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成田美名子


Be proud of yourself,to behave naturally.
成田美名子「NATURAL 11」/白泉社/2002/12/10

完結。

まだまだ各キャラの物語が途中のままだったりするんで、じゃーん、という
「おしまい」らしいオシマイにはならないんだけど、まあオシマイ。

斯くして日常は続く。中盤かなりもやもやとしてた伏線も、だいたい
抱え込んで終わる腕は流石。気になっていたキャラの目線やなんかの画風が
復調していたのも、安心感高くて良かった。ラストのほんわかラブな表現も、
おー巧く着地させたなーと。いや、ずーっと客体っぽかったリコの顔が、ラスト、
一番最初の、「主人公」だったリコの顔に戻ってるのが、「まとめ」感高し。
流石、決めてくれる。

まー「サイファ」のラストみたいな、最初からラストまでを作り込んで、読者の
心をわし掴み!みたいなラストがそうそう描ける訳でもなし、連載しながら
着地点を探す描き方なら、こんなもんでしょう、という大人しさ。
納得行くラスト。




最初、作者の嗜好の転換について行くことが出来なくなったのが「敗因」だと
思ってた。「アレク」なんか今読んでも「おーコイツら真面目に毎日楽しんで
生きてるなー、僕も気合い入れよう」とか思えるんだけど、「NATURAL」読んで
「そういう」気分には、ついにならなくて。いや、まあ「そういう」漫画では
元々無かったのだろうけど。

大体「アレク」は「楽しいアメリカ大学生活をシミュレートする」という
明確な意図があった訳で。喋り/遊び/趣味/バイト/勉強/つき合い、等々
の「スタイル」の提示で、モデルケース集的な読み方、所謂「お勉強効果」で
読む部分が魅力だった。

今作では、その辺の「取材情報」が国内情報に特化したが故に「僕的に」食いが
悪かった、とまあそう言うことも有るんだろうと。


でも、そういう「お勉強」を抜きにしても、キャラ漫画としてもっと楽しめた
「筈」だと思う。カッコイイ少年連中が、都市学園生活の中で、努力したり、
傷ついたり、旅行したり、恋したり、云々って図式は変わらない。

うーん。キャラクターに、何て言うか……泥臭さが無さ過ぎて。弱点が弱点に
見えない人が多かった感じ。主人公のみ人格に多少欠損が有ったけど、でも
それは成長によって「埋め」られるモノじゃなくて、そういうキャラっぽい。

……結局、誰にも感情移入が出来ないままだった訳ですよ。
みんな内面をなかなか表に出さないし。

それは、でも、読み手としての努力も必要だったかなーと反省もしている。
理解出来ない部分を、理解出来ないまま放り出すんじゃなくて、
「自分と重なるところ」を読み込んで探していけば良かったんじゃないか。
それはまた今後の再読時の課題という事で。



や、でもその分、と言うと変だけど、後半のケントの外伝が良かった。
読んでいて、背筋が伸びる気持ちになったよ。
最近停滞していた「毎日」に、この先の道筋が少しだけ見えた様な気分。

んー、やっぱ

「マイルスが
 パパ・ジョーンズが聞こえる」

の下りが全てかなーと。もう目が醒める様な。かなりグラリと来た。
恨みも、怒りも、恥も、何もない、ただ夢中で歌い舞う喜び。

巧く言えないんだけど、「ただのおれ」で居られる場所――、要するにアレだ
「夢中になれる」場所を探す、ってのが、いつも「この次」に繋がる気がする。


「ただのおれ」であること。to behave naturally.




取り敢えずスノーボードをやってみた(相変わらず単純極まる)
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(02/02/05)

成田美名子「NATURAL 10」/白泉社/2001/04/10 感想を書いている今は6月。発売されて3ヶ月が過ぎている。 感想を書こうと何度かページをめくっては居たのだけど・・・何か酷い言葉 ばかり書いてしまって、何様だよ自分、と思って抹消して、その繰り返し。 もう諦めて、今思うまま書く。推敲もしない。どうせ次で終わりらしいし。 ・・・だってこの絵は無いでしょう。もう完結する直前なのに、この絵。 目に力を入れすぎなんじゃないか、目に語らせ過ぎなんじゃないか。それが、 一歩引いた所から見てあのどうしようも無いほどの崩れに繋がっている。 そんな気がする。斜め顔と正面顔で、目の描き方が同じなんてキュビスムだよ。 そうでなくては描けないものがあるのか?何にしても、あの完成度を持つ作家が この絵。結局「不調」だったのだろうが・・・ ネームは完璧に成田作品。表に出ない感情の深みは流石という他無い。 個人的に良いな、と思ったのはp19辺りの、暗闇での過去遡行シーン。ああ、 二人で居ると、こういう瞬間ってあるだろうな、あるよな、と思える。 良く知っている積もりで全然知らない他人。近づいた気がするのに遠くなったり。 日常的な事柄の中の、瞬間瞬間に「真実」は潜んでいる。派手な事件と事件を 繋ぐだけの展開では描けないものを、ちゃんと押さえて描いている。こういう スタイルは昔から(それこそエイリアンの頃から)変わらない。 リコのぱんつの事とか、物凄くドメスティックな日常が地球の裏側からの怨恨と 並び立っていたりする独特のスケール感。人を美しいと思い、同じ心で人を 殺したいと思う。自分は「普通の」善人のつもりだったけど、思い出してみれば 残忍な行為に快感を感じた事もあるし、「そういう」部分を今も抱えている事を 否定は出来ない。論理で決着が付く事でも、感情を経由しないと「おさまらない」 かと思えば、論理で理解出来なくても「ただ好きなんだよ」とも思える。周りを 巻き込み周りを傷つけて行かないと「壁」を超えられない奴も居る。傷つける 以外の表現方法を知らない者、またそれに傷つけられて始めて「手応え」を 感じる者。そう言うのを全てひっくるめて併せ持つのが、「人」なのだ。 「おまえらはなー  「命をいただく」てこと  本当にはわかってねえんだ  そんな根拠レスなこと言うんじゃねえ」(p72) 台詞の一つ一つに複層のレイヤーがあって、読み返していて「あっ」と気付く 事がある。多分また年を取ってから読むと「ああ、そういうことだったのか」と 気付く部分が出てくるだろう、と思える(つまりまだ「読み」切っては居ない 気がするという)。感情の流れとかでついていけない部分も有るけど、でも それは「そういう奴も居るだろう」的に読んでる私。 ページが足りないんだろうな、というのは感じる。リコがミゲールのプレーを 見てて、燃える、一緒にやりたくなる、という気持ちを吐くシーンとかは、 もっと語りが入ってもいい気がした。全体的にリコの語りが少ない気がする。 「お父さん」や「お母さん」がミゲールの人生(のおそらくは転機)に興味が あるんだよ、とさり気なく示す(買い物に連れ出したり)シーンとか、もっと フォローしてもいいのに、とは思う。 まだ多少思うところは有るけど、巧く言葉に出来ないので、総括は次回。 「明日ってのは切り離されたものじゃない 今日を積み重ねた先にあるんだ  今できる事を思いきりやれ それが明日につながる」(p175) @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/06/20)
成田美名子「NATURAL 9」/白泉社/2000/07/10 ファビアンが出てきてから急激に物語が締まってきた感じがする。物語に軸が 通ったというか。見えにくかった展開が、予定されたエンディングに向かって 動き出したという感じ。それにつれてミケの「本性」も少しずつ見えてくる様に。 今まで背を向けてきた過去(ファビアン)と、きっちりカタをつけようとしている。 その中でリコへの行動に歯止めがきかなく辺りも、妙にリアルで面白い。彼にとって リコという存在がどういうモノだったのか、が本人の口と態度から明確にされ始める。 「お姫様」・・・ってああ、ここでもっとリコの造形を描き込んでくれていれば!! 読者として後一歩踏み込めないモノを感じる。もっと内面描写があっても 良いんじゃないか。あっさりしすぎな感じ。まあアンブみたいにぐるぐる考える 質でも無いんだろうけど・・・ と、そういう点で今回面白かったのは西門のマザコンを自覚する下りや、親を ちゃんと親にしよう(それと気づいていなかったコンプレックスを潰しておこう) とか思ってく辺り。カッコつけて、自分一人割り切って生きている様に見えた彼の 弱みというか人間味が見えて、初めて感情移入してしまったり。 サイキに「お兄ーちゃん」とか言われて抱きつかれたらあんたそりゃもう!ていうか 憲人良いキャラだよ。もっと出しても良いのに。 親や家族との関係、というのを自分の中で再認識したい、と思うことって有る。 それと意識しないで出来上がった人間関係を一度切り離して、個人と個人の関係と して捉え直せた時、初めて見えてくるモノもある、筈だ。 ただ、うーん、ぱんつの下りとか見てて、ああー、あんましカッコイイ作品でも 無いのかなーとか。アレクがカッコツケの極み見たいな作品だったから、ちょっと イカガナモノカとも思ったりもするけど、でもこれも成田美名子、なんだよね。 にしてもファビアンのキャラは成田作品では珍しい様な気もする。一体 彼の思惑は何処にありや。彼の行動の理由は?次巻が待たれるのである。 ていうかLaLa読めって? じいさまの活躍が案外少なくてちょっとがっかりなのだった。 ・・・所で、「犬並」って、何が? @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/07/26)
成田美名子「NATURAL 8」/白泉社/1999/11/10 ミケの持っている二面性というか、「自分」がなかなか表に出てこないという 一種不気味な部分がますます強くなってきた。下手なはぐらかしの向こうに 「ペルーのミゲール」の姿が見える。周りから観ててそのキャラが一致しない、 っていうのがもたらす不快な感触、歯がゆさのようなものを「そのまま」描く。 堂本みたいに「時間も場所もおかまいなし」な奴でさえ、ちょっとやそっとでは ミケの中に入り込めない。「ほんとの気持ちになる場所がない」っていう感触は 実際誰しも感じるものではあろうが、東北での描写も効いているのでは。 大沢の「おれの知ってる山王丸とさっきの話の山王丸が一致しないんだ」(p128) は、全く読者の気持ちを代弁している。「こいつってこんな奴だったっけ?」 という驚きは、毎日会っている仲間(或いは家族)にさえ感じる感触だが、 そう感じたところで、「へえ、こういう奴だったんだ」って納得出来ないあたり 「優等生」というか根がイイ奴な大沢。人を信用してるっていうか・・・ 言葉で語られても、納得できない事って有る。勿論語られなければ知ることさえ 出来ない過去だが、ミゲール自身の口から語られたことであっても、どこか 非常な違和感が有る。作中のキャラクター達が感じるのと同じ違和感を、読者も 感じる。ミゲールという人間の「キャラクター」をここまで作り上げられる力。 そう言う効果を「狙って」ここまで出来るものなのか。いや、作者は明らかに この「違和感」を(それと気付かないようにして)描こうとしている。すげえ・・ 水族館で語られる「事件」は、背景の無いイメージショット様の「現実感ない」 もので、それを大沢達とミケの会話の中で肉付けしていく下りなんかは実に巧い。 ミケの言う「撃った時の絶望感」ってのは(人を撃ったこと有るわけじゃないけど) 実にリアルで、「現実感」がずしんと来る。・・・それでも、まだ何か足りない。 それさえも「狙い」なのか・・・ 読み返せば読み返すだけの発見がある。細かい描き込み、何気ない台詞。漫画に 描かれていることは全て何らかの意味があるのだ、というのを改めて感じる思い。 それはそうと。 リコとミケの間に流れる空気が今までと違っている様な。こーれーはー結構 ドキドキするぞ。うーん。前にも書いたけど、リコの側の「生活」描写も もう少し有ってもいいんじゃないかなぁとか思う。 ミケのジェントルな「たらし」ぶりに焦ってるのとか、西門さんに触られそうに なって(・・・)額に縦線入ってるのとか、前に比べて結構面白げな姉ちゃんで あることが判明してきているので、この辺から段々「そっち側」へと物語を 展開されても違和感はない感じ。さて、どうなるのか・・・ 先のマンガ夜話以降「快不快原則で言うところの」とか良く言ってますが (影響されやすいんです)、この「NATURAL」は、それまでの 成田作品が「快不快原則」だったとすれば、そこから一歩踏み出した 作品なのではと思う。サイファやアレクは、抑圧と解放の計算された 構図のなかで「快不快」をやっていた様なところがあって、キャラも 所謂「キャラ立ち」のしっかりした「わかりやすい」ものだった。 お洒落な学生生活やN.Y.の風俗の「お勉強」効果。確かに人間関係は 重いところもあったけど、でも基本的に各人がお約束通りに悩んで立ち直って と、成長の物語なんかも見せてくれて、それがまたお約束通りに面白かった。 この「NATURAL」は、それまでにあったかっちりした枠組みを感じない。 いつもいつも唐突に始まる(演出のない)一見ラフな展開は作者の意図したものか どうか。兎に角「仕掛け」が以前ほど無い・・・か或いは見えなくなっている。 それだけに一体この物語がどこに向かっていくのかがいまだに見えないワタシ。 作者の中ではそろそろラストが見えてきたような表現が有ったけれど、ワタシには まださっぱり。1巻の時からつきまとっていた違和感は相変わらずだし。 ・・・いや、面白いんだけど。面白いんだよ。予定調和じゃないマンガを読むのは 不安だけど面白い。不安だけどね。 コーチとして返り咲いた(・・・)西門のじいさまはますますカッコイイし (あんましギャグやらなくなったけど)、バスケ漫画としての展開も多少は 期待してるんだがな(って1巻の頃に言ってた事もう忘れてやがる)。 線路に落ちたミケの眼が可愛すぎ。ニコ眼も。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/11/17)
成田美名子「NATURAL 7」/白泉社/1999/06/10 ・・・何つーか、面倒見良いアニキだよな>西門。男子高校生相手に ここまで「してやる」かね。・・・まぁ気持ちは分からないでもないが。 今巻も基本的には青森観光・・・というか「雪国のカルチャーショック」を 表面に置いて、そのベースでは物語の背骨が走っているという構成。 ポイントが結構分散していて、ここ、という所が見つからないんだけど、 個人的には堂本が父親と偶然再会するシーンが今巻最大のヒットだった様に思う。 LaLaで読んだときも「巧いなー」と感心してたんだけど、斯うして 読み返して見てもつくづく巧い。あの空気がね。素晴らしい。でまたあの 「場」の雰囲気を、「大沢君だよな ぜんぜん変わんねえな」で締める 巧さと来たら。このセリフ一つであの父親の生き様と、彼等の間に流れた 時間を語り尽くしている。読者にとっての堂本が食ったこはだみたいなものだ。 あとはアラビアのロレンスの下りとか。昔映画を見たとき、確かに引っかかった 記憶がある。ロレンスが「楽しみました」(殺すのを)とかいうんだ。 命懸けで助けた男を殺すことを楽しむ・・・ってのが良く分からなくて。 ミゲールにはそれが「どういうことなのか」解るのかも知れない・・・そのうちに。 一瞬の会話だけど、ナイフの如き鮮烈さのあるシーン。 物語の背骨の方はやっぱり「ペルーのミゲール」なんだろう。 正直「ミゲールのことが見えない」のは読者たる私も同じ。意図的なものかも 知れないけど、こう、キャラとしての掘り下げは執拗(ボケとかね)なのに、 その向こうにいる「少年−男」としてのミゲールの姿は見えにくい。 でも、彼の髪型の変化を見るまでもなく、顎のラインの描き方なんかは明らかに 「青年」を意識したものになってきている。ロイ/ジャイクを彷彿とさせる。 「変化」の予感は随所にある。展開に加速がかかった感じ。 複線っぽい展開や、仕掛けめいたシーンが山程。どれもこれも「読み解き」 出来そうな気配を漂わせて居て、それが速度感を増して展開するものだから 読んでいて非常に疲れた・・・というのが正直な感想。 さっさと次巻出しやがれ〜!というか。LaLaは丁度この巻の終わりで 読むのを止めてて。いや別に深い意味はなく。 この作品って、完結したら読み返したりするだろうか?とかふと思ったり。 サイファの後半〜アレクはほんとにカバーがすり切れる位再読したんだけど (今でも時々読んでる)、やっぱり「カッコイイ生き方」を学ぶ、という 教科書的な読み方を差し引いても、アレクの方が好き。未熟さと成長と。 何よりわかりやすい。ミゲール(たち)には「それ」が見えにくい。 見えにくいだけなんだけど。 ・・・うーん。矢っ張りミケ達の「友達〜親友〜ベタベタ〜」ってのが どうしても駄目な感じ。ちょっと過度な感じが。普通の男子高校生なら ああまではならないのでは・・・もっとこう、グループの中での優劣を 気にしたりしながら、お互いを牽制しつつそれでも仲良し、みたいのが 高校生の頃のワタシタチで・・・ まあマンガだから良いんだ、と言えばそれまでなんだけども。 もっと「ガキ」っぽくあってほしい・・・うーん。なんか、ねえ・・・ あ、西門のじいさまは良い。カッコイイよなぁ(ってJR並に単純な奴)。 いや、いろんな意味で。年取っても若い感覚、ってのだけじゃなくてさ。 余裕っつーか。年輪を感じさせる若さ(・・・・)。ああいう風に 歳を取れるなら・・・ただまぁ本人や周囲の人間にしてみれば そんなに良いもんでもないんだろうけど。でもせめて外面だけは、さ。 で、ラスボスはやっぱりリコ姉なんだよな。うむむ。 ・・・スイマセンまとまりませんでした。いつものことですが。 東北縦断練習試合の旅、は多少見てみたかった気もする @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/06/10)
成田美名子「NATURAL 6」/白泉社/1998/11/10 青森クサイ。 つーか、青森観光マンガですね? 巻末で登場する西門ん家のじいさまがすげー良いキャラで好き。 ここんとこのLaLaは全くこのじいさまの魅力故に読んでたという。 しかし・・・何というか、乾いた作風に成りおおせましたねどうも。 カスカスって程じゃないけど、アレクの中盤みたいな、「ビバリー」的 バタ臭さ(この表現も流石にアレですが)が全く抜けてしまって。 世界観が見事に「日本」なんですよね。驚く。地に足のついた、という感じ。 バスケのシーンも抑えめだし、こりゃそろそろ「テーマ」かな、 と思うとまた見えなくなってしまったり、うーん・・・ えーと。大沢が良いですね。 立ち位置が良い。あの3ポイントとかも含めて、 キャラの作り込みを感じさせる。冬コミネタなんかもありそうな話で。 どうせ埴輪本とか出してるのだろう。 彩紀がリコを見つめる山王丸を見て「諦める」?下りがちょっと難しい。 リコのキャラクターが結局一番謎を秘めているというか・・・ 読者(つまりLaLaをお読みになるお姉様方)の投影キャラかとも 思ったのだけど、どうも違うらしい。 顔とか見てると典型的ヒロインキャラなんだけど。 問題は、「唯一のドキドキ関係を構築できそうだった二人」を早々に 破壊してしまった事で。実際もう成田美名子の男女間ドキドキは 完全になりを潜めているように見える。いいのかそれで!男ばっかりつるんで 旅行して何が楽しい!! ・・・いや結構楽しいんですけどね、それはそれで。 でもやっぱり少女漫画なんだからさ・・・うーん・・・結局理子×ミケで 話を展開して行くんだろうけど・・・読めないなぁ・・・ と、まあそんなことを言いつつもすっかりハマって何度も読み返したりしてる @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/11/10)
成田美名子「NATURAL 5」/白泉社/1998/01/10 第5巻。 「いい旅夢気分」、いい感じで終わった。 取材の反映がママで、ちょっと辟易ものだったのだけど、それも 後の展開に綺麗に繋がっているのでOK。 この旅に関しては、大沢のキャラが立ってて、大沢ファンとしてはいい感じだ。 やっぱああいう「趣味人」でありたいよね。 ああいう風でありたい、と。 成田美名子の漫画はいつも読者であるワタシに何かを背負わせる。 今巻も色々な提起があって、それを抱えてしばらく生きていく私。 例えばp133の台詞。 「人間て生まれてしばらくは誕生を背にして進んでる感じでいるだろ  でも「向きを変える日」が来るもんでさ  終わりを想定して残り時間をカウントダウンするようになる  死の側から見ると−  何が大切かはっきりわかってくるんだ」 気がつけばもう未来は茫漠たるものではない。 死は確実に道程の先に待っている。 そういうのを感じる様になり、感じていながら、「何が大切か」を 見極められないのはどうしてなのか>自分、とか そういう宿題をかかえてまた生きていくワタシ。 年がまだしも近いだけ有って、西門の言葉・行動には考えさせられる事もある。 所詮漫画の中の登場人物だし、あんなに格好良くは成れないと言うのは もとより百も承知だが、それでも成田美名子的美感というのは ワタシの志向をそちらへと向ける。こうありたい、と思わせる。 価値観というのは歳とともに変化して行くから、いつかは決別する日も 来るのだろうけど、ここ五年くらいは、その気配もない訳で・・・ ・・・今巻でも、西門の「ダテじゃない」ギアの使い方(ビーパル的というよりは C.W.ニコル的ホーキンスの使い方、田舎道のための四駆、ホントに漁する為の ダイバーウォッチ、いなかっぺ大将ルックのふろしきetc・・)とか、 大沢の趣味人性とか、いちいちの台詞回しとか・・・そういう所の「美感」には 相変わらず何かしら影響されそうで・・・ 特に西門的「田舎男の立ち位置」。矢っ張り基本は質実剛健(違うか)。 あれはでも素材がさー(・・・)。 少年漫画に「ラブ☆」が必須だというのはワタシの最近の意見ですが この「NATURAL」では久々に日本のラブコメ的「ラブ☆」が 見える。いやこれは少女漫画なんですけども。 サイファやアレクの頃のライトで「見せない」ソレとは違い、 彩紀さんや部長、リコや堂本の行動やなんかはかなり「ラブ☆」。 いい感じなんだ・・ ・・・多分これ以降もそんなに量は描かれないであろうリコ(理子)氏の話も 見てみたいものだと思う。彼女か主人公だった頃の話(脱走組の)を 本誌で読んだときの「開放感」は、今も肌に残っている。 「私らしく」生きることの難しさ、そもそも「わたし」の確立を行えないでいる このワタシ・・・あああ・・・ リコやちかちゃんの話(とくにちかちゃん)はもっと見たいなぁ・・・ ・・・えーと。 そういう話じゃなかった、そう、リコの言動はかなり作者寄りというか、 作者の「好き」を演じる代弁者的位置と、創作上のキャラクターとしての位置が 微妙に絡んでて、実にいいキャラだ、と。もすこし「本筋」に絡んできて 欲しいなァと思っているので、西門とのリンクあたりから出演密度が増えてきてて 結構嬉しいのだった。 ・・・堂本の「運命は一晩で変えられる」という話を聞いて、 「勇気がわいてきた」と答える西門だが、其の台詞はミゲールの 死のヴィジョンを払拭するためのものであろう。 あのヴィジョンは最終的に何をもたらすのか・・・ 思わせぶりな伏線が張られ始めたのは丁度作者が 「ラストを決めた」と発言した辺りからだから・・・ラストに向かっての ものなんだろうなぁ・・屹度・・・ さて次巻はどういう展開になるのか・・・本誌読んでないんですよね・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/01/25)
成田美名子「NATURAL 4」/白泉社/1997/7/10 待望の第4巻。 サイモン&犬ころ達の「いい旅夢気分」が最高。 犬ころ達を扱う西門の手際がもう。 各キャラが持ち味を存分に発揮してて吉。 旅行はこういうノリが一番理想的だ。 「趣味のデパート」大沢がいい味だし過ぎてる。自分の趣味に忠実でありながら、 然し決して他人の気分を害しない・・・・(昔女の子を傷つけたらしいけど)。 趣味人の鏡だよな。 然しこのまま道徳の教科書に使えそうな位、みんな真っ正面から悩む悩む。 そのひたむきさというか正直さが売りだよな。 アリーシャは今の心境に対する答えを探す為に、単身イギリスへ。 二歳の時以来会っていない、ロンドンの父親に会いに行く。だが− 一人の時に見せる仕草がなんか女の子女の子してて、 あーホントにJRの事好きなんだなぁ。と。 JRはJRで、「らしく」も無く悩んでるし。 ミケの持つ内面の問題に対して、家族以外の第三者たる西門が 気づき始めた様だけど、これは結構物語の展開のポイントになるんでは。 ミケは何も話さないからな・・ 兎も角絵も話も、その巧さは他の作家とは一線を画している漫画。 人により好き嫌いは有る様ですが、「ビバリーヒルズ青春白書」とか 好きな人にはお薦めです。 ・・このへんまではLaLaで読んでたんですけど 最近全然読んでないんで、次巻が凄く楽しみなのであります。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/07/21)
成田美名子「NATURAL 3」/白泉社/1996/11/10 「成田美名子版スラムダンク」は、今の所(最近またララ本誌立ち読みしてるし) そうでもない様で。良かったのか悪かったのか・・・ 1/4話で興味深かったのが、この作品は成田漫画では珍しく、開始しばらくは ラストが決まってなかった−というくだり。 言われてみればさもあらん、というか、割と自由にワクがとられている感じはあった。 しかしまぁ見事に成田美名子なまま日本を歩くねどうも。本誌の方さ。 あれだけN.Y.の代表みたいな顔してたのにさ。 上手い。 これからの展開は今一つ読めないけども、まだミゲールの内面の掘り下げが 全くと言っていいほど為されていない為、それがメインになるだろうとは予想できる。 JRの方先にやっちゃったしね。有る程度。 いやしかしJR良いキャラ。過去が辛かったろうから、それだけに今がいい。 キャラ的にはビバリーヒルズ・・のスティーブとだぶる感じ。・・スティーブ好きで。 アリーシャも丸くなったしさ。 ミゲール(以下ミケ)の周りが、彼を見て、自分が見える−様な展開をしてるから、 そこからミケを捉えることは可能か。でもミゲール自身の独白が無い・・・ 「どちらからも必要とされる、でも自分は・・」という展開は一つテーマかも。 スポーツだけじゃなくて、さ。 いやアレクがそうだったから・・・今回は違うか?過去もあるしなぁ。 今の所時間はリアルタイムで流れているみたい。 サイファ、アレク、の頃は時間を忠実に移行して、結果現実時間からどんどん 遅れていったけど、これはそこまで厳密じゃないのかも。 しかし西門のキャラには作者の愛が注がれているのを感じずには居られない・・ っていうか多分成田の好きそうな顔だなぁと。 着てる服、靴、表情等々、描きたいものはたいてい西門に・・・ ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
成田美名子「NATURAL」2巻 白泉社/1996/5/10 このまま「成田美名子版スラムダンク」になってしまうのでは、という危惧は 当たりつつある様な・・・ なんか連載の方は既にソレだ・・・何JRが試合に出られない? いやしかし、2巻は何と言っても「囚われのミケ」でしょうか。 作者も少年繋ぐの好きだねぇ。いや、サイファでもあったし、エイリアンでも・・ ミケのあの動じない(けど切れたら笑える)性格、あの裏付けがあるだけに 今回の様な異常な状況にも、冷静に相手の事を思いやって対応できる。 上手いね。あの「外伝」が効いている。 堂元の性格も好ましい。顔に似合わぬ(ううっ)純朴さと正義感が好き。 んでもってアリーシャの性格はこれからもいろいろと問題を引き起こしそうで・・・ 楽しみ。 所で大崎んちの電話はサンヨーのだ・・・ ウチのと同じ・・・ ま、全てをポジティヴに考えるには歪んだまま歳を喰いすぎた感もあるけど、 でも奴等の生き方は否定できない魅力が有る。 少しでも奴等に近づければ・・・ ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
成田美名子「NATURAL」1巻 白泉社/1995 本誌で読んではいたものの、何せ立ち読み同然(すぐ手元になくなる。いやまぁ) なので、あの兄ちゃんがN.Y.に留学(P41)するという「ちかちゃん」が ハットリ(「アレクサンドライト」シリーズの準レギュラー。お祭り野郎で背が低い) の妹ちゃうかな〜とは思ってたんだけど、今回単行本P15下中のコマを見よ! 「服部」の文字がっ! いやー、似てる似てる。わはは。ハットリ好きなんだよ〜。P15の「エヘ」な顔 なんか流石は兄妹。うーん。(漫画で何感心してんだか) あと安心とゆーか、このまま「成田美名子版スラムダンク」になってしまうのぢゃ ないかと危惧していた面には1/4スペースで「これはバスケマンガじゃないぞ」 と言っていて、ええ、安心した・・・ だって今の所(誘拐とか有るけど)ただのスラムダンクもどきだもんなぁ。 或いはただのNBA好き好きマンガとか。 本編の方が動き出したばっかりで、まだ全然掴めないんだけど、なんか「エイリアン」 な感じ? 会話のセンスは相変わらずで、かっこいいなー、と感心しきり。うーん。 うーん・・ いや、実はいまだに成田美名子の呪縛からは逃れられて居ません。 アレはマンガだっ!て解っちゃいるんだけど、憧れずにはいられない。 リアルとはリアル過ぎないこと、現実はより茫漠としている・・という私にとって マンガの方がリアルだって事はままあるのですが、成田美名子は、本当に心に 染み込むリアルさで。 アレクサンドライトの世界観が気に入って、ちょっとコロンビア大の事を調べてみたら コロンビアに留学するのって無茶苦茶、死ぬほど、大変なのね。成績はともかく、 財力、語学力、行動力がないと、大学側は何にも世話をしてくれないという・・ おまけに「マンモス大学」なので、友達も出来難く、孤独に陥りやすいんだそうだ。 ハットリの居る寮は治安の悪い所らしくて、身の安全を考えるならとてもおすすめは出来ない、と昔の大学ガイドブックには書いて有った・・・ 勉強したい、より「学位をとりたい」って人が圧倒的みたいだから、それも当たり前 というか、うーん、N.Y.だもんねぇ。当然か・・・ 何にせよ、オレは「サイファ」にしろ「アレク」にしろあのラストは認めていないので この作品もあの世界といずれクロスしていくことを期待する。 あれから大分経ったしね。アニスなんか今年で(誕生日は10/4)26歳だし。 せめてちゃんと生きよう・・・・ んじゃまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
成田美名子「天の神話 地の神話」/白泉社/1988/7/25 やっと買った・・・ 正直お笑い。今一ついや今二つ入り込めない・・・のは、矢張り自分が 擦り切れたSF者だからなのだろうな。 物語の骨子はしかし如何にも成田作品。かつて父を悲惨な方法で失ったディア。 その友人のセレムとの和解シーンなどは「まんまアレ」である。 勿論「狙って」描いている部分も感じる。少女漫画然と「しよう」としている様な。 でも、やっぱり、成田美名子は「今」の作家だ・・・SFじゃなくて。 「今」の空気を描くことにかけては天才的。だと思う。 あとは矢っ張り決定的にページ数が少ないことですか。 あの長大な(と言えよう)サイファ・アレクシリーズの様に、ページ数を多く取って そこへ情報を流し込む上手さ、そして長編ならではの面白味にほれこんでいるワタシ としては、この性急な作りは駄目な感じです。 他の作家ならまた別なのでしょうが・・ うむむ。そんな感想でした。 巻末の特別編、まだ睫毛バサバサの頃のアレクが・・・わはは〜 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
そういえば、「ララ」誌上において ついに成田美名子 「ALEXANDRITE」が終了した。 成田美名子はまごう事なき「天才」だ。 漫画描きとして天ブの才能に恵まれている。 特に「CIPHER」以降の作品は そのそつのなさと確かな画力で 大勢の人間を含む「世界」そのものを描き出してきた。 ・・・実を言うとこんな事を書いているが 全作品を読んだ訳では無いのだ。 特に初期は・・・ その昔、個人的に非常に感銘を受けたのが 「あいつ」(S54/9〜S55/8) 単行本全2巻 で、手慣れた美しいキャラクターと 良い意味で素人っぽい純粋な感覚に溢れた作品で こういった「進路」モノは当時の少女漫画には多かった(時代だ・・)らしいが 似た様な(地学だし)柊あおい「星の瞳の・・・」とはしかし全く違っており 読者そのものを啓蒙し導かんとする。 「そりゃ誰だって生まれたときはライト兄弟になれる可能性を持ってるけど  実際なる人はほとんどいない」 夢を実現する事の大変さ、難しさをはっきり明言しながらも 結局彼ら、彼女ら「夢」を明確に追える人間は、 追う事を止めなどしはしないのだ と バブル期以前の1980年の作品は語る。 これが求める夢も才能も美貌も無い青臭い少年を どれだけ惨めにさせたことか。 読み終って現実に帰ったときの惨めさ、というのは 少女漫画を読んでいるとよく有るけれど・・・ 正直な話、あの頃はまだわずかながらでも「未来」があった。 少女漫画を読む少女達は殆どが年上の登場人物を望むのだそうで、 それはつまり「猶予」が示され、明確な未来の幸せなビジョンが示されるからだ。 ああいつかはこうなれる。まだ今はアレだけど・・そのうち・・・ 今「アレクサンドライト」が素晴らしい、と感じていても もうすぐに彼らの年を追越し、そしてその時どう感じるか・・・ 現実は少女漫画ぢゃあ無い。 だが、それでも彼女には「選ばれた」夢を追うことの出来る主人公を描いて欲しい。 ・・勿論”ライト兄弟”以外の人間を描いても少女達は見向きもしないだろうけどね。 「キャラクターには明確な目的を持たせる事が大切です」って 某マンガ入門にあったなぁ・・・成程・・・ ではでは。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@

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