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川原泉


◇ここは「哲学が中国症候群するおぼろ月夜のお姫様マンガ家」
川原泉氏を個人的かつ好き勝手に応援しているコーナーです。


川原泉「ブレーメンII 2」/白泉社/2001/04/03

ヘルツォーク刑務官暴走と、カルナック<インコ森羅教>星住民救出作戦と、
イザナミ妻追跡行。

再読してて気付いたけど、お話は凄く良いんですよね。お話とキャラ設定だけ
切り出して読むと、実に川原泉らしい作品。SF知識のお勉強効果と、独特の
可笑し味と、底に流れる優しさと、どことなく切ない感じに満ちた、味わい深い
良い作品なんですよ。男女の間でのすれ違いの辛さとか、キラのキッツイけど、
どことなく「いい感じ」な所とか。凄く川原泉。なんですけど、でも、シカシ。

絵がー。絵が辛ぇぇぇ。

漫画って、やっぱり「絵」が一番なんだなぁ、と今更の様に思ってみたり。
せめてキャラの線を、あの線を減らして欲しい・・・!ちくちくちくちくちくちく
するんですよあの線。何か・・・もっと手を抜いて欲しい、というか・・・
背景もきっちり、服もきっちり、ふさふさのはずのクルー達もなんだかキチキチ
している気がする・・・きっちりされればされるほど、読者の想像力による
補完が出来なくなっていくから・・・

正直これだけ台詞と演技で見せられるのなら(失礼を承知で言えば)絵は
「マル描いてチョン」でも良い気がします。・・・とまあ、それ位に作劇の
腕は確実に復活してきている、という事でひとつ。

「大天使」の頃は、あの絵柄じゃないと、あのお話は絶対に描けなかったと
思うんですよ。あの頃のは、どの作品も絵と文が不可分で。・・・ああ、でも
ブランクの結果見るも無惨な絵になってた漫画家が、商業誌で描いてる内に
昔の絵柄に回帰して行ったりするし、まだ読み続ける理由はある、と思います。

取りあえず次巻を待ちます。
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(01/05/18)

川原泉「ブレーメンII 1」/白泉社/2000/04/03 ・・・だーめーだー。確かにじわっと泣ける部分も有ったんだけど、でもなー。 取り合えず絵が駄目。つらい。どうしてこんな刺々しい絵になってしまったのか。 鼻の影、襟のライン、睫毛の入れ方etc...なんか、カタイ。痛い。 昔はどうだったかなーと思って「大天使」とか読み返したらそのまま3冊 読み切ってしまって何とも。あああ面白い面白い面白いんだよこの頃は! 面白いし、何か可愛い。絵柄が可愛いんだよな。そういう路線。まあ今作は 「SF」だし、絵柄もかっちりしてるべきなのかも知れないけど・・・でもねえ。 基本的なパーツは変わらない感じだけど、うーん、柔らかさが足りない気が・・・ p24-32辺りの「泣かせ」なシーンでじわじわっと来て、「ああ!川原泉はまだまだ イケル!」(失礼な)とか思ってたけど、結局そこ止まり。あの「くつくつ虫」が もーダメ。編集者もこれ面白がって載せてるの?それとも「御大」だからってんで 止めるに止められないの?あの目のじゃぎじゃぎした線ってどうよ。もしかしたら ワタシの感性が古いだけで、ホントはああいうのが「今はブーム!」なのかも 知れないけどさ・・・どうなんだろう。実際の所。 川原泉作品には、何て言うか(こういう言葉使うの恥ずかしいんだけど)「癒し系」 の効能を期待してしまうワタシ。これ以上無いくらいダメまってる時に「愚者の楽園」 とか読むとそれだけで癒される。いやホントに。だから「暮林教授」とか苦手でした 実は。矢っ張り「日本農園」とかああいう抜けた話の方が遙かに「らしい」気がする。 ・・・そういう、「優しいボケ役」を演じ続けて欲しかった。 でも、前の「小人たちが笑うので」の時にも感じたことだけど、「これ」が作者の 本性なのかも知れないなあ、と。このじゃぎじゃぎした線、会話の成り立たない くつくつ笑い、意味不明の空間を現出させて周りが引いてるのを楽しんでるような、 ちょっとあくの強い感性・・・こそが(少なくとも今の)川原泉なのではないか。 勿論、それでもファンであるには違いないし、その根底に流れる川原節を愛して 止まない者ではある・・・が・・・ああ、また「食欲魔人」みたいな話を!! と望んでしまう。あの喩え様も無い読後感は、もう二度と味わえないのだろうか? 兎に角待ち続けるしかないか。川原泉の代わりは、誰にも出来ないのだからなー。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (2000/05/09)
川原泉「小人たちが騒ぐので」/白泉社/1998/12/22 川原泉、超待望の「漫画の」新刊。 発売日の夜、本屋で平積みにされていたこの本を手にとってレジに並ぶと 私の前にいた茶髪のお姉さんもまた、この本を持って並んでいた。 あああ、みんな首を長くして待っていたんだなァ・・・と言う感じ。 内容は、遅筆少女漫画家カーラ君とその忠実なる友人Mとの楽しい日常、 或いはペシミスティックな火星人とオプティミスト編集者の因果な関係 ・・といったもの。 で。 どーでした?>既に読まれた皆様。 サブタイトルにあった「それがどーした」てのが 結局のところワタシの感想。 なんか、ねえ。違くない?みたいなー。 「これ」がこの作者の「本性」なのかもしれないけど、でも・・・ この作者の作品一つ一つをそれこそ宝石のよーにアガメタテマツってきた そして今でもたまに取り出してはその美しさに涙するところの 泉勝連(川原泉を勝手に応援する連合会)者なワタシとしては正直辛い訳です。 言ってしまうと・・「昔は良かった・・・・・。」 この本の中で一番(というか唯一というか)往年の川原風味が楽しめたのが 巻末の「0の行進」(1991年作品)であったというこの哀しさ。作者がまだ 在東京で全盛期だった頃の作品だからな・・・こうして同時収録なんかするから 今のソレと比べてしまうじゃないか。ああ・・・ ううむ。何というか。この単行本に関して言えば、ネタと漫画の間の 距離が無さ過ぎでしょう。あまりにダイレクトドライブ。見たまんま描いてる様な。 そんでしかもその直球勝負を引っ張る引っ張る。「ゾンビにあぶらげ」の オチに至るまでの長さときたら。とても嘗ての思考圧縮詰め込み漫画家 「川原教授」と同一人物の作品とは思えない・・・ そして中盤から始まる「ゲーム形式の漫画」。ああ。 「ゲームで駄目になった少女漫画家」の面目躍如という。 キャラクターの内部を論理的に作り込める作家に限って、とことんRPGに はまってしまうらしい。キャラ造形を補完して楽しんでしまうのだよな。屹度。 で、RPGは役割を演じるという時点で創作行為と同じだから・・・そっちに パワーを吸い取られて紙の上には出力されなくなってしまう、という。 そういう論調があったんですよその昔。坂田靖子とか。 でもホントの所、ゲームは「駄目化」の直接の原因ではないのかも。 個人的に、この作者は老齢を迎えても継続的に良い作品を生み出せる 大島弓子タイプの作家だろうと勝手に思いこんでいたので 歳による感性の摩滅が原因だとは思いたくなくて・・・ だから他に理由らしいものを見つけては、そっちを糾弾したくなる。 最近あの作者ゲームにハマってるから・・とか。 でもいつかはその熱も冷めて、また我々の前に帰ってきてくれるはずだ そしてもう一度「銀のロマンティック・・・わはは」の、あの・・・うう 今思い出しただけで目頭が熱くなる、ええと、そう、あのラストの 様な感動をまた与えてくれるだろう・・・・ ・・・と思いたい。 でもねえ。この単行本を見た限りでは・・・ 原因はともあれ、この作家ももう過去の人になってしまうのかしら? ・・・ところが先日、PUTAOで「ブレーメンU」立ち読みしてたら その持つ善良さに涙目になってしまって、終わりまで読めなかったという。 矢っ張りこの作者の持つ情動操作能力は強力だった。 その東京時代の末期、川原泉氏はいろいろとマイっていたらしい。 特に「メイプル」再開前あたり。大病を患ったらしいとかいろいろ・・・真相は不明。 で、結局東京を引き上げて地元に帰った辺りで、いったん漫画連載からは 距離を置きたくなったのではないだろうか。田舎でのんびり良い作品を 描いてくだされば、と読者たるワタシは思ってたわけですが、どうも そう言う風にはならなくて、文字ばっかり書いてましたよね。一時期。 ・・「小人たち」は編集側の仕掛けたリハビリ作だったのかも。 ワタシタチはまた再び、あの川原「教授」作品に出会えるかもしれない・・ 「ブレーメンU」が、その兆しなら。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/01/09)
川原泉「メイプル戦記 3」白泉社/1996 相変わらずいい漫画を描く。 僕にとっては数少ない「決して外れない」漫画家の一人。 何が良かったと言って仁科のダンナと奥さんのあのシーン。 僕はもうなんか泣けて泣けて・・ 川原作品の醍醐味はコレよね。 一応野球漫画なんだが、肝心のシーンというのはわりかし少ない。 それでいいのだ。少女漫画なのだものな。 その分監督と選手達との信頼の描写等に力が入っていて。 勿論野球漫画としても楽しめます。 神尾が帰ってきたときの盛り上がりなんかは正に少年野球漫画という。 川原泉は(一時は疑っていたが)本当に身体が弱いのね。 漫画家ってのは結局最後は肉体労働だからねぇ。 まして川原泉の場合ネームが命の上に絵柄も彼女以外には誰にも出せない味があって 結局一人で(アシスタントいるけどさ)かかなきゃならん。 漫画は原作下書きペン入れトーン張りと、写植以外の版下状態まで作らないとイケナイ どうにも大変な仕事であります。 「絵は綺麗だけど、それだけ」という漫画が多い中、この作者は、絵と内容が 分離不可能なほど関係していて、全く・・・凄いとしかいえんな。 しかし何だ、コマ小さくなって無いかしら。よけいに書き込まなきゃならんから 大変だな・・・ 同時収録作の「ヴァンデミエール−葡萄月の反動−」 は、如何にも!な川原作品。久々の短編ということだが、実に上手い。 この作者ならではの「貧乏な女子高生とおぢさん」というパターンが今回もハマる! 今泉勝連(川原泉を勝手に応援する連合会)があったなら、またこれで 盛り上がれたろう・・ 「けなげ」という言葉がこれほど似合う少女は居ない・・・ 読んで泣け。 ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (96/01/27)

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