女子には相変わらず受けてたのかも しれないけど……。 でもこのマンガは、なんというか、まっとうに、(恐怖)マンガ。 Wingsらしいというべきか。 とにかく一話一話がきちんきちんと面白い。改めて、この作者は本当に頭が良い、 というか、「冴えて」いる感じがする。いろんなモノが見えている、 ”見えている様に”描けてる、という感じ。視界がクリアで、情報量がしっかり あって、読んでいて気持ちいい。なんというか、”読みで”がある。 主人公鈴の木初音はおさんどんが板に付いた女子高生。 一巻の表紙を見ると左手には御札、裏表紙にまわった右手にはチンゲンサイ?が 握られているという有様。わかりやすい。 タイトルの「魔法使い」であるところの父親は日本一の陰陽師。 でも実の父親じゃなくて、初音の親の親友、ということらしい。陰陽師としては 日本一だが人としてはいろいろ問題のある性格。妻とはいろいろ事情があって 既に別れており、家庭は彼女が切り盛りしている。 父親(ではないのだが)の性格がエキセントリックで、才能だけはあるけど 常識レベルでの生活力が皆無、対して主人公女子が地に足のついた生活者、と いうのが実に「らしい」バランスを保っていて、ホンノリといい関係。 結構ひどい目に遭ってるんだけど、「生活」というのが主人公を支えている。 この「(女性ゆえの?)強さ」に読者は安心し、またあこがれるのだ。 3巻の帯に曰く「陰陽師も妖怪も呪いもまるっとまとめてお説教よ!!!!!」 作品世界の作り込みがいい、のかな。キャラの立ち具合、というのとも違うけど、 キャラ周りの空気の作りが一貫している。 「生活者」である主人公にするっと感情移入できて、我がことの様に読める。 マンガの中の温度が心地良いというか。うまく言えないけど、いや、好きなんよ とりあえず「安心して読める」レベルの高い作品だと思います。おすすめ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2006/01/07)
TAGRO「宇宙賃貸サルガッ荘4」/エニックス/2004/08/27 このマンガには「志」を感じる。 読み終わって、もう一度、今度は正座して読みたくなる位だ。 この作者は間違いなく「漫画家」だ、と思う。うまく言えないけど、 漫画家、という生き物の匂いがする。喜びも怒りも哀しみも、全てを紙の上で 表現してしまうタイプの人種、の描いた作品だ。 「ずうずうしいのは承知の上で  期待しちゃいけませんか?」 「今は平らだから  もっとちゃんと嬉しくなりたい」 いやもう、ラストのメウの表情、仕草、台詞、それらを包む一連の「シーン」…… 異常な程の「力」を感じる。感じさせられる。この胸の痛み、やり場のない 「ううっ……こりゃいかん、なんとかせねば……男として……!」な感覚。 己の「男」を試される、この感じ。 本来傍観者である所の読者が、瞬間「ああ、どうしよう?」と本気で胸を痛め、 本気で考えてしまう、その一刹那(が僕の上にはあった)、この感覚は「本物」だ。 ぎしり、と胸に食い込んでくるキャラクターの存在感。空の青さ広さ。その時間。 単なる暇潰しに読むソレとは違う、読者を本気にさせる空気。 各キャラクターの生き様に、いちいち存在感がある。繊細、というのでもないが、 ただ、彼等の思考の展開、彼等の生き様の、その(如何にも青々しい)肌合いが、 僕にとってはひどくリアルなのだ、ということ。 いや、マンガってスゲエな、と久々に思わされる。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (05/03/06)
木村紺「神戸在住 5」/講談社/2003/04/23 アフタヌーン'02/01-'02/10の掲載分を収録。 個人的に今巻のヤマ場は第41話「私がもてた日。」雑誌で読んだ時は、もう なんか読んでる間中全身が緊張してたのを覚えている。 この作品は、主人公辰木桂の「日記」の様な体裁を取っているんだけど、 その日記の語り手である辰木桂と、語られる対象である回想のなかの辰木桂、 そしてその「日記の語り手である辰木桂を描く木村紺」の間の距離が妙に 近い感じがして、まあ、要するにドキドキしたんだよ、という。このマンガが つまり主人公辰木桂「そのもの」なのだ、という事を強く感じさせた。 この作品の「現在」は、語り手である辰木桂の現在であり、その現在は確実に 変化していく。周囲は「経験したい盛り」であり、その経験を開陳したい盛り でもある。そういう場所に居合わせる微妙な感じ。恋愛、というその一事を 真正面に生きる者達と、そうでない自分、を俯瞰して語る「わたし」。だが、 その「わたし」へも、木村紺はだんだん、だんだん、踏み込んでいく。 その、「だんだん踏み込んでいく」のが、どこまで作者の意図したものなのか。 これは、正直、凄いマンガだと思う。凄いことだと思う。 徹底的に「今のワタシ」を語り、しかしこれは明確に虚構なのだ。東京時代の 友の造形とか、モデルはあろう、あろうが、最大公約数的なものも見える。 ……いや、よそう、この作品に関してそういう「勘ぐり」は無意味だ。 でも、じゃあこのマンガをどう語ればいいだろう。分析的な事じゃなく…… 自分の経験を、体験を開陳する他は無くなってしまう。そこで、僕は 口をつぐまざるを、得ない。 凄いのだ。面白いのだ。胸を締め付けられ、何をか語らなければいけないという 気にさせる。でも、それを語る言葉が(本当に)見つからない。 世界には生きるだけの価値がある。町には見て回るだけの風景がある。 人と対話し、空を見上げ、本を読み、過去を思い、大切だったことを忘れない。 この漫画を「語る」にはまだまだ僕は経験値が足りない。ただ、この漫画を 読んでいる間だけでも自分の上に舞い降りる「何か」を、できるだけ放さないで 日々を生きていたい、と、まあ、そんな曖昧な、感想。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (04/06/21)
イラ姫「最終シスター四方木田 2」/集英社/2002/12/18 感想を書こう書こうと思いながら、でも買ったばかりだと思っていたらもう秋に。 ……何度も読み返していた癖に、「トランス・テンペスト」の物語の意味が全然 解って無くて、こないだ何となく読み返して「あっ、こいつコランか!!」とか 今更の様に気付いてみたり(主要キャラの出会いシーンなのに、全然気付いて なかった)した。まあその程度の読解力の持ち主が書く感想なので、テキトーに。 適度なスピード感のある線がいい。確実なデッサン力を感じさせる背景がいい。 教養を感じさせるキリル文字風の描き文字が良い。毎回の見せ場で見せる盛大な 大ゴマが本当に本当に良い。上手い!と心の中で叫んでしまう。 僕はこういう絵を「上手い絵」だと感じる。人それぞれに漫画絵に対する好みは あるだろうと思うんだけど、僕の脳はこういう絵を「上手い」と感じる様だ。 あとはキャラクターに対する、近すぎない愛情。「世界」に対する感性のキャパの 広さを感じさせる。視点を少し変えるだけで、世界は、「毎日」は、こんな風にも 見える、筈だ。エブリデイファンタジー。と、まあ僕にとってはこれは本当に傑作 シリーズであって、その辺多くの人に薦めて回りたい気持ちもあるんだけど…… でもこの作品に心が揺さぶられるのは、多分心に埋め難い欠落がある人なんだろう とも思う。それが悪いとは思わない。欠落があるからそれを埋めようとして僕らは 生きている訳で、つまりそれが埋まってしまった人には必要の無い作品だろうと。 ……こんな事書くといよいよ人に薦めにくくなるな…… 好きなキャラは多いけど、個人的にはやっぱシスター八ツ頭かなー。 カウンセリングの下りとか見てると、実際この人は年の割に苦労しているというか、 人が出来てるというか、チャーミングな人だと思う。大きさ受話器位だけど。 こういう感じの「妙齢の女性」感触に弱い。「女の子」でも「オバサン」でもない 「お姉さん」的な。 アーメンガートのさっぱりした造形と性格も好きだ。この子も絵が生きてる。 「サイレント・ナイト」で登場したリサのドイツ版もいい。咄嗟のキスシーンで クラっとするよ。 「冬の旅」の神田川ミチコの存在を「そういうもの」として受け入れる、その 世界の度量の広さに惚れ惚れする(「眠ってたからと齢とってない」って当たり 前のように)もー何かこう、ああ、そういうのが「普通に」在り得る世界ってのは、 豊かだよなあ、とか思うのだった。 コマ構成とか良くできてると思うんで、漫画好きならそっちの支点からも是非 読んで頂きたいシリーズ。やっぱ、無条件でお薦めしておきます。オススメ! @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (03/10/30)
幸村誠「ΠΛΑΝΗΤΕΣ(プラネテス) 3」/講談社/2003/01/23 「宇宙で暮らしているとね  それまで築き上げてきた価値観が崩れて無くなる瞬間に遭うのよ」 「あんたを底抜けに愛してくれる人が 見つかるといいねェ」 ハチマキのシリーズはこれで終わりらしい。 なんかねえ、最初良くわかんなかったんですよ。え、ここで終わるの、とか。 期待が大きすぎたかなあ、とか。でも、つらつら読み返してたら、何か、あー、 そうか、とか思えてきて。腑に落ちる、っていうのかなあ。 これは結局、宇宙飛行士のお話である以前に、男の人生の物語なんだと。 ハチマキがかかる「はしかのような」、価値観が全否定される瞬間、っていうのを ある程度の年齢になった男なら(女でも)誰しも持っていることだろう、と思う。 社会に出て、仕事をしていると、学生時代に抱いていた「目的」とか「目標」とか そういうのが段々失われていく。失われる、というか、価値観が「世間」の値で 修正され、上書きされていく。自分は世界の中心じゃないと思い知らされるし、 自分が信じてきた「美しいもの」は、目線が変わると実は大したことのないもの だったりする。そうやっている内に、自分の中にある「物差し」を放棄せざるを 得なくなって、判断を「世間標準」に任せてしまう。 そして今はただ「過去の自分」が引いたレールの上を、惰性で転がるだけ。働いて、 働いて、でも何のために?「物差し」を失ってしまって、もう今の自分が「良い」 のか「悪い」のかもわからない。ただ真面目に仕事をこなすだけ…… 自分の居場所、人間関係の中での「自分」を見失ってしまうと、こんな風にもなって しまう。給料分の仕事だけを、真面目にやってりゃいいんだろ?と、だけど、それ では「もたない」のだ。職業人として。再構築が必要になってくる。 その揺れ具合、立ち直ったと思ったらまた壊れてしまって、というその「揺れる」 感じが何というか、実に「解る」。以前の自分との折り合いとか、そういうのを (時間をかけて)つけていく過程、っつーか…… (この作品世界での結論は)人は自分の居場所を、「自分の還る所」を見つけて ナンボなんだよ、と。自分だけの女の胸を”確保”して、初めて「外」に向かって 行けるんだよ、と……そう言うことを最近よく酒の席とかで既婚者に言われては 凹んでいる拙者な訳ですが。でもまあ、そういう「常識者」に向けて描かれた漫画 なんだから、これが正しい。「正しい」のだ。「結婚したい」と思う理由ってのは、 もうこれが全てなんだろうとか思う。ましてハチマキみたいな男がそう思うには。 「俺の帰る場所」をマークしておきたい。ただそれだけの、根元的な感覚。 で、まあハチの方の描写はそういう極々オーソドックスな「男の物語」としてまとめ られていて、読んでいてじんわり来る訳だけど、もう一つ、タナベの出生からの 描写が不思議に面白かった。なんか結婚式でお互いの生い立ちを紹介する感じ? 雰囲気がもうモロそんな感じで良いのだった。然し”両親”の造形はイカス。特に 「女のカン」に「まいりました」と苦笑いするオヤジの格好良さにメロメロだ。 オヤジと言えばハチのオヤジもイカスよなあ……ハチ出生の下り、多分あの細々な 電話の下りが描きたかったんだろうけど、いやラストあたり実に爽快でイイ。 男はこうありたいね…… 舞台は宇宙だけど、本当に普遍的なテーマが扱われていて、それ故にこれは普遍的な 名作と言える。人間の、男の人生の機微を描けた、いい作品、いい漫画だと思う。 僕も読みながら一緒に悩み、考え、ハチの成長を追いかける様に……しかし、ああ、 これを描いているのは、僕よりも二つも年下の奴なのだ!! まったく、つくづく人生をちゃんと生きてない @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (03/10/26)
桑田乃梨子「桑田着ぐるみ劇場 だめっこどうぶつ1」/竹書房/2003/07/28 タイトルに偽り無し。だめなどうぶつ達の集う、だめな森での楽しい生活。 だめが集まる、だめパラダイス。 ファンタジー、というか……朝日で紹介されたときは「脱力系4コマ」とか 書かれてて、いや!それだけじゃないんだよ!いや確かに脱力だけど!とか 思ったのを思い出した。……でもそれだけかも。 あーやっぱくわ田はいいなー。たまらん。このダメさ。いや「だめ」さ。 だめを肯定するのではなく、また否定的に描くのではなく、愛しいと思わせる。 ……と同時に「だめ」に対するイライラする感じ(ツッコミで表現される)も あって、まあその愛憎の共存が、この作家の魅力だ。 着ぐるみ表現は真夜中猫王子の延長線上か。最早舞台は「学園」ですらない。 けど、基本的には何も変わらない。キャラクターが集まって、だめな会話して、 それが楽しい。そういう漫画(それが証拠に巻末では学園ネタをやっているが、 全く違和感がない)。森の動物たちの会話劇とかいうとぼのぼのみたいだけど、 もっとこう……くわ田的なんだよな。実に。桑田節炸裂、という感じ。 どのキャラクターもホントに愛しい。いいんだよホントに。うさ原(乱暴な与太者、 誰も見てなければ雨の中で捨て猫を拾う)もいいし、ゆに彦(女の好みが歪んだ ユニコーン。森の主。適当過ぎる生き方がたまらん)もいい。タカ岡もいいなー。 って男ばっかりか。ちー子ちゃんもいいけどねえ。あの「てへ」がたまらんぜ。 つーか、うる野(狼なんだけどウサギの心をもつ、他の追随を許さぬだめ王。 犬神ライクな主人公)のキャラのだめさ、乙女さがたまらん。この澄んだ瞳…… そしてだめな性格……結構好きだ。だめ、っていうより、弱気な良い奴、なん だよなー。押しが弱い癖に打たれ強いというか、自分の世界大事さに絶対に成長 しないタイプ。あー。癒される……あの瞳に癒される……乙女だし。p89で ブドウ取ろうとしてる絵がたまらん。 ということで続巻にも期待だ。 「夜中に目が覚め自己嫌悪で走り出したくなる会」には参加したい @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (03/09/01)
漆原友紀「蟲師3」/講談社/2002/12/20 山村やら漁村やらの風景がこの上なく「染みる」。 実際に「そういう場所」で生きてきた訳ではないけど、日本昔話とかで 刷り込まれた「体験」が蘇ってくる感じ。日本人としての、過去というか。 この作者にとってこの手の世界観は果たしてリアル(実体験から来る)なのか 全くの虚構なのか。まあ、後者なんだろうけど…… いやしかし、正直この作風で安定するとは思ってなかった。 描いているうちに、もっと(手間のかからない描線に)整理されていくかと 思いきや、初回から手間のかけ方が(見た目には)殆ど変わってない。 絵の持つ奥深さ、質感……何というか、土蔵の漆喰の様な、乾いているのに 湿っているような……昼の日の光の下では目につかないが、確として存在して いる闇、というか、日影、を想像させる。その肌触りが最初から変わらない。 ネームの練り込み具合も変わらず。漫画読みとして唸らされる(鳥肌が立つ) 事多し。この懐の深さはどうだ。構成の巧みさというのはこういうのを言うのだ、 と思う。キャラクターの造形(顔の造作と服装に人生がちゃんと描かれている)、 配置、カメラワーク、背景の選び方まで、計算された「絵」がネームを支え、 「絵と文」が渾然となって迫る。それが醸し出す作品の「格」のようなものを 感じざるを得ない。 これだけの「風格」を備えた物語を、恐らく作者は取材無しで(やり様が無い だろう)描いているのだと思うと、つくづくこの作者には一体どういうバック ヤードが有るのか、興味が湧く。 数世代の口承を経て来た様な風合い(だが「昔々ある所に」ではなく)をリアル タイムで生み出せる筆力。真似しようとしてできるものでもない。 ……なんか作品の外側ばかり話している気がするけど、一話一話の感想を語り 出すと5時間や6時間では終わりそうにないし、誰も読んでくれそうにないので、 うーん、困ったな、と。ホントにどれも良くできていて、どれも捨てがたい。 「ここがいい」「あそこがいい」ってのを、誰か好き者と夜通し語り明かしたい、 そんな感じの出来。降ってきた霰食ってるシーンとかにゾクゾクしたり。 あーこーゆーの描けたら幸せだろうなあ…… 一話一話が見事に構成されていて、それだけでも感動するんだけど、各話 それぞれの読後感の清冽さというか、夜明けの様なキリッとした切り上げには ただただ脱帽。畏敬の念さえ覚える。 「蟲師」という(この世界での)理に適った「科学の力」で貧しく苦しむ人達に 希望の光を。貧しさの中にこそハッピーエンドがある。文明の光でもって闇に 光を当てて「退治」するのではなく、自然の摂理の中で「あるようにある」蟲 (これは或いは我々が言う所の「神」か)と共生する(或いは逃げる)「術」を もって、もつれた糸をほどく。それが結果として人を救う事もある。 彼等が貧しいからこそ、苦しいからこそ、示される解決の光は清冽で美しい。 兎に角唯一無二の作風と言える。水木でも諸星でも京極でもない、闇との共生。 ギンコがギンコとなった下りも味わい深い。その生い立ちより入って、一気に 「闇」を読者に体験させる。あのカケアミの深さたるや! 彼が何故今の様なスタイル(フィールドワーク+虫下し)で生きるようになった のか、読み終わって「ああ、成程なあ」と納得させる、このネームの力。でも この手の「正体明かし」はもっと後でも良かったんじゃないかなー。いや、まだ その蟲師であることの「理由」(それ以外なれない、という消去法以外に、何か 有りそうな気がする)は明らかにはされていないか。 個人的には、本誌連載に移って、巻数が重なる事でこの幻想的な「昔」があり ふれた歴史上のどこかに固定化されてしまう事を恐れるものだが…… それは杞憂というものか…… 化野先生との掛け合いから思わずキャラ漫画へのシフトを期待してしまう安易な 自分を戒めつつ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (03/01/11)
田丸浩史「最近のヒロシ。」/角川書店/2002/12/25 近所の本屋に数冊入っていた。速攻ゲットして読んで、そのウェットかつ ワイルドな内容に悶絶する。立て続けに読むとクるなーこれ。 古くはながいけんの「サラシナ日記」(黒人人形ーッ!)以来、この手の駄目 オタ兄貴若衆宿漫画には目が無い。婦女子にはとても勧められないが、スネに 傷持つ兄貴達には激しくお勧め。 飲んで騒いで楽しく生きたい。所詮人生は死ぬまでの暇潰しだ。 ……ていうかそれ以上どんな感想を抱けと。 職業柄出歩かないタイプの作者が描く、地元のツレ達とのズルズル日記。 この年代にありがちな「バイク」「モデルガン」「飲み」などが語られ、 実にもう、あーいるいるこういうヤツラ!的な。 「こういうヤツら」が集まって酒盛りするとどういう事になるか、って のが、まあ、非常にリアルかつ痛烈かつ面白オカシク描かれていて、何か ホッとするというか懐かしいというか痛々しいというか(痛々しいのか 実際にああいう連中の飲み会に「参加」すると、命の危険も感じたりするよ。 安全圏から見てる分には面白いけど。 いや、この作者は間違いなく今の漫画界に必要とされてる作家だから、どんな 生き方して手も「漫画家」としてのキャラは立ってる訳でさ。「何者でもない」 状態でこんな生き方(遊び方)はなかなか、出来ないよねえ。 って全然人のこと言えないくらい近いことやってるけどさ。 今年で29になる男の、休日(今日)の過ごし方が 「どれみ49話見ながら涙した後ツレと近所の焼肉屋で昼飯食って  ゲーセンに行った後ツレの部屋でホビージャパンとか読みながら  PS2でジョジョ、帰って来てマンガの感想書き」 ってのは、なー。 で、まあ、彼等の生活スタイル自体に(今更)憧れる訳でも無し、結局田丸的 ギャグ「表現」の現在を日記スタイルで楽しんでみました、みたいな事だけで 充分とゆーか。いやちゃんと面白いんですよ。マージーでー。 個人的には同人誌にからの再録で編集者漫画が抜かれてたみたいなのは残念。 うう。読んでみたいよ…… とりあえず脛に傷持つ兄貴達は必読。絶対笑えてやがて哀しい。おすすめです。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (03/01/11)
木村紺「神戸在住 4」/講談社/2002/05/23 アフタヌーン'00/11-'01/1、'01/05-12での掲載分を収録。 震災話も抜けて、また身辺雑記的な姿に戻っている。 友人観察記録の様でもあり。 小池君や鈴木さん、友人達の描写に、愛を感じる。敬愛というか。 他人に自分の友人達を紹介するとき、「こいつはこんなに素敵な奴なんだ!」と 紹介したくなるのは自然な事だ。大体嫌いな奴なら友達にはならない。 この人達はスゴイ、こんなスゴイ人達と友達でいられる自分はラッキーだ、 何故自分の様な人間と友達づきあいをしてくれたのか分からないが、そういう 友人達とつき合っている自分にも誇りが持てる。そういう…… 作者−主人公のレベルを意識して読んでいるわけではなくて、 漫画を読んでいる間は、桂がそのまま語っている、という感覚で読んでいる。 虚構か現実か、は、何というか、この際いいじゃないか、と思う。 ただ、あっ、と思ったのは31話、大阪篇(これはなかなかのボリュームだった。 ページ数的には表紙込みで17頁、と普通なんだけど、倍くらいある様に思える)。 神戸というと、どうもあまり馴染みの無い自分、虚構と現実の境目に特に意識は 行かなかったんだけど、この回で梅田周辺の話が出てくると、途端に 「あっ、じゃあ彼女等はやっぱり”居る”のか?」と、妙に気になってしまった。 実際に神戸在住の人なんかは、この漫画を読んでどう感じているのだろう? その辺が気になる…… 漫画読みとしては「なぜこの漫画を読んでいると面白いのか、その理由」を 何とか言葉にしてみたいんだけど、うーん。何か…… この作品を言葉で語ることで、汚してしまうのではないかと恐れるですよ。 作品を「読解」して、○○はつまり○○って事でさ、とか、 この辺の描写上手いよなー、とか、そう言うことを言ってしまうと、一番 大切なものから遠くなってしまう、そういう感じ。……いや、そういうキレイ な話じゃなくて、つまり、ボクの言葉では、語れば語るほど「何故面白いのか」 から遠ざかってしまうんでね。こーして逃げを打つわけです。 作者は時々意図的に読者から「語り」を引き出そうとネタを振って来てる様に 思えるけど(「帰れチョン公」とか)、それに対して「そうそう、それは―」と 語るのは、何というか、その資格がある奴しか許されない様な……上手く言えない。 少なくとも僕にはそれを「語る」(卑近な例を出して俺語り)資格は無い。 真実であろうと、無かろうと。 その作品に込められた「センス」を信じる。 例えば、「血がダメなんて変だねえ 女の人なのに」とか、そういう台詞を 埋め込む感覚を。漫画っていうのは、どんな描写にも作者の意図が込められて いるもので。カケアミひとつとっても。 んー。いつか上手く言葉で表現出来る日が来ればいいけど カバー下のハイテンション漫画も楽し。大河渦って一瞬何かと思ったよ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ ※あ、一つだけ。 関西文化圏の中で生きる上で、関東人の桂は、いつもいつもボケから入る関西人の 会話の中に巻き込まれて、ぼのぼのの如き汗を飛ばしている。その気持ちは解らない ではない。というか、解る。あの手の会話にツッコミを入れられないで、兎に角 「あはは」と笑って誤魔化してしまう、己が会話センスの無さに毎日苦しんでいる 身としては。上司のツッコミ待ちのボケにツッコミ入れないのも失礼やし、ツッコミ 入れすぎるのも失礼やし……とか、あんのよ、そういうの。はー。 (02/07/09)
太田虎一郎「宇宙の法則世界の基本 2」/コアマガジン/2002/04/10 なんかボンヤリしていたら発売されてから3ヶ月も経過しているワナ。 ボQ。 一巻が出たときも思ったけど、結構みんな(みんなは禁止)読んでるよねえ この漫画。あずまんが並とは言わないにしても。 四年半分('97.11月号〜'02.5月号)を収録。流石に多い。 読み通すのに半時間かかる。 この辺になるともうあんまり掲載紙で読んでないので、割と新鮮。 でも「俺の知らない所でなんかブームが起こっては終わっていく」という事に 一抹の寂しさを感じたりもした。よく分かりませんね。こういうのは乗って いかないと寂しさだけが残るよ。ああ神よコンビニで「ばんがいち」立ち読み できる勇気を我に。買えよ。 挿入される時事ネタっぽいやつは、大抵半月もしたら分からなくなる 微妙ハンターっぷりなので、今読むと本来の味を100%味わえてない感触も。 うう。やっぱ乗り続けないと駄目か。10年後に再販されるときは、是非時事ネタ 解説ページを設けて頂きたい。 何て言うか、脳のテンションを下げているときに読むと、たまらなくクる漫画 ではある。大学時代の深夜の空気を思い出す事だよ。何者でもない自分、が 真夜中、一人部屋でテレビを見ているときの、あのナチュラルな感じ。 うさぎ星人シホの貧乏ネタとか、何て言うか痛みの無い貧乏さみたいのが、好き。 下層貧民っぷりが逆に宇宙人であることを浮き彫りに……しているというのか? 「あーぜいたくさんだ 今の私ぜいたくさんだ 近年まれに見るぜいたくさんだ」 は自分の中で結構流行った記憶がある。カップ麺食うたびにこのフレーズが。 あとネコ部隊は微妙。好きだけど。「宇則世」的にはどうよ?という。 あと特筆すべきは前田愛なんですが、まあ子供が成長するのを責める理由は無い 訳で。いやホントに。 何にせよ愛しい事に変わり無し。ドキドキ対決も100回を迎え、果たしてどこまで 続くのかこの漫画。この世の終わりまで続けと祈りつつ。 ドキドキ対決ベストバウトは個人的に「両手でバイバイ小刻みにぷるぷる」。 「一時間見てても飽きません」、との評に、心、洗われました……(ガトー) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (02/06/28)
TAGRO「宇宙賃貸サルガッ荘1」/エニックス/2002/05/27 TAGRO氏のメジャー路線単行本。 元来、こういうスタイルで世に出るべき作家、だと思う。作風にピッタリだ。 ……だから、巻末のハゲ鬱マンガは、寧ろ余計だったかも、しれない(暗部を覆い 隠してして生きよ、とは言わないけど、無くても良かった)。それくらい、この 作品は作者の「本道」に見える。 宇宙での戦闘中、被弾して生死の境を彷徨っていた主人公・テル一等兵は、 サルガッソーの魔女・メウと名乗るカワイイ少女(でも真空中でノーヘル)に よって救われる。 連れて行かれた先は「木造モルタル二階建て全六戸+管理人室 築230年相当」の ぼろアパート。其処には一癖も二癖も有りそうな連中が……という訳。 タイトル通り、宇宙サルガッソーに浮かぶぼろアパートを舞台にした、六人の住人 と管理人さんの話。めぞん一刻というよりは優&魅衣、な感じで巻き込まれていく いろいろと若い主人公。脱出することを許されない「サルガッソー」の日々を捨てて アパートから「出て行く」事が、恐らくはテーマか……或いは……(先読みしすぎ) マンガとして非常に手慣れている感触。連載開始直後は特有の展開の詰め込みが 鼻につくけど、回を重ねるとどんどん展開に余裕が出てくるのが分かる(だから その後でパイロット版を読むとクラクラする……)。プロの仕事、というか、さ。 作者の持つキャラ造形の味わい、絵柄の完成度の高さ、工芸品的な美しさを存分に 堪能されたい。同時発刊された「マフィアとルアー」の闇の部分は、勿論作者を 論じる上で併読推奨だけど、個人的にはこの作品だけでもイイと思う。 売れて欲しい。 漬け物少女・アサの造形はくみこ系で非常に好み。続刊を楽しみにしたい。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (02/05/24)
北道正幸「ぽちょむきん 3」/講談社/2001/11/22 「ドカニャン」のショック以降、スカタンシリーズを読んでみて、 あー成る程、こういう作風だったのか、と。その上での第3巻。 てゆーか 結局「どっちなんだ」っていう印象は変わらず、なんだけど。 いや、その「読み切れ無さ」こそが作風なんだろうと。 シリアスの骨組みの中で、毎回毎回枚数が尽きるまで、ただボケ&暴走ノリ ツッコミを繰り返す。登場するどんなキャラも、ボケでありツッコミであり得る。 読者は「え?今のとこ笑って良いの?いや笑っちゃったけど、でも?」みたいな 微妙な笑みを顔に張り付かせたまま読み進める事になる。 なんか、こーゆーの凄く好きだ。好きなんだよー。何かね。笑いつつも、毎月 ちゃんと”展開”していくっぽい”物語”を、立ち読みで追いかけている。 買えよ。 然しつくづく絵が上手い。上手い、というか、巧い。 「スカタン」あたりだと多分に「絵」が強かった気がする。異常な「デッサン」 への拘り、或いは背景の瓦一枚一枚に至るまでの描き込み。アシスタント何人 使ってるのか知らないけど、あの徹底ぶりはもうなんたらフォビア、って奴じゃ ないのかと思える程。 スカタンの頃に比べると背景のうるささは減った気がする。描き込みは減って ないけど、重点は別の所にある感じ。あ、でも人間の「デッサン!」臭は今作も 変わっていないか。どこから描いても嘘が無いタイプの。脳内に人体ブロックが きっちり出来ている、アメコミ系の骨格作画。緻密な背景とのパース合わせも お手の物。……羨ましい。 以前は、その「必要以上に正確な」画風の上で、ワケワカンナイギャグ (ナンセンス)を延々やってるという、画力とギャグの、その乖離感が「面白さ」 だった、んだと思うんだけど、この「ぽちょむきん」には、プラス「物語」を 感じる。首都圏を震撼せしめる壮大な物語の蠢動を通底音に、登場人物達が 延々とボケツッコミを展開するほのぼの日常学園悪の秘密結社改造人間猫漫画。 わからねえー。でも「スカタン」のぶつ切り具合に比べたら。 やーでも、この絵とギャグと物語が、変な所でバランスをとっている感じは ホント魅力的だ。全身全霊を込めて読者に肩すかしを食わせているよーな。 「激闘、加賀百万石!」の、画力がもたらす「雰囲気」と、構造のちぐはぐさ なんか実に良い肩すかしっぷりと言える。不安感をあおるBGMを延々流しながら、 実相寺演出でドリフをやってるよーな。あ、でもこの回は本筋とはあんまし 関係ないから物語の魅力を語るには、えーと。まあいいや。 読者からのお便りじゃないが、「さんざん引っぱってギャグで逃げた」を、 否定はしないけど、さてどーなるんだろーなー、と思いつつ 今月もアフタヌーンを立ち読みするのだった。 柊風子&ソウルブラザーは一時某絵チャでブームだったものだよ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (02/02/05)
サムシング吉松「セガのゲームは世界一ぃぃぃ!2         ドリドリキャス子さん」」/ソフトバンク/2001/10/12 一部で話題だった「セゲいち」の続刊。話題の週刊PB掲載分(あの等身低げ且つ 過剰な身体のラインは如何にもキャス子っぽいな)にWeb版も込みでお得感高い。 読み手に一定の基礎教養は要求されるにしても、その「時代の空気」を封じ込めた 読感は、是非多くの人に味わって貰いたいものでもある。 いや、もー、とにかくじくじくと凍みるよなこのマンガ。何なんだろう。 いや単に笑い飛ばせば良いんだけど、こう……リアルタイムで読んでてもアレ だったのに、今斯うして読むとねえ。なんか、「負け組」つーか、「悲哀」の 持つなま暖かい心地よさっつーか…… 「セガバンダイは世界一!」(不憫なピピンちゃん)とか読んで心震えたろ? 僕は震えたね。 足が。 こわー。もーホント怖い。 この「全然シャレになってない、刺だらけの笑い」がこのマンガの主軸で。 つまり冒頭のマンガにあるよーな、「ギャグのつもりで頭に銃弾受けたら 死んでた」的な……精神崩壊したりクビ吊ったりして死んでいくのがオチの ギャグマンガってどうよ。何とも心温まるものがある。 いやー、ギャグの皮に包まれてはいるものの、トゲ出まくってるよなー。 シビア、つーのか。いや、そのトゲがいちいち「的を射ている」からこその 怖さで。実際「キャス子・ザ・スペシャル」の扉、日本中がPS2で埋め尽く されていく絵の「うひいいぃ〜!」感はスゴイ…… いや、でも笑うんだけどね。ゲラゲラ、というよりは、グフグフと。 笑わざるを得ないよー、的。笑える。笑うしかないじゃないか!!みたいな。 いやだからちゃんと面白いんですってば。それは前提として。 巻末インタビューは非常に有意な内容。これ読んだだけで、僕らが「人冗」以降 追い続けてきた「漫画家」サムシング吉松の軌跡を一気に辿ることが出来る。 いや、長生きはしてみるものだ。然しそうか、ぴちけつの影響だったかー、って 見りゃ解るか。あの人も公務員試験云々言っててからその後どーなったのか全然 知らないよ。読むの止めたから。一人ランバダ!とか後半どんどん暴走していって 面白いんだか何なんだかわかんなくなってしまったけど、あの感性は無茶苦茶 好きだった。絵上手かったしなー基本的に。作品集誰か持ってなかったか。 インタビューでも語られている、「インチキ漫画家」っぽいスタンスこそが その魅力でもあるこの「マンガ家」、是非その行く先を追いかけていきたい。 (つーかこれまで十何年も追いかけてるっつーか) ……然しサムシング吉松の「マンガ単行本」が本屋で平積みの時代だもんなあ。 これが21世紀だというのか! あと適当に ・ACプラグ萌え。ACプラグ型コンセントカバー所望。 ・リモココロンでトイレからエロ本持ってくるナオミ姉さん萌え。 ・守護ゲーム機はWSカラーだった ・一番笑ったのはp109のオチ「その頃― ポックリ」。これだ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (02/01/18)
高橋葉介「KUROKO―くろこ― 1」/秋田書店/2001/04/15 高橋葉介「KUROKO―くろこ― 2」/秋田書店/2001/07/20 高橋葉介「KUROKO―くろこ― 3」/秋田書店/2001/08/20 高橋葉介「KUROKO―くろこ― 4」/秋田書店/2001/10/25 現代の闇に巣喰う化け物・妖怪達を狩る者がいた!!その名は”黒衣”。 彼らは「憑き物落とし」と呼ばれ、様々な不思議な事件を密かに解決すべく、 活動していた……(あらすじより) 「学校怪談」的恐怖短編の積み重ねかと思いきや、作り込まれた長編的完結に。 長編ならではの風呂敷の広がりと集束。短編の積み重ねでいつの間にか長々と、 というタイプの作品とはちょっと違う良さがある。まー短編も好きなんだけど。 然し、なんかこの人純粋にエヴァの影響を昇華してんじゃないか…… と思えて仕方ない。 このKUROKOのオチだけならまーありがちとも言えるんだけど、前の「学校怪談」 がヨウスケ版シンジとアスカだったからさ。いやだからって面白く無かった訳じゃ ないよ。昇華してる、ってのは、つまり「少年誌向けによりよく完結させた、プロ の手並み」を感じたって事で。いや、こういうオチの「雰囲気」ってのは、やっぱ なかなか出せるもんじゃないと思う。 絵の魅力は相変わらず。あのペンタッチだけで十分満足。 キャラも相変わらずイイ感じに立ってるし。黒衣コンビの片割れ、紫奈乃の造形の 魅力なんかはこの作者ならではという感じで好きだ。出自がビンボーでドジで マヌケでいじらしくてカワイイとゆー。あとババアとオヤジもやたらイイし。 もえぎちゃんは高橋版榊さんってとこか。イイ。 あと1巻にはサスペリアに載ってた夢幻紳士も入ってるんでこれも是非。 これがまたカッコイイのよ。やっぱこの辺描かせたら天下一だなーと思える位。 個人的なベストは2巻。「妖魔を創る男」は何かいろいろしみじみしたのだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/12/24)
桑田乃梨子「蛇神さまといっしょ 1」/白泉社/2001/12/25 にゃー面白ぇー。 駄目だ。とてもかなわん。にやけてしまうよ。 背景のクラスメート達がごちゃごちゃ言ってる書き文字がホントにもー 愛しくて愛しくて愛しくて愛しくて。あああー。 ―作品かいせつ――――――――――――――――――――――――――――― 千菜の幼なじみの大将(ひろまさ)の様子がなんだか!? 卵を丸のみしたり、 目つきも言葉使いも変。 取り憑いたのは、蛇塚の可愛い神様だという けれど……!? すっかり学校に馴染んだ蛇神さまの無邪気な行動に千菜は ハラ2ドキ2v さらに蛇神さま自身が「封印した記憶」も気になって……!? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ってこれはカバー折り返しの解説ですがまあそういう話。 ほのぼのとした田舎の風景(田んぼのあぜ道を徒歩で通学してて、途中に蛇塚 があったりする環境)と、そこで当たり前に暮らすキャラ達のほのぼのさ加減が 尋常ではない。 ライバルとかも出てくるし、一応ラブコメなんだろうけど……その辺はまあ おいといて(恋愛暴走モードに入りそうになる時の千菜の自己ツッコミはスキ) ホントこの「終わらない放課後」っぷりがさー。 蛇神さまが卵丸のみする時にメガネ君が「あ その音スキなんだ きかして」 とか寄ってくるあたりでグラッときた。凄すぎる。 で、一番好きなコマはp117の3コマ目 「にこ」 この”間”こそ! 巻末くわた通信もあり。いやーイイもいん見たよ! @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2001/12/21) http://www.diana.dti.ne.jp/~zebra/bbs/ くわタン勝とうぜ!BBS
幸村誠「ΠΛΑΝΗΤΕΣ(プラネテス) 2」/講談社/2001/10/23 ※以下初読の時の感想。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 何て言うか、男として、負けたー、っていう感じ。いやタナベに惚れた、 ってのもあるんだけど、そう言うんじゃなくて、生き様としてさ。 目標を立てて、それに疑いもなく(葛藤を押さえつけて)邁進するがむしゃらさ。 自分をそこまで駆り立てる「夢」が無いよ拙者には。自分にハチマキの万分の一 でも「それ」があれば、と思う。 テロネタは何かタイムリーさで逆に損をしている様な…… 宇宙開発の関係者を「常軌を逸した夢追い人」に設定してあるのは、それが実際 そう「だった」のと、やっぱりマンガ上での面白さの為かと思う。「夢」に 魅入られた亡者というか。 無慈悲な宇宙に対する自分の矮小さ、弱さ。そのことに対する「怒りのような もの」を推進剤に、視野を「目標」だけに狭窄させ、甘えを捨て「弱さ」を 乗り越えるのと比例して周りとの感情の接点を失っていくハチマキ。 その結果、宇宙に魅入られた「夢の亡者」面になるまで突っ走たハチマキを、 丁度いいタイミングで「宇宙の連環」の中へ引き戻すタナベ。実に何というか、 あー、惚れたヨ!イイ子(男にとって都合が良いという意味での)じゃよなー。 母ちゃん似だし。何となく。 然し最初の頃はバイタリティ溢れる宇宙クズ拾いの「生活描写」ものかと思って 読んでたんで、ここまで男の魂が加速していく話だとは思わなかった。話の 展開が早いのは、それが現実的(リアル)だってのもあるけど、結構「先」まで 描く気があるからだ、とも思いたい。木星への道のりで待ち受ける困難又困難! とか。木星の重力地獄!とか。その頃弟は……とか。次巻を待つ。 にしても「いってきます」はオネアミスだよね。電車ホームでのすれ違いも 「まんま」だし。アレって別に原典有るのかな。あー、結局男に「冒険」を させるのは女の存在だと。タナベ流に言えばつまり愛だ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 上に付け足す事はほとんどない。 ヤラレタ!という印象。前巻ラストの「やったるでェ!」的決意っぷりに、単純に 同調してガキっぽく燃えた読者を、さらにその「上」へと引き上げるその手腕。 この作者本当に新人なのか?いや、ホントに、スゴイ。画力や描写力がスゴイ のは解ってたけど、ここまでとは。この一冊通して何回読んだことか。読み返せば 読み返しただけ、読者の意識をコントロールする細かい技が見えてくる。 「ああいう悪魔みたいな男はいい仕事するぞ」 この台詞でぐあっ、とシビれた後、ふとその場のハチマキの表情に「違和感」を 感じる。自分は「フォン・ブラウンの跡を継ぐんだ」と明言しているカットでも 表情は微妙。そう思いこもうとしている、というか、そうあるべき、みたいな 思いこみへと向かう微妙な表情、を「それと解るように」描けるということ。 すっかり「思いこみ顔」になった所へ、引継に上がってくる新人、タナベ。 彼女は、最初からハチマキの「思いこみ顔」しか知らないのかも。いや、違う、 ハチマキはホントは違うんだよ、とか思いながら読んでたら、実は思いこみ度 ではタナベの方が遙かに上だったり、「私の方が正しい!」(p73)この鉄壁。 で、それに勝てないハチマキの「船乗りの理屈」。 「このくらいじゃないと宇宙でやってけやしねェんだよ!」って言い方が 既に限定的で弱いよな。自分で枠を作ってるってゆーか。そこを見抜かれてる。 タナベの発した「愛」って言葉にふと我(とゆーか船乗りの仮面)に返る所とか、 上手いよなーと思う。ああいうシンプルで使い古された言葉に生理的に反感 スイッチを入れちゃうんだよ。 「独りで生きて独りで死ぬんだ それが完成された宇宙船員だ!」(p79) 「独りで生きて 死んで なんで満足できるんですか バカみたいよ」 正論(「愛」って言葉)を受け入れられない。受け入れてしまうと前へ進めなく なってしまう(根性無しも能無しも卑怯者も「愛」って唱えりゃ許される)。 その恐怖。でも、結局その「宇宙を切り拓くパワーの根元」って奴が間違ってる (「孤独」「苦痛」「不安」「後悔」のもたらすパワーは、彼にとっての「本来」 ではない)から反論も出来ない。 孤独や不安をバネにして自らを追い込んでいく過程、[サキノハカという黒い花] 前後編のハチマキの表情変化には、それだけでもう十二分に説得力があった。 「宇宙に魅入られた者の目」、「何の制約も受けず 万難を退け ただひたすら 夢の完成のみを目指す生き物」(p154)の目。そこへ向かってどんどん(調子よく) 自分を追い込んでいくハチマキを「無理してる」と一目で見抜くタナベの眼力。 勿論読者もちゃんと見抜ける様に描いてるんだけど、そうやって追い込んでいった (その結果ちゃんと木星行きの船には乗れちゃう)ハチマキに読者が感情移入 し難くなっていった所で、ぐいっと引き戻す巧さ。ラストの実家での「素」顔に 至るコントラストが効果的で。どこまで計算してるのか知らないけど、ホント、 スゴイ。 タイトルの宮沢賢治の詩の引用も印象的だ。作者にとってこの詩は多分大きな 意味のあるものなのだろう、と想像させる。夢、理想の為に「踏みにじる」事を 苦しむ人間の方が多いのだ。苦しみがなければあの言葉も無いだろう。夢に 魅入られ、夢の為なら全てを踏み台に出来る様な人間「ではない」存在を、宇宙 開発の先端に並べたい。最初からそういう積もりだったんだろうけど…… フォン・ブラウンやツィオルコフスキーのよーな「魅入られた者」(革命家)に、 ただ「やースゲー、やっぱただ者じゃない、俺には出来ねー。尊敬するヨ」とか 言ってた所で、じゃあ宇宙開発の現場は奇人変人大集合でいいのかってゆーと (まあ実際最近までそうだったらしいんだけど)「そうじゃない連中」、フィー やタナベみたいな「地球の常識」を抱えたまた宇宙へと範囲を広げていく世代が 行かなきゃやっぱ駄目なんじゃない、と。当たり前の人が、頑張って夢を かなえる話でありたい、のか。 [惑う人達」で、ハチマキが何故自分をそこまで追いつめなければならないのか、 ならなかったのか、が多少見える気も。7年以上離ればなれになる(然も危険度は 高い)ミッションの向こうに夢を見てしまった人間に、「他にいいやり方」は 無いんだ、仕方ない、と……「もうごめんじゃ済まねェ」(p188)のは誰なのか。 誰に対して済まないのか。 「宇宙飛行士の物語」としての面白さは折り紙付きとして、キャラ漫画としても 面白いよ。特にオヤジは生き生きしてるねえ。あの家族の飯食う描写とか、 たまらんわホンマ。泣けてくる。 イロイロまだだらだらと言い募りたい部分はあるけど、もうそろそろ誰も読んで なさそうなんで、この辺でやめときます。ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/12/10)
コゲどんぼ「ぴたテン 4」/角川書店/2001/11/15 この作品の魅力を言葉にするのは難しい。 言えるのは、これは”僕にとって”唯一無二の作品だ、って事位。 「あの」コゲどんぼ、時代の顔たる「でじこ」作者の作品、各紙で毎週毎月発表 される氏の作品群の中の一つ、という風な捉え方をしてしまいがちなんだけど、 あー、いや、かなり、心底、マイってます。 多分読む人によってそれぞれ違うんだろうな、という印象。作者が語り尽くさない 所、その隙間に、読者が心を充填して埋めていく様な。僕にとっては、そうやって 「読んだ」この作品は、何というか、イロイロと突き刺さるのだ。 都市での小学生生活、というのに先ず弱い。憧れだったからな。ノーライフキング みたいなの。あと「痛み」と、それを包む母性、みたいな構造に弱い。男故か。 美紗さんのしゅんとした表情にクラクラしたり。まー「萌え」って言ってしまうと それまでの話なんだけど。いや、確かにp66では「おおおお!」とか思ったけどさ。 羽の存在に気付かない程に。小学生並みか>自分。いや、でもあれは作者が多分 全身全霊込めて描いた乳だと思うのよ。それだけのショックがあの画面には必要 だったっつーか。何の話だ。 萌えっちゃー各話の扉とか。もう絵一枚でなんでこんな力が。究極体か! あと遊園地での二人の「普段着」とかな。萌え〜 いや、時代を作るだけあって絵の力は本当にスゴイよ。 今更言うまでも無いけど。 宇宙おしかけ女房系の話ではあるんだけど、湖太郎に対して「押しの一手」の 美紗さんと、男をその膝で胸で泣かせる紫亜ちゃんの対比とか。小星ちゃんの ラストの一言とか、なんかもー切ないっつーか。ずっと湖太郎見てるから、 気付いちゃうんだよな。でも、湖太郎の方も、多分紫亜(泣くためのの膝)を 「取られる」のが怖いだけで、そんなに好き、って事でも無いんだと思うんだが。 人間関係の距離の取り方が気持ちいい。というか、こういう距離で生きてみたい。 テンちゃんの、ありがちだけど、だからこその真っ正直な辛さとか、妙にビシビシ 来るよ。小学生だもんな(とてもそうは思えんが)。湖太郎が、窓の向こうに 嘗ての自分の顔を見て従姉妹を思いやる気持ちに気付くシーン(P152)とか、 何か読み返してると、胸が詰まる。最近「金魚と赤い靴」とか見て泣いてる奴。 作品全体を包む、冬の青空の様な寂しさのトーン。子供の頃、何となく、訳もなく 寂しい気持ちで日々を暮らしていた事の有る人には、懐かしく感じられるものが あるやも。結局ノスタルジィか。 それにしても黒タイツは素晴らしいナァ(台無し) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/12/03)
ひかわきょうこ「彼方から 12」/白泉社/2001/09/10 何か着実に展開してるな、という感じ。 長い連載漫画なので、一巻単位だと起伏が感じにくいんだけど、作者が今までに ない「大きな物語」を真面目に描こうと、真正面から取り組んでいる感じが 好感度高い。それにつき合う方は体力要るけど。でも、それもそろそろ終わりが 見えてきたかなー、って気はする。「光の伝説」と「暗黒の伝説」。この 異世界そのものの成り立ちに言及されてきてるし…… にしても、エンナマルナ(円な丸な?)の中央に現れるシーンのドラマチックさ には、構えていたのに、ちゃんとゾクゾクさせられた。うわー、チモをこう使う かー、みたいな。最初からこのシーンを計算してあの変な小動物を登場させて いたのか。一体作者は何処まで物語を完成させてからこのマンガを描き始めたの だろう?……天然の城塞都市、といった風の、如何にも籠城戦向きの舞台に、 今までの関係者を詰め込んで、さて今後どう展開するのか。 描写の一つ一つ、キャラの仕草、服装、空気感、格闘シーンも含め、全てが標準 以上の「出来」なんだけど、やっぱまだ完結してないってのもあって、 「天使ども」とかと比較してしまうと弱いかなーとは思う。 各キャラが、皆物凄い魅力で読者を引きつけて(キャラ萌えさせて)ありがちな 物語をグイグイ読ませていた頃とは、目指す地平が違うのかもしれない。いや、 ノリコのカワイイ仕草とか、そういうのに割く頁が減って来ている(イザークの カッコイイ描写は健在)気がするん。キャラの魅力だけを全面に押し出していた 作風は、変わってきているのかも…… あ、でも1/4スペースとか読んでると、まだまだひかわきょうこ独特の「間」は 健在で嬉しい限り。特にティッシュ箱の「ぺり…」はこれぞひかわテンポという (何処で感心してるんだ)。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/09/25)
安倍吉俊+gk「ニアアンダーセブン NieA_7 2」/角川書店/2001/03/29 今頃書く奴。まーいつものことで。 再読してて、やっぱりくだらなさに笑ってしまった。いや実際チャダ関連の くだらなさは本当に言語に尽くしがたい。第9話のあまりのテンションには 腹を抱えて笑ってしまう。「ナンタルチアーー!!」 くだらなすぎる。 P60の黒まゆ子シーンとかにも笑った。 で、まあ、ラストのしみじみとした「そして毎日は続く」的シメ。 アニメの方で完結したのと同じような風合いで(絵的には結構違うけど) 同じ様な印象を残して「あの夏」が終わるのだった。 この先何十年かして、それでも矢っ張り誰かが読み返してる様な作品だと思う。 賭けてみる? 画集は結局買ってない @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/07/24)
木村紺「神戸在住 3」/講談社/2001/06/22 アフタヌーン'99/12、'00/08-10、'01/02-04、シーズン増刊'01No7 ヤングマガジンKANSAI'00夏 ・・・での掲載分を収録、だそうだ。巻末によると。結構分散している。 「そういう」需要のある作家なのだろうな、という感じはする。 作者の持ち味たる、叙情的な視点を通して描かれる、日常― ラジオ体操の話、部室の話、試験勉強の話、風呂屋の話、ライターの話・・・ の中に、 ズシンと 「地震」「震災」「震災から」 が入っている。 主人公の友人の彼氏が語る、避難所ボランティアの頃の話。 「当時」がドキュメントタッチで描かれる。 題材が題材だけに、嘘は描けない。一応「ちゃんとしたリーダーがいたから、 その避難所では悲惨なもめ事はなかった」というコメントがあるが、それでも 「こんなカッコイイ毎日ばっかりじゃなかったぜ」という意見も有ったろう。 こういうのを描く、というのは、つまり作者にそれを描く裏付けがあったからだ。 描かずにはいられなかった、のだろうと思う。今敢えて「神戸」を語る、と いうのはつまり、そういう覚悟が最初からあっての事なのではないか。 背景に嘘がない、と感じる。中に流れる空気に嘘がない、というべきか。 (主人公=作者と仮定して)ただの聞き書きでここまで描けるだろうか? しかも、結果としてちゃんと「ドラマ」になっていた。エンタティメントに なっている。あの震災を通じて多くの兵庫人の上に流れたであろう濃密な時間を、 描かれる登場人物達の若さ故に、苦難を乗り越え、再び立ち上がるドラマとして 描ききっている。 今の神戸を歩くとき、もうあの震災の爪痕は(そう気にして見ない限り)見えなく なっている。この主人公が神戸にやってきたのは「その後」であり、基本的に 「その後」の神戸で、のんびりとした生活をただ送っている。・・・だからこそ、 この震災の物語を語らなくてはならない、のだ。巧く言えないな・・・「それ」を 語らなければ、この「神戸在住」の全てが嘘になってしまうというか。この作者は そういう意識で描いている、そんな気がする。 その他の短編を見ていて思ったのは、語り口こそ一人称であっても、回ごとに 主人公と語り手の距離の遠近が違っているな、ということ。「かつら=語り手」 レベルから、かつらが登場人物の一人として描写されるレベルまで、いろいろ。 でも自分の毎日を振り返ると、そんな感じかなー、と思う。斯うして、今これを 読んでいるあなたに向かって語りかけている自分と、風呂に浸かって一人来し方 行く末を考える自分、飲み屋で友人達と騒いでいるときの自分、ゲームをして いるときの自分、旅行しているときの自分・・・それぞれに距離がある。 語り手としての「自分」との距離が、いや、単に面白いな、と。それだけ。 この作者の語り口に接していると、「自分」という存在は何なのか、たまには 鏡をみつめて「自分」と対話してみたら、と提案されている様に感じる。 自分が今何をしているのか。今日なにをしていたか。それによって自分はどう 感じたか。今の自分は今朝とは少し違っているか。 「ワタシはワタシ」・・・ そういう感覚。 昔はそれを感じる事も出来た。今はもう、遠い記憶。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/07/24)
太田虎一郎「宇宙の法則世界の基本」/コアマガジン/2001/06/15 「漫画ばんがいち」掲載の四コマ漫画、遂に単行本化。 1995年05月号〜1997年10月号を収録、とある。そんなに前だっけ? うさぎ星人とか番長とかロボットとか宇宙海兵隊とか前田愛とかが出てくる ほのぼの日常漫画。あと時々日記(隣人観察)まんが。 地元の本屋にさえ10冊(数えた)も入って居たのだから、結構な部数が出てるの かも知れない。ので買える人は買え、っていうかもう買ってるだろうと思った。 いや、発売直前、作者のWebページ(http://www.din.or.jp/~o_tora/)で 「流通の都合上地方ではかなり手に入りにくいらしい」という言葉があったん。 でも本屋に行ってみれば 「ドキドキ対決 先手オレ!!」(この!は余計だと思う) とか蛍光ペンで大書された「店長のオススメ!」的宣伝紙が平積みの上に鎮座 していたりして。みんなこの漫画そんなに好きか!俺も好きだ!!何だみんな 知らないフリしてたんだな!俺もだ!みたいな。・・・というのは掲載紙が エロ漫画雑誌だったからでもあり。あ、パンパレードも好きです。 兎に角好き。繰り返し読んでも飽きない。でも「オモシロいから読め!」って 薦める時に、薦める相手を物凄く選ぶタイプ。だと思う。 「外れ」ると、それ以後ちょっと人間関係がぎくしゃくしそうな。そういう。 ネタ以前に、言語センスがかみ合わないと駄目なんだと思う。特にドキドキ対決 のオチあたり。「今年のひまわり勲章決定です」とか。あの語彙の偏り具合と 間の取り方がたまらなく好きなんだが。まあその辺が駄目な人でもギブソン (日常くすぐりネタ)なら割と笑えるかもな。君を信用しているぞ。 でも結局の所「作者の人柄」だと思うんですよ。惹かれるのは。等と、読んで ない人には何の事かサッパリ分からない感想を吐きつつ終わるー。 ところ天には黒みつだろう普通。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/07/06)
漆原友紀「蟲師 1」/講談社/2000/11/22 作者は「うるしばらゆき」と読む。女性の様だ。タイトルは「むしし」。 友人の薦めで買った。 「蟲」という字には、独特の雰囲気が有る。 ぞわぞわと、目に見えず音に聞こえず、五感の外で蠢くモノ共の感触。 進化の系統樹の根っこの、さらに奥、微生物よりも「下等」な生き物。 そういった「生命の原生体に近いもの達」を「蟲」(或いは「みどりのもの」) と呼ぶ。時に人に取り憑き、害を為す。 その「蟲」を感じ、それに(積み重ねられた経験則から)対処する方法を 身につけた者が「蟲師」だ。 明治〜昭和初期の山村、という雰囲気を巧く取り込んで、見事な空気感を作り 出している。その独特のレトロ感や、蟲師の”技”と論理によって憑き物落とし へと向かう、いわば「蟲下し」の流れなどはいっそ京極堂を思い起こさせる。が 然し「この世に不思議なものなどなにもない」とする京極堂と、「不思議」を その目で見る事が出来、調査蒐集退治を生業とする蟲師・ギンコとは、実際 対極の位置にある。 そもそもこの作品に描かれている世界が我々の知る「現実」ではない。 「現実」と思われるレイヤーも、実は既に幻想世界に一歩踏み込んだ空気感を 持って描かれている。作中で民俗学的に語られる伝承も、使われる論理や技術も、 全て作品世界の中だけでのもの。 各登場人物の感情の流れ等も一風変わっていて、そう言うのも何というか、 「らしくて」いい。こういう世界に居ればこういう考え方もするだろう、という。 そういった「違和感」も魅力だ。 結局、根っからのファンタジーなのだ。地方村落へフィールドワークする蟲師 ギンコを見ていれば、無意識のうちに対比してしまう水木・諸星・荒俣・京極 辺りと根本的に違うのは結局「そこ」で、だからこそ既存の文献等に縛られず より純粋な「蠢く闇への憧憬」を描き出しているとも言える。 そう言う意味では矢張り第4話『瞼の光』が群を抜いて「闇」の世界を描いて いた。自分の脳が「これはほんとうのことだ」という認識をしているのを 感じる。何というか、マガイモノではない、本物の作品、という感触。 こういう作品を長らく読んでいなかった気がする。脳の渇いた部分に、しんと した闇が浸透していく。 絵的な話も少し。キャラ造形などは割と今風で、特に主人公ギンコの造形は 「白髪」「死に目」「隻眼」「煙草」「淡泊」という、近年のイカス男100選から イイトコ取りをして作られた様なもので、既に結構な人気を得ているモノと 推察する。いや、実際カッコイイと思うし、読んでいて嫌みが無いのもイイ。 「何処かで見た様な」という感想はあるだろうけれど、それはそれとして、この 作品が続いていけば、自ずと「ギンコ」という存在が周りとは別のキャラとして 立ち上がっていくだろう事は予想出来る。割と深いし。和服に懐手の似合う 収集家・化野先生もいい味。屋敷の怪しさがタマラヌ。 ペンのタッチも(アフタヌーン的と言えば言えるが)味わいがあり、作品の 空気と良くマッチしていて素晴らしい。元々デッサン力のある作者の様で、背景 等も含めた「雰囲気」の出し方は見事だ。 あと個人的にこの作者は足フェチなのではないか、と感じる。素足フェチ、と いうか・・・扉からして足だしさ。この作品に描かれる足には異常なまでの 色気がある。色気と言って悪ければ表情がある。手に表情が有る様に、足にも 表情があるのだ、足の指は感情表現手段の一つなのだと気付かせてくれる。 いや実際、最初p24のあの力の入った足指を見たときのショックは大きかった。 この色気!・・・等と書くと僕が足フェチみたいだけど、うーん。嘗て 「エイリアン9」のあの指に惚れたのと近い感覚。ちょっとステキですよ。 今連載はどうなってるのか知らないんだけど、もっと読んでみたい作家。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/06/20)
桑田乃梨子「真夜中猫王子 2」/白泉社/2001/05/25 「わかりました  でも僕あきらめません」 この辺が全然作品の山場にならないところが桑田作品。 あー。なんか、いい・・・ なんか色々分析めいたことを言いたくなってしまうんだけど、うーん、例えば 「魔法が解けて本来の姿に戻った王子」が猫の時と同じ描かれ方だったり とかさ。でも、あー、考えたくない。ふぃりんぐで読んでいきたい。 なんか、ああ、もう、たまんない。いいよ・・・読み返すだけで普段使わない 感動回路が開くというか・・・高校生の頃に閉じた筈の回路に電気が走ると 言うかさ・・・4割増しの黒ちゃんを思うアンジェラがかわいいよ・・・ あーそれにしても!委員長!委員長!あんたイイ奴!いやもう、なんかねー あの「自分の感覚」に正直な生き様がさ。高校生にのみ許される、自己中 なのに潔い感じの。なんか懐かしくてね。ああいう奴居たなー、って。 然しアレだ、みんな前髪長いよ。それが良いのか。良いんです。何か懐かしい。 こういう前髪の長さって今でも記号として生きてるのかなー。最近少女漫画 読まないからわかんないんですが。 巻末収録の「海が呼んでる かも」がまたイイよ。「DNAちがうし」。つぶれた クーちゃんがステキ。然しこういう「思い出した様に収録される短期連載」 って多そうだな・・・ くわ太日記も快調。またクジラか。ホント好きだな。でも「ざわっと」来て 見たい気もする・・・P179の「きゅーってかんじ」の絵がまた。たまらんー。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/06/05)
幸村誠「ΠΛΑΝΗΤΕΣ(プラネテス) 1」/講談社/2001/01/23 時は2070年代。人類が宇宙に本格進出し始めた時代。木星を開発する有人船が 完成する日も近い。そんな時代の、スペースデブリ回収業者の 「ゴミ回収業者の日常」を描く。 毎回一回は「ゾクッ」とする瞬間が有る。 圧倒的な「宇宙での生活感」に溢れた画面。幾ら年に数回しか 発表されなかったとは言え、これを(アシスタントとかは居たにしても) 一人で描いていたのだろうか?設定も物語も絵も考証も?・・・でも それ位の背骨が無いと、これだけの「質感」は描き出せないかも。 兎に角骨太。その骨太な土台の上に、この設定だからこそ出来る物語を 描いて見せてくれる。これだ。これが読みたかったんだ畜生!!! 宇宙は厳しい。空気も無ければ水もない。放射線に満ちてて、油断をすれば あっという間に筋力は落ち骨粗鬆症にかかり、いつ高速で飛行してる小石に ぶつかって爆散してしまうかも解らない。地球表面の大気の層のちょっと上で さえそうなのだ。 それを踏まえて、その上で尚(それぞれの理由はあれ)地球というゆりかごの 外へ出ていってやろうじゃないか、という連中の、そのじわりとした熱に 浮かされる。 「もう宇宙(ここ)は人間の世界だ!!」 そういう作品。この台詞に心が震えなきゃ嘘だね。 中でも巻末、そのまんまのテーマを真っ正面から描いたPHASE5 「IGNITION −点火−」は何度読んでも血がたぎる。 太陽面爆発の時、月の影に居て被爆は免れたものの、通信途絶状態で長く 漂っていた為に空間喪失症に陥ったハチマキが、己の中の「逃げ道」を 乗り越えていく姿を描いている。 虚無に充ちた宇宙へ出ていく恐怖を、でもああやって人類は乗り越えて 行くのだろう、と思わせる、あの真摯な熱さがイイ。読んでいると、背筋の 伸びる思いがする。宇宙開発だけじゃない。過去夢をかなえてきた連中は、誰しも 言い訳に逃げ込む欲求と戦い続けて来た。諦めないこと。諦められないこと。 夢をみて、それに向かって努力、ってのは、単純な事じゃないんだ。一度きりの 人生全てをかけて、どんなに回り道をしても「そこ」へたどり着かずには 居られない。「そこ」を指向せずにはいられない。夢半ばで倒れる可能性の方が 遙かにでかい。それでも諦められない。 そういう連中の数限りない屍の上に、やっと一歩前に出る奴が居るのだ。 ・・・でも今巻で一番好きなシーンは、矢っ張りp136。何回読んでもこのシーンの 格好良さには背筋がゾクゾクする。僕は煙草を吸わない人間だけど、あー、何か 格好いいナーと。あのフィーの「生きてるって素晴らしいね」の一言、あれ絶対 タバコの味の感想だと思うんだよ。そこがたまらん。カッコイイ。 各キャラクターの魅力もスバラシイ。ユーリの表情の描き方とかスゲー好き。 あとフィーやハチマキの母親の「カッコイイ女性」造形は、ちょっとなかなか 無い魅力。ステキだ。 久々に「本物」の感触。面白い。買え。買って読め。以上。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/05/18)
桑田乃梨子「1+1=0」/白泉社/2000/02/25 ・・・読み返してまた泣いてしまう。あーだめだ。だめだー。何かもーこー 細かいツボを押しまくられている感じ。この作者の単行本の中では随一の 物語性を感じる。この作者にしては珍しい、あとがきの無い単行本構成も いっちょ本気で泣かせたろかい!という意気込み十分で。 主人公石綿は霊の見える体質。色々見えちゃうんだけど、もうそれを指摘するのも イヤになってる、割と暗めの性格。その彼のクラスに苑田という転校生がやって来る 所から物語は始まる。開口一番「いずれ世界を動かす!」とか云う苑田は、霊能力は 無いけどカンが良い。予言者が転向してきた、という噂を聞きつけた心霊研究会の 会長、御簾津みずほが早速勧誘にやってくる。交渉の末苑田は名誉会長に。 石綿は、御簾津の背後に守護霊の姿を見つける。 何となく御簾津と苑田の校内心霊スポット探検につきあっている内に、その霊視能力を 見つかってしまった石綿は、御簾津の守護霊のにっこり顔に負けてなし崩し的に 心霊研究会(ポストは名誉副会長)に入ってしまうのだった。 御簾津の守護霊は2年前に死んだ姉みずえ(理科準備室でホルマリン漬けを見るのが 好きとかいう変な人。性格は明るめ)なんだけど、石綿はどんどんその霊に惹かれて 行ってしまう・・・・ で、結成された心霊研究会3人(+霊1体)は捜し物を頼まれたり占いをやってみたり 夏合宿をしてみたり文化祭で降霊会をやってみたり・・・とまあこの辺は桑田まんが 一流の「永遠の放課後」的空気で流れていく。 御簾津姉の霊とだんだん仲良くなって行く石綿だけど、この手の話ではお約束、彼女の 成仏の時がやってくる。この下りが実に良い。良すぎる。もうこれ以上言わないから 未読の人は今すぐ読んで見て。 以下読んだ人だけ。 p82で御簾津姉との会話が出来る、ってのが解った時の、あの爆発的に「可能性」の 開けた瞬間が個人的には第一のヤマ。夜の学校でのデートの、頭がクラクラする よーな「幸せかも!」という感じ。これこれこれでんがなー!という。でも シチュエーションは妙。 あとやっぱアレでしょ、p128の「必殺無意識上目遣い」。 「使う相手をまちがえなければ効果ばつぐん」。全く効果ばつぐんだー!!!つーか あの背景の描き文字。ああいうごちゃごちゃした所にこの作者のキモがあるんだよ。 多分。桑田ファンサイトとかを覗いてると、良く言われてるのが「背景でクラスメート がごちゃごちゃやってるのが楽しい」って奴。確かにそうだと思うよ。「なに石綿 「まぶしいあいつは転校生☆の巻」?」とか。 で、ラストに畳みかける展開。御簾津の子供の下りは、まだ桑田まんがの展開に慣れて なかった頃読んで「うわあそうくるか!」と結構ショックを受けたり。いや個人的に 御簾津妹のあの抜けた顔(最近の用語でああいう目を「死に目」とか言うらしい)に 結構ハマってて。ああいう無表情キャラ好きだよな>自分。ラストまではテキトーな 気分で読んでたんだけど、もう(描き下ろしも含めて)最後の最後でガツンと やられた感じだった・・・結局このショックが原因で、桑田作品の全作購入を決定した 訳だけど・・・やっぱり最初のショック、という意味でこの単行本は忘れ難い。 全1巻ものとしては作者の個性が最も良く出ている単行本だと思う(心霊だし放課後 だし泣かせるし猫も出てくるし)ので、桑田未体験の人にはまずこの本から勧めて みたいと思っているのだった。 ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/02/20)
桑田乃梨子「ほとんど以上絶対未満」/白泉社/1996/11/10 20世紀末から21世紀頭にかけて、俺の頭ん中は空前の桑田乃梨子ブームにわいていた。 久々に「作家にハマって過去の作品を一気に買ってしまう」ってのをやったんだけど、 やっぱこう言うときの「熱」は良い。燃える。それはもう、思わず自称が「俺」に なってしまう程に燃えたのだった。 で、まあジェッツ以外のは大体結構読んだ訳だけど、その中でこの 「ほとんど以上絶対未満」がベストかなぁ、と(次点は「1+1=0」)。 なんかもうツボ満載。兎に角良い!読め!特に男!以上!みたいな・・・ SF者を(一応)自覚するものとして、あの説明で納得してしまうのもどうかと 思うが・・・ そもそもこの「ほとんど以上絶対未満」というのがどういうお話かというと。  凡庸な生活を送る眼鏡な主人公「瑠璃門」(るりかど)君のクラスに  転向してきた「藪坂(やぶさか)くま」、という女の子は、実は昔の友人(男だ)  「藪坂秀」だった! ・・・という実に「転校生」な感じの。で、その性転換の原因説明ってのが 「理科室の薬品イロイロひっかぶり」(本文ママ)という。それだけかい!いや この作品に関してはそんなのはどうでもイイんだけど。 「転校生」(或いは「おれがあいつであいつがおれで」或いは「ボクの初体験」) とは違って、性別が入れ替わったのは藪坂のみ。つまり、男同士の友情だったものが だんだん・・・こう・・・という。物語はその「だんだん・・・」という所で 終わっている。 人気がなかったのか最初からそれだけの予定だったのか。でもそれがこの作品の 絶妙なところ(或いは卑怯なところ)だと思う。この二人の「その後」を読者の 想像に投げるタイミングの良さ。多分このままいってもこのままなんだろーなーと 想像はさせるけど。ここから先に踏み出すと、マンガじゃ無くなってしまうか。 オボロゲな記憶で、男は恋人に友情を求めるが、女は恋人に服従を求める、という 様な言葉があって、成る程そうかもなーと思った事であった。男友達とツルんで 遊んでいる時の楽しさを、彼女と居るときにも味わいたい、と思うのは割と普遍的な 発想なのではないか(女の子同士でも一緒か)。いや何が言いたいかというと、その 理想型なのでは、と。ちびっちゃくて(でも「どん」とか「ばん」とか擬音付きで 表現されるよーな胸とか腰とか)、かわいくて、でも中身は昔の男友達。 ホントこの作者女性なのか!?とか。或いはこれホントに「少女漫画」なのか? とかヤブサカの上目遣いにくらくらしながら思ったり。兎に角ヤブサカの造形が 全てとも言える。イイ奴なんだよ。男や女である以前に。 「その3」の初夏の詩的な(・・・)空気とか、この作者全く底知れぬ深みが有るよ なーとか思ってしまう。「血」の下りとか、実に独特で、イイ。或いはp90の 「オレのこと みすてないどいてくれたら そんでいいや」に繋がる流れとか。 「転校生」っつーか、大林映画的詩情の漂う名シーン。 いや実際惚れた贔屓目で読んでるなーとは思うんだけど、もう流石にこればっかり 繰り返して読んでてもアレなので、取り合えず感想をひねり出してひとまず置こうと いう。つづく。 同時収録の「ぴんぽん5」は、またそのタイトルの感想を書くときにでも。 ――収録作品メモ―――――――――――――――――――――――――――――― ●「ほとんど以上絶対未満」平成8年ララDX5月10日号、7月10日号、9月10日号掲載 ●「漏電日記」 平成6年ルナティックララ9月10日号掲載 ●「超卓球戦隊ぴんぽん5R〜謎の卓球魔王のまき〜」平成7年ララDX1月10日号掲載 ●「超卓球戦隊ぴんぽん5R〜謎の挑戦者のまき〜」平成7年ララDX5月10日号掲載 ●「合宿戦隊ぴんぽん5」描きおろし ●「巻末おまけまんが くわたでGO!」描きおろし @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/01/25)
安倍吉俊+gk「ニアアンダーセブン NieA_7 1」/角川書店/2000/07/01 あー。何つーか。「妙に好き」としか言いようが。 夏に買って、だらだらと読んで、まだ読み返しているという。 「コレゾ本場インドのガンジスウォーター!!!成分無調整!!生キテ腸マデ 届キマース!!」「何が!?」 多分絵柄で抵抗があると思うんですよ、初見は。でもまあ我慢して読んでみて ハマってみて欲しい、というのが個人的な希望。 同名アニメの原作でありコミカライズでもある。らしい。 いつの間にか宇宙人の住み着いた世界。頭にアンテナを生やした彼等は、何となく 人類の生活に紛れ込んでそれはそれとして生きている。そんな世界。 古い風呂屋に下宿している予備校生まゆ子と、その部屋にいつの間にか住み着いた 猫の様な宇宙人・ニアが、その日の飯を巡って戦ったりする話。丸いちゃぶ台を 囲んで熾烈な闘いが繰り広げられる。 アニメ、好きだったなあ。実際アニメは良かった。声優のレベルも高かったし 映像のセンスも程良くキレまくっていたし。当時流行の「癒し」ってのでもなく ただもう日常が流れていくというか。「癒そう」という過剰さが全然無くて、でも あの頃、残業続きで日付が変わらないと帰れない様な毎日の中で、この作品だけは 毎週見ていた記憶が有る。2000年を代表する作品、というとコレを思い出す事に なりそうだ。 永谷園のお吸物の袋の匂いで飯を喰う下りで腹を抱えて笑ったものだった。 「吸うのよ!!」 ・・・淡々とした描写の中で、ただ「馬鹿」というベクトルだけが突出していた。 出来るだけ馬鹿になろうというそのベクトルの先に、この漫画がある・・・気がする。 「Newtype」2000/01の記事、作者二人の対話が実にこの漫画のテイストを 表している。   安部「安部です」  糞先生「糞です。2人会わせて糞安倍です」   安部「それじゃ俺が糞野郎みたいじゃねーか」  糞先生「・・・不評だな、このペンネーム」 (単行本あとがきの対談は更に糞会話スパーク。是非買って読んでいただきたい) 兎に角馬鹿。本能的に馬鹿。タンスの角に小指ぶっつけて転がり回る様な腰砕け感 抜群。あ、そうだな、馬鹿、より「腰砕け」が近いかもしれない。腰砕けギャグ満載。 そういう感じ。アニメの方はどうしても笑わせる所で作画枚数をかけてしまったり しちゃってた(チャダの尻とか)気がするけど、コミックの方は、安部氏の絵柄の マッド(泥)なテイストがより腰砕け感触を増している。 アニメ同様、だらだらと酒なんか飲みながら読んでると心地イイ。 「存在すること」を誰かに許されてる気がしてくる。癒し、なんて 軽々しく言いたくはないけど。 続刊が楽しみなのである。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/12/01)
コゲどんぼ「ぴたテン 2」/角川書店/2000/11/15 うおおおお寝間着萌えー!!しあちゃん萌え萌えっスー!! とか言ってれば良いのかも知れないんだけど。うーん。 なんで此処まで刺々しいんだろう。 ギスギスした表現を、向こうも見ずに投げつける会話は、然しこの作品の中で 必要不可欠な鍵となっている様だ。特に湖太郎の自己中さ、自己中になりきれない 弱さ、その辺から来る(少年としての)格好悪さは意図的なものを感じる。 振り切ろうとして振り切れない独特の弱さ。他人との距離の取り方が読めない 不安定さ(紫亜の膝に頭を乗せて、またしても「過去」を語ってしまうあの弱さよ。 踏み込まれると拒絶できない)。子供だよなとは思う。 ・・その不安定さが逆に読者に対して訴えかけるモノを持っている気がするのだ。 それが「何か」とは明確に言い切れないけど。「引っかかる」って事は、何か 有るんだよ。多分ね。 現実的な視点で読んで良いのか、或いは根っからの日常ファンタジー(例えば セーラームーンやCCさくらの様な)として読むべきなのか。いや現実に 「ごはんとかできます」って書いて道ばたに立ってられたらいくら可愛くても ヒキますけど。 然し何より驚いたのは巻末の作者の一言で、どーもこの人女性らしい、と気付いた 時だったり。ずっと男だと思ってました。思い込み。なんか前々から女の子(?) みたいな(どんぼちゃん、とか)呼ばれ方してて、ケッなーにが、どうせ25,6の 兄貴だろうに、と思いこんでましたよ。いやいやー。無知でした。 ・・・作品に漲る夜の空気に浸りつつ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/11/06)
イラ姫「最終シスター四方木田 1」/集英社/2000/08/23 悩みがちな若者達の、逃避と現実回帰の物語。 「己の世界」に行き詰まり、己のレベルで「逃避」を試みる若者の前に 圧倒的な「生活力」を体現したシスター四方木田(よもぎだ)が現れる。 「生きる意味か・・・  意味は不明だ!  古今東西の哲人たちが考え続けてきたことだが  いまだにコレといった決定打はない!」 彼女に出会う(出会うだけ)ことで「逃避」を越えたあからさまな「現実」へと 立ち戻るワカモノタチ。そういう話が短編集の形で収まっている。 ジャンルは・・・多分ファンタジーなのだろう。日常に根ざしたファンタジー。 地に足の着いた。エブリディ・ファンタジーて奴。絶妙のバランス。絵柄と内容の マッチングが見事。個人的にあの目(ぐりぐり瞳と下瞼)の描き方にホレました。 展開が淡泊なのが良い。構成は結構複雑なものもあって、決してシンプルというの でもないんだけど、ぽくりと心に収まる感じ。そんでクスクスハハハと笑わせる 暖かい笑い。昔はこういう漫画が結構あった気がするけど、最近は見ない気がする。 淡泊だからこそ何度でも読み返せる。ホントにもう何度読んだか。実際コスト パフォーマンス高い。あっという間に「かけがえの無い一冊」になってしまった。 一応通して出るキャラも居て、キャラ漫画としてもそこそこ楽しめる。 さえちゃんのあの性格とか好きだ。あの形から入るところとか、如何にも (周りから見ると)才能が無さそうなのに自分の力(センス)を盲信出来る所とか。 あの両手上げて自分の世界宣言してるポーズ(p62,p74,p90)が好き。 JBとクロエの物語の最後、シスター八ツ頭が読み上げる手紙(?)の何気ない 描写に、感情が高まってウッと来てしまう。まー何でも泣ける様になると 中年オヤジの証拠らしいからその辺はこらえてみるけど。 漫画家の生き様が割と素直に作品に反映されているような気がする。作品達の底に 流れているトーンが同じだからそう思うのか。物語、よりもその作品世界を形作る 「感性」の方に心惹かれる。そういうタイプの作品。何より「健全」なのだ。 その健全さに惹かれる。 痛い話もあるけど、ディープじゃない。岡崎京子の様な口当たりでありながらその実 高野文子の様な淡泊さ。ってそやって他の作家を引っ張ってくるのは止めろって。 例えて言うなら冬のどよんとした曇り空の隙間から、黄色く傾いだ昼の光が 射し込んでる、妙に透き通った感じの瞬間、みたいな。わかんねー。無理だ。 日常にあり得る風景なんだけど、妙に幻想的で心に残るというか。うーんうーん。 こういうスタイルの漫画ってこの後も人生を通じて描けるだろうか。 元々漫画家なんてのはごく一部を除いて皆一瞬の輝きを残して去っていく者達 ばかりなのだけど、この作品には「今が旬」な匂いがしない。多分今までも ずっとこういう漫画を描いてきてて、またこれから先もこういうのを描いて いくのだろうな、という感じがする。読者がそれを見ることが出来るかどうかは 別として。ファンタジー世界には割とそう言う作家も多いが、それでもこの感性は 希有だ。いやつまり「もっと読みたい!読めるんだろうか!?」ってことで。 実はこの本、人から薦められて買ってみたんだけど・・・この手の「感性」に 訴えかける作品は「せっかく薦めて貰ったけど・・・」という事になったりする 事が多い。作品との関わりは、矢張り出会いからして「個人的な体験」であるべき なのだ・・・・と個人的には思う。 で、この作品がどうだったかというと、当たりだったという。何て言うか、間口 広い感じなん。ストライクゾーン広いというか。絞り込みすぎないから大当たり にはなりにくいど、当たり判定がデカイ。そんな気がする。 で、まあ私も薦めておきます。読んで損は無いですよ。 (今までの「かけがえの無い一冊」は、例えば品川KID「KIDDYLANDspecial」  早坂みけ「いりおもてやまねこなんかこわくない」など。) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/10/31)
木村紺「神戸在住 2」/講談社/2000/07/21 とつとつとした「日常」の一本調子は2巻になっても変わらず。 むしろその「芸風」が確立されて来た様な気がする。こういうモノローグだらけの 漫画が漫画として成立する面白さ。漫画という表現手段の可能性を感じる。 一日単位で物語が終わっていく、妙な生々しさ。フツーの「漫画」とは何か違う。 日中それなりに一生懸命生きて、外での自分の「役割」を演じた後、自分の部屋に 戻ってきて、椅子に座ってふとため息をついた瞬間に出会える、仮面を外した 「自分」って奴、その「自分」が表層に現れた瞬間を狙って、一気に描かれている ・・・様な。そんな手触りの作品。 全てがフィクションだとしても、このナチュラルさはそんな時に書かれた手紙の 様に見えるのだ。誰かに宛てて手紙を書くとき、素直に「自分」を引き出すことが 出来る様に思う。今こうやって誰に読まれるか解らない文章を書くのとは違って 読んで貰う対象は1人だけだから、割とそのまま「自分」が語り出す感じ。 或いは日記とか。いやでも日記にしては、この作品はあんまり自己言及が無いな。 矢張り手紙か。読者に対する。 でもキャラ漫画としてもちゃんと読めるのは流石。洋子ちゃんの下りなんかは 妙なアンバランスさが逆に一本調子の世界のくさびになっていて面白い。学祭の 何とも言えない雰囲気もこの作品ならでは、という感じ。所謂「マンガに 描かれる学祭」「マンガに描かれる部室」ってのは何かこう、そのイデアというか 理想化された姿、みたいな所があるけど、この作品は何だかその辺も違うのだ。 僕がこの作者が一体何者なのか、男なのか女なのか、どういう生活をしているのか 気になってしまうのはその辺に理由がある。有り体に言うと、彼女が気になる、のだ。 とはいえ、他人と己を比較しては一喜一憂したり、己の力を見誤って徒に焦ったり という(若さ故の?)愚かさから遠い位置にいる(様に見える)この主人公には 正直あまり感情移入は出来ない。僕はつまりそう言う奴だから。 でもこういう生き方もあるのだろうとは思う。1人の人格としてそれは認める。 俺が俺が、と押し出すタイプでは無い。でもそのくせどうやら表現者らしいし。 彼女が「自分自身」についてもう少し語ってくれれば、とも思う。 始まったときに既に完成形だった。ということはこの先もこの一本調子は続くの だろうか。遅かれ早かれ読者(であるワタシ)の方が飽きてしまう気もする。 その辺が漫画読みとしては気になる所だ。作者の顔が見えにくい(あまりに近すぎて 逆に全く見えない気がする)のも実は多少辛いのだ。 懐かしいと感じるにはまだ近すぎ、憧れるにはもう遠い。高校生くらいの時に 出会えていれば、こういう「文化系大学生活」に憧れたかも知れない。 ・・・僕が高校生の頃に出会った「大学生物語」っていうと「ああっ女神さまっ」 だけだったからなあ。 あー、とりあえず鈴木さんが好きさ。とキャラ萌えでしめてみる。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/10/31)
木村紺「神戸在住 1」/講談社/1999/08/23 大学時代の友人からメールが来て、結構良いマンガだから、と薦められた。 アフタヌーンのマンガってそういう風にして読み始める事が多い。雑誌は重くて 立ち読みする気にならないしね。ヨコハマなんかそうだった。 内容はタイトル通り。神戸の大学に通う主人公の女の子とその周辺人達の、本当に 何気ない「学生生活」、及びその学生生活を通して見える「神戸」という街が淡々と 描かれている。地震のことも。 基本的に主人公の一人称視点。語り口には、きまじめな感じの、多少深みのある 性格が覗き見える。この主人公の造形が妙にしっくり来たのだった。 大学時代の、あの有り余る日中の暇時間を、ただ生きている。美術館に行ってみたり、 女友達と買い物に出かけてみたり、時には仲間と海に出てみたり。そしてその都度 神戸の街を(我々読者に)紹介してみせる。それはまるで彼女からの手紙のようだ。 買ってから3日位は影響下に置かれてしまって、なんかもう鬱々と大学時代の あれこれを思い出してみたり、昔の写真を掘り出したり、そんな感じになって しまった。まあ元々影響されやすい人間ではあるのだワタシは。 正直ぱっと見の印象は良くなかった。絵柄がどうしてもうけつけなかったんだ。 マンガの絵は記号だから、読んでればすぐに慣れるんだけど、やっぱりこれは 誰かに強く薦められなければ読まなかったろうなあと思う。ヨコハマ、も初期は うけつけない絵柄だったものだ。強く薦められて読んで、ハマった。最近は逆に こっちがあの絵柄に近づいている位。 初手からキャラクターが(詳しい紹介を諦めたかのように)どっと登場するのは 昔なら「マンガとしてイカガナモノカ」と言われたであろう。それも、この作風 なら、アリだなと思わせる。どっと紹介されても、しょっちゅう出てくるのは そのうちの数人。実際人間関係だってそういうもんだ。痘痕が痘痕にならない。 これはもう、作風の勝利と言うべき。 同じ大学時代思い出しマンガとして「サボキャン」があるけど、あの作品にある 輝くような魅力では無い。寧ろ他人の淡々とした日記を読む様な面白さがある。 作者がどういう人なのか、というのは興味がないではない。男なのか女なのか。 何歳なのか。神戸在住なのか。いろいろ。まあそれは作品とは別の事なんだけど。 矢張り「震災」「震災から」はこの巻の白眉。読めば読むほどこの作者の「意図」 が深いのには驚かされる。息苦しくなる。体験した人にも、部外者だった人にも、 それぞれにそれぞれの立場で当時をありありと思い出させる(であろう。私は 「部外者」だったが、あの日の事を思い出した)。事実だけを淡々と重ねて、然し あまりにも和歌子の気持ちが伝わるあの描写。言葉で「理由」を説明できない 「想い」が、流れの中から雄弁に語りかけてくる。 この先どこまで描き続けられるのか、描き続ける意志があるのか、微妙な感じも 含めて興味深い。2巻も出ているらしい。探そう。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/10/02)
横山えいじ「でじたる小学校日記」/早川書房/2000/09/15 本屋で売られているのを見て声を上げてしまう。「スクランブル効果」や 「おしのび倶楽部」を探しまくってた頃の習性が抜けてない。 その割に田舎の本屋で平積みになってたりして。 F.ブラウン調ヒネリのぎっしり詰まった、小学生向け黄金時代SFまんが。 第2話の転校生ピエール君の話なんかはホントに出来が良くて、読んでて いい気分になる。 ただこの作者、気に入ったネタはホントに何度でも使う(これって案外出来そうで 出来ないみたいね。特にギャグ漫画家は)から、何冊か単行本読むと流石にマンネリ なんじゃないかって気分にもなる。でもまあここまでSFネタだけをぎちぎちに 詰め込まれると、もうなんかそれだけで嬉しくてねえ。で、まあ結局「いいんだ! 俺はこういうのが好きなんだから!!」という。 正直もう絵だけで十分嬉しい。兎に角美しいのだ。美しい、と言うほか無い。 特に毎回扉のあのクキクキっとした線の魅力といったら無い。表紙の色合いも 良いしなあ。あの右端の方に入る影のグラデーションが好きで好きで。 アスキーとかの細かい仕事をいつか画集としてどっかが出してくれることも密かに 期待している私でした。 あとがきの娘を見てると「ももいろ日記」をふと読み返したくなる @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/09/28)
北道正幸「ぽちょむきん 1」/講談社/2000/08/23 妙に面白いんだが既存の型に類似品が見つからなくて説明しづらい。 物語は、滅ぼされた悪の秘密結社ゲルニックの最後の改造人間(怪人)ハルカ& マドカが密かに戦闘員に育てられ、14歳に成長した今怪人デビューをする・・と いうもの。その辺結構複線が張られている様で興味深い。 戦隊モノ、と言うよりは仮面ライダー系等身大ヒーローの持つ独特のワビサビ (リゾートホテル提携等)が描き込まれている辺り、作者の描きたい所って言うのは この辺にあるのではないだろうか。そしてまた作者のやりたい路線ってのは 「家庭訪問」の回に見られる様な、止まるところを知らぬノリツッコミの可笑しさに あるともいえる。どっちなんだ。 練り込まれたノリツッコミで展開される可笑しさは往年のハイテンションギャグ マンガに近い感じもあるが、その割にスカした感じの絵柄が醸し出す滋味深い 味わいは、やっぱり「今風」という事なのだろう。兎に角読んで貰うしか、という タイプのマンガ。取り敢えず人に紹介するときは  「ちなみにニックネームは「ドカニャン」です」  「ドカニャン!?」  「そ・・・それだけはさすがに困るニャン」(p141) を使ってるけど、それだけでもないしなあ。或いはそこに面白さの全てが凝縮されてる とも言える。どっちなんだ。どっちなんだ教師宮内広重のセンスとかもう妙にツボに ハマってしまって。こういう人(たち)にわたしはなりたい。 ・・・作品のベクトルの揺れさえが、読者に「どっちなんだ!」と突っ込ませる 仕掛けの様な気もするのだが・・・考え過ぎか・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/09/28)
園田健一「砲神エグザクソン STAGE3」/講談社/2000/06/22 スゲー。スゲーわ。真っ正面だもんな。 この圧倒的な画力。巻末に登場するアシスタント達を動員しているとはいえ 一人の作家がここまでの作品世界を作り上げてしまえるのが、つまり「マンガ」 って奴なのだ。ゾクゾクする。 「こりゃすげえ!」と思える描写ってのがSFの醍醐味だと思うんだけど、p47の 重力ジャンプの描写の背筋ゾクゾク感は久々のヒット。ページをめくった瞬間に うおお、おおお!みたいな。 後はこの「悪い宇宙人の侵略」をチャンスにして世界征服の野望を展開していく 砲介の恐ろしさ。これがまたゾクゾクさせる。p60で「世界征服を目指すマッド サイエンティストである」という砲介の”正体”が語られる下りは、自らの「常識」 をどれだけ信じられるか、自分で自分を秤に掛ける感じ。そりゃ茜の笑顔も 引きつるだろうよ、というか。 読んでいて、常に「俺ならどうする、俺なら・・・」と自問させられる。作者は 毎回そういう苦悩のシチュエーションを作り出しては主人公に悩ませて「決断」 させるんだけど、読者はその主人公の「決断」に同調できるかどうかで今後の 面白さが変わってくる。ということは、砲一の感情の揺れなんかは常に読者から 乖離しない様に展開していかなくてはならない訳で、これは尋常ならざる バランス感覚を要求される事だと思うんだけど、それが実に巧い。 極限的な状況と決断の繰り返し。そうやって読者を 「ハンパ者として死ぬぐらいなら戦って死んでやる!!」 という気分に見事に引っ張って行く・・・これは実は恐ろしい力なのではないか。 しかし、うう、重い。いや人死にが、とかそういうレベルじゃなく。砲介の存在 そのものが重い。あの女のコ達が全員「生身」だってのが怖いじゃないか。 ジジイが趣味で作ったサイボーグ(モルダイバーのマシンガル・ドールズみたいな) かと思ってたら彼女たちは皆砲介の魅力に惹かれて集まった「人間」なのだ。 圧倒的な支配力。自分はとてもかなわないと思う。そういう奴を相手にした時の 何とも言えない胃の辺りの酸っぱい感じが読んでいて蘇る。良いにしろ悪いにしろ 我々は四民平等の精神を当然のものとして生きているけど、知能と金と(恐らくは 人的/性的魅力)を持った人間が「そうでない」者達の上に立つってのは、世の中 ではよくあることなん。それをこれでもかと見せつけられて、痛い。漫画だけどさ。 いや、漫画だからこそ。しかし成程砲介は男子が乗り越えるべき「父親」の権化 とも言える。 圧倒的な「力」の前に、砲一の武器はただその若さと「正義」だけだ。 追いつめられた状況の中で、必死で流されまいとして「どうしたらいい? どうしたら・・・?」と悩み続けられること、それが「我々にとっての」主人公の 要件かも知れない。 その砲一にしたって「人の命」は全然平等じゃない。茜以外は人の数ではない辺り (友達が少ないってのは成る程良い設定だ)。茜だけは他の誰を犠牲にしてでも 助けなければならない存在なんだけど、その家族、とかが出てくるともう話が 変わってくる。結局自分との関係性でしか「ひとのおもさ」は量れない。 今後の展開がますます気になる。一体これから先どれだけの人間を挽肉にして 物語が展開するのか。ますます凶悪な内容になっていくのだろうか? ソノケンが躊躇するはずは無い・・・ああ、でも頼むから読み終わったときに マイナーな気持ちにだけはさせないで呉れ!アンチエヴァだと期待して読み続けて るんだからさー。 p98の爆弾発言もすばらしいぞ茜、の @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/07/06)
コゲどんぼ「ぴたテン 1」/角川書店/2000/05/15 絵は流石にこなれている。一時代を築いた絵だからな。で、まー漫画としては・・・ ほらシチュエーション優先というか。読んでて辛くはないけど物足りない。いやまだ 「ツカミ」の段階なんだろうとは思うよ。伏線ちりばめつつ女の子でアイキャッチ。 で、まあキャラ主体に読む訳じゃないですか、あ、「〜じゃないですか」は禁止 でしたね、あ、「ね」も禁止か。キャラ主体で読む訳ですよ。美紗さん萌え〜! とか言いつつ。 でじこを「おたく好きのするパーツをヤケになって詰め込んだ造形」とするなら 美紗は更にその先を行った感じ。メイド服で天使で髪留めがうさぎで語尾がやっぱり 何か変ッス。これだけパーツを詰め込んで尚萌えキャラとして無駄のない造形に 出来てしまうこのセンスは流石としか言いようがない。 今んとこはプロモーションビデオみたいなもんだと思うんですよ。キャラの。いや それはそれでイイと思うん。見てて楽しいし。その分キャラの作り込みは結構しっかり してると思う。小星ちゃんのあの切なげな性格好きだ。「それでも好きなんだか らしょうがないじゃん」みたいな、一筋縄ではいかない感じが実に。 コタローもそうだよな。学校の成績のびなかったり、どこかうまくいかないものを 抱えていて。相手の意思を大事にし過ぎるが故に、というか相手の存在を尊重 しすぎるが故に妙にぎこちない人間関係に陥ってしまったり。独特のキャラクターだ。 p99で思わず弱音を吐いてしまう下りとか、このキャラの弱みが凄く良く出てて、イイ。 キャラクターを作るときに大切なのは「弱点を作ること」だと井上氏も仰っていた 事であるなあ。 ・・・美紗さんは取り合えず「見習い天使ってこうだろう」みたいなー。 微妙な「間」が所々に残してあって、その辺で読者の妄想エンジンを経由して作品を ふくらまそうと言う感じか。P112のテンちゃんとかp150の空気とか。斯う言うの 嫌いじゃないッス。ええ。 取り敢えず買っとくか、という様な作品。ま、そういう感じっス。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/06/22)
高尾滋「スロップマンションにお帰り」/白泉社/2000/05/25 短編集。 某氏に薦められて読んでみてハマる。最近花ゆめもLaLaも全然読んでない (つーかもう漫画雑誌立ち読みするだけの気力がないよ)ワタシなのでこの作家も 全然知らなかったわけですが。 いや、何か妙に懐かしいセンス。特に表題作は昔の「リュウ」とかに載ってそうな 複雑に作り込んで美しい物語。時間テーマを見事に扱う作者の力量は確かなものだ。 或いはイギリスの妖精、或いは現代の悪魔、或いは書生姿の人形・・・こういう ベクトルの「引き出し」を持った作家がまだ居たとは。 何より物語の作り方が、今ではちょっと見ない様な「作り込んだ」感触で、読み応えが ある。練りに練ってる感じ。 薦めてくれた人は「子供が凄く良いんだ」とか言っていて、確かにそれは感じた。 表題作の主人公「鶴」という少女の、子供なんだけど、母親にきちんと育てられて 妙に老成した感じを併せ持つ、という微妙なキャラクターを見事に表現していて 一発で気に入ってしまった。或いは「あじさいの庭」の珠枝ちゃんの、あのコドモ コドモした表情の数々!良いぞー。 個人的には「モナリザ」が一番好きだったり。勢いがイイよねえ。背景流線だらけで。 こういう元気な作品好きなんだ。でもこれも妙に切ない話なんだよ。特にラストの 兄貴(悪魔)の心が妙に沁みてねえ。あれ主人公は兄貴だよな。 あと1/4スペで「竹本泉先生の描く女の子」を語っていて、それだけで 「この作者はイイ奴に違いない!」とか思ってしまう竹本泉盲信者。 他の作品も読んでみなくてはーと思いつつまだ手に入れてないのでした。イカン。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/06/22)
内藤泰弘「トライガン・マキシマム 3」/少年画報社/1999/12/01 エミリオ・ザ・プレイヤーの段。 根がもう大SFなんで、その辺は好き。 作者が何を描きたがっているのか・・・というか 描きたいことしか描いてないのがいっそ心地よい。 ただまあ、ワタシの守備範囲外かな・・・という所はなきにしもあらず。 好きな人は好き、なんでしょうね。特化してる感じがする。 所でヤングキングOURS、買うべきなんでしょうか。 なんか買い出すと単行本買えなくなる性格なん・・・ ビームとかさ。「敷居」とか無茶苦茶好きなんだけど、本誌全部残してあるから 買う気がしない・・・あぁ、もう「ビーム」買うの止めちゃおうかな・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/11/11)
サムシング吉松「セガのゲームは世界いちぃぃぃ!」/ソフトバンク/1999/10/20 「テレビのプレステCMの「ボン」という音につられて画面を見ない」 「サムシング吉松」と聞いてすぐに作風の浮かぶ人は結構居るかも知れない。 マイナーを装いつつ、しかしそのアクの強い画風は否応なく読者の記憶に 染みついてしまう。月刊OUTの人生冗談で「トットリくん」に出会ってより 十数年・・・・ とかいう爺入った前置きはどうでもいいとして、この漫画はまあ 知る人ぞ知ると言うか、セガ者なら一度は読んだことも有ろうかという 例のアレの単行本なのである。つまりは「セガファン」っていう生き物の魂を 端的に表した作品。セガ者っていうのは、こうなんだよ。 こうして読んでると、セガってホント、ユーザーの心を揺さぶるネタを 提供し続けてくれてるよなぁとかしみじみしてしまう。何をやっても 「セガらしい」一面を見せてくれるのだ。 「だってセガだし」 「所詮セガだし」 「流石はセガ」 みたいな。「会社」にもちゃんと「個性」ってのがあるんだなあとつくづく 実感させられる。個性有りすぎか。最近のコナミとかもなー。 個人的にセガコンシューマーへの思いは強い。 小学生の頃はファミコンよりもマークIIIが欲しくてたまらなかった。 アウトランのCMは今も鮮烈に脳に焼き付いている。 大学に入って真っ先に買ったのがメガドラ2+メガCD2だった。 サターンは発売前日に手に入れた。 ドリキャスは・・・・ まだ買ってません。買う予定もありません。 スペック発表当時にはそれこそ狂喜乱舞したんだけど・・・。 ・・・ああ、もうセガの浮沈につきあって疲れるのは沢山なんだよ!! 勘弁して呉れよ!!俺は、俺はもうセガなんかどうでもいいんだッ!!! どうせプレステ2が出・・がむっ (釘をいっぱい打ち込んだバットで後頭部を殴られる音) (暗転) ・・・メガドラ兄さんの、あの鏡餅みたいな姿は、もうそれだけで メガドラユーザーの心を代弁していると言っても良い。 キャス子の「作りがとってもニーズ製品ぽい」は至言。 表紙を見ても解るんだけど、キャス子の妙な色気が結構ポイントだ。 結構萌えるぞ。 同時収録の「私プロレスが味方です」他のプロレスエッセイ漫画も、この 作家の色を良く出していて結構面白い。他人が何かにハマって面白がっている 様、を見て一緒に面白がる、っていうのも結構楽しいのだ。 そう言うわけで、非セガ者の人にも案外お薦めかも知れない一冊。 ・・・しかしなんでゲーム雑誌の連載漫画ってこう文字が多いんだろう。 読むのに数時間を要す。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/11/01)
えびなみつる「初めての天体望遠鏡 [続]星を見に行く」/誠文堂新光社/1996/08/08 [続]とあるからには1巻があるわけで、ええと「はじめてのスターウォッチング」 ていうのがあるみたい。見つけられませんでした。また探しときます。 タイトルにもあるように、漫画形式で天体望遠鏡の種類や選び方、買い方を レクチュアするもの。なんだけど、漫画として結構気に入ってしまったので紹介。 登場人物は都市で大学生活を送っているらしい若者二人(男女)と その「先輩」。この「先輩」がどうも作者の投影らしい。 前巻でスターウォッチングにハマったらしい彼等。天体望遠鏡を買いたい、 という相談を受けた先輩が、彼等を天体望遠鏡を実際に使っている 仲間達に紹介する、という体。 作者は早稲田漫研出ということで、如何にも育ちの良さがタッチに出ている。 軽いタッチなんだけど、味わい深い。イラスト的なセンスの良さが光る。 小中学生の頃、きっと「優等生」だったんだろうなぁ、というタイプ。 そういう属性って、あるでしょ。 季節を冬に設定していることもあって、山の上なんかではもうダウンに手袋、 ブーツの重装備。個人的にはこの手のもこもこした服で身体のラインを 隠すって手法はかなり「逃げ」なんで最近は極力避けるように努力してるん だけど、やっぱりそれにはそれなりの魅力というのがあるんだよな、と。 落描きしてると、ついついフードのついたコートなんかを着せてしまうのは やっぱそういう「肉体」を感じさせない服装を好んでいるからなのか・・・ ていうか裸が描けないだけなんですが。私の場合。 天体望遠鏡を覗く仕草とか、何気ないところの姿勢の決まり方は流石。 多分結構デッサンやってから描いてるんだと思う。天体望遠鏡そのものにしても タッチは(フリーハンドで)たよりない感触だけど、ちゃんと描き込んでから ペンを入れている感じ。なんか子供向け科学雑誌とかの挿し絵の雰囲気で、 成る程誠文堂が出しそうな本ではある。 レクチュア漫画としては、かなり満点に近い出来。星を見る楽しさ、を ちゃんと知っている(らしい)作者の、その気持ちが伝わる。 あと、ちゃんと作中に「ラブ☆」が入っていたのが、良いなぁ、とかおもうんだ。 やっぱ、愛がなくちゃね。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/09/29)
高橋留美子「専務の犬」/小学館/1999/07/01 収録作は 「専務の犬」▼「ビッグコミックオリジナル」1994/01/20(以下掲載誌同じ) 「迷走家族F」▼1995/02/20 「君がいるだけで」▼1999/02/20 「茶の間ラブソング」▼1996/02/20 「おやじローティーン」▼1997/05/20 「お礼にかえて」▼1998/02/20 初出一覧を見てると、ほぼ年に一作ペースでこの手の作品を 発表し続けているようだ。「テコ入れ作家」の面目躍如というか。 作品配置を見ても解るけど、兎に角ラストの一編で「救い」を作っておかないと ヤバイくらいに、とてつもなく不景気な灰色の世界が詰まっている。 まぁ初出誌のユーザー層を思い切り意識しては居るんだろうけど(テコ入れだから)。 ・・・最早ここまで灰色にしないと「彼等」の感情移入を受けることは出来ない ・・・のか?いやビッグコミックとか全然読まないんでそのへんどうなってんだか 知らないんですけどね。 気の弱い旦那とその家族、友人に退職金を持ち逃げされた男とその家族、 連鎖倒産にまきこまれて失業中の元重役、先立たれた妻の霊とボンヤリ過ごす 中年課長、単身赴任状態で北海道へ飛ばされようとした矢先に 記憶喪失になってしまったおやじ・・・・ それぞれに少女達との淡い交流(勘違いとか)があったりして、ラストは ほのぼのとしめる。実に中年サラリーマン向けの押さえた感情制御。 ホントに「計算」がしっかりされているなあと思う。いや実に面白い。 ・・・ってそりゃ私が既におっさんになってるからでは。 「少女とのロマンス」願望を満たしてくれる様な女性の造形の巧さとかは 相変わらず抜群に巧い。「茶の間ラブソング」の桃井ひとみ嬢の造形は 「らんま」のあかねを色っぽくした感じで非常にギュー。或いは 「おやじローティーン」の女子高生君の、あの視界の狭そーな前を見つめた瞳とか、 誠実そうな前髪とか。もうキャラデザインだけで性格まで読みとれる。 良くもこれだけのパターンを考えつくよなという感じ。屹度好きなんだろうなぁ、 そういうの編み出すのが。 で、結局個人的なベストとしては、最後の一編「お礼にかえて」。 往年のるーみっくワールドの持っていたライトギャグの健在ぶりを強く印象づける。 「かにしゃぶ」の一言から走り出す「真顔でどんどん下らない展開へ」っつー パターンがつくづく巧い。やっぱこれでしょう。このすっとぼけた味わい。 あー、うる星を思い出す。久々に読もう。 ・・・考えたら高橋留美子の作品って、再販除いて単行本最新刊まで 全部持ってる様な・・・実はファンなのか?>自分。 犬夜叉とか、好きは好きなんだけどなー。うーん。感想書きづらくて。 もうそろそろ2億部位は出てそうだけど、どうなんですかね @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/06/11)
田丸浩史「スペースアルプス伝説」/徳間書店/1999/05/25 田丸浩史。 キャプテンの廃刊で最も打撃を受けた作家の一人ではなかろうか。 正直「アルプス伝説」は、あの時期の拙者の中では宇宙で2番目くらいに イカス漫画だった。 兎に角ギャグで死ぬ程笑い、ラブコメに男泣きに泣き、友達に勧めては 変態扱いされ、それでもハマり続けた。この漫画の良さを解ってる人民は どうやらこの地球上で一握りしか居ないらしいと悟った後は、どうにかして この面白さを世間に伝えようと、ファンロードにヨイショ葉書を 送ったり(・・・・)、他社アンケートの「今注目している漫画」に 田丸浩史の名を書いたりしていたものだった。って地味だな。 そんな矢先、少年キャプテン誌は私に何の断りもなく廃刊したのだった。 以後、田丸浩史氏は2年間の活動停止(同人除く)に入る。 ・・・「拙者が如何にこの漫画が好きか」語りはこの辺でおいといて。 まあ、何というか・・・・ 黙って買え1・2巻を持ってる奴もそうでない奴も兎に角買え買ってから後悔しろ ・・・まあそんな感じ。「少年キャプテン」という雑誌の、その黄金時代に 黄金プレイを繰り広げたこの作品を、是非とも堪能していただきたい。 装丁は、あとがきに「本棚には女犯坊と並べてね」と有るとおりの全書版。 表紙は寺田。箔押しの文字が光る。編集者の思い入れが並でなかったことは 容易に想像がつく。愛されていたのだ。この・・・いや、「あの」”アル伝”は。 だが、この「田丸浩史」という作家の生命は、殆どキャプテンの廃刊と 時を同じくして(ひとまず)断ち切られてしまっていた様だ。 今回の単行本のための描き下ろしが64頁。 これが辛かった。 「コミック・ファン」のインタビューを読んだときは、おお、まだまだ 次回作の意欲ばりばりじゃん、描き下ろしも楽しみすぎる!とか思ってたんだ ・・けど・・・いや、読み返してみても、何処も「それ以前」に比べて 落ちている部分は無いんだよ。絵柄も、タイミングも。 でも、駄目だった。 「空気」がぜんぜん違う。 いったん止めて、再開することの難しさを思い知った次第。 同じ「コミック・ファン」での浦沢直樹インタビューで 「動いている内燃機関をとめる事への恐怖感」が語られていたのは象徴的だ。 ・・あ、でも、「課長王子」は期待してるんですよ。設定を読んだときも かなりいい感じ(切なくてね)だったし、これを 「2年間のブランク経験のある漫画家」が描くことには大きい意味が有ると思う。 田丸浩史の、「新たな世界」を楽しみにしつつ・・・ ・・・あ、細かい感想は既に1・2巻の時に書いてるから、それ以降の分だけ追記。 魚ジュース。 以上。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/05/05)
伊東岳彦「アウトロースター 3 Loud Minority」/集英社/1999/02/24 伊東岳彦の「漫画」も読み易くなったもの。 「間」の取り方が、本当に巧くなった。「宇宙英雄」の あの「間」酷さ(これはあくまでワタシ個人の感覚で)に比べると、 雲泥の差がある。 物語の格好良さ、キャラの熱さ、女の子の可愛さ、メカのセンス等々・・・は、 昔から変わらずイカシているので、それに「自然な空気」が加わった感じ。良し。 さて今巻ではいよいよヒロイン・メルフィナがメインで登場。 その「目覚める前」の魅力のあらん限りを見せて呉れる。 喋りが良いんだよね。「どうかな メルフィナは」とか 「メルフィナはわかりたいだけなんだから」とか。あの「〜だよ」喋りには もう勝てませんな。かないっこありませんよ。ええ。 でも、この魅力は、アニメのメルとは何だか「違う」感じ・・・ アニメ(後期)を見てた限りでは、メルって「女の子」だったですよ。 凄い秘密を持ってるけど、基本的には「女の子」の魅力で。 このコミックに出てくるメルは、「人形だからこその萌え要素」を (まだ?)持っている様な気がするんですよ。「人形」臭い。 人形臭いんだけど、そこが良い・・・ってこういうの アンドロイドフェチって言うんですかねえ。うーん。 ただの「変な言動をする女の子」じゃなくて、別の知性体、と言う感じ。 それがまた魅力的なんですよ。SF感覚的に。 実際メルフィナの造形は凄い。作者の思い入れが並々ならぬ感じ。 喋り方、仕草、感情のパターン、勿論服装を含むその外見に至るまで、徹底して 「唯一無二のヒロイン像」を作り上げている。他に類型を見られないくらいに 存在感のあるキャラクター。なかなか。 実際ジーンの造形もつくづく絶妙だと思う。 アニメ版の「軽いけどやるときはやる」みたいなありがちな格好良さ (それはそれで好きだったんだけどな)じゃなくて、割と薄汚い、ガキっぽい、 チンピラ臭い「情けない」部分を内包しながら、それでも 肩肘張って突っ張ってみせる、みたいな所が作り込んであって「存在感」がある。 変にヒーロー的じゃなくて、でも根っこで自分を信じてる。 ガキみたいだけど、大人。大人なんだけど、ガキみたい。「20歳」という 年齢設定のうま味を十分生かし切っていて、本当に巧い・・・ 感情移入が出来るかどうか、或いは男として「ああなりたい」と思うかどうかは また別として、その「生き様」に共感するところは多い。 ワタシだって、まだまだ諦めきれない夢の一つや二つは有る・・・。 「つべこべ言わずに さっさとドアを開けな  理屈なんて こねてるヒマはない」 ・・・ああ、それにしても。「伊東SF」に、漸く正面切って付き合えるのが 嬉しいですよ。「宇宙英雄」は、やっぱ辛かったですけど、これならいける。 アニメの方も、ちゃんとビデオ借りて見直さなきゃならんのだけどな・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/04/07)
園田健一「砲神エグザクソン STAGE2」/講談社/1999/03/23 何つーか。ギリギリなんですけども。 映画や小説で常に弱者−追いかけられたり撃たれたり虐げられたりする側− にばっかり感情移入する人間にとっては。いやまあ「悪い宇宙人」なんだから コレくらいやって当然なんですけど。殺戮しても問題ないくらい「悪い宇宙人」。 ・・・でも、多分砲介爺さんも「悪い奴」なんだよね・・・ 少年的「正義」から見て、あの「大局的正義観」を鵜呑みにするのは嘘だろうし。 「民間人を巻き添えに殺してまで、敵と戦えるか、君は!?」という。 今巻の命題はコレでしょう。 今巻では人類の敵、リオファルドがどういった背景を持つ種族なのかが 多少明らかにされる。 彼等は2千年以上前、反物質の小惑星をエネルギー源に 宇宙に植民の手を広げていた。だが”大消失”と呼ばれる事故で その反物質小惑星の殆どを失ってしまった。 エグザクソンは、その”大消失”以前に作られた惑星制圧兵器である。 伝説のXXX(ラウンメイタル)ユニットと呼ばれるそれは、殆ど未使用の 反物質を抱え、その対消滅機関生み出すパワー(発電量)はリオファルド側の 核融合モーターとは比べものにならない。つまりエグザクソンはおたく文化永遠の お約束のひとつ、「強大な力を持つ発掘兵器(オーバーテクノロジー気味)」 なのである。 速度感のある展開が異常な状況や判断をリアルなものとして押さえ込み、 感情的に理解できる範囲に置いてくれているのが助かる(その辺ガンスミとか 全然ついていけなかったので)。「テリトリーを広げる生物」同士の、古典的な 動機による「残酷な宇宙人による侵略戦争」を描いて行く。まさに正統。 新鮮味の無い記号の固まりと言わば言え。その組合せの巧さよ。 「ガンダム」以降の定石外しが定石となってしまった現今のロボット漫画に おいては「正統」がむしろ穴だ、という作者の読みは恐らく当たっている。 ・・・いやー、先にも書いたけど、ファルディアンの悪さが良いねえ。 やっぱり、こう「女子供を無差別大量虐殺」ってのが、もう人類的には 最も許し難い行為な訳で、その辺「男子」の怒りを爆発させるには もうこれが一番。でもってヤケになってガンガン爆走してると、情報戦に 入ったから行動は慎重に・・とか、こういちいち「おお成程!」という 展開があって嬉しい。やっぱし「お勉強」効果は漫画として大きいよね・・・ 「ヤクザ怖さに戦わずして娘を差し出す父親を  尊敬できる子どもはおらんだろうが!!  わしゃ多少周囲を巻き込んでも戦うぞィ!!」(p179-180) ゲンドウもこれくらいハッキリ「戦う理由」とかを喋ってくれればなあ。 然しこれに単純に「うむ!」と頷けるかどうか。この辺が難しい。 消去法で、もうこれしかないんだ、と自棄になって突っ込んでいく的 「特攻」パターンとは違う、多少の犠牲を無視しても「勝利」を 「つかみ取る」方法論。そしてそれを裏付ける現在最強の力。 (勿論負ければ地球人類共々全滅だが。家畜としてなら生き延びる道も・・・) さあ、君ならどうする? ・・・こういうのって、原始的な感情だよね。最も根元的な、「ヒト」の感情。 「理性」とは違う・・・どうしても許せない、耐えられない!という・・・ ああ、そうか、それが「プライド」ってヤツなのか・・・・ ・・・エヴァを引っぱり出すのはもう呪いみたいなもんだな〜とは思いつつも、 「エヴァで欲求不満だった男子を対象とした作品なんじゃ・・・」とか 思ってしまう(作者自身「エヴァが最初の雰囲気のまま最後まで突っ走って くれていたら、この漫画を描かなかったかも」と言っているし)。 愛するものを守るために戦うんじゃよ!ってそんな単純な話で終わるとは 思っちゃいないけどね・・・なまじ感情を共有し会える(キンバー先生とか) 種族同士の対決ってのは、もう血で血を洗う凄惨な話になりかねないし・・・ どっちに転んでも、暗いぜ・・・・ 例えば、今は地球人が被害者一辺倒だけど、そのうち「悪の地球人」 「プライド無き家畜願望のある弱い地球人」が出てきて 世論を盛り上げたり、そういう嫌〜な展開になると、よりイヤさ加減が・・・ うーん、でもそれやるとトミノイズムになっちゃうか・・・変人扱いされてて 友達も少なかった、ていう主人公の設定は、「人質」とか「人間爆弾」とか そういう重苦しい展開を避けるためのものかも知れない・・・ ・・ああ、でも忘れちゃいけないのは、こう言うことがつい最近まで平気で 行われてたって事なんで。僕等のじーさんやばーさんがリオファルド側 だったことも有るのだ。そして、人は、そんなに簡単には変われない。 「民族浄化」の風は、今日も吹き荒れている・・・・ とかまあお約束の「考察」を述べてみたりして。ベタベタですけどね。 ・・・あと、今巻は巨乳が多すぎたので食傷気味でした。次回はもっと微乳を。以上。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/04/01)
永野護「ファイブスター物語 VIIII」/角川書店/1998/09/30 感想棚処理月間の4。 相変わらず読めば読む程に発見のある漫画だけに、 感想の書き時がなかなか難しくて。というのが今頃感想書いてる 言い訳になれば・・・ならないか。良いんですけど。 先日丸一日潰して全巻再読したんですけど、 何かいよいよ感想が書けなくなってしまって。 何というか「下手なことは書けんなぁ・・・」という感じ。 でもまあこうして全巻再読してみたところで、全体の20%位しか 理解出来てないんだろうなぁ、というレベルの読者な私。 開き直っててきとーな感想を・・・ 今巻はなんつーか、騎士の「考証」が目に見える形で成されていて SF者としては嬉しいのであったよ。 騎士ってのは、一体どういう「種族」なのか・・・ シバレース・スバースの下りやp105「騎士代謝」の下りは、 「騎士」がこういう「生き物」であることを認識させてくれて実に興奮した。 おお、SF!みたいな。今更ですけどね・・・ この作品の面白さの根底には、斯う言った「血」の系譜を 有意味な物に仕立てた(超人とそうでない人間に明確に区別した) 巧さが有ると思うですよ・・・ メカ的に見ると今巻はどうしてもエンプレスですかね。 エンジンが焔炎!(エピソード3p76、あの大ゴマの迫力!) てだけじゃなくて、やっぱり何処かしらあの女王の面影を残した 流麗な機体が、ヤーボの最後の晴れ舞台にはよく似合っていた・・・ 迫力というか・・・何でしょうね、気品というか。 併しヤーボさんも死んじゃったんだなぁ。 この作品は平気で時間を前後するけど、明確に死が訪れたキャラクターの 再登場はあんまり無さそうで・・・ まあカイエン親父もこれで腰を落ち着けることになる様だし 星団最強コンビも行く末が楽しみでもある(系譜見てるとこいつら・・・)が。 私にとってはその持つ壮大さを純粋に楽しませてくれる数少ない 「本物」の作品。先日の全巻再読は久々に「壮大な物語」の持つ魅力を 感じさせてくれました。 特に「複線」の魅力は長編にしか出来ないもので ミッシングリンクが埋まったときの「ああそう言うことだったのか!」 というあの快感がたまりません。 このキャラはこの血筋で・・とか、そう言うことを考えるのも実に楽しい (そういう楽しさを意図的に演出している。同じ顔とか)。 空前絶後の壮大さで展開するF.S.S. まだまだ楽しみは続きそう・・・・(ああ陳腐な終わり方。良いか別に) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/11/30)
シナリオ:日下秀憲 まんが:真斗「ポケットモンスターSPECIAL 3」/小学館/1998/06/25 相変わらず高密度な物語展開と愛らしい絵柄で実にいい感じ。 「良質」な感じがする。 一冊にクライマックスが何本も!! でもこういうの読むと何か疲れてしまうワタシは既にオヤジ・・・ 対ミュウツー戦すら2話で終えてしまうあたり・・・或いは次への伏線かな? えーと。取り合えずトキワの森の女の子萌えということでひとつ。 いやー、表情も仕草もむちゃくちゃツボです。あー。 結局「絵の快楽」ですねこの漫画に関しては。 例えば・・・ブルーの肩。あの肩の描き方がもう・・・ 実にこう、イイ・・・ で、ポケモンリーグのラストで早速次回作への「引き」が張って有って・・・ 何次回作は2年後!?とするとブルーなんか結構・・・いやいや。 考えたらこの単行本でひとまずの話に決着は着いているわけで・・・ となると次回作はオリジナルシリーズ?或いは次世代「ポケモン」への布石? 何!?新キャラ登場?こりゃー「小学四年生」立ち読みしなきゃな・・・ プリンの歌声がもうかないみかのアレでしか聞こえない @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/10/17)
園田健一「砲神エグザクソン STAGE01」/講談社/1998/06/23 リオファルド人(ファルディアン)と名乗る地球外知的生命体と 人類が出会って10年。 地球からは文化を、ファルディアンからは技術を交換し合うことで 友好的な関係が続いて−いるかに見えた。 だが、その10周年の日、ファルディアンはこの地球を彼等の7番目の 植民地として征服することを宣言、圧倒的な武力で瞬時に地球を制圧してしまう。 主人公加農砲一の祖父砲介は早くからファルディアンの 危険性について説いていたが受け入れられず、然しその財力と技術力 そしてあるモノの「発見と解析」で、彼等に対抗し得るモノを作り上げていた。 それが巨大ロボ「エグザクソン」なのである。 エヴァ以降−で、ここまで「それを踏まえて、その上を行きそう」な 漫画に出会ったのはこれが初めてだ。 溢れるSFマインド。 僕等が(いや、僕が)エヴァに燃えたのは、その精神世界にではなく そのSFマインドに、だったわけだけれども、 その辺をちゃんと踏まえていながら、更にアーヴ(みたいなもの)や ナノテクを放り込んで、最新SFの「オイシイ所」をちゃんとトレースしている。 流石はソノケンと言えよう。 登場人物はケンカ好きの少年、マッドサイエンティストの爺、 そして爆乳と微乳。 流石はソノケンと言えよう。 「目の前の数十人の命と世界規模のホロコーストなら比較するまでも無かろう?」 エヴァの持っていた「痛さ」、を踏まえ、それでも尚 「種族そのものが危険にさらされるような状況になったとき、  人類は初めて偉大な決断をし得る」 という「大SF」な空気を持って我々に迫る。 ジントの星の如く彼等の軍門に下って「種として」生き延びる道を 選んでも(という展開は必ず出てくるであろう。或いは既に出てるの? アフタヌーン全然読んでないので)、と言う中で 一体これからどういう風に話が進んでいくのか− 久々に「今直ぐ次巻を!!!」と思う作品。エヴァ以来かも− ホント、面白えや。上手い。 「お話」だけじゃなくて「絵」も無茶苦茶良い。 いやまあ当たり前っちゃあ当たり前なんだけど。 P186、4コマ目を見ただけでこの単行本を買った価値が有ったというモノだ。 背景の完成度も含め、もう言うこと無しのSF的気合いを感じる。 ああ、この「大SF」に突入するときの身震いする様な感触。 このシアワセ・・・・シアワセだけど、これでまた 「早く続きを!」という渇望が出てきて・・・ あー。兎に角、言うまでもないかも知れないんですけど、お薦めです。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980629)
逢坂みえこ「永遠の野原 16」/集英社/1998/03/30 10年越し連載の完結編。 もう買う人はとっくに買ってるだろうてんであらすじなど云うと、 柳と一姫さんはついに結婚。 勘当がとけた太は横浜の中華料理屋へ帰り、野沢もまた。 それぞれの門出の中、いろいろいろいろあった二太郎とマリコさんも 肩をよせあい「永遠の愛」ってやつを感じるのだった。をはり。 この1冊が「最終話」そのものである。2クールドラマの26話。 10年越しでつき合ってきた方々には、その感慨もひとしおのことと思う。 僕にとっては出逢ってより約一年。でもこの一年、卒業、就職、そして・・・ という中で、この作品は物凄い「支え」であってくれた。特に昨年の春、 この作品に出逢ったばかりの頃、枕元に積み上げて、もう何度も何度も 読んだものだった。 まぁ、それも終わって暫く経って。 こうしてまた再び春の陽気の下で彼等の門出を祝うのも何かの縁であろう。 ラストには間に合ったのだから、良しとすべし。 ホントは「もっと早く出逢っていれば!」とも思ったけれど。 正直な話、もっと二転三転してドロドロして行くんじゃないかと思ってた (特に二太郎の大学(阪大だよな)関連で)のだけど、でも、 実際はこんなもんでしょ。人生そうそう出会いもないし 派手なドラマだって毎日起きてる訳じゃない。 人に与えられた「ドラマする時間」には限度があるのだ。 僕たちはいつまでもこのままではいられない・・・・から、 物語は終わるべき時に終わる。 タイトルの「永遠の野原」できちんとシメてくれたのには感激した。 ラストの見開きから始まる(P101一姫の)「永遠って信じる?」に対する 答え・・・めいた一文は、この作品の末尾を見事に飾った。 プロットだけを話すと陳腐な恋愛ドラマだが、これはTVドラマじゃなくて 漫画なのだ。斯う言うとき、漫画の没入感、共感度合いはTVの比ではない。 ラストを包む「嵐」のイメージは見事。 出発(たびだち)に大風は相応しい。嵐の後の空の「凄さ」を肌で感じる。 此処にあるのは只の線とトーンだけだけど、確かに強い風に吹き流されていく 雲の動きが見える。雲の上にある高い青空が見える。 或いはその湿った空気を肌で感じることさえ出来る。 p135・3コマ目のマリコさんの表情に、彼女の心の動きを読みとることが出来る。 あの表情こそは二太郎と並ぶに相応しい「マリコさん」だ (あ、拙者二太郎凄く買ってます。彼奴はイイ奴だ!)。 一体どうやったらここまでキャラが立つのだろう? 下手をすると実在の友人達より猶立体的な彼等。 ・・・彼等の(二太郎の)喜怒哀楽を我が事と感じ、一緒に浮き沈みする快楽。 漫画(虚構を)を読むというのは、つまりそう言うことなんだ。 太と野沢。 野沢のめげない性格が好きだった。多分実際に居たらうっとおしい(暑苦しい)ん だろうけど、それくらいのパワーがあって初めて太を参らせることが出来るわけで、 実際良いコンビだと思う。 彼等の「ラストシーン」は然し太の性格からいって随分先のことになるのは 間違いない・・・という風に、この二人を、「野原」世界のこれ以後の 展開の「可能性」としてちゃんと残してあるあたり・・・ これでこの物語は終わることなく(読者の中で)生き続ける訳だ。 太個人は決して女性に冷たい奴じゃない。ただ、「それ以前」に女性関係が 有ったことが彼の心を頑なにしているのかも知れない。その心をもう一度 振り向かせられるのは、野沢しか居ないさ。 実際太はマリコさんの事をどう思っていたのか・・・ 奴は− いやー正直マリコさんが太LOVEモードに入ってからというもの、 何か辛くてさー。読むの。でも今思うと彼女中心に思考が展開してたというのは、 つまりすっかり二太郎に移入してた訳で。 読むのが辛い、でも読んじゃう。なかなかそういうのって無い。 マリコさんの「自分が自分でなくなるくらいみっともない恋」の前で、 それでもがんばり続けた二太郎。 「もーいーや女のことは」と太と笑いあってる時は「そうだ!」と頷き、 それでもマリコさんちに行ってしまう二太郎にシンクロし、ラストの 幸せを一緒に体感し・・・ まぁ、ラストの二人を見ていると、もう、何も言うべき事は無いのだけれど・・・ ・・・・例によってまたまとまりのない文章でした。 もすこしマシな感想が書ければ良いんですけどね。 経験が少ないもので・・・・いやその・・・・ はぁぁ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980411)
横山えいじ「ルンナ姫放浪記」/早川書房/1998/01/31 購入当時、某書店で平積みだった。 横山えいじの単行本が平積み、なんてなかなか見られるものではないぞ。 彼のイラストが−というのも最近見ないし。ミルキーピアの頃は 結構新刊毎に平積みだったが・・・ さて。 「SFマガジン」1990/8〜1998/2月号に掲載された表題作他、 ミステリマガジンに載った「ホームズ君」2本も収録。 8年間連載して単行本一冊。何せ月2枚、年24枚である。 「マンプラ」といい「大雑貨」といい、全くこの人の単行本てのは 恐ろしい時間密度。 相変わらず画面の完成度は高い。 特に装丁の美しさは流石だ。当たり前だけど。 どれくらい完成度が高いかというと、この単行本の表紙は NO.174の一コマをそのまま使って彩色しているだけなのだが、 つまり漫画中のコマがそのまま表紙に使えるという・・・ ・・・・・手抜き? でもこれだけ拡大しても遜色無いってのは凄い。 ネタ的にはドクター・アダチクリニックネタとおかしらネタ というかロト星人ネタが好き。一見さらっとギャグで落とすネタも、 読み込めばSF。現実の諸現象を「SF変換」して見せてくれる こういうSFショートショート作家も今は少ない・・・ 例えばNO.45、通販(・・・通販ネタは多い。SFで然も宇宙を放浪してるのに。 作者は昼型生活者で有名なので、屹度日本文化センターとかのアレを 良く見ているのだろう。テレコンネタも有った様だけど)でルンナ姫が手に入れた 「私の恥ずかしいあの写真」には、何だかよく解らない物体が逆さ?に 吊されているというものが写っている。同様に入手したビデオも・・・ もしかしたら凄い恥ずかしい写真なのかも・・・とか 有名なAV女優では・・?とか言っているところに伝吉が 「めずらしい魚がはいったんですけど・・・」と その物体を持って来るというオチ。 ・・・・このマインドこそが「SF変換」なのだッ。 変換元には通販以外に時事ネタも結構有って (NO.62ウォーリー、NO.70埋蔵金、NO.71鉄人、NO.81ランダムドット、 NO.97モーフィングカレー、NO.99バーコードバトラー以下その他諸々・・・)、 時間が経つとアレなのも・・・それはそれで良いのだ。SFだし。 最初から立ってるキャラばっかりで(何せススム君とオズマ先生は レギュラーキャラだし、ゾンビは横山マンガの基本だし。ルンナ姫は横山マンガの 強い女性キャラの代表だし・・・)凄く良い。特にルンナ姫一行は 完全にキャラ分けが出来ていて、読んでいて気持ち良いのだった。 いや何が良いってあの姫の性格よ。通販ものに目が無くて、 コレクション癖があって、王族だから征服欲も強い。 何があっても反省だけはしない。常に王道を行く・・・好きだ・・・・ オズマ先生/おかしら(最後までその正体は謎だったが・・・)も好き。 このキャラを見ると我々は直ぐにキャプテン・パープル音頭を歌ってしまう訳だが (何キャプテンパープルを知らないだと?嘘。知らないのが普通なんですが) ロト星人に喰われないオチはあり得ないという・・・ あのゴシック調描き文字の「がうがうぎゃるるるるるるる」が好きで。 時空を越えて存在し続ける謎のロボット・ススム君も怪しくて良い。 NO.123や184なんかを見ていると、彼は宇宙そのものの支配者かもしれない (かつては惑星破壊兵器だったり新聞記者だったり未来都市の マザーコンピュータだったりもした)。少なくとも一行の運命は 割と彼の気まぐれに寄っているのだった。 NO.113の片倉陽二的のんきさと、あじま的似非壮大さを見てると、 ああこれぞショートSFだ〜とか思うのだ。 横山えいじはまごうことなき「SF」だと思う・・・。 これで1600円は安い。一家に一冊、おすすめの一品です。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980307)
たがみよしひさ「NIGHT ADULTCHILDREN 1」/学研/1998/03/06 久しくNORAの看板シリーズだった「なあばす」の後をついで 始まったこのシリーズ。前回は悪を暴く探偵だったが、 今回はその悪そのもの。 所謂「快盗」ものである。 かなり「まんが」。 割り切ってるんだろうけど、たがみ作品特有の現実風景にリンクした格好良さは 無い。 格好良さの主体たる台詞回しもまだぎこちないし。 ・・・レギュラーキャラが最初から出過ぎなんじゃないかと思う。 「なあばす」は最初期4人(安堂・三輪・みゃー・京子)だったから まだしも・・ 三輪・・じゃない石川警部補以外今一つキャラが立ってない感じだし。 あ、遠藤由里はキャラ立ってるな。絶妙のボケ具合。ボケキャラを描かせると巧い。 何より主人公たる風太郎のキャラが弱すぎる。第一話のみ格好良くて あとは今一つぱっとしない・・・寧ろセアカゴケグモ・・・じゃねえ、 ブラックスパイダーこと黒沼東吾の方がキャラが強い感じがする。 頭脳担当と筋肉担当にキャラを割り振ったのが「なあばす」の成功だった訳で・・ キャラ一体一体は結構面白いんで、あとは読者側へ浸透してくる時間の 問題かとも思ったのだけど、どうもいまいち・・・・なあばすは 一話でハマったからなぁ・・・その辺がどうも。 掴みは甘かったけど、暫く続きそうな気配なんで、次巻を楽しみに・・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980306)
たがみよしひさ「NERVOUS BREAKDOWN 13」/学研/1997/05/06 忘れていた・・・・感想を書くのを。 感想棚に眠ったままもう一年近く。 ないと・あだると・・・の序でに書く。 この13巻でラスト。だがラストにしては酷い。 まぁたがみ作品のラストってのはたいがい「こう」だった気もするが・・・ でも13巻だよ?うーん。 13巻続けてきてこれがラストですか、と。 いつでも再開できる体は、でも別の作品に(今度は彼等が) ゲスト登場するときに使いやすいという利点もあるのかも。 どうでも良いんですが、この巻で中心となっている 未来と三輪の関係って、そっくりな人達が居ますよね。居ません? そんで結局全然違うタイプの人と結婚したりして。 ・・・やっぱりこのシリーズは巻数ヒトケタ台の頃が良かったです。 アクアリウムネタにしても探偵ネタにしても、流行出しの前 (もしかしたら既に流行っていたかも知れないけど) だったから凄く新鮮で。 安堂も格好良くてさぁ・・・あの銜え体温計が。 ひ弱で美形で頭脳派で。格好良かったなぁ。 今や完全にオヤジだけど(絵は同じなのに、今の安堂は間違いなく 年相応のオヤジだ。一巻の頃は大学出てそんなに経ってない感じ) 三輪も・・・三輪はあんまり変わってないか。 やっぱり所帯の有無が分けるね。あと脳味噌。 あと二人の服も好きだったのよ。 お洒落でせう。 都会の匂いもしたし、ああ、ホントに初期は凄い好きでした。 今でもビール飲むときに「冷えるんだがな〜」とか 呟いて飲んでみたりして。 今でも結構「格好良さ」の指針です。 久しぶりに一巻から読み返し中の @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980305)
高橋葉介「学校怪談 8」/秋田書店/1998/02/10 銜え煙草の帽子男。 本屋で8巻の表紙及裏表紙を見たときの感動。 もう”奴”の登場はその時から予感していたが、 まさか九段先生のご先祖だったとは・・・! いやァ、やっぱ夢幻クン(とカタカナで振らせてくれ)は良いぜ。 「素敵なお兄さまと呼べ」 くはー。良い。イイなァ。 ギャグな夢幻も好きだったけど、 矢っ張り青年探偵夢幻魔実也だよ。 あの悪魔とも天使ともつかない表情、 P61のあのシルエット・・・!! ホントに巧い・・・。あの目の表情がもう・・・ ・・・オマケに立石は髪をおろすわ九段先生はヌードになるわ (ていうか露天風呂シーンが惜しげもなく!!) 挙げ句にアスカな転校生(何でもエヴァ変換するのは止めたい所だが、 主人公山岸からがどう見ても高橋葉介が描く碇シンジだしさ) 神宮寺八千華も大登場(これがまた長い!転校初日だけで5話も有ると言う。 然も連続じゃなく一話完結×5)するわ・・ 毎回毎回一話完結で延々と続くこのシリーズだが あのテンションと完成度を良くも保てるものだと感心する。 この巻で既に140話を超えているというのに、 その「高橋葉介的面白さ」は薄まるどころか この独特の世界を得て益々濃く成っていく様である。 元気な転校生も増えたし、何となく立石と山岸の間にも アレな雰囲気が流れ出したりで(今巻p166最後のコマで こっそり覗き込んでいる立石に一票)「恐怖」漫画としてだけでなく、 キャラ主体の漫画としても可成り楽しめるシリーズとなってしまった。 ええ。割とおすすめです。 ・・しかしそうか、九段先生は夢幻の子孫(誰との??大体夢幻って人間なのか?) だったのか・・・道理で・・・。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (980217)
武内直子「コードネームはセーラーV 3」/講談社/1997/11/6 これでセーラー戦士シリーズも 全巻の終わりという事になるのかしら。 久々に読んだら矢っ張り濃いわ。濃すぎる作風。 濃いちゅーか・・・ケバい。 いやそれでこそ武内ナオコ先生なんですがッ。 何処からそんな元気が出てくるの〜 的「元気」のカタマリみたいな漫画で 読んでると正直疲れる・・・・ 単行本一冊読むのに3日かかってたり。 特に「ハチマキ石」の回はのっけからハナイキの勢いで 初恋暴走少女の面目約如。表情も殆ど百面相だし 実にイイ。 あーあー・・・と思いながら読んで、 気がつくとせらむんのビデオ(主にR) を繰り替えし見ているのは何故。 気がつくと深見梨加のCDを聞き込んでいたりするのは何故ッ。 やっぱねぇ。 好きだったんだ・・ 斯うしてみると、ちゃんとキャラ立ってるんだよな。ヴィーナス。 陶酔暴走タイプ。 うーん。然し永遠に続くかと思われていた せらむんの記憶も薄れていくか。 それも良し。 でも今まだ「S」のリピートにハマってるので しばらくは頭の中せらむんモードな @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/01/28)
吾妻ひでお「幕の内デスマッチ!!」/マガジンハウス/1997/12/18 うう。あじま〜。 これ白泉社版買えなくてさ・・・・当時某CBとかで結構評価されてて 「おお、あじま健在じゃん!」とか思ってたらそれっきりになっちゃったという その「失踪」以前の最後の作品なのではないかしら。 ノリはやっぱり良い。 今の隠居SF漫画(それはそれで良いんだけど)とは全然違う。 でも、ノリだけ。魂が無いね。とか偉そうなことを言ってみる。 理系ギャグ作家だってのは(例によって)とり・みきによるインタビューでも 明らかになっていたけれど、そういうのはどうしても 「繰り返し」に陥ってしまうのだろう。全て「いつか見た」パターンなのだ。 それが辛い。或いは初読なら。 ギャグマンガなのだけれど・・・・何というか・・・ これは失踪もするわな、という一種の虚無感が有る。 おたくの主人公が美少女フィギュアを作っているところから話は始まり、 「作られた」美少女達をモノにしようとしては「うやむや」に飲み込まれていく・・ 非常に「病んだ」作品。発表媒体がいくらコミコミだったとは言え・・・ いやもう、この主人公駅弁君の台詞や態度を笑い飛ばせるか、胸をえぐられるか さあ貴方はどっち?的。拙者は勿論・・・・ そして全ての作品のオチに漂う空虚感・・・・ 不思議な作品だ・・・・ということにしておこう。 でも矢っ張りあじま少女は凄いよ。記号としての完成度は非常に高い・・・ 最近久々に「ふたりと5人」読み返したら、やっぱり、巧かった・・・ (むしろ後期の太めなそれよりも、初期のスレンダーなデザインの方が・・・) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/01/27)
ひかわきょうこ「彼方から 8」/白泉社/1998/01/10 7巻から一年と3カ月。漸く8巻である。 前巻で終わってもおかしくない様な展開だったので、 まさかまだ連載が続いていたとは・・・なんて。 インターミッションたる「祭の日」をはさんで、第4章がいよいよ開始。 「「天上鬼」として生まれた男は 「目覚め」として現れた女を愛したか」 これの意味するところは・・・・ 天上鬼たるイザークを「目覚めさせる」役割を背負うノリコ。 「目覚め」とは何か?イザークは、天上鬼になってしまうと我を忘れる。 或いは、目覚めることによって破壊神と化すのだろうか? p73あたりの、何かが動き出した何かが起ころうとしている・・という雰囲気は 良く出ていて好き。ていうかジーナここしか出てないしさ・・・ ああ・・・たった二コマだけ・・・ジーナ・・・ うーん・・・特に深い思い入れがないので・・・ イザークもノリコも今一つ感情移入が出来ないんだよう・・・ まぁ取り合えず、次巻・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/01/25)
鶴田謙二「Spirit of Wonder」/講談社/1997/8/22 まぁ然し先月辺りまでは「あの」鶴謙の作品集だと云うんで、そこら中の本屋が 平積みの山を作っていたものだよ。お陰で極めてマイナーであったが故の 希少価値的魅力は、流石に拡散した筈だが− それでも猶、作品そのものの魅力は、強烈だ。 どの辺が魅力的かというと、やはり乳・尻・髭爺という、この 三代要素でしょうなあ。この三点にかける作者の情熱が、もうムンムンと 伝わってくるのだよ。 物語として、SFとして読んだ各作品は、決してそれほどのものじゃぁ無い。 何と言ってもこの道には巨大な先人、星野之宣が居るからなぁ。 あの人のマンガのマンガとしての巧さは、もうとんでも無いものがある訳で。 で、この作家の−読者を引きつけてやまない−魅力というのは、煎じ詰めれば あの「絵」そのものに有る。紙の上にペンとインクが作り上げたこの「絵」の 魅力に、我々は魅了されずにはいられない。 この作家の魅力は、全くこの絵に尽きるわけで、それは最早「絵柄」とか そういうレベルの話ではなく、「絵」そのものの魅力なのだと思う。 特にカラーイラストの巧さ−というか、インパクトの強さは、他に類を見ない。 そのへんはまた「水素」を手に入れてからじっくりと楽しむこととして・・ この単行本の初期は、それでも流石に古い。匂いが古い。書き込みの量は今も昔も 殆ど変わらない様だが、初期作品は今見ると垢抜けないタッチだ。 まぁそれがまた魅力なのだが−これがチャイナあたりになってくると、 有る程度線が整理されてきて、まぁそれも「有る程度」のレベルなのだが、 それでもその巧さには息を呑まざるを得ない。 ああ、巧い。巧すぎる。他に何が言えよう? この重力の及ぼす微妙なバランスまで描かれた乳尻太股をつむぎ出す独特の描線! ブレッケンリッジの表情なんかももう無茶苦茶良い。 或いは彼等の舞台、背景の見事さ・・・どのコマにもきっちりと背景が 描き込んであって、それはもう病的ですら有る。一コマ一コマの完成度たるや。 手抜きは一切無いが、それでも妙に肩の凝らない絵・・・ 総合的にマンガとして見て、矢張りチャイナシリーズは変で派手で面白い。 キャラクターの立った作品というのは安心して読めるものだ。 日高のり子の声が聞こえてくる。 ・・・OVA版は今見ても割合見事な出来でオススメ。 ・・ひとつ気になるのは、「温暖化により静かに水没したそのへんの街」という イメージをマンガにし出したのはこの人が端緒なのかどうかという・・ かつて初めて「ヨコハマ」を読んだときに、鶴田のエピゴーネンと 決めてかかったのも、頷いて貰えようか。その実全く別物だった訳だが・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/11/17)
那須雪絵「イリュージョン・フード・マスター」/白泉社/1997/5/25 あっ 確かこれ新刊平積みの時に買ったから、ああ、買ってからもう半年が・・・ なんか長いこと未読ラックに置いてあった様な記憶も・・・ 我々の住む現代(と思われる。「ホンマカイナソーカイナ」とか寝言で云ってる) から、中世風の剣と魔法の世界に召喚され、元の世界の記憶も失ってしまった 主人公、ユー・ユーハイム(仮名)は、それでも那須作品特有の少々 クサったド根性で、たくましく生き抜いて行くのだった・・・ 菓子職人として。菓子職人なんだけどドラゴンを召喚したりするぞ。 相変わらずの軽いノリが巧い。いつまでもこの作風で居てほしいものだ。 この人も一時は「ゲームで駄目になった少女漫画家」の一人 だった様な気がするが、こうして読む限り全然平気。 何よりユー(多分20才は超えてる)のキャラ造形が秀逸。 あの刹那主義射的性格がたまらん。 中世(もどき)の風俗も好んで描いているみたいで、良い感じなのだ。 イギリスはどうだったろう・・・ このシリーズの他に「世界が終わるまでは」(やりたい放題。 ギャグが走ってて良し。オチは古典的)と、 「踏まれた天使のように」を収録。 この「踏まれた−」が傑作。 時間テーマのSFには冬の夜の切なさが良く似合う。 こういう作品も巧いよな・・・設定の巧さが光る。4年前から タイムスリップしてきた、当時の同級生石田森。 スリップアウトする数年前から彼の姿は亡霊の様に見えていて、 主人公はそれをまさに亡霊だと信じていた。 自分の所為で成仏できないのでは−と。所が− 4年間という時間の流れの、短い様で長いブランク、その残酷さ。 明確に言葉に出来ないが・・・切ない作品だった。誰も悪くない。 ただ、失われたものへの切なさだけが残る・・・ この世界の夜のどこかで、こんな事が起きているんじゃないか、と 思わせる様な自然さ、現実味。キャラクターの情動に嘘がないからこそ。 素直に読んで、何となく残る作品。 おすすめです。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/11/11)
寺島令子「墜落日誌 ペンティアム編」/アスキー/1997/11/13 いやもう読んでも読んでも終わらない。疲れ度合いで言えば 一番細かかった頃の「しあわせのかたち」と並ぶのではないかしら。 ・・・たかだか2〜3年前の恐ろしいまでの古さ、を体感するのには良いですね。 ログイン1994年8号〜1997年20号までの分を収録。 あー、でもそうだよなぁ。Win95以前だもんなぁ94〜95年末とか。 何かすっかりウィンテルに染め上げられた私の脳(及びマシン)・・・ ハッと気がつくと、100Mヘルツでもめちゃ遅いという。 パソ業界の変遷の激しさよ・・・ ああ、然し、笑えない。 以前は「濃いなァ」とか笑って読めてたんだけど、いざ自分が 毎晩日付が変わるまでパソの前に座って仕事をする様になった今、 ログイン編集部の椅子寝り描写など見ると、もう我が事の様に その苦しさが蘇ってきて・・・ううう。正直吐き気を催す。 睡眠時間を削ってボロボロになりながらMTGを繰り返す様は、 もう見ていられないと言うか・・・辛いのだった。 最近オダヤカな生活に憧れてるんで、こういう強烈なのは ホントにクるものがある。 個人的には矢張り第121回のガイナ祭の描写がひどく懐かしくて。 ああ、俺もあそこに居たなぁ、コスプレしてたなぁ、エヴァもあそこで 初めて見たんだったなぁ・・・とかもう、そのあまりの懐かしさ加減に クラクラするのだった・・・ああ懐かしきSFヲタク気取りの日々よ! 等と語り始めたらキリがないのでおいといて。 うーん、なんか、読んじゃうんだけど、昔みたいなトキメキが無いというか・・ ギョーカイへの憧れが失せたのが原因かも・・・単に飽きたのか。 何事にもそういう時はある。 ・・あっ、そうか、拙者MTGやらないから。これが一番の原因か。 周りには結構ギャザラーは居るのだけど、結局自分は全然ハマれなくて ・・・原因はそれだな。屹度。 でもまぁ「濃い」人々は買ってて当然、の本ではありましょう。多分。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/11/11)
中田雅喜「ももいろ日記(上・下)」/ユック舎/1991/1/10 女性によるSEX/子育て(他)漫画。 と言うとどうしても近年の内田春菊・他が出てきてしまうのだけど、 これはそれ「以前」のソレ。らしい。当時は画期的だったらしいのだが。 でも、やっぱ「当時」を知らない人間にとっては 「比べるとちょっとね・・」的気分になってしまう。 で、私にとってこの漫画の焦点はただ一つ。彼氏(後旦那)の描写に尽きる。 明言こそされないものの、「10年前からSFの人」横山えいじだ。 氏の「不幸」を嘗て風の噂で聞いていたが、成る程そうだったのか、という。 この作中の言葉を借りればこうだ 「おれって何?  マンションはおしかけ女にのっとられるわ、ガキはつくられるわ、  子守りはさせられるわの、主夫か!?」(下・P133) 横山えいじと言えば私にとっては神にも等しい存在だけに、 かなり複雑な気持ちも無いではないの。 勿論実際は奥さんや子供のことを話すのが嬉しくて仕方ない、ってのが SFマガジンとか観てると解るけれども。 基本的にはSEX(これは男性読者の興味本位用)と子育てと、そして「昔話」。 女性の漫画エッセイストの多くが、過去の自分の話ばかりを延々としてしまうのは 割と良く観られますが(男もそうだけどな)、でも大抵は「面白くない」。 例外は中高生にとっての新井素子くらいでは。 「日記漫画」は面白いんだけどねぇ。あんまり「昔話」って面白くない。 特にこの作者のそれは過去が(あからさまに)美化されている為に、少々不快ですら 有る。これは自分も又同じ様な失敗をしてきている事を思い出した為・・・。 あと矢っ張り気になったのは、「最大の敵は無理解な母親」であるという点。 最近コレに類した話を某所で2件ほど聞いていて、女ヲタクの敵は 結局母親なんかなぁと。いや違うのかも知れませんが。 えーと。この作者の事良く知らないんですけど、「濃い」のは解る。 SF全盛期の人名が端々に出てくるし。多分掲載紙のこともあって 「押さえて」はいたんだろうけど、巻末の「オランダの堤防少年」あたりで その性格がオモテに出てしまった感じ。 悪くはない(寧ろ「愛のさかあがり」的で親しみやすい)んだけど、 そこまでが全く「そういう」エッセイ漫画じゃ無かっただけに、 かなり違和感を感じる。それが連載終了の原因だったのかも。いや単なる推測ですが。 ○この本を提供して下さったへのへのモアイ氏に感謝します。  横山えいじファンとして。  私一人では、この漫画に出会うことは多分無かったと思います。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/09/23)
高橋留美子「犬夜叉 2」/小学館/1997/7/15 うーーーん・・・・ 面白いんだけど・・・ ギャグ作家としての高橋留美子を好む私。 取り合えずかごめが可愛いんだけど、ちょっと変。 根性が座りすぎてるような。 まあ家から「通い」が出来るんだから その辺「炎トリッパー」とは違うわな・・・ サンデーの妖怪路線ってのは結構当たるらしいので これはこれで良いんだろうけど、なんかねぇ。 もうこれじゃ「時代」は作れまい。 以前の、あのテンションの高い群衆劇を! それだけが望み・・・ まあその路線は椎名高志が継いでるけど・・・ うううう。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/07/20)
長谷川裕一「マップス 外伝2」/学研/1997/8/6 やっぱ「マップス」ってこうじゃなくちゃね、という。 こういうノリが好きだったんですよぅ。読み始めた頃の・・・ いやーなんか嬉しくて。 各キャラにそれぞれ見せ場があって(無いのはゲン位)、 リムの男装(勿論脱ぎます)!シアンの男言葉(勿論脱ぎます)! そして矢っ張り縛られているラドゥ(勿論以下略)!こうでなくては! ・・・・・そんな漫画でしたっけ? ていうか侵略大帝様イカシ過ぎます。いいキャラだ・・・ もう侵略大帝の魅力だけでこの本買った価値は有ろうと言うものです。 1000年の冷凍刑から今甦る!! でも相手が悪すぎた・・・ダートとラドゥじゃなぁ・・ 作者が如何にも楽しんで描いてそうで、凄く好きです。 ・・・あのヘルメット(手が出てる奴)欲しい・・ 是非とも次回作希望。 でも、結局一番好きなのは矢っ張りリプミラ&ゲン。 「パズル8 その日街に流星が降った」がもう最高。 ああ・・・古き良き、良質のSF・・・ でも全然古びてる訳じゃなくて、その感覚は新鮮で瑞々しい・・。 p130の、リプミラが海から出てくるシーンの見開きには ホントに心底ゾクゾクさせられました。痺れたって奴? 巨大艦が海中から空に向かって飛び立つその迫力! ただそれだけの事がここまで心を震わせるのは、 其処へ至る展開があってこそでしょう。 然し、矢張リプミラ号は美しい・・ こういうのが直球ど真ん中で描ける漫画家、今の日本には他に居るんでしょうかね。 「宇宙の法則」に縛られて自由な発想が出来なくなる以前の、 本来の意味でのSFが此処には有る・・。 「白鯨伝説」を長谷川裕一に描かせたら面白いかも。 ・・・まずラッキーは脱がされるか・・・。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/07/19)
吾妻ひでお「吾妻ひでお童話集」/ちくま文庫/1996/12/5 今更読む奴。 640円。コストパフォーマンスは高い。高すぎる。 巻末のとり・みきの解説も親切、且つ当時の空気を見事に書き出していて良い。 「あしたのために」を思い出す。 しかし最近のあじま漫画の再刊は有り難い限りだ。 有り難い限りなのだが、なんかダブリが多くて・・・ なまじ高い金だして買った古本の内容とダブってたりすると、 何か買う勢いが出ないのであった。 改めて上手いと唸る。 上手いというか・・巧い。 COM系少女の絵は、もうあじまにとどめを指すな、と 再認識するのであった。特に墨の使い方が凄すぎる。 内容もそうだが、一時代を築いた絵柄、というのは 後から観ると案外古くさいものだ。時代性が匂う。 あじま漫画には(まだ?)それは無い。 内容に関してはSFがメインと言うだけでも最早アレなのだが。 我々は吾妻ひでおの新作を待つことも、読むことも出来る様になった。 ・・筈だ。最近一寸観ないんですが。 過去の作品も簡単に読むことが出来る。 果たして時代は一回りしているのか? あじまは再び我々(・・・)に光を与えてくれるのか? どの作品もマスターピースであり、我々はその物語に打たれる。 作者自身がどれだけ苦悩し、生活の中から作品を生み出そうと、 作品は生み出された瞬間からその生活とは関係なく生きていく。 そう言うことを思いながら読むのであった。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/05/19)
岡崎京子「くちびるから散弾銃」/講談社/1989/8/11 岡崎京子「くちびるから散弾銃 2」/講談社/1990/4/23 漫画家は岡崎京子しか信じない、とは某氏の弁だが兎も角。 交通事故の後、現在リハビリ中と伝えられる作者の近況はどうだか知らないが 生きてさえいれば、またその作品を拝む事も出来よう。 この作品は1987/8から1990/5にかけて「Me−twin」誌に連載されたもの、 であるらしい。「時代性」という点で、実にヲカザキらしい作品だ。 代表作と言っても良い。いや、そういう感じなのだ。 岡崎京子作品には全く疎い私でも、その存在は昔から知っていたし。 内容は、巻頭の作者の言によれば「ポスト・ポスト・モダーンなかしまし三人娘の 勝手気ままなおしゃべりにつき合っていただくわけで、サンキュウ」という訳である。 その言葉、或いはタイトル通り、ただただ続くおしゃべり。それが作品の主眼だ。 今更この本を読んだのには、理由が無いでもない。 先日遂に私は23歳になったのだった。 いや、彼女達は、その作品のスタートに於いて23歳なのである。 それが理由と言えば、理由。 連載の続いていた間(1987〜1990)、歳はとりつづけるものの、 スタンスはほぼ最初のままである。進歩も退歩も無い、その虚ろな生活感。 勿論作者は意図的にその「虚しさ(良い意味でも)」を 浮き彫りにしているのだろうが。 ・・・然し、「高校時代からの友人と駄喋る23歳」というのは 実際「こういうもの」だ。男でもな。身体や身分は大人なのだが、 会話は何だか全く進歩がない。 というべきか、敢えて馬鹿話をしてしまう。 虚しさがつきまとわないでもないが、そのリアリティが「凄い」。 「虚しさ」というのはこの作品のメインかもしれないな・・・ 虚しいという事と、不幸感とは直接つながるわけではないのだ。 勿論充実していても、幸せ、とは言い難い。 彼女達の話はすぐに高校時代、或いはそれ以前に帰っていく。 「あの頃は楽しかったよねぇ」という話。自分がそういうタイプだけに、 その姿は辛い。建設的な会話、ってどんなものだったのか。忘れちゃったな・・ 心底幸せだと感じる「瞬間」は思い出の中にしか無いのかしらねぇ。 難しいものだが・・・ これもまた時代と作者のキャラクターが相まった「珠玉」であります。 時間と財布に余裕がある方はどうぞ。 ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/05/18)
逢坂みえこ「永遠の野原」/集英社/1995/10/30〜 現在も続く少女漫画の人気シリーズである。 先のGWに、1〜14巻を一気読みする機会に恵まれた。 成程。これが「あの」野原、なのか。 かつて私が大学生に成り立ての頃、古書店のオババ(今はもう居ない)が ひどく熱心に薦めてくれていた本があって、結局その時は買うこともなく 時だけが過ぎてしまったのだが、それを今斯うして読んでいる。 「感想」は持ちがたい。 似たような世界観(だと私は思う)でありながら、 「わかつき」とは全く違う・・・ しかしその「影響力」に置いては似たところを持っているのではないか・・・。 影響力は強かった。 読了後一週間経って、今その効力が判る。 自分の周りに彼らの世界が二重写しになる「あのマジックフィリング」が 今も自分を取り巻いているのが感じられる。つくづく影響を受けやすい タイプだとは思うが・・・ タイプと言えば、私の好きな世界観は、割とタイプ別に 分類できてしまうのだが、その中でこの「野原」は、 川原泉とわかつきと高野文子の周辺という感じであるのだった。 まあ直ぐに類型化するのはアレだけど。 然しタイトルがいいよね。何か。「永遠の野原」。 この作品のイメージは、その大部分が日の光の下で展開するにも関わらず 夜の空気−春宵というか、春の深夜、或いは冬の凍てつくような夜、を感じさせる。 静かな、懐かしい、豊かな夜だ。それはシリーズの初期がそうであったからだが その「空気」は、全巻通して続いているのだ。 数年前、私にとって「夜」はこの上なく豊かだった。 今はただ眠っている間に過ぎ去ってしまう「日中ではない時間」でしかないが かつての夜は、本当に豊かだったものである。 何かを創造できる、と信じていた人間にとっては。 その豊かさを思い出させてくれた。 その意味でこの「野原」は、少女漫画であると共に、「創作」という 呪いにとり憑かれ、その呪いの生み出す大いなる苦しみと、 僅かばかりの快楽の循環から抜け出せない人間の姿を描いた ドキュメントでもある。何かを生み出す行為の苦しさと快感は、然し 多くの場合、夜生まれるものだ。 この作品は、あの冴えた闇を思い出させてくれる。 勿論「少女漫画」として見ても、どのキャラも生き生きとしており (少々飄々としすぎるきらいは無いではないが)皆魅力的だ。 友達になりたい奴、が多い。 私が古本屋の常連だった当時、「サイファ」や「アレクサンドライト」といった 成田美名子の作品群に心を奪われていたことを知っていたオババが薦めたのも 今になれば頷ける。或いは「もう一つの動物のお医者さん」という評価も又。 今月中に新刊も出ることだし、一読されてみては如何。 @@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/05/18)
高野文子「るきさん」/筑摩書房(ちくま文庫)/1996/12/5 「あの」るきさんが遂に文庫化。遂に、と云うか何故か、というか− 取り敢えず、この作品を文庫化に選定した出版社のセンスに拍手。ハードカバー判が そんなに売れたとも思えないし−かつてハードカバーで出ていたのだ。同筑摩から /1993/6、に。 本屋で内容を覚えるまで何度も何度も(本屋に行く度に読んだ)立ち読みして、 そんで、結局買わなかったという。今回の文庫化は是非者モノでの購入であった。 カラー(色指定か)の使い方は、いわば裏わたせせいぞう。和食な色合いは 黄味走って何故か色あせた感じを与える。見目に優しい。 だがこの作品は、そういった外形的なものだけでは決して説明されない。 ・・・しかしこの内容をどう伝えたものか− 巻末の氷室冴子による解説が、結局最も「近い」ものであろう。それでもそれは 解説と云うよりは、ファンレターに近い・・・ こういう作品の前になまじな言葉は無力なのだ。無意味だ、と言っても良い。 文字数を費やして、結局言いたいことは 「絶対損はしませんから、買って読んでみて下さい。」それだけ、だ。 肩肘張らずに生きること、を何か納得ずくで(それに理由や美を求めている訳では 無くて−)生きている、人、その姿。その良さは解るのだ。良いなあ、というのは 解るのだけど、言葉で表すのは難しいのだ。 ああ、前から言っては来たのだけど、この感性は「ヨコハマ買い出し紀行」だ。 アルファさんの感性と、るきさんは、近い。と思うのだけど、どうかしら・・・ んー。調子悪い。言葉が出ません。この辺で。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/04/10)
桜沢エリカ「ユウベノナツ、桜沢エリカ。」/白泉社/1988/3/2 ああ。80年代。主に86年中心。 桜沢エリカには特別の思い入れが有って、例えばそれは 「ウーくんのソフト屋さん」(知らないだろうなあ最近の若い子(・・・・)は) だったりするのですが兎も角。 こういうのを読むと、桜沢エリカと岡崎京子の作風が 決してそれほど似てはいない事が分かるです。 物語の作りが違うのだ。それはつまり作者の相違(当たり前だ。別人なのだから) をそのまま現している。確かに絵柄、対象とするシーン、コマ運び等は 類似しているが、それ故に違いも際だつのだ。 この単行本そのものは可愛い感じの「ハッピーエンド漫画(女の子対象)」という。 「分の悪い恋愛は(面倒だから)嫌」、という作者の言葉が成程、と思わせる ライトさというか打算性が良い。都会的、っていうのかしら。 何度か読み返してしまいそうな単行本では有ります。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/04/08)
永野護「ファイブスター物語 VIII」/角川書店/1997/2/28 漫画界の一つの尖端であるF.S.S.の8巻である。 前巻が1995/4だから2年近くで一冊か。 メインはヤクト・ミラージュの登場シーンだと思うがどうか。 NT本誌で読んでて爆笑したものである。いや凄い。 目から光線はお約束だがさすがだ>ソープ。 ストーリー的には前巻の「つづき」でもあり・・・ しかし安易な感想しか出てこない(というかそう有らざるを得ない)作品だ・・ いややっぱアトロポスはいいなあ、と。好きなんですよあの娘。 毅然とした空気と線の細さがかがみあきらの漫画を思い出させる・・ 何より、こう、作者の愛が有るような気がして・・・ 後は星団にカイエンと並び称されたブラフォードの剣士バカぶり。 いや、こういうモンでしょ、剣士は剣を捧げる相手を見つけてこそ輝く。 でもいいなあ。こういうの。 可哀想なのはパルテノで、あの「こわれる・・よ・・」が来た・・・ ”シャフト”は個人的に凄く好きなキャラだったので、これっきりかと思うと 辛いです。いい味出してたもの・・・ MHの居る戦場、てのが良く描かれていたと思いますが、実際数日の展開が 単行本になるのに何年かかってるか。まあ作者の生命が無限だったとしても こっちが死ぬまでに読み終えることは出来無さそうだ・・・ 本誌で読んでてもストーリーは殆ど気にしていないので 単行本で初めてまともに読んだ気になる @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/03/25)
たむらしげる「スモール・プラネット」/青林堂/1985/6/1 たむらしげるの最初期の単行本だったと記憶します。 全編CGで加工、ハイビジョンで制作された事で有名(だった)アニメーション 「銀河の魚」の原作を含む1980〜1983の作品集。 随分前に一度手にしていたのですが、いろいろあって、今回再び購入。 久しぶりに読みました。 矢張り他人の追随を許さないオリジナリティというのは有るもので、 この作者の世界は、そのモトネタを稲垣足穂に求めるのは簡単(特に「終電車」は かなりタルホライク)ですが、でもそれを絵に起こし得たというのは全くの才能。 絵柄という点では少なくとも日本作家にこういう絵を描ける人間は 当時は居なかったに違いない。今も少ないだろう。最近ではすっかりメジャーな 「絵柄」となってしまった様だが・・・ デザインセンスのカタマリの様な作風は、CGの持つ塗りの均一性や機械的な グラデーションに見事に対応している。アニメーション「銀河の魚」はその意味で 本当に素晴らしい作品だった。 一家に一冊、の類の「いい本」です。 持っていたい、宝石のような本。 やはり稲垣足穂にイラストを付けるとしたら、現在日本には たむらしげると草ナギ琢仁の二人しか居ないな・・・ と思うのだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/03/25)
ひぐちきみこ「もっとがんばれ!プリンセスちゃん」/主婦の友社/1997/3/25 ひぐちきみこ作品集2。 まさか「2」が出るとは・・・恐らく「1」が予想外に(・・・・)好評 だったのではないかしらん、と思うのですが。 何にしてもこの続刊は、部屋に氏のサインを飾り、或いは某ファンロード誌の 「お気キャン」に「がんばれプリンセスちゃん」のヨイショ葉書まで 出した者として、喜ばしい限りです。 確かに「かき集めた」感は強い・・・同人誌云々は兎も角、ナディアネタがもう。 勿論読んでいてこの上なく幸せなのは同じ(魅力は「作風」そのものだから) なんですが。でも、それでも未読のひぐち作品を読めるこの幸せ。 特に「猫バカ日記」の絵柄とノリの合体技は殺人的に良い。 「猫バカ日記2」の猫への愛情の深さもまた猫の飼い主だったことのある人間には 「解る解る!!」の世界であろう。ああ。猫飼いたい。飼いたい!! でも今犬ブリーダーとして修行中だしな・・・ 勿論この本の目玉であるところの園田健一の同人誌「朝鮮飴」 (知らない・・見たことも無い・・・読んでみたい・・・)から収録された 「不敵な奥さま」は、赤井夫妻の尋常ならざる日常を描いていて素晴らしい。 何度も何度も読み返してしまう傑作である。是非続刊を希望。 ・・しかし。ああ。ああああああ。あああああ。 この絵そのものから伝わってくる「人の良さ」・・・ 快楽中枢直撃の波動。 だから「絵柄」だけ真似しようとしても無理なのだ。 やってみると解る。何か、絵は似せられても雰囲気が全然出ない。 すいませんそういう葉書でした>FRに載せてもらったやつ。 ああ。こういう人が身近にいたらどんなにか人生楽しいだろうと思わせる。 それを裏付けるゲストページ。貞本の豪華(今となってはそう言える)絵や 鶴田謙二氏の深い絵など、もうその人脈というかオトモダチが濃い濃い。 しかもひぐちさんの前では皆「良い子」なんだ・・・雰囲気が・・・ ・・・思わず「のりことさよちゃん」読み返しちゃうよな。 ホントにノリが変わって無くて素晴らしい。結局幸福感てのは その人の感性に寄るぜ。人生の幸福感を切り出して他人に伝えられることが、 本当のシアワセなのだ・・・自分の感性を信じろ・・・ 人としてこうでありたい、と思うワタシであります。 なかなか生まれつき備わったカリスマってのが無いと難しいんでしょうが・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/03/25)
猫十字社「県立御陀仏高校 1」/小学館/1985/1/20 猫十字社「県立御陀仏高校 2」/小学館/1987/5/20 おだぶつ、では無くみだぶつ、と読む。 猫十字社の「黒もん」系スライドギャグ漫画。 たっつぁんとももちゃんのハイスクールライフ・・・ いやこういう懐かしい響きが何となく似合う、渋い漫画である。 多分連載当時もそう言う雰囲気だったのではと予想されます。 朝の光、午後の気怠い光、春の風、懐かしさを誘う風景・・・ 実にいい味を出してて(特に毛皮のモーリン)、 古本屋で結構な値段で買ってから、数週間した今や愛読書。 たっつぁんの可愛さがたまりません。あの髪型とあの性格。 バイクの免許取ったりするのも猫十字社の好みが出てて好きです。 ももちゃんエイド(欲しすぎる)といい、ゴル子さんの造形といい、もう・・・ で、斯う言うのをもっと読みたい!と私は思うのでした。 今何巻まで出ているのか・・・ 黒もん、の1巻がまだ手に入らない @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/03/24)
津野裕子「デリシャス−delicious」青林堂/1988 ついに手に入れた・・・ 「ガロ」の誇る天才津野裕子の初単行本。 古本屋で買ったひと山いくらの中の「ガロ」'88/6で初めて 「わたしのかわいいシマシマちゃん」 を読んでからもう数年。 古本屋で津野裕子の描いた回の「ガロ」を探し続けましたが、みるみる内に高く なっていく。10冊近く集めたところで「雨宮雪氷」/1994という単行本が出まして、 巻末で以前の単行本が有る、という事を知り(はよ知っとけよ・・「ガロ」 リアルタイムで買ってないので)、かくして手に入れた訳です。 でも、集めた「ガロ」に載っていた作品が全て収録されているわけでは無いですね。 ちょっと安心・・・。いや安心しちゃいかん。それじゃあすべての作品が読めた 訳じゃ無いのではないか!!!うう。マラソン選手の奴とか(まだ下手だったけど) 凄く好きなのに・・・ で。 この作者をご存じ無いアナタ。 この人は凄いですよ。 絵が凄い。 絵だけで感動できます。・・・だから言葉で語るのは不可能・・・ ここで「ガロ」な絵と思われると困る。この人の絵ほど「デッサン」という言葉が 当たる絵は無いですよ。二次元に立体が封じ込まれている。その「デッサン」感は 写真を模写したのでは描けるものではないわ・・・・。 自分で少しでも漫画を描こうと試みた人間なら、確実に衝撃を受けること請け合い。 顔なんかは割と白泉社系少女漫画の亜流なんですが、それも軽くて、美しい。 この単行本に居る「ケン君の妹」は、もう言葉では表せないほど可愛いぞ!! 実はその「妹」の絵でハマったのだった・・・ 作者は仕事をしながら描いている様ですが(そりゃ掲載紙が「ガロ」だけでは 生きてけないわね)、そうやって積み上げるようにして描いた漫画は、しかし少しも 重くない。 巻末のやまだ紫による解説に「津野裕子は作品を縫い上げる」とあるが、なるほど、 その作品の完成度は「編み上げる」よりも、すっきりとした「縫い上げた」様な 所が有る。 ああ・・・でも「ケン君」はいいなぁ。 あの世界がいい。アメリカンホームドラマな世界。 最近作者はずっと地元の描写にかかっているようだけど、また、彼等のようなのを 描いて欲しいものです。 で、富山(最近の作者の舞台)にも行ってみたいかな・・・ ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
なかむらたかし「夢の中へ as if a dream」/徳間書店/S60/2/15 なかむらたかし、というアニメーターが居る。居た。 代表作は「ピーターパンの冒険」だ。 その特異な画面感覚。氏の場面設定により、「ピーターパン」は、 日本のテレビアニメ史上最もファンタジックで「夢」の様な世界を描き出す事に 成功したと言える。 のみならず優れた作家性は最近没個性化が激しいアニメ界においては貴重。 そのなかむらたかし氏が、かつて片っ端からアニメーターを捕まえてはマンガを 描かせた徳間からこんな本を出していたのであった。知らなかったけど。 「ザ・モーションコミック」(・・・・・)で描かれていたもの。 で。 言ってしまえばオシマイなんですが、幻魔大戦の頃の大友絵の完全なエピゴーネン。 それは仕方無い・・・この人の絵は動かしてナンボのゼンマイのおもちゃみたいな 世界なんだかし・・ しかし、この本で驚いたのは、なかむらたかしがただの作画のみの天才では無く、 物語作りにも才能が有った事。特に表題作は、マンガとしての稚拙さ(いやこれも 当時の流行だったのかも知れないが)はあるものの、ラストのオチにはこのテのを 読み慣れた積もりのワタシも唸らされた・・・ でも、ま、漫画表現としての稚拙さは覆うべくもないか。下手は下手。 なまじ絵が巧いだけにどうにもならない・・・というのが正直な感想ではあります。 徳間はアニメーターにマンガを描かせる事を意識的にやってきた所ですが、 失敗例もきっと多いのだろうな・・・ 勿論「ナウシカ」「アリオン」といった、とんでもない傑作を生んだ事では その体制は成功だったと言えますが。 まぁ、こんな本を古本屋で見つけたんでした、という話。でした。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
美樹本晴彦「マリオネットジェネレーション 3」/角川書店/1994/4/30 やっと買った。タイミング外してずっと買ってなかったのだけど。 例によって絵は素晴らしい。というか「美樹本ぽい」。 だがストーリーテリングは甘いし、絵はマンガと言うよりはむしろイラスト。 いや・・ 正直な所、自分自身のペン先では真似出来ないものってのは今一つ読み込めない・・。 いや、真似できないなりに求めている絵というのは有るのだけど、この人のは 「ちょっと」違う・・・かつて自らのの絵の出自を「あだち充」と「安彦良和」と 語った記憶があります。僕もその二人の絵を真似するの好はきなんですが・・・ NT誌の方も長らく読んでない内に連載枠が無くなってるし、続巻、完結はされたの かしら?まあ出てても買うかどうか・・・うむ・・まぁそゆこと。 らんち(人間の方)のキャラ造形は良かったけどね。でももう「昔」の感有り。 うーむ、だめだ、やっぱ。 美樹本は、「漫画家」というよりは、やっぱり「イラストレーター」なんだ・・ まぁ人それぞれだと思って。 好きな人は、ごめんなさい。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
長谷川裕一「マップス外伝」/学研/1996/10/6  その名の通り、銀河を震撼せしめたあの「マップス」の後日談をも含む外伝。 とはいえ。実はもう少しゲン・リプミラの初めて出会って以後、メインストーリーに 至るまでの時間を描いて欲しかった気はします。また描いてくれないかな。 あの作品の中では最も「スペオペ」を描くのに適した時間の筈なのに・・・  「宇宙英雄」にしてもそう。ここぞ!という部分を一瞬で終えてしまって 果たしてそれで「スペオペ」を名乗れるのか。と、(実は)もどかしく感じた 者でした。  その意味では「パズル3」などはスペオペのお約束、宇宙船を使った大レース! (そういえば銀乞(あっ登録してる)もそのへんで止まってるしな・・・)で、 いや、楽しみました。ゴイイケン・ムーヨとその手下。いい味出してます。 ゲンとリプミラのかけあいも全盛期のソレで、懐かしかった・・・・ 「パズル4」は、なんか「イサミ」な縮み方をしたリプミラが・・・・ いや、しかしやっぱリプリムはいいですね。 胸なんかでかけりゃいいってもんじゃない!そうとも。などと。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
わたせせいぞう「ハートフルライフ 3」/扶桑社文庫/1995/12/30 わたせせいぞう「ハートフルライフ 4」/扶桑社文庫/1996/09/30 わたせせいぞう自選作品集、3及び4巻。 あの「KEN&JUN」がこうして手軽に読める(単行本買いそこねた) のだから、感謝しなくては。 しかし文庫サイズ。これではあの空の広さは感じとれないよ。 「KEN&JUN」(もとは単行本2冊)を各巻に分載して、それプラス 珠玉の短編の数々。 短編には、最近の作品には見られない独特な良さがあって、とても好きです。 特に3巻の「スローな洗濯船」の、その空気たるや。 狙った効果がビシビシ伝わってきます。 勿論、「KEN&JUN」の素朴さも買います。 ただ、言ってしまえば、この作者、少なくとも当時は同じキャラで様々なドラマに 挑戦するのは苦手このうえなかったみたい、という。 今でこそ「菜」が有りますが、矢っ張り本領は「ボクとカノジョ」の不定期な 登場人物による「ドラマの為のドラマ」(そこがいいのだ)に有ると思うのです。 ・・・確かにわたせせいぞう作品は一歩間違えば「馬鹿じゃないの」的気障さに 充ちていますが、でも、それはそれ、と割り切って読めるだけ、ボクは(しまった 片仮名だ)コドモのころからわたせ作品に親しんできたので。 小学生の頃です。「ハートカクテル」に出会ったのは。 ハートカクテル、まだ実は10巻(講談社の大判の奴で)だけ、持ってないのです。 読んだこともない。 既に文庫化されているのは知っていますが、とても買う/読む気にはなれません。 兎に角、先ず何としても大判の10巻わ手に入れなくては。 もしかしたら再販されているかも・・・今度また、注文してみようかしら。 あと、そうだ、アニメの「ハートカクテル」も、ビデオは1、2巻しか 見たことがないのです。これは確か6巻くらいまで出ていたと思うのだけど。 今でもLDが手にはいるのでしょうか。これも探してみなくては。 僕が、下手くそなりにでも色付き漫画を描きたいと思う理由の一つは、(恐れながら) この「ハートカクテル」なんですよね。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
水沢めぐみ「ないしょのプリンセス 2」/集英社/1996/10/20 「少女マンガってやっぱり秋冬の夕方だよな」という事で某イヤな友人と合意する。 その意味に於いて今巻はその真骨頂でしょう。実はこの本久々に出かけた県南の本屋 で買ってさらに南下し、その地で読んだのでしたがそんな事はどうでもいいか。 少々無理矢理な感じがした初期設定も、こうして巻数が増えていくと、それは 「そういうもの」としてとらえられる様になりました。悪くない。 でも本当、冬のコート姿。憧れる。木で出来た爪みたいなボタンの・・なんて言うの? ああいうコートに憧れた。自分は似合わなくてさ・・・昔からオヤジで。 「ジャンパー」でくくられる「労務者風の男」だったのよ。中高と。いや今はまんま オヤジだけどサ。・・・で、そういう「いいなぁ」というのをちゃんと描いてくれて るのでウレシイと。 年下の少年東君のキャラもお約束、文法化してはいるが、イイ。少女マンガも全然 読んでないんですけど、こういうのってオオモトはどこかに有るんでしょうね。 で、切ない本編とは別の、番外編〜はるるのひみつのお話〜・・に、 ノックアウトされたワタシ。これだよこれ〜ラブコメ〜。 かなちゃんは(仕方無いんだけど)常にビクビクしてて、それが辛い。 不幸すぎる。秘密があって、ビクビクして生きてる人間って見てて辛いし・・・ それがイイのかしら? やっぱ、ほのぼのしたのがいいなぁ・・・とか。 何にせよ、かわいいものを可愛く描こう!としているその意気やよし。 プロとしての慣れ下手だけは・・・ しかし背景とかは有る程度「巧いアシスタント」の手を入れた方が イイのではと思う事も有るです。この方の作品は。 とかまぁそんな事を言いつつ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
たがみよしひさ「NERVOUS BREAKDOWN 12」/学研/1996/9/6 いやー、探した探した。何処にも無いんだもんな。 やっと買いました。 久々の三輪大活躍の本巻。扉の古畑な安堂も良い。 これは確かNORA本誌の表紙になってた記憶がある。 見て思わず受けてしまったのを思い出す。・・後の世になって時代を感じたりして。 しかし・・三輪の活躍!は、嬉しいのだけど・・ いや、以前も何処かで話してたけど、やはり「安堂&三輪」の、頭脳と筋肉、 コンビ探偵・・のバランスをもう一度見たいものだ。と。 ねぇ。 今回ついに安堂に子供誕生。きょーこ復帰か? しかし・・たがみの世界では容赦無く時間が流れていくな。結婚し、子供が生まれ・・ 何故たがみは「漫画」の中で時間を進めてしまうのか。「お約束」として、いつまで 経っても年を取らないってのはたがみ世界でもアリだと思うのだけど。 確かに経年効果でこそ描ける面白さもあると思うが、この形だといつか必ず「終わり」 が来るし・・・あー、でも他の作品のキャラが等しく歳をとってるのを見ると、 彼等が「生きている」というリアリティを出すためにも必要なのかも知れない・・・ ううむ。だが、まぁ、それがたがみ作品、ではあるか。 兄貴の作品もそうみたいだけど。 まぁ、安堂も子供が生まれようがおしめかえてようが安定した「探偵」であってくれる 様なので(でもホントに安楽椅子探偵状態だな>安堂)当分は「このまま」か? ・・・しかしたがみの漫画に出てくる(特にこの「なあばす」は)飯ってうまそう。 今巻P154のラーメンがうまそうだった・・・・でも初期にミワが喰ってた中華の巨大 セットもうまそうだったし・・・いや・・今腹減ってまして・・・インスタントじゃ なくて、ラーメン屋のラーメンが食べたい・・今食べたい・・・うう・・ この作品の様に、ネーム(セリフ)の多い漫画では、「食べながら」「ダンベル上げ ながら」「データ整理しながら」「おしめ変えながら」「吐きながら」と言った、 長いセリフをえんえと、しかも自然に言わせる為の「〜ながら」が必要であり、 その意味で「食べる」のはかなり自然な「〜ながら」の部類に入るのだろう。 ああそう言えばP12〜で安堂達が喰ってる鍋もうまそう・・うう・・ 所で、安堂は最近ずっと警察に協力してる様だけど、ああいうのは金を貰ってるの だろうか。いや・・・・情報を流して貰ったりしてるのかもしんないな。 警察と探偵は「もちつもたれつ」なのだろう・・・と小説(しかも向こうの)だけで 得た貧弱な知識で考えるのだった。そのへんどうなのかしら>識者。 うーん。しかし何より基本である「ミステリ」「探偵」の部分が(多少の出来不出来は あるが)ネタ切れしてないのには驚く。勿論いろんな作品にヒントを得ているのだろう けど、それでもこれだけ描いてしまうともう尽きてしまいそうなものだが・・ まぁ、読んでる方は、安心して読めていいんですが・・・ ああ。でも、いつか「三輪&安堂」の最強の探偵タッグの姿を・・・ ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 1〜6」/白泉社/1981〜1986 前々から、もう何年も探し続けている作品。 1〜3を手にいれてより数年。 あれは忘れもしない8/6(随分前だなおい)。 某いけ美のOFF会の、狂乱花火大会の後で立ち寄った本屋の古本コーナーで、 何気なく、さりげなく、置かれていた4〜6を発見したのだった。狂喜する。 積年の望み、ここに果たされた!!と思った。のよ。その瞬間は。 ・・・でも、6巻を読み終わってみると、どうもしっくり来ない。 どう見ても、続きがある様な感じなのだ。 もしかして雑誌版だけで、単行本未収録の最終回とか・・(昔はよくあった) しかし、確か以前何かの本で確かめた時は「1〜6」で、僕はてっきり「全6巻」 だと思っていたのだけど、どうも続刊が出ている感じ・・・と思って、いろんな人に 訊いてみたら、某少女漫画の偉い人が「全7巻あるらしいよん」という。ぐぁ。 これでまた、探求の旅は、続く事が決定された。実は嬉しいのだが。 だって「まだ未読がある」なんてさ。 例えて言うなら、「あおいちゃん」の3巻だけどうしても読めないの〜とか。 例えてないって? とにかく、まだ読める!というのが嬉しい訳・・・ さて。 この作品でしか「猫十字社」をイメージ出来ないワタシ。正直「黒もん」含め、 人間の出てくる作品は敬遠してしまう。この作品意外にこの作者の「動物もの」は あるのだろうか・・・ しかし。ああ。真似できそうで決して出来ない内容・・・とにかく、ただ、お茶を 飲むだけでも、読者に何らかの感情をおこさせる(しかもコマ割は直線4コマ形式 のみなのに!!)。巧みなモノローグ、巧みな会話(ダイアローグ)、いや本当に優れた ネームセンスである。会話一つ一つが非常に丁寧であり、何より「もっぷ」氏は 「詩猫」なのだ。その「詩猫」としての詩が、これがもうたまらなくイイ。 まがいもんじゃないのさ。本当に良い。染みる・・・ そして鍛え上げられた精緻なペン先! それにより生み出される無限の幻想世界・・・ そしてそれら全てよりも、あのぷりん奥さんともっぷ氏のキャラクター造形の素晴 らしさ。彼等の性格が、生活が、読んでいるワタシにも大きく影響を与える・・・・ 読んでいる間だけ、若しくは読み終わって3日くらい、ワタシは全てを許す気に なれてしまうのだった。いやまぁ影響されやすいタイプではあるのだけどね。 こういう、御伽で有りながらしかし胸に染む、そして非常に繊細なのに、しかし確固 として崩れない安定した作品世界、を持つ作品はそうあるものではない。 いや、もう一歩間違うと恥ずかしくてとても読めない代物になってしまうの だろうけど・・・作者側が作品世界に対して照れが無いのが、良いのだと思う・・・ 自分の価値観を信じているのか・・ でも、他の作品は駄目なんだよなぁ・・ 私にとっては、この作品「も」又、どんな宝石よりも美しいものなのだ・・・って 宝石を(その値段程には)美しいと思った事は無いのだけどさ。 まぁ、でも、大絶賛して人に勧めまくる様な作品て訳じゃなくて、ただ「お気に入り」 なんですよね。それだけ。そういうのって有るでしょ。 まぁ、いずれ7巻を発見したときに詳しい感想を。 という訳で7巻探求中。誰か見つけたら情報下さいませ。(実はこの告知がメイン だったりして)  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 1」/白泉社/1981/2/25  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 2」/白泉社/1981/12/25  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 3」/白泉社/1983/2/25  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 4」/白泉社/1984/9/22  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 5」/白泉社/1985/7/25  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 6」/白泉社/1986/9/25 ではまた。 ※追記:7巻入手済み。  猫十字社「小さなお茶会(Le petit the) 7」/白泉社/1988/08/25 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
青木光恵「挑発MUGENDAI」/竹書房/1995/6/17 青木のデビュー初期からの連載、桃園書房「ヤングジャンボ」の「SelfishComics」 がまとめられている。らしいです。まーしかし。基本的には今のそれと同じなのね。 デビュー初期だからって若々しいかといえばこれがもうもともとオヤジだったという。 絵がわりかし丁寧なのは好ましい・・・可愛い事は可愛いか・・・ で。取りあえずなんか「よっきゅんがいっぱい出てるし」、という話を聴いたので 最近「ようこそようこ」個人的再放映モードのワタシは思わずフラフラと買って しまったのでした。青木のん買うの久しぶり・・・光恵ちゃん・・じゃなくて小梅 ちゃんの新刊も買ってないのに。買わねば。その昔サインもして貰ったし。 確かに田中陽子がいっぱい出てるですね。 今現在入手可能なこのテのエッセイ系単行本(ってかなり狭い世界では)の中では もっとも多く田中陽子の名前を見る事が出来るかも。 「アイドル」を語るときに必ず田中陽子を押してるのが今となっては何とも「濃い」 イメージを与える・・・ 濃いといえば「青木光恵のマンガ道」(こないだの朝、某NHKの人が藤子の 「まんが道」を「まんがどう」と読んで多分全国250万くらいからツッコミを いれられていたが)がもう濃くて。やっぱくるくるくりんはいいよな。うんうん。とか うなづいてるワタシもアレだが。 しかし(今はどうかとも思うが)青木光恵は基本的にマンガ絵が上手いですよね。 少ない線で可愛い女の子を描いてるのを見ると、やっぱマンガはラインだなーとか 思うですよ。模写修行の成果か・・・ 確かに、可愛い絵がどーしよーもないベタギャグをかますのがオカシイ、という時代は もはや(青木に取っては)去った様にも見えますが、それでもやっぱりこの絵は 類型ながら非常に魅力的であります。何より真似しやすいのが・・ でもやっぱオタクの女王というと「水玉」だよなという話。違うか。 俺様的ランクとしては 「青木=よく趣味のわからない言動のオモシロイ漫画家」 「水玉=師匠(全てに置いて)」 という感じかしら。 いつか青木が(水玉も)16ページ以上の「ストーリー」マンガを描いてくれる事を 結構待ち望んでいる @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
水木しげる「幻想世界への旅」/ちくま文庫/1986/12/1 「水木しげる妖怪まんが集 3」とある。 水木作品の、「鬼太郎」「悪魔くん」といった作品よりもシュートに社会派な作品、 或いは西洋幻想文学への傾倒、或いは水木作品一流のぽあ〜っとした妄想オチ、等々 シリーズものではあまり見られない、構成にこだわった短編が惜しげもなく(という 感じなのだ)詰め込まれている。と言っても、僕は水木漫画通という訳ではないので そのへんいい加減な事言ってますのでマニアな人は怒らないでね。 全体的に、独特のぽあーっとした雰囲気で、ラストも結構いい加減だったりするの だけど、それもまた、味わい深い。台詞まわしの味わい深さなど特筆に値する。 特に子供が大人に対して発する「ですます」調丁寧語が美しい。思わず笑ってしまう ような台詞回しも良い。「神秘な関係じゃのう」とか「うむ名答だ」とか・・ とにかくシブイ・・・ 他のシリーズ物と比べると、水木しげる、という漫画家の作家性が強く出ている ようにも思います。 勿論、絵そのものも素晴らしいのは言うまでもないですね。 あの緻密過ぎる点描背景に、ぽあーっとした人物。うう。たまらん。 いやー、水木漫画のアシスタント出身て人は多いみたいですけど、みんなあの てんてんを打ったのだろうか・・・てんてんてんてんてん・・・あああ・・・ 所で某まんだらけのオヤジが何かで書いてたけど、水木作品の多くの背景は アシスントによるもので、その質が良い/悪いで本の値段も違うとか。 一番美しい(高い)のは矢張り水木氏本人が描いたもの(あの草とか・・・)だ そうですが。ううむ。 さて、この作品集の中でも、一番アタマにあるのが、知ってる人は知っている、あの 「テレビくん」である。いや雑誌じゃ無くて。テレビの中へ入って、テレビのCMに 映る商品を全て手に入れる事が出来る少年。恐らく(今はどうか知らないが)S30〜40 年代には、「テレビの中へ入りたい!」という願望が強くあったのではないかしら。 そういえば僕自身もかつて「ドラえもん」の立体巨大スクリーンだっけかの中へ入る という話があって、むちゃくちゃ憧れたのを思い出す。TVは昔も今も、(その特殊 な感じはかつてに比べ薄れたものの)魔法の箱なのだなと、こないだやっと読む事が 出来たSFM8月号の庵野の言葉を見て感じるのであった。・・・吾妻ひでおの漫画 にもあったな・・TVコピーショッピング・・・バラバラ女子高生・・ 作品そのものとしてもこの「テレビくん」は、この作品集のどの作品よりも、ぬき 出て素晴らしい。しかし一体初出は何時なのか。これに限らずちくま文庫(とくに昔 のやつ)は初出を全く載せないという困った所があって・・・ちょっと調べればいい のに、それをしないがために価値を自ら下げるのだ・・・ってそれはもしかしてオレ の事か。孫引き人生・・・。 えーと、そう、多分S40年代初期くらいじゃないかと思うのですが。多分。 そこに描き出される風景は、かつて僕らが「ゲゲゲの鬼太郎(2作目)」で親しんだ あの世界そのもの。懐かしい、というのでもなくて、いやむしろ今現在もどこかに この街が存在しているのではないかしら、という感じを受ける。或いは、描かれた 当時もその前後にも、そんな街は実在していなかった、いわば幻想の街・・・ 物語ラストの、主人公の少年が「事件」から、現実世界(と言ってもこの作品の中の ソレだが)へと帰って、再び夕刊を配りに走るシーンなど、映画的であり見事。 このラストの空気をぜひ味わってみて下さい。ええ。立読みででも。・・正直他の 作品はラストがもういい加減でアレなんで。そこがいいんだけど。 収録作は 「テレビくん」 「宇宙虫」 「丸い輪の世界」 「妖精」 「見せ物小屋」 「風の神」 「鳥かご」 「河童」 「妖花アラウネ」 「影女」 「雨女」 「紙魚」 「星をあやつる男」 「カモイ伝」 「原始さん」 「ねこ忍」 「福の神」 「河童骨」 「いぼ」 「よみのくに」 あ、あと「原始さん」がすき。 この作品の語る言葉は今現在の社会でも、おそらく発表当時と同じように受けとめ られるのではないかしら。それだけ我々は「機械と油の文明におかされ」ているの だわ。 などと教訓めいたことを口走るお前は一体・・・ まーしかし、水木作品を「鬼太郎」とか以外で見てみたい方には、非常にコスト パフォーマンスの高い単行本だと思います。 水木作品の「良心」に触れて浄化された気分の @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
ひかわきょうこ「彼方から 7」/白泉社/1996/10/10 ・・・・えーと。 これでオシマイなのかしら? まだ続いてるのかしら。 兎も角「第三部ファイナル」だそうで。 物語の背骨の部分は、まだ全くと言っていいほど明かされてはいない・・・ 様な気がする。黙面様ヘボいし・・・ でも恋物語としてのクライマックスが有る・・・ 見所は矢張りP165-のイザークがノリコを口説き落とす いや違う、すがりつくシーン。 凄くイイ。 もうこの為にこそイザークとノリコの間の「壁」は有ったのだから。 この後の物語は、結局描かない方がいいのかも・・・ 「また別の話として語られるべきであろう」って。 いやもう連載してたら仕方ないんですが。 あ、あとジーナをもっと・・・ ・・・やっぱり「天使ども」が好きな @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
田丸浩史「アルプス伝説 2」/徳間書店/1996/12/25 ラブコメ☆且つエネルギッチュ☆な内容。 ある種頂点。 息も絶え絶えに読み終わる。グッ。 酔っぱらいの話はもう傑作。 P133の「ボークーどーらーOーもーんー」のタイミングは神業の馬鹿馬鹿しさだ! 是非これからトモダチの家で呑むときは披露していきたい所。しねぇけど。 細かいギャグが異様なまでにってこれは1巻の時にゆったな。 しかしすげぇ好きなのに変わり無し。 リッチー&ジョニーのニューヘアスタイルで一時間は笑える俺も俺だが。 収拾つかなくなるまで暴走してゲンコツでオシマイというのはお約束だな。 ラブコメモードを発動させたおかげで筋肉含有率が著しく低下してるが まあそんなことはどうでもよい(ファーザー) もォこうなったらラヴコメ街道一直線(p72)だぜ。 まつりちゃん可愛いし。 いやしかしそれでも他の漫画に比べたら筋量アヤシイまでに多いけどさ。 大阪府民は結構お楽しみ頂けるんじゃないかと。地元ネタ多し。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
遠山拓磨「恐怖の悶々黙示録」ラポート/1995 FR本誌でその一種異常な感性をふりまいている美女遠拓の単行本。 わたしゃ氏のきっついレポート漫画が好きなのですが、 例の名作「すっげぇまずい」が入って無くて残念無念。 せらとそあらの双子が無茶苦茶可愛い・・・ えびちりおいしーねー・・・ しかし壊れまくったギャグが素晴らしい。 ぎゃぐ、シチュエーションギャグじゃない絵で笑わせるギャグが見事です。 とにかく笑わせる技術に手慣れていて、実に上手い。 あーこんな人が兼業で漫画描いてるんだからなぁ・・かなんなぁ。 まぁ全体的に同人誌ノリなんですけど、それでも十分笑えます。 とにかく細かいところでくすぐるくすぐる。わははははは。 じつはオススメ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (95/12/13)
森 雅之「ペッパーミント物語」集英社・500円/1995 なんと8年分の単行本だ。 Duetに連載された「女の子の毎日」。 懐かしき日々よ!だ。 森雅之は実はそんなに好きじゃない。 嫌いじゃないんだけど 買ってしまった一つの原因はこの本の装丁にある。 本の帯の色、本体の色、レイアウト、いい仕事だ。 読んでいて 膨大な時間が過ぎ去ったのだなぁと感じる。 ひとつには、これが現代の女の子を扱っているのに、 どう観ても昭和40年代・・・ 懐かしくて懐かしくて泣ける。 昭和30年代、じゃなくて40年代後半。50年代も入ってるか。 そんな感じです。 「時かけ」を観たときも無条件に懐かしくなりましたが あれは30年代、僕の知らない昔のなつかしさで・・ しかしこういう話を描くと、作者の「経験」がモロに出ますね。 俺も「経験」しなければな。 などと。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (95/12/13)
吉住渉「ハンサムな彼女」全9巻・集英社RMC/1989-1992 をなんとか読み終わりました。 で、思ったんですが いや、僕向いてないわ。少女漫画。特に「りぼん」「なかよし」系は。 読後に何も残らないのだぜ。もう一度読みたいなぁとか思わないし。 感情移入を徹底的に欠くですね。ただ状況を見てるだけ。という。 あれはやはり「少女(或いは少女の心を持つ人)」のものなのですね。 「おはなし」なんですね・・・あまりにも何というか地に足が付いてないというか そのあたりが読んでて妙に不安になりました。うううむ。 「ママレ」のアニメが割と好きだったもので、こんな感じかなぁ、と思ってたんですが やはりアニメはある程度万人向けに整形されているのかしら。 「ママレ」読んだ事無いでんすが。 表現としての漫画という意味ではなんとゆーか、いいのかなぁ、と。 少年漫画的法則とは違うのだね。出会いの0から始まって、時とともに だんだん愛が深まっていく・・のではなくて 一目好きになったらあとはスレ違ったりイベントがあったりしても、基本的には あんまし変わらないという・・・・・・やろうと思えばたまに喧嘩させてみて また仲直りさせてみたりと連載が続けやすそうですがしかし。 盛り上がらない事このうえない・・様な。 自主映画作り、というのもなんともありきたりで・・・ 芸能界の話を描いてくれても良かったのに。 どうも一人の頭の中だけで組まれた妄想と付き合ってる「だけ」な感じが・・ 例えて言うならばトモダチの「面白い夢」の話をハイハイと言って聴いてる様な。 ただ、連載で読んでれば面白かったのかもです。 うーん。 「ハーレクインロマンスの様な」とか、そういう表現でくくっちゃっていいのでは。 ただ、「想い入れ」は人それぞれだから・・ ちょっとお金と時間の無駄気分を味わえました。しくしく。 ・・パチンコよりはマシかな。 ちょっと少女漫画は「おいといて」な感じです。 ・・あっ、でも成田美名子様の「ナチュラル」本連載決定だしなぁ。ううむ。 「LaLa」とかは大丈夫なんだが・・・ やっぱ「りぼん」は小学生の女の子の為のものなんですね。 でも「姫リボ」は・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (95/12/13)
柊あおい「星の瞳のシルエット ENGAGE II」/集英社/1997/9/17 表題作はイマニ。と言うか、もういいよ〜的。えんえんと「その後」を描くのも 良し悪しだ。でもこれだけキャラの立つ物語ってのは描いてみたい気もしますが。 でも、いや、ねぇ。この作品に出てくる香澄は駄目なんだよな・・・自分を 投影する分には素直で可愛い香澄ちゃん、は良いんだけど、こうして客観視すると かなり嫌。何か「満ち足りた笑顔」見るとねぇ。もーどーでもいーやという 気分になる。ああ汚れてるのか>俺。 で、それ以外の2編、「はじめまして」と「季節の栞」で、やられた。 オールド少女漫画者とゆーか、ちょっと古い所で止まってる自分的には、 これは一寸、いやかなりのヒットだった。 「季節の栞」の、あのラストで泣かない男はいねえ。ていうか泣け。 これよこれなのよ。 日々を重ねて少しずつつのっていく想い。これを描いてこそだ。 P131で心臓がきゅーッと。ああ。やっぱり受験期の「共闘感」と、その生み出す 「戦友」意識、そしてその後には当然別れが待っていて− どんな人間にでも、この時期にドラマの一つや二つは有るのである。 特に中学から高校へのそれ、は覚えていないだけで、誰にだって有った筈なのだ・・ この時期を扱った名作はそれこそ星の数程もあるが、中でも此の作品は「二人」 以外の他者(サブキャラ)を一切挟まないことで、その空気の純粋さを切り出した 傑作と言える。 余りに「雰囲気」が良くて、読み終わった後思わず卒業アルバムを 引っぱり出してしまった私。その後も2〜3日その手の気分が続いていて、 気がつくと小山田いくにまで手を出していたという。いやこれはまた別の話でした。 然しこの「季節の栞」も「はじめまして」も、どちらも考えてみればかなり 小山田いくライクだ。絵は別として、話の作り、台詞回し、妙に似ている様な・・ いやいいんですが。 P124〜132の流れの気持ちよさ、ツボのハマリ具合を見ていると、ああ本当に 柊あおいは巧いなぁと感心するのだ。思い切り駄目な作品を見せられて、 「ああ、この人ももう駄目かー」と思ってるとこういうのを出してくる。 矢張り世代交代の激しい少女漫画界で長年描き続けるだけの力は有るのだぜ。 然し、ああ、今夜眠って目が覚めたら、学ラン来てカバン持ってJRに乗って 学校へ行くんじゃないかという気分。 また夕闇の中の街を駅まで歩きたい。列車に揺られて青背を読んでいたい。 退屈な授業を余所に聞きながら、頬杖を着いて窓の外を眺めていたい− そういう気分にさせられた、という事で。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/09/27)
柊あおい「ペパーミントグラフィティ」集英社390円/1995 うまい。 相変わらずの職人芸。 しかしすまん!これって「星の瞳」の縮小版では。 キャラ配分似てるし。 出てくる男女がひとつのダブリも無くカップリングしちゃうあたりすばらしい。 すばらしすぎ。これは「星の瞳」の時も出た感想だわ。 人間そんなに小さくまとまっていいものか?という様な疑問は出ないのか。 読者諸姉には。 たしか「星の瞳」の時、当時熱心な読者だった友人(女)が 「小さくまとまり過ぎ」と言っていた様な。 でもいいんだ。基本的に読みやすいし、記憶にも残る。 キャラクターのかき分けも良いし短編を重ねていって(りぼんオリジナルでの連載、 という事で)ちゃんと一冊にまとめていくあたり、うまいぜ。 あと絵柄を無理矢理にでも変えていこうとしているのか、不安定ではあるが 今の画風が僕は好きだ・・・ あとアレね、作中通して映画を製作している訳なんですが その作品(ペパーミント・グラフィティ、ね)が見たいなぁと なんとなく思ってしまったす。 ああいうの今少ないし(今年のフィルムフェスもイマイチだったし・・)。 あー。 8mmやりたい。 ビデオじゃやっぱあの質感は無理よ・・・ あとアニメもね。 いくらFEEとは言え(コマ録) それなりの設備が無いと8ミリビデオはつかえんものね。 Mac?いやいや・・・いや欲しいけどもさ。 んー。 ではでは。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (95/12/13)
清水玲子「月の子-MOON CHILD-」全13巻 白泉社/1993/4/25(13) 3巻まで読んで、ハマって全巻購入、読破。 ラストで拍子抜け。 このラストについては連載終了当時、どんな風に受けとめられていたのでしょうか。 とにかく、このラストは無いよ。 マルチエンディングなの? ・・・と考えて、はた、と気がついた。 違うな。 意図的なラストだわ。 これが「ハッピーエンド」なら、現実はあまりに俗悪であった、と。 そしてあまりに悲惨。 チェルノブイリというキーワードで現代の悲劇を括るなら、まさに今年、1996年は この漫画を読むのにうってつけの年だ。 10年という歳月の中で、不幸は癒えることなく続き、宇宙開発は停止(といって いい)したまま、戦争は絶えず、難民は飢え、経済は低迷し、・・・ああ。 テレビの向こうで起きている悲劇、があまりに昔から当然のようだったので、 それが現実のこの場所と地続きであるという事を忘れてしまっていた。 地球という星の人類という生命の状況は、何等良くなっていない、むしろ悪化する 一方に見える。 どうにかしなければ、と思うその手で食べ残しを捨て、怠惰に日々を送る。 そうでなくてはあまりに悲しくて生きては居られないよな・・・ それはユメだよ と言えない、我々の現実。 いや、お見事。これは凄いラストだ・・(この読み方で良いのだとすれば、ですが) こういう風に、読者にあくまで作品を通して語りかけられる才能というのは・・・ 少女漫画としても、自分の中では久々のヒットで、絵の美麗さには本当に感心、 感動しました。何が凄いって、美人を美人に描けるところがさ・・・ 物語の展開もスピーディだし、感情の機微も丁寧に描かれていて 質が高い。だが、何よりもそのラストが語るように、根底にあるテーマの重さに 感動・・・といっていいのか、しました。 セツ、ベンジャミン、そしてティルトの姉妹(?)の関係は、いろいろ当てはめて 見える。辛い関係だ・・・愛憎だけで人は生きては居ないけど、漫画の中ではそれも 可能。ティルトの心が痛いほど伝わって・・・ 作品のベースになっている人魚伝説と絡めて、実に複雑に、丁寧に組んでいて、 読み返してみてまた感心(感心してばっかだな)しました。 少女漫画って、やっぱりスゴイ・・・・ このラストを見て考える為にも、オススメします。 あ、もう読んでるか・・・ ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (96/04/23)
今更ですが星里もちるにハマってます。 「危険がウォーキング」全4巻と 「わずかいっちょまえ」を買う。共に徳間書店。 前者は結構メジャーであるし(メジャー嫌い)、 連載時キャプテンで読んでいた(つもりだった)為、 単行本は買ってなかったのである。 ところがどっこい。 あー、いい。これはいい。 で、「わずか」である。心の機微が・・・・ 琴線に触れるというやつですな。 設定がむちゃくちゃなのだけど 描かれる現実はまさに現実なのであり、それが感動させる。 これは連載時に感動していた上にまた感動。 ただやはり少年誌だからかな・・・ あくまでわずかちゃんは可愛い(かよわい)女の子で 「成長」は太一において著しい。 もちろんわずかちゃんの「赤い花」的肉体の成長が最終回のメインであり、 それを描ききった星里の力量は並々ならぬものである。 でも、あえてその思春期の少年側の成長ね、 「いじめたい」から「守ってあげたい」、その移行がたまらなくいい。 これこそ「思春期」の醍醐味だよね。 思春期の少年少女はこんなに割り切って 「成長」を受け入れられないのが普通だと思うけど(ナニ、オイラだけ?) そういう点では非現実なんだけど、冒頭からこの物語はフィクション(お話)ですと 言ってるみたいな展開だから、逆にその中の「真理」の様なものが光る。 あーもう何にしても太一は男だ。こういう奴好き。 学校(中学校とか)は出てみると実は「完全じゃない」事に気づいたり。 在学中はそれが全てだったのに。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (94/01/25)

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