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伊藤伸平


Itou Shinpei
「やあ若者シケた顔してどうしたい」
原作:川崎郷太 漫画:伊藤伸平「永遠のグレイス」/少年画報社/2002/09/15

都心に大怪獣出現!でもビルの影なので何が起こっているのか、ニュースで
流される以外に知りようが無い。ビッグサイトでは同人誌にまみれて人が
死に、新宿では東口の大惨事を西口に居ながら知ることも出来ない。

大怪獣による破壊、それに対して阻止命令を無視して攻撃に出る「自衛隊」、
ディーゼル規制にひっかかって都心に乗り込めない戦車、手に入れたばかりの
マイホームを目の前で怪獣に潰された家族、子供と離ればなれになった親、定年
最後の日を迎える警備員、職務を全うしようとする消防員や駅員、バスの運転手、
報道を気取る映研部員、片っ端から死にまくる。そしてその人脂まみれる混乱の
中を、コンドーム握りしめて鼻息荒く待ち合わせ場所に向かう男。

「状況」が進んでいくなかでそれぞれのドラマが繰り広げられる……筈なん
だけど、何というか、全体的に「足りない」感じの多い漫画。この手の多視点
パニック映画やるにしたって、やっぱ何か物語(カタルシス)は必要だろう。
それがあの変態男(というのは可哀想だが役割上仕方なし)のラストの涙で
代替されているとは思いたくない。

兎に角キャラクターに対して感情移入もできなければ、キャラの魅力に惚れる事も
できなかった。状況自体も混乱のウチに始まって混乱のうちに終わっていくし。
この作者の魅力はひとえに「魂の入った」キャラの魅力だと思っているのだけど、
どーも、そういうのが無かった様に思う。キャラ漫画じゃなくて状況漫画だから、
これは如何ともし難いものか。或いは自分で産み出したキャラではないからか……
原作付き漫画には向いてないのかも……正直読み終わって不満が残らないという
出来ではない(回りくどい言い方になっているのは、スイマセン)。

個人的に伊藤伸平信者なもので、苦手な漫画でも気に入るまで読み返してしまうん
だけど、これは、うーん。いや、それでも「伊藤伸平の漫画だ」というだけで十分
買う価値はあると思うんですが(いやそれにしては最近の再販系を買い渋っている
よな>自分)。

原作が悪い、というよりは「原作がついてさえこんな漫画になってしまうのか」
という位の、良くも悪くも伊藤伸平。あと一波乱、読者の心をグッと揺らせて
欲しい。ドラマの中に、読者が感情移入するキャラを一人、一人でいいのだ、
配置して欲しい。赤井の様な――などと読者は勝手なことを言いつつ。

ま、今はパードルの「次」があるのだ、と、もうそれだけで。
@@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@
(03/01/11)

伊藤伸平「素敵なラブリーボーイ」/少年画報社/2001/10/01 伊藤伸平の最新作。こんなの描いてたのか。全然知らなかった。 どおりで新作でも画力が落ちてないわけだ。というかより可愛くなってるし。 いや、実際女の子がカワイイ。前から可愛かったけど、より華やかでカワイイ。 でも美味しい位置のキャラは地味という。いやそこがまた好きなんだけど。 制服を着ている姿が、何というか・・・初期の森伸之の制服絵みたいな、記号 なんだけど記号じゃない存在感というか・・何を言いたいのかよくわかんないな。 要するにp124みたいな絵はこの作者にしか描けないだろうなあと。あの線の 強弱まで含めた魅力。たまらない。 学園生活ラブコメ。路線としては「はるか」の路線。 舞台が高校生活である、という時点でこっちはかなりガードを下げてしまう 上に、文化部(演劇部)ものでノスタルジックでラブコメで。ひたすら 「懐かしさ」を感じる脳内部位を刺激されまくる。ああ。あああああ。 文化部物、ってジャンルが有るかどうかは知らないんだけど、そういう漫画 (「あ〜る」とか「月は東に」とかああいう)ばっかり好んで読んできた、 いわば文化部モノフェチ的な拙者としては大満足な作品なのであった。 分かったようで分からない女心、夏合宿、ばたばたと過ぎていく文化祭、 ぐるぐると巡る妄想、受験期の不安定な心、バレンタインと卒業と・・・ イベントとイベントをつないで淡々と過ぎていく毎日は、これはもう「学園 生活」のイデアの様な。嗚呼これこそ「少年」漫画だ(少なくともSFでは 無い)。ラストのあの「そして毎日は続く」的な終わって行き方(おわって いく、感じ。ただストンと終わるんじゃなく)が、もう実に実に染みた。 何かもうたまらない。 何というか、リアルなん。ヤマらしいヤマのない、漫画的じゃない展開。 日常の中に不意に訪れる変化。そういうのがより「自然」な感じ。どこかに 存在していそうな(或いはして”いた”ような)「日常」の姿。その日常、を 切り取って描いて見せる。そこに感動は有る、んじゃないかと思える。 p128あたりの描写とか、裏で伊藤ギャグを回しながらの香織の決断シーンの 繊細さは、なんかもうこの人もっとこういうの色々描いて欲しいと思わずには 居られない。京子のあの「深く考えるのわたし嫌いよ」とか、あの回の最後の コマとか。あるよなー。そういうの。相手に切り込まれると素直に返せない 性質でさー。何か・・・なーんか、いろいろ思い出してしまった。はー 然し賞賛すべきはこの作者に「この路線」を描かせた編集者の慧眼か。 まあ元々が少年誌デビューの作家だし、こういう引き出しは最初から持って いたのだろう。銃器と女の子「だけ」がこの作者の特徴だった訳でもなく。 それでも「はるか」は大きかったのかもな、と思う。あの独特の(ちょっと 物悲しいような)空気は、この作品の中にも生きている。 高校生活という祝祭(勿論そう思える様になったのは卒業して何年も経って からだけど)の日々の中で、その楽しい毎日が決して永遠では無いことに ふと気付く。花火を見ているとき、花火が終わってしまった時の事を考えて 妙に切なくなる様な。そういう空気。 高三の頃、目の前に「終わり」のラインがハッキリ見えていて、だからこそ 毎日のかけがえのなさを自覚しながら生きていた。あと100日もしないうちに この空間は無くなってしまう。この部室にはもう二度と帰ってこれない、もう 二度とこんな風に居心地の良い場所には出会えないだろう・・・あの妙に フワフワした感覚。アレを久々に思い出した。 ・・・二度と帰ってこない「あの頃」を、でもただ思い出として記憶の向こうに 置いてきてしまっていいのか? パードル(楽勝!ハイパードール、という漫画。アニメにもなった)ファンと しては立ち位置も懐かしい茶髪ロングヘアと黒髪短髪コンビの登場に泣き笑いも 有り。ホントはパードルをパードルの世界の中でいつか完結させて欲しかいん だけど。ラブコメ的にも。いやあれは、ラブコメだったよ。個人的に。 あと今回各キャラのネーミングセンスに作者の自覚した上での熱が感じられたり。 そんな諸々を総合した「良さ」がどれだけの人に伝わるか。まぁ良い物は放って 置いても伝わるであろうとは思えど。 妙な位置で居乍らもバランスの取れた希有な作家だと思う。次回作も楽しみだ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (01/09/10)
伊藤伸平「アップル・シンデレラ」/大都社/2000/09/08 何つーか、この大都社の大味な装丁どうにかならんのか。特にこの背表紙の色。 ・・・最近の落ち穂拾い的短編集の一つ。 表題作「アップル・シンデレラ」はサンデーコミックス版だったかを某☆師匠に 借りて読んだ記憶がある。目次カットにも使われているp156のリンゴちゃんの、身体 全体で表された表情が全て。あのタメの効いた表情。良くも悪くも時代の匂いが 強烈で、あまりに若い。後の「クールでシビア」な大人の作風とはまた違った味の ある作品。ただ主人公に感情移入は出来ず。 「ざ☆ぺんらいと」「走れ!!アイドル」も同様に感情移入が出来ない。 アイドルとファン(親衛隊)の関係が一般に通用する文法として成立していた時代が 有ったのだ、とそれのみ。単純に「理解できない」のである。読者のスキル不足。 「猫丸」はかなり最近の作風。モルダイバー直前、という感じ?引かれた線が がさついたタッチから抜け出していて、見た目に美しい。ギャグの乾いた感じも実に 今風で良い。特にチエちゃんの小悪魔的な(というにはあまりに邪悪な)造形は 完全に一線を画している。今でもスゴクイイ感じ。これだ、これが伊藤伸平の描く 「超存在としての女の子」なのだ。また「ネタ」が重なりあって途切れる事無く 続いていくたたみかけの手法もこの辺で確立されている。常に背景で何かが起きて いる、というこの作り込み様こそ、私が伊藤漫画に惚れ込んだ最大の魅力でも あった。非常に好ましい一本。これ一作でも買った価値はあった。 「マッド彩子」はちと古いか。柴ちゃんの造形は後のロビンにつながる感じ。 巨大ゴキブリと自衛隊の戦闘シーンは作者のもう一つの面、特撮描画の魅力を 予感させる。美少女マッドサイエンティストの暴走ネタは80年代中期のマイナー SFまんが雑誌ではお馴染みだったが、果たしてこれはいつ頃の作品なのか。 つくづく初出一覧がないのは悔やまれる。 然しこの単行本の最大の「価値」は作者による(!)巻末解説であろう。いや解説 自体はどうでもいい(ホントに。所詮「当時」を知らない者にとってはどれだけ 解説をされても何の意味もない。とり・みき作品の「解説」を読むのが楽しいのは 漫画そのものだけでなく作者(達)そのものもまた「有名」だったから)、問題 は、最後の「消えたアイドル」「消えた漫画家」の下りである。 「人はナニも有名になるばかりが仕合わせではなし、”消えたアイドル”も  我々の前から姿を消したからって消えて無くなっちゃうワケではなく、その人の  人生は続いているのだというコトは、現役の”消えた漫画家”であるこの俺には  よぉ〜くワカる。」 アイドルも漫画家も「消える」事が当人達にとって一概に不幸であるという事は 無いのだ、それなりの幸せな「毎日」は「その後」にも存在してる、という様な 作者の言葉を尤もだと思いつつ、しかしそれでも、それを読むワタシの心には 拭いきれない寂しさの様なものが残る。 ・・・おいてきぼりにされて、寂しいのは読者なのだ。 どうせなら夢を見させ続けて欲しいと願ってしまう。 終わりの無い夢など無いけれど。 ま、どっちにしても古い作品。伊藤漫画好きは買うべし。知らない人はまず 「ハイパードール」を読んでから。今んとこアレが最高傑作。必読。読め。 伊藤伸平のセンスは(キャリアこそ確かに長いけど)これからのものだと思う。 絵柄の洗練された感じは、今使わないでいつ使うんだ!的でもあり。そして何より あの濃いくせに乾いた笑い(とその裏にある魂)、拙者は本当に好きです。 このまま消えられてたまるものか、ファンをなめるな!とも思う。でも具体的に どうしたらいいのか解らないので、取りあえずアンケートとかの「最近気に なっている漫画家」みたいな欄には必ず伊藤伸平と品川KIDを入れている @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (00/09/03)
伊藤伸平「少女探偵」/徳間書店/1999/05/25 いわゆる「初期短編集」。 サンデー時代の作品って結構有ったんだね・・・ 結構面白かった。 特に「あやめにお手上げ!」シリーズの矢崎あやめ嬢の造形はなかなか。 この作家の最大の魅力はやっぱし「可愛い女の子」ですからねえ。 うんうん。かわいいかわいい。 以上。 ・・・このキャラ、徳間時代以降出なくなってませんか?このアイドル型少女。 モルダイバーが最後かな。パードルとか以降では見かけませんね。 作者のマインドセットが変わったのか・・・ 何て言うか、「男が作った理想の女子偶像」(まさにアイドル)なんですよね この頃のヒロインキャラは。 パードルの二人とか、アディとか、ユリエルとか、あの辺の 「宇宙生物的」な、理解の外の存在としての「女の子」とは根本的に違う。 (或いははるかの様な、等身大の「少女」でも無い) で、どっちが魅力的かというと・・・ まあその辺は好き好きでしょうけどね。 然し最近の落ち穂拾い的単行本の出方がちょっと恐かったりもする一読者です。 まだ再評価には早いでしょ・・・古い作品よりは(今の所)新しい作品の方が 断然面白いし、是非とも新作で楽しませて欲しいとか思うのだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/05/05)
伊藤伸平「エンジェル・アタック 2」/白泉社/1998/11/30 うわ。久々に読んだら何て嫌な漫画なんだ。特に宇宙人受難の下り。 悪意ってのはこういう風にして増幅して行くんだよな・・・。 と言うわけで結局何の「種明かし」もないままぶち切れるように 終わる最終回も又この作者らしいと言えばらしい。 もう、このラストに関しては、多分見たままなんだろうなぁ、と。 産まれ来る子供を前にした男の動揺。或いは交配により進められる ユリエル達の「地球侵略」の前哨・・何せあいつ何やっても死なないからなぁ。 そう言う意味では、ラストのあの「天使」が大発生している光景の 意味するものはつまり・・・とかいう「読み解き」すら 実際必要無いんじゃないか。そんな感じ。 でも読んでる分には作者のモチベーションが薄い、という感じでもないし。 愛は有るんだよね。各キャラクターに。決して放り出した様なラストではない。 なんか、そう、探偵物語みたい。昔のTVドラマ的。 一話一話が独立した話だと思えば。・・・うーん・・・ 1巻の時に触れたホンダロボの下りに関しては、雑誌掲載時に 結構興奮したものの、今読むとそれ程でもない。 というか、これ以後の物語との繋がりに非常に無理を感じる。 実にバランスが悪い。何でこんな事になったのか? これが長編的な話に繋がっていくとかだとまた話は別なんだけど 基本的に一話完結だし・・・結構複線とかまいてる気が してたんだけど、これも単なる買いかぶりなんだろか? 部分部分はかなり面白い。特にバズズの像の下りは最高。  「妹がインドからトルコまで徒歩で武者修業の旅をしたおりに−」  「カンタンに言うけど たいへんな事だぞ」「大偉業だ」 この辺の語感は、もう何度読んでも笑ってしまう。 ただ、矢っ張り全体的なトーンの重さ、暗さはイカンともしがたい。 以前から、何となくこの作家の弱点は「漫画家として馬鹿になりきれてない」 ところに有るんじゃないかと思ってた。何を描いても、その向こうに ゲンジツの闇が口を開けているような不安感がある。 描いてて辛くないのだろうか? それを逆手に取った、闇そのものの顕現がこの漫画だったのかも知れないけど 後半のどうでも良い展開なんか見てると、結局それもうやむやにしてしまった (させられてしまった?)様で。それはもう、すけこまくん(すげこまじゃなくて とり・みきの)の変遷を見る思いだった。 勿論その作風だからこそ「はるか・・・」は傑作になり得たのだし、要するに 作風に会わせた題材の選定ですかね。此処最近の伊藤伸平ブーム (でしょう、やっぱり)は、パードル(しかも前半)の完成度に おんぶにだっこの状態だったんじゃないかと個人的には思ってて。 消費し尽くされる前に、何とか次の「パードル」的な作品をと望むものである。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/01/26)
伊藤伸平「東京爆発娘 2」/角川書店/1998/11/01 いきなり完結。 なんか乾いた漫画。乾いてるよね。 今一つ、いやさ今二つ感情が動かない。 熱くならない、萌えられない、笑えない、泣けもしない。 これじゃぁ、ねえ。 いや確かにp132の「やる気を見せるな、やる気を見せたらPUFFYじゃないッ」 の下りには笑いましたけれども。 ・・矢っ張り「日常」を描かないことには感動はないわけで。 情動を動かされなかった作品は個人的には駄目作品な訳です。 すいません。 いやー、これもシカシあとがきのために買った作品かも。 あとがきは熱くて良いですよ。乾いてなくて。 確かに銃器等に対する知識/関心が有れば全く違った読み方/楽しみ方が 出来るんだろうな、と言うところはあります。 でも銃器に関する知識も関心もまるで無しの @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (99/01/26)
伊藤伸平「東京爆発娘 1」/角川書店/1998/08/01 あー。なんかなつかしいやね。 あとがきのために買った人って結構居るかもですね。 あとがきだけでこの一冊を三読、四読させられたという。 ホントに。 あとがきを除いて、例の富士見版と基本的に内容は同じ。 パードルとキャラ設定がにてる(パードルがキャラ設定を引き継いだ、か) ので親しみやすいかも知れませんね。 ていうか今更この単行本で感想を書けと言われても。 兎に角二巻以降も発売予定(現在コミックドラゴンで連載中)とのことで、 こんなん再開するよかパードルをちゃんと終わらせて!的な気分は 有るにせよ(版権とかいろいろ有るんだろうな・・・)、楽しみではある・・ この人は割と自分の作品を積極的に単行本化していくタイプらしいので そのへん取りこぼしとかはそうそう心配しなくて済みそうなんですけど ・・エンゼル・コップは続刊出るのかなぁ・・・ @@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@ (98/09/21)

伊藤伸平「はるかリフレイン」/白泉社/1998/08/31 初出は高一Challenge1997/04-1998/03 チャレンジで連載されていた漫画、というと直ぐ思い浮かぶのが 「クレープを二度食えば」(とり・みき)という時間テーマの傑作。 今久々に読み返してみて、その傑作ぶりを再確認したりして。 遅ればせながらフリッパーズにはまったのもこの時期だったよな・・・とか。 (妹が中三チャレンジをとっていたので、リアルタイムで読んでたのだ) で、この「はるか」も時間テーマ。 タイトル見て「ああ大林」と思いつつ読んでみたら 全く大林だったという。 舞台の「鎌倉」といい、繰り返す時間と言い・・・ 然し、暗い。重い!! 冒頭で死人が出て、あとはひたすらその「死」の回避・失敗・葬式・夜の煩悶を 繰り返すというこの暗さ。 夢多かるべきこの「高一」時代に於いてこの暗さはOKなのか!? 暗いというか辛いというか。 主人公の焦り、不安、母親に対するムカつき、悲しみ・・・ああ、 高校時代ってこうだ。決して明るいだけの時代じゃない。 拙者なんて可能性「だけ」しか無かった・・・(今は其れすらないが) このへんのリアルさは流石で、例えば P104「カレ氏が生きるか死ぬかってときに朝寝するコト考えるかっつうの!」 のリアルさなんかは、作品の持つ「焦りと不安」をいや増す。 P113あたりで明言される 「いつから母親といると気詰まりになるようになったのだろう」 なんかも、非常にビビッドに伝わってくる物がある。 むしろ「母親との対話」で締めるエンディングを見ていると、 こっちの方が主題なのかも知れない・・とか。 冒頭から積み重ねられた「ムカつき」感覚がじわりと変化していく所とか・・ 「救い」のないラストに「理解」の会話を入れ、 かくて人は悲しみを乗り越えてまた歩き出す。基本だけど、滂沱と泣ける。 またこの作品で特筆すべきは、 「伊藤伸平が自らの手でエンディングを描いている」 という。モルダイバー以来数年、久々の「最終回」と言うわけだ。 ・・・いや、これを「最終回」としていいものかどうか。 むしろ「映画」として見た「ラストシーン」とも言えるか。 この作品は明らかに大林映画をベースに展開されており (作品の持つ「雰囲気」が見事に大林)、その辺、一本の映画として 見た方がより馴染む。 親に対するムカツキを乗り越えないままオヤジになってしまった @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/09/21)


伊藤伸平「エンゼル・ハート」/白泉社/1998/05/31 「友達だったらアディって呼ぶさ」 「今月の見せましょう:伊藤伸平のスケバン刑事」−といったもの。 どうでも良いけど「でか」と書いて「刑事」と変換する辞書って好きさ。 初出は少年キャプテン鉄人増刊(あーあったねぇそんなの)1994/01〜1995/06。 時期的にはモル(ダイバー)とパードル(ハイパードール)の中間点に当たる。 絵柄はどちらかというとパードルよりか。描線が細い。 でもノリはモルでもパードルでもなくて・・・何というか・・・ 「素の伊藤伸平」な感じ。 つまり、「女子高生と銃器」、セーラー服とフルメタルジャケット、である。 もう本当にそれだけ。本ッ当に、好きなんだなぁ。こういうの。 うーん。何と云ったらいいのか。設定は確かにスケバン刑事なんだけど、 なんつーか・・内容的には寧ろ吾妻ひでおの女子高生流浪譚みたいな所も。 ちょっと冷静に読むと、結構無茶苦茶・・・・まぁ、面白いからいいや。 いや、面白いんですよ。でも何処がどう面白いってのを説明するのが難しい。 伊藤伸平ファンなら買い、ってこれは言わずもがなだし。 えーと。取り敢えずロビンが良いです。 いやロビンていう女の子ちゃんが居るんですけど、彼女の造形が良いんです。 あの性格設定が結構個人的には「来る」。特にエンゼル・プチ・ハート1の ロビンはもー、ロビン節絶好調で−って何が何だか解りませんね。 自己中で逞しくて主人公にくっついて歩く小判鮫みたいな武器商人 −とかいうとますます解らない。 大体何で「ロビン」なんだろう。多分何らかの由来は有るのだろうけど・・ で、その「エンゼル・プチ・ハート1」の扉(p89)なんか、もう 実にイカスのである。どの辺がイカスかというと、目の描き方。目が良い。 うーん。目もいいし、あー、ふくらはぎもイイっスね。 兎も角。 設定上いくらでも続けられる、いつでも終われる」と云う、如何にも増刊号的 儚げな作品ではあるけれど、でもどっちかというと大河モノ(学園渡り歩きモノ) なんで、この短さで終わるのは結構勿体ないと・・・ってこの作者の作品って みんなそうかも・・・モル以外。 その辺の言い訳というか解説を、いつものあとがきページに期待したのだけど− 残念ながらこの単行本にはあとがきは無いのだった。うー。 まー、取り敢えず買いっすよ。ファンなら。って買ってるかもう。 実際不思議な作品だわ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/06/12)


伊藤伸平「エンジェル・アタック 1」/白泉社/1998/03/31 ・・・なんかここ数回ヤングアニマル読んでなかったら、もう終わっちゃったの? 目次に載ってない気が。 さて、それはそれとして伊藤伸平の待望の新刊なのであった。 これがもう。いやもう。何ですか。いやその。 内容は天使と刑事と米軍とXファイルとメカと女。 ほぼパターンだけど、巧い。然しアレはやばかったでしょう、あの 「二足歩行ロボット」。 あからさまにホンダロボじゃん。まんま。 それが目からレーザー口からルストハリケーン(嘘)で罪もない一般市民を ばすばす殺して行く様は、ちょっと狂気の世界だった。幼稚園児の目の前で クビをはねとばされる先生とか。アレはやばい。やばいよ・・・ ・・・と感じてしまうのは、矢っ張り僕等があの二足歩行ロボを見たとき 真っ先に思った、「軍事目的での開発が裏で行われているに違いない!」 という半ば確信に満ちた想像が有るからでもある。 ロボットと言えば変形合体で戦う「機動戦士」、という発想はなかなか ぬぐい去れるものではない。事実は兎も角。 で、その話を途中まで読んで、暫く見てなかったらヤングアニマルから タイトルが消えていた?という。続きが読みたいのだけど・・・ まーしかし、本当にヤバイ、というか怖いのは、この作品の主人公たる エンジェルことユリエルの造形でしょうな。アレはホントに怖い。 「可愛い女の子が平気な顔で戦うが、滅茶苦茶強い」ってのはパードル以来の 伝統だとしても、あのキャラ達にはまだ(被造物ではあれ)ココロが有った。 だが、ユリエルは・・・ 後書きによると、この作品のコンセプトは「ココロのこもらない天使が 偽りの愛を振りまきつつ結果に責任を持たずに奇跡を起こす」であり、 事実このユリエルの言動はもう心がこもってないことこの上ない。 こういう造形は作者お得意であろう。パードルの胸でかい方とか。 設定から来る妙に乾いた描写、人間の心理にSFを持ち込んだあたりは 古典的でありながらも、流石の使いこなし様である。 うーん。「パードル」もそうだったけど、謎めいた思わせぶりなキャラ造形 (果たしてユリエルは「何者」なのか!?とか。P93参照)が相変わらず巧い。 巧い、が、もしかしたら作者何も考えてないのでは・・・・という疑問が最近。 この手のネタふりはやっぱし「最終回」までには納得のいく形で明かされて 欲しいものですな等と今更エヴァみたいなこと言ってますが。 エヴァと言えばタイトルからしてエヴァだったりして まぁそれはお約束の範囲内ですけども、その辺巻末作者のお言葉で 「次回作は自分でモノを考えたい」とか仰ってましたが、それはどうか、と。 作者の資質からして、矢っ張り有る程度の制限の下で描いて初めて切れる、 という風があるので(本人はそればっかりじゃ駄目だ・・とか 思ってらっしゃるんでしょうが)、その辺は拘らずに兎に角これからも是非 描き続けて欲しいのであります。 取り敢えず「納得のいく最終回」を描かせて貰える(或いは描ける)環境を 手に入れて欲しい・・・膨大な知識量、細かい演出技術、確かな画力・・・ 一体この作者に「最終回」を描かせない「欠点」は何処にあるのだろう? この作者の最大の売りは、その描く「女性」の存在感だと思うですよ。 綺麗、可愛い、は青年誌漫画絵としてそこそこのレベルだと思うんですが、 その思考形態、行動パターンが、こう読者のココロを揺さぶる (怖い!ってのも含め)。大体ユリエルのココロこもってなさがもう。 あの徹底した描き方は凄い。あのうそ寒い空気! あんなのに同居されたら普通発狂するぞ。早田だからどうにかなってる様なもんで。 いやー、怖い。可愛いけど怖い。所で早田ってやっぱハヤタなんですかね。 で、矢っ張りその辺の「安心」場所が友郷アナだと思うがどうか。 p198とか。えーと、パードルだと・・あ、まんまか。祥子。 常識的キャラを対象に配置して、その状況にリアリティを付け加えていく・・・ 勿論青年誌故のサービスシーンも実にイヤらしくて良い。人妻とか。 もう少し読み込んでいけばまた新たな発見も有りそう(読み落としてる部分は かなりあると自覚する)なんですが、またそれは次巻の時に。 でも、出るのかなぁ、2巻。 所でp198の鳥幹っていう飲み屋は実在すると昔とり・みきの漫画に 描いてあった気がします。あー、飲み屋行きてー、と関係ない 心理が展開されてきたのでこの辺で。ではまた。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (98/05/17)
伊藤伸平「楽勝!ハイパー ドール 5」/徳間書店/1997/10/10 個人的に、ここ暫くの少年漫画(大して読んでないけど)の中で 最も愛したシリーズだった。 1997年2月をもって、掲載紙「月刊少年キャプテン」 (合掌・・)が休刊となり、結果そのラストを見ないままだったのだが 遂にその最終巻が、70pもの描き下ろしを加えて発売されたのだ・・。 だがしかし。 70pの描き下ろし、と云っても、要は「無理矢理最終回」な訳で・・・ この作家、ラストはいっつもこんな感じ。原作者は違うにしても、 同じ様な状況で同じ様な終わり方をした「ネメシスの剣」と最終的には 良い勝負になってしまった。あのラストを読んだ時の「あれ?」という 不快感が蘇る・・・作家の資質なのか、それとも最終回を待たずに 打ち切りにしてしまう編集側が悪いのか−。 ここまで段階を踏んでオモシロクしていっているのに、ああ、 あんまりと言えばあんまりだ。キャプテン廃刊(・・・)で我々− 私は、今世紀最大のクライマックスを見逃してしまった・・様な気がする。 ああ、これじゃエヴァ並ではないか・・・返せ戻せッ・・・ でも画面もノリも相変わらず凄いレベル。p35の「ハイパードールにお婆ちゃんが!?」 とかもーすげー好き。台湾編も「どっかで見た”絵”」(p10)のオンパレードだし。 然し斯う言う台詞(これがやりたいばっかりに・・とか)なんか見てると 自覚的にネタ振ってるなぁと。根がヲタクというかパロディというか・・・ この作品の最大の魅力でもあるミュウとマイカの掛け合い漫才(どつき漫才か)も 最後までそれなりに生きてるし(「乳もむぞこの女ー」とか)。 まぁ、面白かった、よ・・・ああ、でも、本当、キャプテンの休刊さえ無かったら・・ p100のシーンなんて結構後に引く複線なのに・・・うう・・・ (美樹=エリカ(ニャンコちゃん)か?) 思うに、ラストがいまいち、の最大の要因は、赤井の不在であろう。 赤井の視点が消え去ったことで、読者が自身を投影できるキャラが 居なくなってる。 パードルの(他の伊藤作品に比べての)成功というのは、赤井の存在に 有ったわけで・・・ってこれは個人的な見解ですが。 何にせよ、ラストに赤井無しでは・・・ ああ、兎に角早い次回作を望むばかりである。 ・・・・というのが一つの読み。 いま一つは、「これは最終回ではない」という読みだがどうか。 ラストのヘル春日の長台詞(エコロジー教に取り付かれた春日と、その 財力を利用して世界を混沌に陥れ、その後で世界に君臨しようと云う ザイクリッド−という図式。ああありがちだけど上手い。)の後、 春日は逃げる。ザイクリッドも死んでないし、 実際何も終わっては居ないのだ。 一見最終回だが、戦いは続く。それが証拠に最後の彼女達の台詞は、 「やっぱ終わんないっしょ」だ。終わらない・・・何が? この作品が? 最終回の最後のコマで此の台詞は、取りようによっては 作者の「こんなページ数で話が終われるか〜」 という言い訳にも聞こえるのだが・・・もしかしたら作者は まだこの物語を続ける気で居るのではないか? ・・・再び彼女達の勇姿が見られる事を祈念しつつ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/11/05)
伊藤伸平「モルダイバー 1」/徳間書店/1993/7/20 伊藤伸平「モルダイバー 2」/徳間書店/1994/2/20 伊藤伸平「モルダイバー 3」/徳間書店/1994/8/25 先日秋葉原で2、3巻を見つけて大購入。 今更、と言うなかれ。正直「モル」は連載時全く面白く読めなかった口なのさ。 1巻は買ったけど、その後もう買う気がしなくなって・・・ こんな楽屋落ちというか作者の内に篭もったような展開はちょっと、と。 所が先日ウチの隊長に読ませた所、結構誉めていて、そうかなあ?と 自分でも久々に読んでみたらこれが面白い。矢張り「ハイパードール」で 有る程度「慣れた」からなのか、兎に角こりゃ買いだ!と本屋に走る。 「今は亡き」少年キャプテンコミックスの棚はまだ有ったものの、 もう徳島の本屋に「モル」は無いのであった。古本屋にもない・・・ 飢えていたところで見つけたので(そういえばブレイク・エイジ(馬頭ちーめい) もハマった時には単行本がなくて、秋葉原で見つけたのだったぜ。)荷物になるのも 構わず買った訳です。 かつて有ったアニメ(OVA)とは結構別物。 っていうか北爪絵とは偉い違いで・・・ 展開も派手さの少ない、しっかりした物語性を底辺に持った 見事な作品に仕上がっている。巻数が少ないのが残念だが、 ラストの3巻は映画を観るように楽しめる。 パードルが日本特撮ならこれはハリウッドか。 巨大企業の会長、善意の大富豪では有り得ないそのキャラクターの 贖罪としての行為がその背骨をつとめる。科学の進歩と人の幸せ、など 重く説教臭いにしろ読ませる内容は流石。 思うに伊藤伸平の作品のオカシサは制限の下でのアドリブ(性)にあるのであろう。 反骨性というか、たわむ圧力(重さ)が無くてははじける事はない訳で、 ハードな物語という制限を設けて、その下でギャグをかます「パードル」は その意味での最高傑作「だった」といえる。ああ。一体あれは完結するのか。 5、6巻で完結されるのは辛いなあ、とか思ってたらその前にああ言う事に成るとは。 ああ。日本漫画の大いなる損失!!てな事にならなければいいのだけれど。 アドリブ性、特に女の子達を描くときの「それ」に対する思い入れは素晴らしく、 マシンガル教授の所のアンドロイド達(マシンガル・ドールズ)の会話は、 少ないながらも見事に「はじけて」いる。この上手さが「パードル」では継承され、 その上で読者の少年達の投影の対象である赤井少年を作中に登場させた事で より没入感を・・・。まあそんな事はどうでもよいか。 どうも最近下手な分析癖が・・いかんいかん。 まあそういう事でジェニファーが好みですが。 あの髪型と眉!!いいなあ。弱いかも。おっぱいみえるし。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (97/02/17)
伊藤伸平「楽勝!ハイパー ドール 4」/徳間書店/1996/12/25 待望の4巻!!!! 面白すぎる。 アルプスの2巻と同時発売の筈だったが、何故か手に入らず。やっと読む。 勿論本誌でなめるように立ち読み(・・・)してましたが、何にしても「待望の」と 言える漫画単行本が今何冊有るのか>俺。ああ。最近漫画すら読まない奴。 しかしまぁ前号のキャプテンのパードルのトビラも、かなり死をも恐れぬ馬鹿らしさ だったけど、そう言う編集部への突っつきがこの4巻でもかなり見え隠れしている。 でもやっぱ「マーベラー!」じゃリアルタイムで見てた奴だってわかんないのでは。 OPで叫ばないし。挙げ句後書きで解説してもな。 赤井でラブ☆、と言うノリが薄れていくとともに、「本来の伊藤節」が甦りつつ ある様だが、それは要するにツマラなく(ワタシにとっては)なって行ってるのと 同義だ(勿論「特撮」としての楽しみ、画面センスの良さはその分パワーアップ しているのだが。特に巨大ヴェア・シュピンネの回の画面迫力は素晴らしかった)。 まして、ここに至ってついに描き慣れからか、顔デッサンに狂いが部分的にでは 有るが生じてきている様だ。僅かな狂いだが、この絵柄がそれを許さない・・・ 単に「絵柄の変化」、というだけではない様な気がする・・・ だが勿論、それら不満の数々は、この漫画を絶賛した上での事。 いやー、この値段でこの内容。コストパフォーマンスは相変わらず病的に高い。 笑えることこの上無しだし。 因みに一番ウケたのは「放課後電磁波クラ・・」(P39)。も、大爆笑。 ここでソレを持ってくるかというタイミングの素晴らしさよ。2年後にはもう何が どうおかしかったのかさえ分かるまい。 み〜とふみ〜の微妙な「オンナノコらしい」仕草は少し減ったかな・・・。 窓に座って「ドンタン」してるのとかバーゲン突入とかそのへんくらい・・ まぁ「被造物」だし。 最近そんな設定忘れてたけど。あの司令が出てこないとどうにも。 しかし「濃い」方向でもっと遊んで欲しくはあるのだけど、「少年マンガ」としての 体制はかろうじてでも保って欲しいな・・・とも思うのでした。 まーしかし、結構今一番エキサイティングな連載だと思うですよ。単行本収録時に 削られる部分が続出しそうで。 直ぐ風化しそうな時事ネタをあえて入れるあのノリ・・・ やっぱいいわ。 ラストは実はエヴァなアレだったりして。やだなぁそれ。 @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (96/12/10)
伊藤伸平「楽勝!ハイパー ドール 3」徳間書店/1996/4/25 面白すぎる。 1巻を何となく読んで、どハマリして速攻3巻まで購入。 今まで伊藤伸平という作者をそう大して気にはしていなかったのですが この「ハイパードール」だけはマイッタ。もう豪速球ど真ん中の面白さ。 最近では一番ハマりです。もう何度読んだか。 一時期(5月頃)は、もう会う人間会う人間すすめてました。 素晴らしく手の込んだ作り、たまらなく「こっち側」の空気。 「解る人には解る」系のギャグが死ぬほど楽しいです。勿論それだけじゃないですが。 特に、かつて特撮者だった人、今でもそうである者、兎に角読んで下さい。 うむ。「特撮感覚」が素晴らしい。特に2巻のP35、カラスマン (ヴェア・クレーエ・・・)との空中戦のカット(コマというよりはカットだ)の レイアウトの特撮風味がもうたまりません。凄いよこれは・・ 爆発の美しさも。2色でここまで「爆発」を描ききったのは僕は初めて見ました。 たなびく煙の自然さも凄い。このへんが「特撮風味」たる所以ですが。 過去の作品なども読ませて頂いたのですが、この作品の完成度には及ばない。 キャラ設定の段階で、今までのソレとはもう全く視点を変えた様だ。 まず何より「赤井」という読者の代わりの少年(いいやつ)を登場させた事 が大きい。 無敵の少女が表情一つ変えずに戦うのが燃える、というのは水玉の言ですが それにプラスして、この赤井の登場で、大きく読者側へ働きかけた訳である。 活発ショートカットスレンダー、おっとりめロングヘアちょっとふっくら、 おまけに眼鏡娘もつけようという。なんか「女神様」だよな・・ いちいちの仕草の描写も可愛くて、上手い・・・ここまで描ければなぁ・・ 少女達の造形の素晴らしい(特にお約束だがドール・ミュウ・・)のはこの作者ならば 当然だが、それにもましてギャグの切れがまた素晴らしい。 特にピザの上の司令が。 「なーんか故郷の海を思い出してなごむんだよねー」 「やあ若者シケた顔してどうしたい」 素晴らしい(どういう風に素晴らしいかは、単行本でお楽しみ下さい。)・・・ ミュウとマイカの会話も楽しい。 「はっはあだ笑っちゃうねこんなところに体育座りさせられてさ」 「お前のその憎たらしい口はどうやったらふさがるのかね」 とかもう・・・ 各会話が全て軽妙で、よく練られていて・・・ネームもここまで詰められる。 「燃えるゴミと燃えないゴミと!」心強さと! とかね。 3巻のP173あたりなど、セリフ劇の見事さを見よ・・・ 面白いのは、「ハイパードール」が被造物であるらしい、という乾いたSF設定。 これがあるから、ダレないのだ。設定が効いてる。 いやー、オモシロイ漫画ってのは、まだまだ有るのねぇ。 久々の大ヒットでした。 アニメの方はどうなのか・・・代アニのCMが気になるワタシ・・・ @@@@@@@@@@@@@@@@ [JUN] @@@@@@@@@@@@@@@@ (96/06/24)

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